【2023】年末調整を「ペーパーレス化」するには?メリット・デメリットと進め方│コボットLAB

【2023】年末調整を「ペーパーレス化」するには?メリット・デメリットと進め方

年末調整業務のペーパーレス化とは、書類作成〜役所への提出まで、オンライン上で完結できる体制を整えることです。年末調整システムを導入し、不足税額の計算や控除申告書作成など、手続きに必要な作業全般をシステム上で行います。

ペーパーレス化によって、人事労務担当者の業務負担や管理コストを削減できます。この記事では、年末調整業務をペーパーレス化するための方法や必要な対応などについて解説します。

目次

年末調整手続とは

年末調整手続きは、12ヶ月分の給与や賞与が決定した時点で、給与に過不足がないかを確認し、状況に応じた補填や差し引きを実行するものです。住宅ローンや健康保険など、従業員一人ひとりのライフスタイルに応じて控除額は異なります。

これらすべての事情を毎年反映し調整する必要があるため、従業員は適宜申請を行い、担当者はそれらをすべて確認しなければなりません。

年末調整のペーパーレス化とは?

年末調整のペーパーレス化とは、年末調整に関する業務をオンライン上で処理することです。年末調整のペーパーレス化を実現するためには、年末調整システムの導入が必要です。

年末調整システムは、不足額計算や各種控除申告書作成など、年末調整の手続きに必要なさまざまな機能を搭載しているシステムです。

年末調整システムを導入すると、書類作成〜役所への提出までシステム上で完結できるため、紙書類を配布する必要がなくなります。記載ミスがあったとしても、差し戻しや再回収もシステム上で行えるため、従業員と何度もやり取りを重ねる必要はありません。作成したデータはシステムに保存でき、印刷費や保管コストを削減できます。

そして、年末調整システムを導入すると、従業員は控除申告書の作成をスムーズに進められます。一問一答形式のアンケートに答えていけば、回答内容が自然とシステムに反映されるためです。ヘルプガイド機能も搭載されており、疑問点が生じても早期に解決できます。

ペーパーレスで年末調整を実施する方法

上記のような年末調整手続きは、これまで紙面で実施するのが通例でした。しかし、近年はデータを電子化してインターネット経由で手続きを済ませ、電子データで書類を保管しても問題がないような制度へと改正されています。

いわゆるペーパーレスの年末調整ですが、このような仕組みを採用する上では、主に次の手続きが発生します。

電子データを作成する

従業員が保険会社などから控除証明書等を電子データで受け取り、専用の年末調整控除申告書作成用ソフトウェアに基礎情報をPCなどから記入します。

そして、受領した控除証明などのデータをソフトへインポートすれば、年末調整申告書は完成です。

従業員から電子申請を受領する

申告書が完成した後は、従業員が電子申請として作成したデータを、担当者が受領します。専用の年末調整システムを導入しておけば、この受け渡しの手続きもシステム上で行えるため、オフィスなどにおいて対面で処理する必要もありません。

受領した電子データをシステムにインポートして計算する

担当者が受領した電子データは、年末調整システムに読み込ませることで、年税額の計算に必要なデータを抽出します。電子データそのものはデータベースに記録されるため、保管のためにファイリングなどをする必要はありません。

従来の年末調整手続きの課題

ペーパーレスでの年末調整手続きを実行するにあたっては、従来の手法では解消が難しかった課題に取り組む意味合いが強いといえます。従来の手続きにおいて課題とされてきたのは、主に次の3点です。

書面の用意に時間がかかる

書面の控除証明書などを用意するには、多くの時間を必要とします。保険会社から紙媒体を取り寄せるまでの手間はもちろん、万が一紛失した場合には、再発行してもらわなければならないため、倍以上の時間がかかる可能性もあります。

必要な控除証明書も従業員によって異なるため、人によってはすべてを揃えるために多くの時間を要するケースもあるでしょう。

申請内容の転記や記入に時間がかかる

申告書には、ただ住所と名前を書けば良いだけではなく、保険会社から受け取った証明書の内容を転記し、計算もしなければいけません。これらを手書きで行うとなると、記入そのものに時間がかかるのはもちろん、記入に伴うケアレスミスの発生により、修正作業が生まれることもあります。

このような無駄を省く上では、手書きの必要性を最小限に抑える必要があります。

オフィスでの申請手続きが必要

申告書を紙で提出する場合は、オフィスで手続きを進めなければならないことも課題の一つです。

近年、働き方改革の影響により、テレワークやフレックス制度の導入が進んでいます。しかし、年末調整を紙で行うとなると、オフィスへ行って提出したり、担当者が在籍している時間にオフィスを訪れたりする必要が発生します。

ペーパーレスの年末調整を導入するメリット

従来の年末調整の課題を解消する上で、ペーパーレス化は非常に有意義な役割を果たします。ここでは、ペーパーレスの年末調整を実施するメリットを確認しましょう。

紙を使用する際のコストを削減できる

ペーパーレスで年末調整を行うと、紙を使用していたときに発生したコストを丸ごと削減できます。印刷のための紙代はもちろん、申告書の送付や受け取りの際に発生していた手数料や複合機のリース代も削減できるでしょう。

また、紙で書類を保管しておくための保管費用も解消され、スペースの削減にもつながります。オフィスを縮小して経済的な場所へ引っ越すことで、賃貸経費を抑えられるようになります。

年末調整業務を効率化できる

年末調整業務のペーパーレス化によって、業務効率化を実現可能です。

年末調整システムを用いることで、調整業務に必要なすべての手続きを一元化でき、紙を使った際の転記作業や計算、確認作業が不要になるため、効率良く業務を遂行できます。ケアレスミスも回避し、余計な修正作業をカットします。

働き方改革を推進できる

ペーパーレス化により年末調整に伴う作業を削減できれば、働き方改革を推進できます。申告手続きのために出社の必要はなくなるため、テレワークを実現可能です。確認を行う担当者もリモートで計算と受領ができるため、出社の必要がなくなります。

年末調整をペーパーレス化するために企業が取るべき対応

年末調整業務のペーパーレス化を促進するため、企業が取るべき対応は次の5つです。

  • 国税庁or民間企業どちらのシステムを利用するかを選択する
  • 年末調整特化型or他システム付随型のどちらを選ぶか決める
  • 給与計算システム改修の必要性を確認する
  • 従業員へ周知する
  • 控除証明書等データの取得を依頼する

国税庁or民間企業どちらのシステムを利用するかを選択する

年末調整業務をペーパーレス化するためには、年末調整システムの導入が必要です。国税庁と民間企業の提供するシステム、どちらを利用するかを選択してください。個々のシステムが持つメリットとデメリットは次のとおりです。

表:国税庁と民間企業のシステムの比較

国税庁民間企業
メリット・無料で利用できる
・マイナポータルと連携すると、複数の控除証明書等データを一度に取得できる
・提出状況の可視化によって、コミュニケーションコストを削減できる
・ベンダーに任せられる部分が多く、ランニングコストを削減できる
・スムーズな導入が望める
デメリット・一定水準のITリテラシーが求められる
・提出状況の可視化やアラート通知はできない
・他システムとの連携が望めない
・マイナポータルの利用には、多くの手間が掛かる
・一定の費用が掛かる
・選定作業に時間が掛かる

国税庁の提供する年末調整システムは、無料で利用できる点が魅力です。扶養控除等申告書や所得金額調整控除申告書、基礎控除申告書など、手続きに必要な書類をシステム上で作成できます。

MicrosoftストアやApp Storeで「年末調整 国税庁」と打ち込むと、ソフトをダウンロードできます。一方、民間企業の年末調整システムは、多機能性が魅力です。提出状況の可視化やアラート通知などの機能は、国税庁のシステムには搭載されていません。

提出状況を人目で把握できると、コミュニケーションコストを削減できます。提出が遅れている従業員に対し、何度もメールや口頭でやり取りを重ねる必要がありません。作業を中断する機会が減り、業務の効率性と正確性を高められます。

導入には一定の費用が掛かりますが、初期費用やサポート代を無料に設定しているベンダーも多く存在します。ソフトのインストールやインフラ環境構築は必要ありません。

メンテナンスやアップデートはベンダーへ一任できるため、ランニングコストの削減も望めます。機能性や運用負担を考えると、民間企業の提供するソフトを選択した方が、多くのメリットを得られるでしょう。

年末調整特化型or他システム付随型のどちらを選ぶか決める

年末調整システムは、年末調整特化型と他システム付随型、2種類が存在します。年末調整特化型は、従業員の情報管理や各種帳票作成、控除対象者判別など、年末調整業務に関する機能のみを搭載しています。

既存の給与計算システムを活用しつつ、導入コストを削減できる点がメリットです。一方、他システム付随型は、給与計算システムか労務管理システムに、年末調整業務の機能が搭載されている形です。

既存システムからの乗り換えや新規導入を検討している場合に選択します。給与計算システム付随型を導入するメリットは、煩雑な計算業務を効率化できる点です。雇用保険料や社会保険料・所得税など、工数の掛かる計算を自動化できます。

税率や保険料率が改定されてもベンダーが自動アップデートで対応するため、コンプライアンス違反が起きる心配は要りません。

一方、労務管理システム付随型を導入するメリットは、社会保険への加入や入社手続きなど、各種手続きを効率化できる点です。自社の状況に応じて選択してください。

給与計算システム改修の必要性を確認する

年末調整業務のペーパーレス化を実現するには、給与計算システムがデータの取り込みに対応していることが前提です。2020年からは、所得金額調整控除も企業側で計算することになっており、上記と併せて確認をしましょう。

仮にどちらも対応していない場合、システムの改修が必要です。現在、市場に出ている給与計算システムの大半は、CSVやAPI連携でデータを取り込める仕様になっています。必要以上に心配する必要はありませんが、事前に確認作業を実施しましょう。

従業員へ周知する

年末調整業務のペーパーレスを決めた場合、早い段階で従業員へ周知しておきましょう。年末調整業務のペーパーレス化を進めるにあたって、従業員から同意を得る必要はありません。

ですが、実施直前に従業員へ周知すると、戸惑いや不安を与える結果となるでしょう。従業員との信頼関係を壊さないためにも、手続きの流れやシステムの使い方を説明しておく必要があります。

また、控除証明書等データ取得の方法や不明点に関する専用窓口の設置も必要です。従業員が安心して手続きを進められる環境を整えてください。

控除証明書等データの取得を依頼する

生命保険や住宅ローンなど、控除証明書を電子データとして取得するためには、従業員に手続きを依頼する必要があります。マイナポータルを活用するか、保険会社のホームページから取得するか、どちらかを選択してください。

マイナポータルを活用するメリットは、複数の控除証明書データを一括で取得できる点です。保険会社とやり取りする手間を省けます。ただし、マイナポータルを活用するには、マイナンバーカードの取得やマイナポータルの開設が必要です。

一方、保険会社のホームページからデータを取得する場合、「お客様ページ」からデータをダウンロードします。紙書類と異なり、データの盗難や紛失をする心配がいりません。仮にデータを紛失した場合でも、ホームページから再度取得できます。

複数の保険会社と契約を結んでいる場合は、個々に対応する必要がありますが、大きな手間にはならないでしょう。大多数の従業員がマイナンバーカードを取得していない限り、保険会社からデータを取得するのが無難な対応でしょう。

ペーパーレス年末調整を導入する際の注意点

マイナンバーカード

ペーパーレスの年末調整を導入する上では、注意しておきたいデメリットもあります。ここでは、導入時の注意点を確認しておきましょう。

年末調整のペーパーレスに対応したシステムを導入する

年末調整をサポートするシステムによっては、完全なペーパーレスを実現するシステムと、業務の一部をペーパーレスにできるシステムの2種類があります。

年末調整システムは、ワンストップですべての業務をカバーできる製品も存在しますが、そうでないものもあります。導入を検討しているシステムがどこまで対応しているのかについてしっかりと確認しましょう。

従業員の確認と承諾を得る

ペーパーレスによる年末調整を行う上では、業務フローに大幅な変更が発生する場合もあります。特に、ICTの活用に慣れていない従業員が多い組織では、ペーパーレスを一気に進めてしまうと混乱を招く可能性もあります。

自社の従業員と既存システムを踏まえ、ITスキルに自信がない場合には、混乱を最小限に抑えられるような、ユーザビリティに優れるサービスの導入を優先しましょう。

既存システムとの互換性を確認する

ペーパーレス化を推進する年末調整システムの多くはクラウド化が進んでおり、他の会社のサービスとも連携ができる仕様になっていることが一般的です。ただ、どういったシステムと連携できるかは製品によって異なるため、あらかじめ環境を確認しておくことが重要です。

ペーパーレスの年末調整に役立つサービス・ツール

最後に、ペーパーレスの年末調整に役立つ主要なサービス・ツールを紹介しましょう。

人事労務コボット

人事労務コボット

年末調整業務のペーパーレス化を効率化する方法の一つは、「人事労務コボット」の導入です。人事労務コボットの導入によって入社手続きを効率化し、人事労務担当者の業務負担を軽減できます。

雇用契約書や内定承諾書、身元保証書など、従業員からの署名が必要な書類の作成〜締結まで、オンライン上で完結できます。テンプレートが豊富に用意されており、自社に合ったフォーマットを選択可能です。

また、給与の振込先や緊急連絡先など、個人情報の収集はWebフォームから行えるため、書類を作成する必要はありません。従業員側も書類への署名や必要事項の入力はスマートフォン上で完結でき、スムーズに作業を進められます。

専任担当者からの導入サポートも期待できるため、安心して利用できます。

ジョブカン労務HR

ジョブカン労務HR

ジョブカン労務HRは株式会社 DONUTSが提供するサービスで、充実の年末調整機能をはじめ、労務管理全般に適用可能なツールを数多く搭載しています。

入社および退職、扶養、保険やマイナンバーに至るまで、従業員一人ひとりの動向をリアルタイムで管理し、最適な就業環境を構築できるようサポートができます。自動入力はもちろん、年末調整を含めた各種電子申請に対応し、ボタン一つで書類提出が可能です。

初期費用無料、月額400円からという高いコストパフォーマンスもさることながら、優秀な管理機能を備えているため、バックオフィス業務の効率化へ大きく貢献します。

料金プラン:

  • 無料プランあり(一部機能制限)
  • 月額400円/人〜

公式サイト:

奉行年末調整申告書クラウド

奉行年末調整申告書クラウド

奉行年末調整申告書クラウドは、株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供するサービスで、あらゆる企業に導入が可能な年末調整申告書の作成システムです。

申告書の配布から回収、そして給与システムへの入力までを自動で実施し、業務負担を大幅に改善できることが特徴です。

国税庁が推奨する年末調整業務を実現すべく、マイナポータルとの連携機能も搭載し、手動でのマイナンバー管理を必要としない業務効率化に貢献できます。法改正にも対応し、担当者が毎年改正内容を確認するといった手間も必要ありません。

料金プラン:

  • 年間利用料:8,000円
  • 月額33円/人

公式サイト:

マネーフォワード クラウド年末調整

マネーフォワード クラウド年末調整

株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド年末調整は、クラウド経由で紙を必要としない年末調整の実現に特化したクラウドサービスです。

書類への記入は一切必要なく、すべての手続きをWeb上で進められるため、ペーパーレスの推進を一気に進められます。

担当者は、視覚的にわかりやすい進捗バーで書類の回収状況や差し戻し状況を把握し、年末調整の管理を効率化できます。従業員と担当者の両方にとって嬉しい機能が満載なので、積極的に活用したいサービスです。

料金プラン:

  • 2,980円/月〜

公式サイト:

まとめ

年末調整業務のペーパーレス化は、企業側と従業員双方にとってメリットをもたらします。工数の掛かる書類作成や計算業務を年末調整システムに一任でき、人事労務担当者は別の作業にリソースを割けます。

紙書類と異なり、作成したデータはシステム内に保存できるため、オフィス内に保管スペースを確保しておく必要はありません。一方、従業員側も各種控除申告書の作成が簡素化され、書類作成に掛かる時間を大幅に削減できます。 年末調整業務をペーパーレス化するためには、年末調整システムの導入や控除証明書等データの取得依頼など、さまざまな対応が必要です。一つひとつの作業を計画的に進めながら、ペーパーレス化を進めてください。

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