業務の生産性を向上させるとして注目を集めているRPAですが、具体的にどのように導入・運用を行うかが分かっていない方も多いことでしょう。端的にいえば、一連のルーチン作業を行う業務をロボットが自動処理してくれる行為を指すものですが、全ての業務にRPAを導入すれば良いというわけではありません。
仮想知的労働者(デジタルレイバー)とも呼ばれるRPAには人間の社員と同様に適材適所があり、上手に運用しなければかえって生産性を低下させる可能性があります。そこがRPAの導入で失敗する要因の1つでもあるのです。
今回はRPAの導入によって業務の生産性向上を図るメリットやコツを紹介していきます。その前に、企業にRPAが求められている背景を確認し、RPAの導入に最適な業務があることを把握していくところから始めましょう。RPAの導入・運用はこの事前知識を付けておくだけでも成功に繋がりやすくなることが分かるはずです。
企業にRPAが求められる背景
企業におけるRPAの必要性が高まっている背景には下記のような問題があります。
・少子高齢化による労働人口の減少
・長時間労働と過労死問題
・労働生産性の低さ
特に「少子高齢化による労働人口の減少」は避けられない事態であり、下記の人口推移グラフをみると1995年の生産年齢人口7629万人をピークに少しずつ減少しているのが分かります。
引用元:
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html
加えて、2030年の生産年齢人口は6773万人、2060年には4418万人まで減少すると推測されています。2020年現在(7341万人)を起点としてみると、5年おきに約300万人の生産年齢人口の減少があるというデータが発表されているのです。
働く人が減り続けても国の経済を維持・成長させるためには、既存業務の効率化・生産性向上が必要不可欠となります。端的にいえば、マンパワーで解決してきた既存業務をロボットに代行・協働してもらうことで、少ない労働人口でも高い生産パフォーマンスが生み出すことが可能となるのです。
また、こうしたRPAの導入は、既存業務に疲弊している現場担当者の労働環境を改善する可能性を持っています。例えば、月末月初の事務作業で当たり前のように残業していた社員も、事務作業の一部・全てをソフトウェアロボットに処理してもらうことで、業務の繁閑にかかわらず定時退社を続けることが可能になります。
このようにRPAの導入は結果的に「残業時間の削減」や「過労死の問題」を解決しますが、ただ導入すれば良いというわけではありません。なぜなら、RPAのツールを利用するのは現場担当者であり、導入や定期的なメンテナンスに相当な工数がかかっては業務の生産性向上に繋がらないからです。
したがって、RPAの導入に際しては、自動化する業務を見定めることが最も重要なフェーズとなります。
RPA導入に最適な業務とは
自社の業務の全てがRPAの導入に適しているとは限りません。RPAの導入・業務の自動化を行うことで効果が見込まれる業務をあらかじめ見定めておく必要があります。
「RPAを導入した結果、工数や更新作業が増えてかえって業務の生産性が低下した」といった事態に陥らないためにも、以下の項目に当てはまる業務をRPAの導入候補としましょう。
・ミスの許されない、常にダブルチェックを必要とする業務
・同じ作業を繰り返す業務
・ルール変更・作業手順が少ない業務
・高頻度で作業が必要な業務
これらの項目が当てはまる業務には「月末月初の事務作業」や「膨大なデータから判断を求められる作業」などがあります。単純作業ではあるが多くの時間が取られてしまう業務をRPAで自動化することで、社員は他の業務に時間を費やすことができます。
ただし、便利だからといって社内全体でRPAに依存し過ぎると業務停止のリスクが高まってしまいます。RPAの導入では急なトラブルで使用不可能となることを想定した業務選定・体制作りが欠かせないのです。
RPAの運用で生産性向上を図るメリット
上述したようなRPA導入に適した業務選定・体制作りに尽力した結果、業務の生産性向上が図れますが、具体的には以下のようなメリットを得ることができます。
・既存業務の品質向上が期待できる
・社員の残業時間を大幅に削減できる
・クリエイティブな業務に集中できる
RPAを正しく運用することで社員の労働環境は改善され、より多くの人材が必要なクリエイティブな仕事に社内のリソースを集中させることができます。RPAは「修正・変更の多い業務」や「対人コミュニケーションが必要な業務」には不向きのため、社員とソフトウェアロボットが担当する業務を上手く分けることが運用のカギを握ります。
既存業務の品質向上が期待できる
RPAで活躍するソフトウェアロボットは教えられた動作をミス無く実行できるため、「単純な計算ミス」といった業務品質の悪化を防ぐことができます。
また、ソフトウェアロボットが「教えられた動作をミス無く実行する」という特性を考慮すると、間違った動作をしていた場合は「最初から間違っている」ため、やり直しを行う場所が分かりやすいというメリットがあります。
社員の残業時間を大幅に削減できる
RPAで用いられるソフトウェアロボットはミスなく作業を行う上に「24時間休まずに働く」という特徴があります。指示を与えることで月末月初に発生する膨大な事務作業を効率的に処理することが可能です。
事務作業の一部・全てをロボットが代行することで、社員の残業時間は大幅に削減されます。
クリエイティブな業務に集中できる
RPAを自社の業務に導入することで、人間とソフトウェアロボットの協働体制が出来上がります。単純作業や繰り返しの多い作業をロボットが代行することで、人間はコミュニケーションが必須なクリエイティブな仕事やコア業務に集中することができます。
RPAの運用に際して、ソフトウェアロボットを仮想知的労働者(デジタルレイバー)として認識することで、人とロボットを統合管理する考え方が容易になってきます。
RPAの活用シーン
企業におけるRPAの主な活用シーンを以下にまとめました。
・営業リストの作成を自動化
・応募者への返信メールの自動化
・面接応募者の対応をチャット化
業務の生産性向上が期待できるRPAの活用シーンは多岐にわたります。その中でもすぐに効果が実感できるのは「面接応募者への対応業務」です。これまで多くの現場担当者が苦戦していた面接応募者の対応をソフトウェアロボットがチャットで行ってくれるようになります。
数十人単位のWeb応募を1名ずつ電話対応していた従来の手法からソフトウェアロボットの24時間チャット対応に切り替えたことにより、面接設定率が体感で2~3倍に上昇、応募者対応完了率が7割以上になった企業も事例としてあります。
このようにRPAの運用で定量的な成果が得られるのはもちろんのこと、「応募対応がスムーズに行えないことで優秀な人材を取りこぼしているのではないか」といった精神的なストレスも軽減することができるのです。
営業リストの作成を自動化
RPAのソフトウェアロボットの中にはWebから情報を収集して自動で営業リストの作成を行うものもあります。各求人メディアや各採用ページなどの情報を収集し、「競合の掲載案件」や「地域・業種」などの項目をリスト化してくれるのです。
RPAの導入前には月50時間かかっていたこの業務をRPAのソフトウェアロボットが行うことで、たったの月5時間で情報収集業務が終了するようになった事例もあります。
応募者への返信メールの自動化
ある人材派遣会社では毎日数十通届く応募メールへの返信業務を1つ1つ手作業で行っていましたが、条件と合致しない応募者への返信業務も同様に行っていた為、担当スタッフが産休入りで休んだと同時に全ての応募に対する対応が不可能となりました。
そこで「条件と合致しない応募者への返信業務」をRPAのソフトウェアロボットに自動返信してもらうことで、当該業務に関わる時間を3分の1まで圧縮することに成功しています。
RPAのソフトウェアロボットを活用することによって「送信先を送り間違える」といったヒューマンエラーがゼロになる点も、業務の生産性向上に大きく寄与するのです。
面接応募者の対応をチャット化
飲食店などの店舗で働く従業員の採用活動において、「応募は一定数あるものの面接日程の設定まで至らないケースが多い」ことに頭を抱えている企業も多いことでしょう。問題の原因は、面接応募者への連絡が遅れてしまうことで人材が他社の求人で採用を決めてしまうことにあります。
そうした問題を解決するのがソフトウェアロボットによるWeb応募への自動チャット対応です。応募者への対応は基本的に「即時面接予約」もしくは「希望日が合わなかった場合の希望日連絡」のどちらかになるため、チャットのやり取りをパターン化することが容易です。
ソフトウェアロボットなら24時間寝ずにチャット対応をしてくれるため、応募者が他の求人に流れてしまう可能性を減らすことができます。この自動チャットを採用活動に導入することによって、某企業では面接対応率が7割以上となった事例があります。
まとめ
RPAは社内で働く人間と同様に適材適所で導入する必要があります。既存業務がマンパワーで処理できなくなった時やルーチン作業で疲弊している現場担当者がいる時は導入のチャンスかもしれません。
自社の業務の中で心当たりのある方は、「RPAかんたん診断」で日常の業務の生産性がどのくらい向上するのかを調べてみてはいかがでしょうか。
コボットはディップ株式会社が提供するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)サービスです。自動化できる単純作業は、社員(人)に代わってロボット(コボット)に任せることで、貴重な人材がそれまで割いていた工数を、より高度な仕事に集中する為の時間とすることが可能になりました。ディップはRPAの導入相談から実際のRPA導入、導入後の運用に至るまでトータルでサポートします。「RPAを導入したい」「RPAを導入したが、活用しきれていない」「RPAの導入に踏み切ったが失敗した」など、導入における課題が多いいRPAですが、安心して導入いただけるサポート体制をご用意しています。
さらに、スケジュールの自動調整・WEB面談など採用現場の業務効率化を可能にする「面接コボット」や、人材派遣業界に特化した「HRコボット」、不動産業界の業務フローに沿ったテンプレート型RPA「不動産コボット」などの業界・業務特化型のRPAをご用意しています。
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