見込み客をただ集めるだけでは、優良な顧客へと導くことはできません。新規のリード獲得の後に行うべきステップとして、リードナーチャリングが注目されています。
今回は、リードナーチャリングが注目されている理由や、具体的なリードナーチャリングの手法を、ポイントを交えながら解説します。
リードナーチャリングとは
リードナーチャリングはリード(見込み客)のナーチャリング(育成)、つまり見込み客を顧客へと導くための一連の施策を指します。
Webコンテンツや展示会など、新規顧客の開拓のためにはいくつもの施策を展開しますが、ただ接点を持つだけでは購買行動へ結びつけることはできません。そこで重視されているのがリードナーチャリングです。
リードナーチャリングでは、見込み客への継続的なアプローチを続けることで関係を深めていき、成約へと結び付けられるような確度の高い見込み客へと育てます。短期的な集客施策というよりも、中長期的に将来の顧客を確保するための取り組みです。
リードジェネレーションとの違い
リードナーチャリングと似たようなことばに「リードジェネレーション」があります。これは「リードナーチャリングの前のステップ」として実施されている施策のことで、未開拓のユーザーに見込み客となってもらえるようアプローチする一連の取り組みです。
後ほど紹介しますが、リードナーチャリングはリードジェネレーションと取り組みとしては大差がなく、両者を混同して実施しているケースも見られます。先に相違点を挙げておくと、それぞれ重点を置いているものは次のとおりです。
- ・リードナーチャリング:購買行動の促進
- ・リードジェネレーション:見込み客の創出
メールやWebなど、両者は似たようなツールを活用しますが、コンテンツの内容やアプローチ方法に違いがあります。メールの文面や頻度、そしてWebコンテンツの内容も異なるため、2つのステップの違いを意識しながら施策を実行することが大切です。
リードクオリフィケーションとの違い
リードナーチャリングに近しいことばとしてもう一つ重要なのが「リードクオリフィケーション」です。リードクオリフィケーションは、「リードナーチャリングの次のステップ」として知られている取り組みで、見込み客の絞り込みを進めます。
一口に「見込み客」とは言っても、関心度合いは人によってさまざまです。購買意欲を高めていくナーチャリング施策を実行しても、顧客になってくれるかどうか、あるいはなってくれるタイミングは異なります。
リードクオリフィケーションを通じて、今すぐ顧客となってくれる可能性の高い見込み客を選別し、営業担当へと共有するのがこのステップの目的です。顧客となってくれるかどうかはタイミングも大いに関係してくるため、適切な選別を行えるかは会社の売り上げに大きく影響します。
「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」という3ステップを適切に実行することが、マーケティング担当者には求められます。
リードナーチャリングが注目を集める背景
リードジェネレーションに取り組んでいる企業は多い一方で、リードナーチャリングまで踏み込める企業はまだ少ないといわれています。近年ようやく注目が集まってきましたが、では今リードナーチャリングが注目されているのでしょうか?
インターネットの普及によりユーザーの行動が変化しているため
一つ目の理由は、インターネットの急速な普及が進んだことです。
スマートフォンの登場により、インターネット利用のスタンダードはPC(パソコン)からスマホへと移行しました。どこからでもネット情報にアクセスできる環境が整備されたことで、消費者や企業が触れられる情報量は格段に増加しています。
いつでもどこでもネットが利用できるようになり、目の前の商品をすぐ手に取るだけでなく、よく吟味して選ぶようユーザー行動に変化が訪れたことから、「見込み客を育てる」という概念が浸透していきました。
成約までの期間が長期化しているため
ユーザーが多くの情報に触れ、購買までの期間が長期化しているということは、それだけ彼らに選択の余地が生まれているということです。
多くの業界において、喫緊の課題となっているのが競合他社との差別化ですが、製品の差別化はもちろん、競合よりも見込み客と接点を持つことで自社を印象付け、購買に進んでもらうことが重要になっています。
リードナーチャリングによって見込み客との接点を増やし、関係を構築していくことができれば、それだけ購買行動を促しやすくなります。自社の良さやサービス内容について深く知ってもらうためにも、見込み客の育成は大切です。
ニーズの多様化が進んでいるため
リードナーチャリングが注目されているのは、そもそもユーザーが抱えるニーズが多様化していることも背景にあるといえます。あらゆる製品やサービスが登場し、それぞれ一定数の顧客を抱えることに成功している企業は、いずれも顧客が抱えるニッチなニーズに応えることができています。
多様なニーズに応えていくためには、見込み客の問題を理解し、それを解決できるということをアピールしなければなりません。リードナーチャリングのプロセスを経て、見込み客に「この会社ならうちの問題を上手く解決してくれるかもしれない」と感じてもらうことができます。
インサイドセールスが普及しているため
リードナーチャリングが急速に普及しているのは、そもそもインサイドセールスが多くの企業で始まっていることも背景にあるでしょう。
インサイドセールスは営業活動の一種で、オンラインを通じて見込み客や既存顧客へアプローチをかける手法です。インターネットが普及し、顧客データ分析と活用可能性が広がったことで、非対面でも的確なセールスを行えるようになってきています。
リードナーチャリングも、そんなインサイドセールスを成功に導くための施策として実施されており、コストを抑え確実に結果を残しやすくなります。
リードナーチャリングの実践で得られる効果
では、リードナーチャリングを実践することで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか?主なメリットとして、次の4点が期待できます。
長期的なフォローアップの実現
1つ目は、見込み客への長期的なフォローアップの実現です。
上述の通り、見込み客が購買に至るまでの期間は長期化が進んでおり、その間に競合他社からのアプローチも増えていきます。リードナーチャリングを実施することにより、担当者の負荷を最小限に抑えながら、定期的なアプローチで見込み客とコミュニケーションを取っていくことができます。
見込み客との関係値に応じたシナリオで向き合うので、何度も同じ情報を伝えるなどして離脱されてしまうリスクも回避できます。
適切なタイミングでのリードへのアプローチ
リードナーチャリングにおいては、その見込み客といつどこで知り合ったのか、どれくらい過去にアプローチしてきたかといった情報を記録し、次の施策に活かすことが重視されています。
正しくリードナーチャリングを実行できれば、見込み客が必要としているタイミングでコミュニケーションを取れるようになるため、より関係を深め購買活動を促進することができます。
見込み客と良好な関係を築くためには、ただコミュニケーションの回数を増やせば良いというわけではありません。何度もしつこくアプローチしてしまうと愛想を尽かされてしまうこともあるため、適切なタイミングを見抜かなくてはなりません。
また、営業担当者も購買意欲の低い見込み客にアプローチして、意欲の高い見込み客の相手をする時間を損失するリスクも減るため、合理的な活動体制を実現できます。
競合へのリードの流出防止
似たようなサービスを扱っている会社が多い業界でも、かねてより見込み客と関係を深めておけば、競合に将来の顧客を奪われてしまうリスクを小さくできます。
自社サービスについての理解を深めてもらい、競合を選ぶ余地を少なくしておけば、いざ購買を決意するとなった際に、「こっちの会社の方が、馴染みがある」として選んでもらえる確率が高くなるからです。リードナーチャリングの実践においては、こういった長期的な視座を持って施策に取り組むことが重要です。
休眠顧客の発掘
見込み客としてリストには登録されているものの、見込みが薄そうだと判断していたユーザー情報も、データ分析にかけてみることで優れた見込み客として育てていく価値を見出すこともできます。
新規で見込み客を探すよりも、既存の顧客データから見込みがありそうなユーザーを発掘する方がよほど効率的です。形や現在の関係はどうあれ、自社と一度接点を有していた経験があり、ゼロから育てていくよりも簡単だからです。
新しい見込み客の発掘はリードジェネレーションに任せてしまい、リードナーチャリングの段階では既存の見込み客へどのようにアプローチするかに集中することが大切です。
リードナーチャリングの主な実践方法
リードナーチャリングを実践するためには、具体的にいくつかの方法が挙げられます。ここでは、主なアプローチについて確認しておきましょう。
メール
ポピュラーなリードナーチャリングの手法として、メールが使われています。
メールマガジン、いわゆるメルマガは、見込み客リストへ登録されているユーザーへ一斉に送信し、確実な情報伝達が期待できることから、現在も活用されています。新商品のお知らせやセミナー・登壇会の案内など、内容はさまざまです。
とにかく自社との接点を増やすための施策として、便利で効果の高い手法です。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、自社サービスや自社が活躍できる領域について、技術的・専門的な情報を発信するための手法です。あまり一般には公開されていない独自情報の発信など、質が高いコンテンツを伝えるために利用されます。
ホワイトペーパーのダウンロードと引き換えに、ユーザーの最新の個人情報や、アンケートに回答してもらう方法が多く取られています。
セミナー・ウェビナー
業界の著名人や専門家を招いて、最新トレンドや大きな問題について話してもらうセミナーやウェビナーも、ユーザーにとって魅力的なコンテンツの一つです。
製品の必要性を説いてもらったり、選択肢の一つとして候補に入れてもらったりするためのきっかけを作っていくことが可能です。
SNS
日常的なコンテンツ発信の場として、ブログやSNSが選ばれています。SNSは容易にスマホから閲覧することができ、比較的多くの情報を伝えることができるため人気のツールです。
また、見込み客と企業が直接コミュニケーションを取ることのできる機会でもあるため、会社にあった運用方法を積極的に検討してみると良いでしょう。
リードナーチャリングを実践する上でのポイント
リードナーチャリングを実践していく上では、次の3つのポイントを実践することが求められます。それぞれについて解説しましょう。
リード情報の「見える化」を進める
リードナーチャリングにおいてまず重要なのは、リードの見える化です。彼らの個人情報やこれまでの接触履歴、メール開封率など、アクションの一つひとつを可視化するための仕組みづくりが必要です。
適切なリードナーチャリングは、見込み客について詳しく理解することから始まります。実践の際には、自社環境の見直しから進めていきましょう。
リードの関心に合わせたシナリオを構築する
リードの可視化ができるようになったら、リードのタイプやニーズに合わせたシナリオを複数構築しましょう。それぞれの必要に最も刺さるタイミングで適切なコンテンツを届けることで、購買行動をグッと近づけることができます。
マーケティング担当と営業担当の連携を強化する
リードナーチャリングはマーケティング活動の一環ですが、営業に近い役割も果たします。購買行動に近づけることができた見込み客も、迅速に営業担当へパスを渡して成約に結びつけてもらわなければ、機会を逃してしまいかねません。
部署のギャップにとらわれることなく、シームレスな連携が取れるよう仕組みづくりを進めましょう。
まとめ
リードナーチャリングは、見込み客を購買行動へ促すための重要なステップを司るプロセスです。営業担当との連携をとりながら、うまく成約へと結びつけるための仕組みづくりが求められます。
どのような施策が自社に不足しているのかを見直しながら、適切な見込み客の育成を実現していきましょう。
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