年末調整ソフトは、年末調整業務に掛かる工数を削減できるソフトです。煩雑な計算や書類作成を自動化できるため、人事担当者と従業員、双方の負担を減らせます。
ですが、年末調整ソフトを初めて導入する場合、どのようなソフトを選ぶべきか、どのようなメリットが得られるか、わからない点も多いでしょう。今回は、年末調整ソフトの導入メリットやポイント、おすすめのソフトなどについて解説します。
年末調整ソフトとは
年末調整ソフトとは、控除額計算や帳票作成を自動で行うなど、年末調整の手続きを効率化するソフトです。源泉徴収票や給与支払報告書、保険料控除申告書など、各種帳票のテンプレートが用意されており、担当者は一から作成する必要はありません。
一連の業務をオンライン上で完結でき、年末調整業務に掛かる工数を大幅に削減できます。また、提出状況の把握やスケジュール管理もソフト上で行えるため、人事担当者は必要以上に細かく管理をする必要はありません。他の業務に時間と労力を割けます。
特に、中小企業は人的リソースに制限があり、労務管理と人事を兼任しているケースが珍しくありません。年末調整ソフトの導入によって、コア業務にリソースを集中できます。一方、ソフト上に入力内容が自動で反映されるため、従業員も作業のスピードアップを図れます。
わからない箇所があったとしても、各項目にはヘルプ機能が搭載されており、人事担当者に確認する必要はありません。年末調整ソフトの導入は人事担当者と従業員、双方に多くのメリットをもたらします。
年末調整ソフトの導入で得られるメリット:企業側
年末調整ソフトの導入によって企業側が得られるメリットは、主に次の3点です。
・年末調整業務の効率化
・人事担当者の業務負担軽減
・ペーパーレス促進
工数の掛かる業務を年末調整ソフトに任せられるため、業務の効率化を図れます。煩雑な計算や端数処理も自動化できるため、計算ミスが発生する心配も要りません。年末調整業務の自動化を進められ、業務のスピードと正確性を高いレベルで両立できます。
また、年末調整ソフトの導入によって、手続きに必要な書類を従業員一人ひとりへ配布する必要はありません。書類作成や入力作業はソフト上で行えるので、ペーパーレスを促進することができます。
年末調整業務の効率化
年末調整ソフトの導入によって、年末調整の手続きを効率的に進められます。帳票作成や控除判定、控除額の計算など、工数の掛かる業務を自動化でき、業務の正確性を保ちつつスピードアップを図れます。
端数処理や複雑な計算もソフトに一任できるため、計算ミスが起きる心配も要りません。
また、クラウド型の年末調整ソフトを導入すると、法改正への自動アップデートも望めます。常に最新バージョンを利用できるので、コンプライアンス違反を避けられます。
人事担当者の業務負担軽減
人事担当者の業務負担を軽減できる点も、年末調整ソフトを導入するメリットの一つです。書類作成〜管理まで、一連の業務をソフト上で完結できるため、従業員一人ひとりに書類を配布する必要はありません。
また、提出状況や申請内容の確認もソフト上で行えるので、コミュニケーションコストを抑えられます。仮に記入ミスや記載漏れがあったとしても、すぐに差し戻しができるため、従業員と何度もやり取りを交わす必要はありません。
年末調整ソフトの導入によって、人事担当者は作業の手を止められる回数が減り、他の業務にリソースを集中できます。
ペーパーレス促進
手続きに必要な書類をソフト上で作成できるので、書類をわざわざ印刷する必要がなくなります。ペーパーレス化を促進でき、コスト削減やテレワークへの移行につなげられます。また、過去に作成した書類データをソフト上に保存できる点もメリットです。
扶養控除等申告書や配偶者控除等申告書、基礎控除申告書など、年末調整関連の書類は、7年間保管しておかなければなりません。帳簿関係も同様に7年の保管が義務付けられており、紙書類のまま保管すると、保管スペースの確保や整理整頓が必要になります。
ですが、年末調整ソフトを導入すれば、ソフト上に過去のデータを保管できるので、管理コストを大幅に削減できます。
年末調整ソフトを導入するメリット:従業員側
年末調整ソフト導入によって従業員が得られるメリットは、主に次の2点です。
- 入力作業が簡略化される
- テレワークにも対応している
提示された内容に沿って作業を進めれば、回答内容が自動的に反映されます。煩雑な計算や控除判定はソフトに任せられるため、大きな負担は発生しません。
また、インターネット環境さえ整っていれば、ソフトにログインできます。アクセス地点を問わないため、在宅勤務やリモートワークの導入を進められます。
入力作業が簡略化される
年末調整ソフト導入によって多くの作業が簡略化されるため、入力作業の負担を大幅に削減できます。画面上に提示された質問に答えていけば、入力した内容が自動的に反映されます。計算や控除判定はソフトが自動で行うので、複雑な作業は発生しません。
仮に記載ミスや記入漏れがあったとしても、画面上で素早く修正できます。また、金融機関や保険会社からの控除証明書を、電子データとして受け取れます。前回作業時から住宅ローンや保険に関する情報が変わらない場合、改めて入力を行う必要はありません。
何度も同じ内容を記入する必要がなくなり、書類作成に掛かる時間を短縮できます。
テレワークにも対応している
年末調整ソフトは、インターネット環境さえ整っていれば、場所を問わずアクセスできます。在宅勤務やモバイルワークなど、柔軟な働き方の実現が可能です。また、スマートフォンからも入力できるため、移動時間や隙間時間に書類作成が行えます。
年末調整の手続きを行うために帰社する必要がなくなり、プライベートの時間を確保できます。
年末調整ソフトの種類
年末調整ソフトは、次の2種類から選択する形になります。
- 国税庁の年末調整ソフト
- 民間の年末調整ソフト
国税庁の年末調整ソフトは、無料で利用できる点が魅力です。書類作成やデータ入力、控除判定など、年末調整の手続きに必要な作業を無料で効率化できます。一方、民間の年末調整ソフトは、多機能性が魅力です。
従業員一人ひとりの提出状況をソフト上で可視化できるので、管理に過度なリソースを割く必要はありません。提出が遅れている従業員に対してはアラートを発し、手続きのスピードアップを求められます。
また、他のシステムと連携した使い方もできるので、業務効率化と正確性向上を多くの業務で実現できます。
国税庁の年末調整ソフト
年末調整の電子化を推進する方法として、国税庁が提供している年末調整ソフトの導入が挙げられます。国税庁の年末調整ソフトを利用するメリットは、無料で利用できる点です。
扶養控除等申告書や所得金額調整控除申告書、基礎控除申告書など、工数の掛かる書類作成を効率化できます。控除額計算や控除判定も自動化できるので、年末調整の作業をスピーディーに完結できます。
入手方法は、国税庁の公式サイトやMicrosoft Store、App Storeからソフトをインストールする形です。また、スマートフォンアプリを入手する場合は、Google Play ストアやApp Storeから、アプリをインストールしてください。
民間の年末調整ソフト
専門的なノウハウを持つ民間企業の年末調整ソフトを利用するメリットは、多くの業務を効率化できる点です。ソフト上で従業員一人ひとりの提出状況を可視化でき、手続きが遅れている従業員へはアラートを発して、提出を催促できます。
また、複数のシステムと連動して使える点も魅力の一つです。給与計算システムや労務管理システムなど、他のシステムと連携して利用することで、バックオフィス作業全般を効率化できます。
近年は、コストパフォーマンスに優れたクラウド型の年末調整ソフトが、市場に多数登場しています。ハイスペックな年末調整ソフトを導入しやすくなっている点も、プラス材料の一つです。
年末調整ソフトの選び方のポイント
ミスマッチを避けるためにも、年末調整ソフトを選ぶ上で、次の3つのポイントを意識してください。
- 年末調整特化型or他システム付随型
- クラウドとオンプレミスの特徴を理解する
- 無料トライアルを活用する
一つひとつ解説していきましょう。
年末調整特化型or他システム付随型
年末調整特化型ソフトと他システム付随型、どちらを選択するかは重要なポイントの一つです。選定前に、年末調整ソフトに求める機能の範囲を明確化してください。
年末調整特化型は、帳票作成や控除判定、控除額の計算などを自動化し、年末調整に関する作業全般を効率化できます。既存システムを活かしつつ、導入コストを抑えられる点が魅力です。
既に給与計算システムや労務管理システムを導入しており、年末調整機能だけを追加する場合、年末調整特化型のソフトを選択します。一方、他システム付随型は、給与計算システムや労務管理システムに、年末調整機能が搭載されているシステムを選ぶ形です。
どちらかのシステム導入を検討している場合、追加費用の発生を避けられます。また、多くの業務をシステム上で完結できるため、業務効率改善やペーパーレス促進も期待できます。
クラウドとオンプレミスの特徴を理解する
クラウドとオンプレミス、どちらで年末調整ソフトを導入するべきか、比較をしておきましょう。クラウドは、ベンダーが提供している年末調整ソフトをインターネット経由で利用する形です。
導入する際に、インフラ環境の構築やソフトウェアのインストールは必要ありません。アップデートやメンテナンスもベンダーへ一任できるので、ランニングコストを大幅に削減できます。
また、インターネット環境さえ整っていれば、年末調整ソフトにアクセスできるので、テレワークへの移行もスムーズに進められます。
一方、オンプレミスは自社サーバーに、年末調整ソフトを取り込む形です。カスタマイズ性が高く、機能性や操作性を最大限追求できる点が魅力です。
オンプレミスは、基本的に社内からのアクセスを想定しているので、セキュリティレベルを高く保てる点も特徴です。ただし、設備調達や運用は自社で行わなければならず、コストが高くなりがちです。
どちらが自社に多くのメリットをもたらすかを考えた上で、導入形態を決断しましょう。
表:クラウドとオンプレミスの比較
クラウド | オンプレミス | |
メリット | ・コストを抑えられる ・すぐに利用できる ・運用負担を軽減できる ・法改正への自動アップデートも望める ・場所を問わずアクセスできる | ・カスタマイズ性が高い ・セキュリティレベルが高い ・ベンダーロックインに陥らない |
デメリット | ・カスタマイズ性は低い ・倒産や事業縮小が起きると、ソフトを利用できない | ・全体的にコストが掛かる ・設備調達や障害対応は自社で行わなければならない ・優秀なIT人材がいない場合、安定的な運用は難しい ・テレワークには向いていない |
無料トライアルを活用する
年末調整ソフトの本格的な運用を決断する前に、無料トライアルを活用してください。無料トライアルは2週間〜1ヶ月間、年末調整ソフトを無料で利用できる制度です。コストを掛けずに、機能性や操作性を確認できます。
仮に自社との相性が合わなかったとしても、コストが掛かっていないため、ダメージは残りません。ミスマッチを避けるためにも、無料トライアルを積極的に活用してください。
おすすめの年末調整ソフト
ユーザーからの評価が高いおすすめの年末調整ソフトを6つ紹介します。
- マネーフォワード クラウド年末調整
- オフィスステーション 年末調整
- ジョブカン給与計算
- フリーウェイ給与計算
- SmartHR
- freee人事労務
年末調整ソフト導入を検討している方は、選定作業にご活用ください。
マネーフォワード クラウド年末調整
マネーフォワード クラウド年末調整は、株式会社マネーフォワードが提供する年末調整ソフトです。マネーフォワード クラウド年末調整の特徴は、汎用性の高さです。帳票作成や控除判定、年末調整額の算出など、手続きに必要な業務全般を自動化できます。
必要な記入事項は従業員自らが入力し、差し戻しや回収もソフト上で行えるため、やり取りの回数を最小限に抑えられます。また、マネーフォワードの各シリーズと連携した使い方ができる点も、魅力です。
給与計算や勤怠管理、人事管理など、バックオフィス業務全般の効率化を図れます。
料金プラン
- スモールビジネス:2,980円/月額
- ビジネス:4,980円/月額
公式サイト
オフィスステーション 年末調整
オフィスステーション 年末調整は、株式会社エフアンドエムが提供する年末調整ソフトです。ユーザーからの評価が高く、労務クラウドシェアと顧客満足度でNo.1に輝きました。
オフィスステーション 年末調整の特徴は、ユーザビリティの高さです。
従業員一人ひとりのマイページを開設し、マイページ内でタスク管理や回収作業を行います。提出状況はすべて数値化されるため、一目で誰が提出していないかを把握できます。
また、アンケートに「はい」と「いいえ」で回答すれば、ソフトに回答内容が反映され、最短3分で書類を作成可能です。年末調整業務に掛かる作業時間が導入前と比較し、100時間削減できたとのデータも挙がっています。
幅広い業界の企業が導入をしており、導入社数は2万社を突破しました。
料金プラン
- 従業員数20人以下:11,000円/年+初期費用110,000円
- 従業員数21~5,000人:550円/1ユーザー+初期費用110,000円
公式サイト
ジョブカン給与計算
ジョブカン給与計算は、株式会社Donutsが提供する給与計算システム付随型の年末調整ソフトです。ジョブカン給与計算の特徴は、幅広い業務の効率化が望める点です。扶養控除等申告書や源泉徴収票、保険料控除申告書など、各種帳票を自動で作成できます。
登録されてある従業員データと連携しているので、前年と変更点がない場合、住宅ローンや保険に関する内容を何度も入力する必要はありません。また、所得税や雇用保険料、社会保険料など、工数が掛かる計算業務を自動化できます。
税率や保険料率の改定があった場合は、自動アップデートされるので、コンプライアンス違反を回避できます。そして、勤怠管理や採用管理、労務HRなど、他のジョブカンシリーズと連携して利用すると、業務の正確性向上とスピードアップが可能です。
料金プラン
- 無料プラン
- 有料プラン:月額400円/ユーザー
公式サイト
フリーウェイ給与計算
株式会社フリーウェイジャパンが提供するフリーウェイ給与計算は、給与計算システム付随型の年末調整ソフトです。フリーウェイ給与計算の特徴は、優れたコストパフォーマンスです。
総支給額や過不足税額、法定調書合計表など、工数の掛かる計算や書類作成をシステムが行い、人事担当者の業務負担を軽減します。また、社会保険料や所得税、時間外手当の計算を自動化し、正確な給与計算を効率的に進められます。
保険料率や税率の改定もワンタッチで更新できるので、大きな負担にはなりません。そして、有料プランを利用した場合でも、ユーザーが6人以上なら月額1,980円で、半永久的に利用できます。
料金プラン
- 無料プラン(従業員5人まで)
- 有料プラン:月額1,980円
公式サイト
SmartHR
株式会社SmartHRが提供するSmartHRは、労務管理システム付随型の年末調整ソフトです。労務管理クラウド部門で4年連続No.1に輝いており、導入企業数は5万社を突破しました。
SmartHRの特徴は、優れたユーザーインターフェースです。シンプルで整理された画面設計によって、直感的な操作を実現します。アンケートに答えていけば、手続きは完了するので、年末調整に掛かる工数を大幅に削減可能です。
入力項目で疑問点があったとしても、チャット&オンライン相談機能を活用すれば、疑問点をスピーディーに解決できます。また、社会保険への加入手続きや雇用契約書作成、個人情報収集など、様々な手続きや文書作成をオンライン上で完結できます。
料金プラン
- HRストラテジープラン:問合せ
- 人事・労務エッセンシャルプラン:問合せ
- 人材マネジメントプラン:問合せ
公式サイト
freee人事労務
freee株式会社が提供するfreee人事労務は、システム付随型の年末調整ソフトです。freee人事労務の特徴は、1台のシステムでバックオフィス全般の業務を効率化できる点です。年末調整や給与計算、労務管理など、さまざまな業務に対応しています。
各種業務がオンライン上で完結できる体制を整え、ペーパーレス化やテレワークへの移行を促進します。
料金プラン
- ミニマム:月額1,980円+初期費用1,980円~
- ベーシック:月額3,980円+初期費用1,980円~
- プロフェッショナル:月額8,080円+初期費用1,980円~
- エンタープライズ:問い合わせ+初期費用1,980円~
公式サイト
まとめ
年末調整ソフトは、年末業務に掛かる工数を大幅に削減するソフトです。控除額や書類作成、控除判定など、負担の大きい業務を自動化し、人事担当者の負担を軽減します。年末調整ソフトは、国税庁と民間企業が提供しているソフトの2種類から選択できます。
機能性や他システムとの連動性を考えると、民間企業が提供する年末調整ソフトを選択してください。ただし、どの年末調整ソフトを選択するべきか迷っている方も多いでしょう。今回の記事で挙げたポイントやおすすめのシステムを参考に、選定作業を進めてください。
また、年末調整ソフトは単体使用よりも、複数のシステムと連携して使用した方が、業務効率改善効果が期待できます。ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」を導入すると、入社手続きに関する工数を大幅に削減できます。
雇用契約書や内定承諾書、誓約書など、従業員からの承諾が必要な書類の作成〜締結まで、オンライン上で完結できます。一方、従業員もスマートフォン上で内容確認や署名を行えるので、最短即日での契約締結が可能です。
労務管理の工数削減にお悩みの方は、年末調整ソフトの導入と共に、人事労務コボット導入を併せてご検討ください。