企業の従業員に対する労働管理は、改正された労働基準法によってますます厳格に管理し、把握することが求められるようになりました。働き方改革や多様な働き方が推進されてきている現代において、従業員の出退勤管理をきちんと把握することは、アナログのやり方では容易ではありません。
今回は、出退勤管理が必要である理由から、正確な出退勤管理を行う方法まで解説します。
出退勤管理とは
出退勤管理とは、企業が従業員の出勤時間や退勤時間、欠勤の状況、休日取得の状況などを記録し管理するものです。
労働基準法によって、企業は従業員の出退勤を管理する義務があり、違反すると罰せられてしまいます。業種問わず、出退勤管理はすべての企業や事業者に必要です。
出退勤管理が必要である理由
出退勤管理は、労働基準法によって定められた労働時間や条件、賃金がきちんと支払われているかなどを確認するために必要です。
労働基準法に違反してしまうと、労働基準監督署からの指導や是正勧告が入り、社会的信用が失墜してしまいます。また、違反が一定の基準を超えてしまった場合には、厚生労働省から企業情報が公開されてしまいます。
昨今、働き方改革の影響で、多様な働き方への対応や労働時間の遵守などが求められるようになりました。また、有給休暇の5日取得の義務化が施行されるなど、大きな変化が起き始めています。
こうした法律を遵守するためにも、また社会的リスクを回避するためにも、出退勤管理を適正に記録・管理することが求められます。
出退勤管理すべき項目
出退勤管理をすべき項目は、主に次の2項目です。それぞれの時間がどのようなものかを解説していきましょう。
- ・労働時間
- ・休憩時間
労働時間
労働時間は「法定労働時間」「所定労働時間」「時間外労働」など、さらに細かく分類されます。
- ・法定労働時間:休憩時間を除き、1日8時間、1週間40時間の就業を定める時間
- ・所定労働時間:企業が就業規則で、従業員に就業時間を定める時間
- ・時間外労働:法定労働時間を超えて働いた時間
- ・深夜労働:22時〜5時の深夜時間帯の労働時間
- ・休日労働:労働基準法によって定められた休日に働いた時間
企業側はこれらの時間を適切に管理することが求められます。なお、36協定や労使協定などを締結し割増賃金などを支払うことで、一定時間までの労働を従業員に行わせることも可能です。
休憩時間
休憩時間とは、「労働時間が6時間を超える場合少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を労働時間の途中に与えること」と、労働基準法によって定義されているものです。
多くの事業が上記の休憩時間に当てはまりますが、一部適用外の事業があります。しかし、原則としては従業員に必ず休憩時間を設けることが必要です。
出退勤管理を行わなければならない企業・事務所
出退勤管理を行わなければならない企業・事業所は、ほぼすべての企業です。
対象はすべての企業・事業所
労働基準法第4章が適用される企業、事業所は、出退勤管理が求められます。事業の規模や業界、業種などで区別されず普遍的なものになっています。
そのため、従業員を雇用している企業はほぼすべてが対象です。なお、対象外の事業としては、農業や水産業などが挙げられます。なぜなら、自然を相手に行う事業であるため、天候の影響を受けやすいからです。
出退勤管理の対象となる従業員
出勤管理の対象となる従業員は、労働基準法によって次のように定められています。
「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間性が適用される時間に限る)を除くすべての労働者」
つまり、従業員を雇用する場合、業種や職種、企業の規模に関わらずすべての従業員が対象になります。なお、「労働基準法第41条に定める者」とは、事業所の管理責任者などです。管理責任者は従業員の労働時間の正確な把握が義務化されているため、運用には注意が必要です。
出退勤管理方法の種類
出退勤管理の方法の種類には、大きく次の3種類が挙げられます。それぞれの方法について解説していきましょう。
- ・タイムカード
- ・Excel(エクセル)
- ・勤怠管理システム
タイムカード
タイムカードは、タイムレコーダーを利用して、紙の打刻シートに日々の出退勤を打ち込んでいく方法です。
従業員一人ひとりの出退勤時間や休憩時間を簡単に把握することができます。また、導入も容易であるため、低コストで運用できることも魅力的です。
一方で、打刻漏れや必ず出勤して打刻する必要があるなど、従業員にとってはデメリットもあります。
加えて、管理側は月毎の出退勤時間をエクセルなどに転記を行う必要があります。手間や時間がかかることはもちろん、転記ミスなどが発生してしまうリスクもあります。
Excel(エクセル)
エクセルでの管理は、従業員にエクセル表を共有し、従業員が出退勤時間を入力するだけで、予め設定されていた数式に従って労働時間を計算するものです。
エクセルは日常の業務で活用することが多いため、従業員や担当者の抵抗なく導入ができ、どの企業でも利用できることが最大のメリットだといえます。また、テンプレートも数多くあるため、コストをかけずに自社に合ったものを導入できます。
一方で、従業員の自己申告による打刻になるため、客観性に乏しいことがデメリットとして挙げられます。不正申告などがないか細かくチェックする体制も求められるでしょう。
また、表計算エラーが起った場合、迅速な対応が行えなければ、残業代未払いなどのケースも考えられるため注意が必要です。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、従業員の打刻や勤務時間の集計作業などを一括してシステム上で行えるものです。給与計算システムなどと連携することで、従業員の給与も自動で計算してくれます。そのため、担当者は出退勤管理の集計の手間がなくなります。
また、クラウド版での提供も多くなってきており、スマートフォンなどを活用してどこからでも打刻できることもメリットです。そのため、多様な働き方にも対応ができます。
一方で、勤怠管理システムの導入には、初期コストやランニングコストなどが必要です。加えて、自社の雇用形態に合っていないものを導入してしまうと、きちんと運用できない可能性もあります。
それでも、自社に合った勤怠管理システムを導入すれば、タイムカードやエクセルと比較して、業務効率化につながるでしょう。
勤怠管理システム導入により得られるメリット
勤怠管理システム導入により得られるメリットには、次の4点が挙げられます。それぞれのメリットについて解説していきましょう。
- ・打刻時間の正確性
- ・業務効率化の実現
- ・法改正へのスムーズな対応
- ・コストの抑制
打刻時間の正確性
勤怠管理システムの打刻時間は、透明性に優れているものになっています。なぜなら「いつ・どこで・誰が・どの端末で記録したか」のログなどを確認できるからです。
そのため、客観的に打刻時間を管理することにつながります。打刻時間が正確に記録できるため、給与計算や労働時間、残業時間なども自動的に把握できます。
業務効率化の実現
勤怠管理システムを導入することで出退勤管理が自動化できるため、業務効率化につながります。
タイムカードやエクセルなどの管理の場合、自己申告による出退勤管理になるため、打刻漏れや不正申告などが発生する可能性があります。こうした際の修正作業などはもちろん、月の労働時間等の集計作業なども発生します。
他にも、給与計算のための転記作業など、煩雑な作業が多くなり、担当者の負担が大きくなってしまいます。勤怠管理システムでは、こうした煩雑な作業や手間が軽減されるため、業務効率化につながります。
法改正へのスムーズな対応
勤怠管理システムでは、法改正が施行された際に自動的に最新の法令に合わせたバージョンを提供してくれることが一般的です。そのため、法令に遵守した勤怠管理をリスクなく行えます。
加えて、クラウド版の勤怠管理システムであれば、違反の危険性がある従業員のアラートが通知されるため、事前に対応も可能です。
コストの抑制
勤怠管理システムでは、導入コストやシステム利用のランニングコストなどがかかります。しかし、人件費の削減やタイムカードを利用していた場合の備品購入代金などが削減できます。
勤怠管理システム導入によって作業の多くが自動化されるため、担当者の業務負担は減っていきます。そのため、残業なども必然的に減っていくでしょう。
また、タイムカードなどのアナログの運用の場合、紙などの備品を一定数購入する必要があります。こういった費用も削減できるため、コストを抑えることにつながります。
勤怠管理システムの導入時に考えるべきポイント
勤怠管理システムは、きちんと運用できるものを導入しなければ効果を発揮しません。そのため、以下の導入時に考えるべきポイントを押さえておくことが大切です。
- ・自社の勤務体系や雇用体系に対応しているか
- ・操作性は使いやすいか
- ・クラウド型かオンプレミス型か
- ・既存システムとの連携は可能か
- ・スマートフォンに対応しているか
自社の勤務体系や雇用体系に対応しているか
多様な働き方が広がっている現在において、フレックスタイム制による勤務体系や派遣社員、パート、アルバイトなどさまざまな雇用形態を導入している企業が増えてきています。
勤怠管理システムの中には、総合的に対応できるものや勤務形態や雇用形態に特化しているものなど、さまざまな種類があります。そのため、自社の勤務体系や雇用体系に対応しているシステムかきちんと確認することが大切です。
操作性は使いやすいか
システムを導入しても、操作性が優れていなければ作業に時間がかかってしまう場合もあります。そのため、従業員が打刻したり、担当者が集計したりする操作性、管理画面が見やすさなどを確認することが大切です。他にも、打刻漏れのアラートが出るかなど、細かい機能で使いやすさを確認することも重要です。
クラウド型かオンプレミス型か
勤怠管理システムを導入するにあたっては、インターネットサービスを利用して運用するクラウド型、社内ネットワークで運用するオンプレミス型のどちらかを選択します。
昨今、手軽に導入ができ、法改正などにもスムーズに対応ができるクラウド型が人気です。一方で、規模が大きい企業では、勤怠管理システムをカスタマイズできるオンプレミス型も人気があります。そのため、自社の用途に合わせて選択すると良いでしょう。
既存システムとの連携は可能か
勤怠管理システムは単独で運用するのではなく、給与計算システムと連携させることで、さらに業務効率を高めることができます。そのため、既存システムと連携ができるかは非常に重要なポイントです。
他にも、人事管理システムなどと連携ができれば、データを横断的に活用できるため、手間や負担はさらに少なくなります。コストや機能だけに囚われず、既存システムとの連携にも目を向けてください。
スマートフォンに対応しているか
スマートフォンに対応しているものを選択すれば、外回りの多い営業や在宅勤務が多い従業員などがオフィスにいなくても打刻することが可能です。後から打刻申請を行わずに済むため、従業員にとっても担当者にとっても負担が軽減されます。
製品によって機能面で差があるため、きちんと確認すると良いでしょう。
主な勤怠管理システム10選
出退勤管理を行うための主要な勤怠管理システムには次のものがあります。それぞれのサービスを紹介しましょう。
- ・ジョブカン勤怠管理
- ・Touch on Time
- ・KING OF TIME
- ・マネーフォワードクラウド勤怠
- ・jinjer勤怠
- ・kinnosuke
- ・freee 人事労務
- ・バイバイタイムカード
- ・リシテア/就業管理クラウドサービス
- ・TeamSpirit
ジョブカン勤怠管理
ジョブカン勤怠管理は、導入実績が80,000社以上を誇る、株式会社 DONUTSが提供するクラウド型勤怠管理システムです。出退勤管理はもちろん、シフト管理や工数管理にも対応し、働き方改革関連法案にも最新のバージョンで対応してくれます。
また、ジョブカンシリーズでまとめることで、業務効率化の促進もできます。
料金プラン
- ・1人200~500円/月
公式サイト
Touch on Time
株式会社デジジャパンが提供するTouch on Timeは、導入実績40,000社以上の低コスト運用が魅力の勤怠管理システムです。運用費用はユーザー1人につき300円/月の従量課金制のため、あらゆる企業規模に対応が可能です。
また、機能面でも打刻方法が指紋認証やICカード認証などから選択が可能なので、業種問わず導入が可能です。
料金プラン
- ・初期費用無料、1人300円~/月
公式サイト
KING OF TIME
KING OF TIMEは、株式会社doubLeが提供する18年以上の運用実績を誇る勤怠管理システムです。機能面はもちろん、働き方改革関連法案にも問題なく対応が可能です。
また、導入だけでなく運用面でもサポート体制を整えており、豊富な経験とノウハウを活かしたサポートが人気となっています。
料金プラン
- ・1人300円/月
公式サイト
マネーフォワードクラウド勤怠
株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワードクラウド勤怠は、働き方改革関連法案に即時対応が可能なクラウド型勤怠管理システムです。
出退勤管理はもちろん、自社の運用に合わせた就業ルールの設定も可能です。そのため、フレックスタイム制などにも柔軟に対応ができます。また、マネーフォワードクラウド給与と連携させれば、勤怠データのスムーズな連携も可能です。
料金プラン
【基本料金】
- ・スモールビジネス(小規模事業者向け):2,980円/月(年額プラン)
- ・ビジネス(中小企業向け):4,980円/月(年額プラン)
- ・従業員数51名以上の企業:要見積
【人数課金】
- ・1人300円/月
公式サイト
jinjer勤怠
jinjer勤怠は、jinjer株式会社が提供する操作性が簡単なことが評判のクラウド型勤怠管理システムです。直感的に操作ができるため、初めて勤怠管理システムを導入するなどに向いています。
加えて、電話やチャットなどで対応ができる導入設定サポートもあるため、スムーズな導入が可能です。他にも、管理者画面がスマートフォンに対応しているなど嬉しい機能もあります。
料金プラン
- ・1人400円~/月
公式サイト
kinnosuke
kinnosukeは、HOYA株式会社が提供する、従業員が1名から利用可能なクラウド型勤怠管理システムです。さまざまな企業規模に対応ができ、導入時には専任チームが徹底したヒアリングを行い、自社に適切なシステム設計を行ってくれます。
機能面でも、申告漏れに対するアラートや勤務時間のリアルタイム集計など、基本的な機能を網羅しています。
料金プラン
- ・初期費用:お見積り
- ・月額料金:385円/ユーザー
公式サイト
freee人事労務
freee株式会社が提供するfreee人事労務は、日本初の人事労務管理システムで、これまで100,000を超える事業所が活用しています。勤怠管理だけでなく、給与計算までをシステム上で行えるため、業務効率化が促進されます。
他にも、長時間労働を行なっている従業員をAIがアラートしてくれる機能が付いているため、働き方改革も進められます。
料金プラン
- ・ベーシック:3,980円/月〜
- ・プロフェッショナル:8,080円/月〜
公式サイト
バイバイタイムカード
株式会社ネオレックスが提供するバイバイタイムカードは、1,000人以上の従業員がいる大規模企業でシェアNo.1のクラウド型勤怠管理システムです。大企業ならではの就業ルールへの対応はもちろん、専任コンサルタントが自社への調査、設定導入、運用を行ってくれるため、サポート体制に強みがあります。
料金プラン
- ・要問い合わせ
公式サイト
リシテア/就業管理クラウドサービス
リシテア/就業管理クラウドサービスは、株式会社日立ソリューションズが提供する25年以上の実績を誇る勤怠管理システムです。標準機能が豊富に備えらえているため、あらゆる就業規則への対応が可能です。
加えて、これまでの勤怠管理システムを運用してきた経験やノウハウを、手厚いサポートとして提供するなど、人気の高いサービスの一つです。
料金プラン
- ・1人350円~/月
公式サイト
Team Spirit
TeamSpiritは、勤怠管理から工数管理、経費精算などの機能がオールインワンパッケージとして提供されている株式会社チームスピリットのクラウドサービスです。フレックスタイム制やテレワークにも対応しており、各従業員の労働時間を自動集計してくれます。
加えて、リアルタイムで残業時間や未消化の有給などが把握でき、現場の従業員や管理者への共有も可能です。そのため、労務リスクの回避にもつながります。
料金プラン
- ・TeamSpirit:初期費用:150,000円、月額費用:従業員1人600円
- ・TeamSpirit HR:初期費用:250,000円、月額費用:従業員1人900円+人事担当者1人900円
- ・TeamSpirit Leaders:初期費用:200,000円、月額費用:従業員1人600円+リーダ1人6,000円
- ・TeamSpirit EX:要見積
公式サイト
まとめ
出退勤管理は、企業が適正に記録、管理することが求められるものです。出退勤管理はあらゆる方法がありますが、透明性や客観性に優れた勤怠管理システムを導入することがおすすめです。
今回お伝えしたことを参考に勤怠管理システムを導入し、出退勤管理に関わる業務効率化を目指してみてください。
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