【2022】労災保険とは何かわかりやすく解説!料率・加入手続き・適用対象を紹介│コボットLAB

【2022】労災保険とは何かわかりやすく解説!料率・加入手続き・適用対象を紹介

労災保険とは

労災保険とは業務中や通勤途中での事故によって、怪我や障害が残った労働者に対し、保険金を支給する制度です。従業員を1人でも雇用している企業は、必ず加入しなければなりません。

未加入が発覚した場合はさまざまなペナルティが科せられ、企業にとって大きなダメージとなります。今回は、労災保険の概要やペナルティの内容、給付金の種類について解説します。

労災保険とは

労災保険とは業務中や通勤中の事故によって怪我や病気をした従業員に対し、保険給付金を支給する制度です。労災保険は雇用形態を問わず、すべての労働者が加入対象となります。

労働者を新たに雇用した場合、必ず労災保険に加入しなければなりません。また、労災保険は雇用保険と異なり、保険料を全額企業側が負担します。

労災保険の加入手続きで必要となる書類

新たに従業員を雇用した場合、労災保険の加入手続きは必ず行わなければなりません。労災保険の加入手続きで必要となる書類や提出先、提出期限は下の表のとおりです。

表:労災保険加入時に必要な書類

提出書類提出期限提出先
労働保険概算保険料申告書雇用関係(保険関係)成立翌日から10日以内所轄の労働基準監督署
労働保険概算保険料申告書50日以内下記いずれかを選択
・所轄の労働基準監督署
・都道府県労働局
・日本銀行または代理店
履歴事項全部証明書雇用関係(保険関係)成立翌日から10日以内所轄の労働基準監督署

労災保険の適用対象となる災害は、次の2種類です。

  • 業務災害
  • 通勤災害

業務災害

業務災害は、作業ミスや設備トラブルなどが原因で、労働者が業務中に負傷や障害、死亡することを指します。業務内容や事業場内の設備環境を起因とした災害であるため、業務との因果関係が認められれば、特別な事情がない限り労災保険が適用されます。

労災保険が適用されると、怪我の状況や障害の有無に応じて給付金が支給されます。ただし、自然災害での負傷や休憩時間に遊んで怪我をした場合などは、業務と関係ないため、労災保険の適用対象には入りません。

通勤災害

通勤災害は、事業場への出勤途中や帰宅中に発生した事故によって、労働者が怪我や障害、死亡することを指します。通勤災害の特徴は、事業主の責任範囲外で発生した災害である点です。具体的には電車やバス、タクシーなど、交通機関での事故になります。

通勤災害は業務中の怪我や負傷ではないため、労働基準法で定められた災害補償責任の対象ではありません。労災保険から給付金が支給される点は業務災害と変わらない一方で、補償金とは呼びません。通勤災害によって労災保険が下りる場合は、給付金と呼びます。

また、認定通勤ルートが合理的な経路及び方法から外れている場合は、通勤災害の対象とはみなされません。同様に帰宅途中に買い物や習い事などを済ませるため、本来の帰宅ルートから外れている場合も、適用対象外となります。

表:通勤災害に適用されるケース

通勤災害に適用される経路通勤災害と認められるケース
・自宅と事業場間の往復
・就業場所から他の就業場所への移動
・単身赴任先住居と帰省先住居間の移動
・帰宅途中に忘れ物を取りに事業場へ引き返し、事故に遭ったケース
・顧客先で商談後、別の顧客先へ異動する最中に事故に遭ったケース
・顧客先での商談後、帰宅途中に事故に遭ったケース

労災保険適用時に支給される給付金の種類

労災保険に関する給付金の種類は次の7種類に分類されます。怪我の症状や障害の有無によって、適用される給付金は異なります。

  • 療養補償給付
  • 休業補償給付
  • 傷病補償年金
  • 障害補償給付
  • 介護補償給付
  • 遺族補償給付
  • 葬祭料等

療養補償給付

療養補償給付は、労働災害によって怪我や負傷した際に支給される給付金です。治療費や入院費、手術代など、治療に掛かる費用を全額支給してもらえます。

休業補償給付

休業補償給付は業務災害や通勤災害の影響で働けず、療養を余儀なくされている労働者に支給される給付金です。休業補償給付の支給額は、休業前に従業員が得ていた1日の平均賃金の60%です。

休業補償給付が支給される期間は、療養期間中の4日目からです。最初の3日間は待機期間と呼ばれ、ただし、待機期間の3日間は休業補償として、企業側が平均賃金の60%を支払わなければなりません。労働基準法にも定められています。

また、平均賃金の20%分が特別支給金として支給されます。療養中の従業員には、休業補償給付と合わせて平均賃金の80%が支給される形です。働けなくなった場合でも休業前賃金の80%が得られるため、経済的不安を軽減できます。

傷病補償年金

傷病補償年金は療養を開始してから1年6ヶ月が経過しても、怪我の症状が治癒しない場合に支給されます。休業補償から切り替わる形です。ただし、怪我の内容が傷病等級に該当しない場合、傷病補償年金は支給されません。引き続き休業補償が支給されます。

障害補償給付

障害補償給付は怪我や病気の治癒後、障害が残った場合に等級に応じて支給される給付金です。等級が1〜7級の場合は年金方式で支給され、偶数月に2ヶ月分の金額が支給されます。一方、等級が8〜14級の場合は一時金方式で、給付金の支給は1回のみです。

介護補償給付

介護補償給付は怪我の治癒が進まない場合や障害が残った影響によって、介護が必要な場合に支給される給付金です。傷病補償年金または障害補償年金の受給対象者であることが支給条件です。介護の必要度に応じて給付金の支給額は異なります。

常時介護が必要な場合は月額16万5150円まで支給され、随時介護が必要な方は月額8万2,580円まで支給されます。

遺族補償給付

遺族補償給付は労働災害によって労働者が死亡した場合、遺族に支払われる給付金です。支給額は遺族の数によって変動し、支給方法は年金方式を採用します。

支給対象者は、労働者の収入によって生活している方が対象になります。支給対象者は次のとおりです。

  • 配偶者
  • 子ども
  • 両親や祖父母
  • 兄弟

支給の判断基準は労働者と一緒の家に住み、生活を共にしていたかどうかです。配偶者が共働きであったとしても、支給対象に含まれます。

また、配偶者との関係が内縁関係だった場合も支給対象となる可能性があるため、慎重な対応が必要です。

葬祭料等

葬祭料は労働者が死亡した際、葬祭を行う者に支給される給付金です。次のどちらかのうち、支給金額が高い方を選択します。

  • 31万5000円+被害者の事故前における平均賃金の30日分
  • 平均賃金の60日分

労災保険料の保険料率と計算方法

通勤災害と認められるケース

労災保険料の算出は、労働者の賃金総額×保険料率で算出します。保険料率は、厚生労働省が発表する事業別の保険料率を適用します。

労災保険の保険料率

労災保険の保険料率は、業種ごとに細かく規定されていることが特徴です。2022年度の保険料率は、2018年に改定された保険料率と同じです。

これまで労災保険料率は3年単位で見直されていました。ただし、2021年に保険料改定は実施されませんでした。

厚生労働省が発表している保険料率は下の表のとおりです。

表:事業別保険料率

事業の分類業種番号事業の種類保険料率
林業02または03林業60
漁業11海面漁業18
12定置網漁業又は海面魚類養殖業38
鉱業21金属鉱業、非金属鉱業、石炭鉱業88
22石灰石鉱業又はドロマイト鉱業16
23原油又は天然ガス鉱業2.5
24採石業49
25その他鉱業26
建設業31水力発電施設、ずい道等新設事業62
32道路新設事業11
33舗装工事業9
34鉄道又は軌道新設事業9
35建築事業9.5
38既設建築物設備工事業12
36機械装置の組立て又は据付けの事業6.5
37その他建設事業15
製造業41食料品製造業6
42繊維工業又は繊維製品製造業4
44木材又は木製品製造業14
45パルプ又は紙製造業6.5
46印刷又は製本業3.5
47化学工業4.5
48ガラス又はセメント製造業6
66コンクリート製造業13
62陶磁器製品製造業18
49その他の窯業又は土石製品製造業26
50金属精錬業6.5
51非鉄金属精錬業7
52金属材料品製造業5.5
53鋳物業16
54金属製品製造業又は金属加工業10
63・洋食器6.5
・刃物
・手工具
・一般金物製造業
55メッキ業7
56機械器具製造業5
57電気機械器具製造業2.5
58輸送用機械器具製造業4
59船舶製造又は修理業23
60計量器、光学機械、時計等製造業2.5
64貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業3.5
61その他製造業6.5
運輸業71交通運輸事業4
72貨物取扱事業9
73港湾貨物取扱事業9
74港湾荷役業13
電気、ガス、水道又は熱供給の事業81電気、ガス、水道又は熱供給の事業3
その他事業95農業又は海面漁業以外の漁業13
91・清掃13
・火葬又
・と畜の事業
93ビルメンテナンス業5.5
96・倉庫業6.5
・警備業
・消毒
・害虫駆除事業
・ゴルフ場の事業
97・通信業2.5
・放送業
・新聞業
・出版業
98・卸売業3
・小売業
・飲食店
・宿泊業
99・金融業2.5
・保険業
・不動産業
94その他各種事業3
90船舶所有者の事業47

労災保険の計算方法

労災保険は雇用保険と異なり、保険料はすべて企業が負担します。労災保険料を算出する計算式は次のとおりです。

  • 労災保険料=労働者の賃金総額×保険料率

雇用している従業員数が多いほど、労災保険料の支払い金額は高くなります。

労災保険料率は3年単位で見直されますが、2022年度の保険料率は前年と変わりません。また、労災保険を含む労働保険の年度更新手続きは、毎年6月1日〜7月10日に行います。

労災保険の未加入が発覚した際のペナルティ

労災保険の未加入が発覚した場合、次の3つのペナルティが科せられます。

  • 保険料を追加徴収される
  • 重大な過失が認められた場合は給付金も徴収される
  • 労働基準法違反にも該当する

保険料を追加徴収される

労災保険への未加入が発覚した場合、過去2年分の保険料+10%の追徴金が徴収されます。一度に多額の保険料を支払わなければならず、企業経営に多大な悪影響を及ぼします。

また、ハローワークでの求人掲載も数年間できません。求人掲載ができる媒体が限られ、求人への応募も思うように集まらなくなってしまうでしょう。

重大な過失が認められた場合は給付金も徴収される

重大な過失が認められた場合は、給付金の一部または全額を企業側が負担しなければなりません。重大な過失とは、労働基準監督署から指導を受けても加入手続きをしないケース、1年以上労災保険へ未加入のケースが該当します。

本来負担せずに済む費用も払わなければならず、企業経営を圧迫します。

労働基準法違反にも該当する

労災保険の未加入は、労働基準法違反に該当する行為です。上記の罰則に加え、30万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役が科せられる可能性もあります。

また、未加入者の数や期間によっては悪質な対応と判断され、厚生労働省が企業名を公表します。法令違反を犯した企業への視線は、年々厳しくなっているのが実情です。

マスメディアで労働基準法違反の実態が報道されると、「従業員を大切にしない」ブラック企業のイメージが定着してしまいます。社会的信用やブランドイメージが低下し、今後の企業経営が大変厳しい状況に追い込まれるでしょう。

労災保険に関して把握すべきポイント

労災保険に関して、次の3つのポイントを把握しておくことが重要です。

  • 労災認定基準は業務遂行性と業務起因性の2つ
  • 労災で休業中の従業員の解雇は原則として認められない
  • 交通事故発生時は自賠責保険と併用

労災認定基準は業務遂行性と業務起因性の2つ

業務遂行性と業務起因性を満たしているかどうかによって、労災保険の適用対象かが判断されます。

業務遂行性は、労働者の怪我や障害が業務中に起きたかどうかを判断する要件です。就業時間中だけでなく、休憩時間や終業時間後での負傷も業務遂行性に含まれます。

一方、業務起因性は、労働者の怪我や障害が業務に関係しているかを判断する要件です。事業主の支配下または管理下において、労働災害が発生したかを判断します。

業務遂行性と業務起因性をどちらも満たせない限り、労働災害とは認められません。また、労働者が上司のパワハラや長時間労働が原因で精神疾患を発症した場合、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

精神疾患の要件

  • 病気を発症する6ヶ月前から業務による強いストレスを受けていた
  • うつ病や適応障害など労災認定対象の精神疾患と判断された
  • 離婚や病気など、業務外のストレスや個体側要因が原因の発症ではない

労災で休業中の従業員の解雇は原則として認められない

業務災害で負った怪我や病気を治療するために休業している従業員には、解雇制限が設けられています。休業中と休業後30日間は解雇ができません。労働基準法にも定められています。

ただし、怪我の後遺症や障害が残っていたとしても、治癒から30日間が経過すると、解雇制限はなくなります。治癒は病気や怪我の治療が一通り終わった段階のことです。

治癒になっても早期の業務復帰が見込めない従業員に関しては、解雇へ踏み切っても法的には問題ありません。ただし、怪我の症状や回復具合など、従業員とコミュニケーションを重ねることが重要です。

一方的に解雇処分へ踏み切った場合は裁判に発展する可能性も高くなるため、注意しましょう。また、通勤災害の場合は解雇制限がありません。傷病発生時に療養する期間の休養を命じるのが一般的な対応です。

就業規則で定めている休職期間の療養を命じてください。休職期間が満了しても復帰できない場合は、従業員と話し合いを重ねた上で解雇に踏み切ることができるでしょう。

交通事故発生時は自賠責保険と併用

相手の過失が原因で交通事故が発生し怪我をした場合、労災保険と自賠責保険を併用できます。自賠責保険や任意保険からも治療費や休業損害、入院慰謝料などが支給されます。

ただし、保障内容が労災保険と重複している場合は相殺されるため、二重取りはできません。労災保険の利用によって多くの金銭的援助を得られます。労災指定の病院に通院すれば、窓口で費用の支払いをする必要もありません。

まとめ

労災保険は雇用形態を問わず、すべての労働者が加入対象となる制度です。新しい従業員を雇用するたびに、加入手続きを行わなければなりません。仮に未加入の事態が発覚した場合、数年間ハローワークの利用不可や保険料の徴収など、多額のペナルティが科されます。

ただし、労務担当者は給与計算や勤怠管理、福利厚生の整備など、さまざまな業務を担当しています。採用や研修内容の企画など、人事の仕事も兼任している場合もあるでしょう。多くの仕事をこなさなければならないと、ケアレスミスや健康リスクが増大します。

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