デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現にあたって、多くの企業は業務のオンライン化に力を入れています。インターネットを介して多様な業務を遂行できる環境を整備することで、さまざまな恩恵が得られる一方、中には懸念点もあるため、万全の体制を整える必要があります。
今回は、オンライン化が注目を集めている背景や、具体的なメリットなどについて解説します。
オンライン化とは
そもそもオンライン化とは、業務環境をインターネットに接続し、オンライン上で遂行可能な環境へとシフトすることを指します。
これまで業務内でPCを使うことはあっても、ローカルネットで完結している組織が大半でした。これらをインターネット環境へと移行し、どこからでもアクセスして仕事ができる環境を整備するのがオンライン化です。
わかりやすいオンライン化の例としては、対面で実施していたミーティングをテレビ会議へと移行したり、クラウドサービスを通じて資料の共有やフィードバックを行ったりという施策が挙げられます。
デジタル化との違い
オンライン化と合わせて注目したいのが、「デジタル化」と呼ばれる取り組みです。
デジタル化は、オンライン化よりも大きな枠組みでDXを進める施策のことで、これまでアナログ対応だった業務をデジタルに移行するというものです。契約手続きを紙面ではなく電子で行ったり、決済を手打ちのレジではなくタブレットを使ったクラウドPOSに移行したりといった方法が挙げられます。
これらはデジタル化であると同時にオンライン化でもあるため、デジタル化とオンライン化は同義的に使われることも珍しくありません。ただ、デジタル化は手書きだった伝票作成をエクセルで行うといった、初歩的な取り組みにも当てはまります。
大前提として業務のデジタル化があり、その次のステップとしてオンライン化があると考えるとわかりやすいでしょう。
オンライン化が注目される理由
多くの会社ではオンライン化が急速に普及しています。オンライン化が急がれる理由には、どのような背景があるのでしょうか?
働き方改革の取り組みが進んでいるため
一つ目の理由は、働き方改革の実践です。
従業員に多様な働き方を提供することは、業務の効率化を図ることはもちろん、優秀な人材を確保する上でも大きな意味を持つ取り組みです。
業務のオンライン化は、リモートワークやワーケーションなど、新しい働き方を推進する上で重要な役割を果たします。オフィスに縛られることなく業務を遂行できれば、高い家賃を支払いながら会社の近くに住む必要もなくなります。
オフィス運営のコストが大きいため
二つ目の理由は、オフィス運営のコスト削減です。
多くの企業が集まっている都市部におけるオフィス賃貸の価格は非常に高く、その維持費が与える負担は企業経営に大きな悪影響をもたらします。オンライン化は、そんなオフィス運営のコスト削減を促す手助けをしてくれます。
毎日のように社員がオフィスに通う必要がなくなることで、デスクスペースを大幅に削減できるのはもちろん、書類などの資料保管に必要なスペースも電子化によって必要なくなるので、やはりオフィスの規模削減を可能にします。
オンライン化するメリット
続いて、オンライン化を実施する具体的なメリットについて紹介します。
業務効率化を実現できる
オンライン化の大きなメリットの一つが、業務効率化です。これまでオフィスに足を運ばなければ対応できなかったことが、自宅や外出先からでも同じパフォーマンスを発揮できるようになることで、無駄な負担を解消できるのが強みです。
営業などのために遠くまで出張に出かける必要性も小さくなり、交通費や社員の負担削減につなげられます。顧客との迅速なコミュニケーションも可能になるため、関係強化にも貢献します。
また、電子契約・電子申請などを導入すれば、これまでは承認を得るために紙を使って直接渡していたところを、すべてオンラインで実施できるようになります。許可を取るために多大な負担と時間を必要とすることがなくなるので、スムーズな業務遂行を可能にします。
人材不足を解消できる
業務効率化と同時に、人材不足の解消にもつながります。従来の業務で発生していた無駄な負担に対応する必要がなくなるので、必要な人の数も少なくなっていきます。
営業のために外回り人材を大量に確保する必要もなければ、事務処理のための事務員確保に追われる心配もありません。業務をオンライン化できるツールの多くは、業務そのものの自動化にも対応していることが多く、オンライン化と同時に負担を一気に軽減できます。
人手の確保を進めたいけれどなかなか手が回らないという場合にも、オンライン化を進めてみることで活路が見出せるでしょう。
サービス向上や企業価値の向上につながる
企業活動のオンライン化は、さらなる企業価値を創出する上でも役に立ちます。たとえば、新規顧客開拓の可能性は、オンライン化によって大いに広がるでしょう。
これまで企業の一極集中が都市部で発生していたのは、企業同士が直接足を運びやすいという背景もありました。これは逆をいえば、日常的な交通圏内にない地方の企業や顧客などとは交流ができず、営業活動を行えないということでもありました。
業務のオンライン化を推進することで、このような地理的なデメリットを払拭し、これまででは得られなかった新規顧客の獲得に動けるようになります。Webを通じて見込み客を開拓し成約を獲得したり、電子契約で地方の企業との契約を推進したりと、多様な活用方法が見込めます。
都市部から地方、あるいは海外へのアプローチはもちろん、その逆も然りです。多くの人に新しいサービスの提供や、ビジネスチャンスを提供するのがオンライン化という取り組みです。
オンライン化するデメリット
オンライン化には魅力的なメリットが揃う一方で、懸念すべきデメリットもあります。どのような点に注意すべきなのかについて確認しておきましょう。
システム導入費用が発生する
一つ目のデメリットは、システム導入費用の発生です。
オンライン化にあたっては、新しいツールを導入したりデバイスを購入したりといったソフトウェアとハードウェアの両方でお金がかかります。無料で導入可能なツールもありますが、利用ユーザー数が増えると無料での運用が難しくなるため、いずれは有料ツールの導入が必要になるでしょう。
新たな研修やルール作りが必要となる
もう一つのデメリットが、新しい環境に社員が適応するための枠組み作りです。
ツールの使い方を覚えるための研修を実施したり、デジタルデータの取り扱いに関するルール作りを進めたりと、外枠を埋めていく作業に時間を奪われてしまいます。オンライン化を進めていく際には、費用だけでなく時間や人材に余裕を持たせることも大切であるといえるでしょう。
オンライン化できる業務

オンライン化を進められる業務は、分類してみると多岐にわたることがわかります。ここではオンライン化が進んでいる主な業務を紹介していきましょう。
契約・申請業務
最も簡単にオンライン化ができる業務の一つが、契約・申請業務です。前述のように近年は電子契約の導入が進んでおり、直接紙の契約書に印鑑を押さずとも、簡単なオンライン上の手続きで正規の契約書として認めてもらうことができます。
遠方の取引先や、急を要する契約・申請へスムーズに対処できるようにもなるため、業務効率化やサービス改善に役立ちます。
電子契約のメリットや細かい導入方法については、こちらの記事も参考にしてみてください。
電子契約とは?電子署名との違いは?サービスのメリット・デメリットと導入手順
勤怠管理
これまではオフィスに通う必要のあった勤怠管理も、オンライン化することができます。
多くの組織で導入されているのが、クラウドで利用できる勤怠管理システムです。PCやスマホなど、手持ちのデバイスから簡単に打刻が行えるようになるので、リモートワークや出張であっても打刻の必要性はありません。
残業時間の計算も自動で行われるため、管理者が月末に計算業務に追われるといった負担もなくなることが強みです。
人事管理
三つ目の業務が人事管理です。採用活動から人材の育成、人材評価や配置に至るまで、多くの業務をオンラインで対応できるようになります。
各社員のスキルセットがクラウド上のシステムに自動で整理され、客観的な評価システムを採用すれば、公平かつ適正にあった役職や評価を与えることができます。ステータスを確認しながら、最適な人材配置の実現にも貢献します。
営業活動(インサイドセールス)
従来は対面が定番と言われた営業活動も、オンラインで行うことができます。オンラインでの営業活動は「インサイドセールス」とも呼ばれており、オフィスから直接見込み客を発掘したり、顧客との関係強化を進められたりするということで、注目を集めています。
インサイドセールスにおいて重視されるのが、顧客や見込み客のデータ活用です。担当者の主観に頼らず、企業とそのユーザーがどんな関係にあり、成約を結んでくれる可能性はどれくらいあるかをさまざまな側面から分析することで、確実な成約へと結びつけます。
インサイドセールスについては、こちらの記事を参考にしてみてください。
オンライン化することにより生じ得る課題
業務のオンライン化を推進する上では、いくつかの課題を乗り越えなければいけません。ここでは、オンライン化に伴う課題を紹介しましょう。
システム移行に伴う混乱が生じる
一つ目の課題は、システム移行に伴う混乱の発生です。システム導入当初はツールの扱いに慣れていないこともあり、期待していた通りのパフォーマンスを発揮することは難しいものです。
そのため、オンライン化を実施する際には事前の研修やマニュアルの作成を行い、現場で発生するトラブルを最小限に抑える必要があるでしょう。
DX人材を必要とする
二つ目の課題は、DX人材の必要性です。特にこれまでデジタル化を進めてこなかった企業は、オンライン化といっても何から始めたら良いのかわからず、結局手がつけられないというケースも想定されます。
DXは近年急務となっていることもあり、優秀な人材を見つけるのが困難な時期でもあります。導入前後のサポート対応に優れるサービスを選択肢、丁寧な支援を受けられることが理想です。
セキュリティリスクが発生する
オンライン化においては、セキュリティリスクが増大する可能性も抱えています。
これまではローカルネットワークで完結していたのが、インターネットの接続によって不特定多数のアクセスを可能にしてしまい、情報漏洩やサイバー攻撃の危険性が増加します。セキュリティ対策が徹底しているサービスを選んだり、オンライン化する業務範囲を限定したりと、自社の課題に合わせた施策を検討しましょう。
オンライン化に役立つおすすめのツール
最後に、オンライン化に役立つツールについて紹介します。
クラウドサイン
電子契約導入で最もポピュラーなサービスの一つが、弁護士ドットコム株式会社が提供するクラウドサインです。日本の法律に合わせて弁護士が監修しているという電子契約サービスとなっており、法的なリスクを気にすることなく電子契約を実現できます。
自社への導入にはある程度の負担はあるものの、取引先への契約書の送付および締結に当たっては、インストールの必要がないため非常に使いやすいサービスです。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・Standard:1万円〜/月
- ・Standard plus:2万円〜/月
- ・Business:要問い合わせ
公式サイト
ジョブカン
勤怠管理のオンライン化に最適なのが、株式会社 DONUTSが提供するジョブカンです。変形労働・フレックス・裁量労働などさまざまな勤務形態に対応しており、どんな業界でも柔軟に導入を進められます。
有給管理や残業管理機能、打刻忘れにも対応できるその他機能も充実しており、オンライン化に期待している以上の業務効率化を実現可能です。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・200円〜/月(利用機能の数により変動)
公式サイト
サスケ
インサイドセールスの実現を後押ししてくれるのが、株式会社インターパークが提供するクラウドサービスのサスケです。見込み客のデータ登録を速やかに実行し、購入意欲の高いユーザーへのアプローチを効果的に行える環境を整備します。
データベースへの更新は限りなくストレスフリーに行えるよう設計されており、最新の情報をもとにしたセールスの展開をサポートします。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・初期費用20万円+基本料金5万円〜/月
公式サイト
まとめ
今回は、業務のオンライン化が注目される背景について解説しました。オンライン化の実行には費用負担なども伴いますが、それ以上の導入効果が見込めるため、推進して損はない取り組みです。
自社課題に合ったツールを活用し、オンライン化を進めていきましょう。
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