会社側で必要な退職手続きは?手続きの流れ・手順と注意点│コボットLAB

会社側で必要な退職手続きは?手続きの流れ・手順と注意点

会社側の退職手続き

人材の流動性が高まったことで、自社を退職したいという申し出を正しく処理する必要が増しています。

退職届を正しく処理しなければ、労基法の違反や金銭トラブルに発展する可能性があるため、確実かつ丁寧な対応が求められます。今回は、社員が退職を届け出た際に、会社側はどのような手続きを進めれば良いのかについて、その手順を解説します。

従業員の退職に伴って会社側で行うべき手続き

長く勤めてくれた従業員の退職には心苦しいものがありますが、退職したいという申し出があった場合、然るべき手続きを進める必要があります。退職手続きはいくつかのステップに分けられますが、最低限必要な処理としては次の3つの手続きが挙げられます。

  • ・雇用保険の手続き
  • ・健康保険の手続き
  • ・税に関する手続き

雇用保険の手続き

1つ目は、雇用保険の手続きです。

雇用保険は、労働者の生活と安定した就職を促すべく、失業手当などを給付するための保険です。そのため、雇用保険は会社ごとに個人で結ぶ契約であり、退職の際には資格喪失のための手続きをしなければなりません。

資格喪失の手続きに伴い、会社は離織票を渡す必要があります。これは、ハローワークで退職者が失業手当を受け取るために必要な書類であるため、忘れずに手続きを進めましょう。詳しい手続きの手順については後ほど紹介します。

健康保険の手続き

雇用保険と併せて、健康保険の資格喪失手続きも必要です。雇用保険同様、健康保険も会社と社員の間で申し込み手続きを行うため、入退社のたびに手続きを行わなければなりません。

退社と資格喪失手続きに合わせて、退職者から「健康保険資格等喪失連絡票」の発行を求められるときがあります。これは、国民健康保険の二重加入を防ぐための証明書で、新しく健康保険に加入する際に退職者が必要となるケースがあります。その準備もしておきましょう。

税に関する手続き

3つ目の手続きは、税関連の手続きです。住民税および所得税における特別徴収や返納の業務が発生するため、素早く退職者の精算を行い、納入・天引き手続きを行う必要があります。

退職者が正式に退職届けを出す時期によってその金額や行うべき手続きが異なるため、この点についても整理しておかなければなりません。


退職希望者と会社側で交わしておくべきやり取り

退職者が現れた際には、保険・税の手続きだけでなく、対面コミュニケーションによってあらかじめ行っておくべきやり取りもあります。会社によって必要なやり取りは異なりますが、主に求められるのが次のやり取りです。

有給休暇の買取・取得手続き

1つ目は、有給休暇の買取や取得の手続きです。本来、有給休暇は従業員を休ませるための制度であるため、会社による買い取りは違法とされています。しかし、例外的に退職時の買取は許可されているため、その旨を退職者に伝えましょう。

有給の買取金額については、当事者同士の交渉を経て決定します。基本的に、退職時は残された有給を消化しながらそのままフェードアウトという形が採用されますが、業務上の都合により有給取得が難しいケースがあります。この際、有給の買い取りを企業は行うことになります。

貸与物の回収

2つ目に、貸与物の回収です。入館用のIDカードや社用携帯、社用車など、業務上社員に貸与していた会社の備品はすべて退職までに返却するよう促します。

近年リモートワークを導入している企業が増えたことで、会社の備品を従来よりも多く貸与しているケースも見られます。モニターやデスクなど、さまざまな備品が退職社員の手元に残されていることがあります。あらかじめ貸与リストをまとめておき、きちんと変換してもらうよう通達します。

健康保険証の回収

3つ目に、健康保険証の回収です。健康保険の資格喪失手続きに合わせて、退職社員の健康保険証は回収しておきましょう。

扶養家族全員分の保険証の回収が必要であるため、人数分の保険証が回収できているかどうか、確認を取ります。また、唐突な退職によって健康保険証の回収が間に合わなかった場合は、「被保険者資格喪失届」に合わせ、「回収不能届」を回収できない理由とともに提出することで対応します。

年金手帳などの返却

年金手帳を入社時に社員から預かっている場合、年金手帳も忘れずに返却しておきます。年金手帳を紛失してしまっている場合には再交付できるため、手続きを行いましょう。

退職社員が退職から次の就職先が決まるまで時間がある場合、国民年金への加入が推奨されています。その際には年金手帳が必要になるため、必ず用意しましょう。


会社側の退職手続きの進め方

では、実際に退職手続きを進めていく際の手順をステップごとに解説します。場合によって手続きが前後することはあるものの、退職願を出した後に保険・税の手続きを行い、最後に給与の精算などを行う順序となります。

  • ・退職願の回収
  • ・雇用保険に関する手続き
  • ・社会保険に関する手続き
  • ・所得税・住民税に関する手続き
  • ・未払い給与や退職金の支給

退職願の回収

退職手続きは、社員から退職したいという旨が上司に通達された時点で開始します。まずは退職を希望する社員から退職願を回収し、退職の意思表示を受領します。

手続きを進める場合、民法627条に則れば、正式な退職は退職の意思表示から2週間後には退職が可能とされています。多くの企業はこの法律に則って退職手続きが進められますが、あらかじめ社員から同意を得ていた就業規則に別途退職時期についての言及がある場合には、それに則って手続きを行います。

具体的な退職日については、会社と退職する社員で相談の上決定します。月末や給与の締め日が手続き上の都合がつきやすいため、多くのケースで採用されています。

雇用保険に関する手続き

退職届を受理した後は、保険の資格喪失手続きを進めます。退職社員が12ヶ月以上被保険者であった場合には、所定の手続きを経て失業給付を受けることができます。

資格喪失手続きには、まず雇用保険被保険者資格喪失届を管轄のハローワークに提出しなければなりません。

喪失届の中では、離職日や資格喪失の原因、離職票交付の希望の有無などを確認する項目があります。あらかじめ退職者と話し合った上で、記入を進めましょう。

また、失業給付を受け取るためには、資格喪失届とは別に、雇用保険被保険者離職証明書、いわゆる離職票が必要です。退職者の転職先が既に決まっている場合、この証明書は必要がないため、あらかじめ発行の必要についても確認しておきましょう。

雇用保険被保険者資格喪失届および雇用保険被保険者離職証明書は、退職から10日以内にハローワークへの提出が必要です。正しく手続きを行わなければ、退職者が転職先で雇用保険に加入できなかったり、失業給付を受け取れなかったりなどのトラブルが発生するため、必ず手続きを行いましょう。

社会保険に関する手続き

雇用保険と併せて、社会保険の喪失手続きも進めます。

健康保険および厚生年金の喪失を退職から5日以内に届け出なければなりません。雇用保険の資格喪失手続きはハローワークに届け出ますが、社会保険は日本年金機構管轄の所定の事務所もしくは会社が加入している健康保険組合に届け出ることになっています。

社会保険の喪失にあたって、被保険者資格喪失届の提出が求められます。日本年金機構のサイトでは、実際の届出に使うPDFファイルが公開されているので、必要な記入項目を確認しておきましょう。

所得税・住民税に関する手続き

保険に引き続き、所得税および住民税に関する手続きを進めます。

所得税に関する手続きは、まず退職する年の1月1日から最後に支払った給与までの源泉徴収票を作成します。これは退職源泉と呼ばれており、通常退職から1ヶ月以内に発行し、退職金を合算せずに計算する点に注意してください。

退職者が退職と同年内に転職が決まった場合、転職先に退職源泉を送付します。転職先において、退職者は退職源泉と転職先で受け取った給与を踏まえ、年末調整を行います。

住民税は、会社側で給与から差し引きを行い、特別徴収として退職月の翌月に市区町村へ納付します。ただし、この方法での手続きは退職社員が普通徴収での支払いを行っている場合は必要ありません。退職時も社員が直接住民税を納めるため、退職時に会社側で住民税の手続きを別途行わなくても良い点に注意しましょう。

未払い給与や退職金の支給

退職時に未払いの給与が残っている場合、まとめて退職時に支払いを行います。また、会社の就業規則に退職金の支払いについて規定がある場合、あるいは支給規定を退職者が満たしている場合、退職金の支給を行います。

退職手当の支給を受ける場合、「退職所得に係る受給に関する申告書」を退職者に記入してもらう必要があります。申告を行わずに退職金を支給することもできますが、その場合は所得税として、退職金から20.42%の税率による源泉徴収が行われることとなります。

参照元:退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)(国税庁)


退職手続きの際に注意すべきポイント

雇用保険

退職手続きは、あらかじめ定められた手順に従って実施すれば問題はありません。ただし、例外的なものもあるため、あらかじめトラブルに発展しないよう知っておくべきでしょう。

書面で退職願を提出してもらう

退職願は、退職希望者から書面で提出してもらう必要があります。退職願には、退職者が希望する退職日が記されていたり、退職の理由についての記述があったりするため、これらを客観的に把握できる必要があるためです。

退職日が口頭で決まってしまうと、いつから退職の扱いなのか、有給休暇を何日分消化して、何日分買い取るのかなどがわかりません。また、退職理由が自己都合であるにも関わらず、ハローワークでは会社から退職を強要されたと説明されてしまうと、法的なトラブルに発展する可能性もあります。

退職の旨は必ず書面の退職願によって提出してもらい、それを受理してから退職手続きを始めましょう。

退職時期によって社会保険料の控除方法は変わる

社会保険料の控除方法は、退職者の退職時期によって異なる点に注意しましょう。

月の途中で社員が退職した場合、退職月の給与から前月の社会保険料を控除します。月末で退職した場合、退職月の給与から前の月の社会保険料および退職月の社会保険料の2ヶ月分を控除します。

後任の人材を確保しておく

退職者が現れた後は、後任の人材を退職社員が実際に退職するまでに見つけ、引き継ぎを行わなければなりません。基本的に、退職者が退職を届けてから数週間はあるため、その間に引き継げる人材を確保しておきましょう。

退職してから後任人材を探していると、抜けた人材の穴を埋められないまま時間が経ってしまうため、業務に支障をきたす必要があります。退職者と似たようなスキルセットやキャリアを持った人材を社内でピックアップし、適材適所を実現しましょう。


退職手続きに活躍する労務管理システム導入のメリット

退職手続きを速やかに進める上では、労務管理システムの導入がおすすめです。システムの導入によって得られるメリットを確認しましょう。

書類手続きを簡略化できる

労務管理システム上であらゆる書類手続きを自動化できるため、業務の効率化につながります。

上述のとおり、退職手続きを正確に行うためには多くの書類手続きが発生するため、労務担当者の負担は退職者が現れるたびに大きくなります。特に、人材の流動性が高まっている近年、入退社の入れ替わりが激しく、常に労務担当者が大きな負担に晒されているケースが増えています。

労務管理システムを導入し、生産性の向上と負担軽減に努めましょう。

給与計算を自動化できる

退職者への退職金や未払い給与の支払いは、所定のルールに則って精算しなければなりません。退職者の勤務日数や保険の加入状況などと合わせて精算しなければならず、手動での計算は大きな手間がかかります。

労務管理システムを導入すれば、このような煩雑な計算処理を自動化できるため、業務効率化に貢献します。

確認漏れなどのヒューマンエラーを回避できる

書類手続きの負担が増えると、必然的に数字の入力ミスや提出漏れなどのヒューマンエラーが起こりやすくなります。労務管理システムを導入すれば、こういった作業をすべて自動化し、対応漏れのリスクを回避しやすくなり、法的トラブルへの発展を予防します。


人事労務が活用したい主な労務管理システム

最後に、人事労務部門で活躍している主要な労務管理システムを紹介します。

人事労務コボット

当社ディップ株式会社が提供している「人事労務コボット」は、社員の入社から退社まで、ワンストップで人事労務を管理できるシステムです。入社手続きは最短即日、書類の送信はシステム上で簡単に行えるだけでなく、スマホからでも確認が可能です。

本部と拠点間でのやり取りもシステム上で完結でき、必要の際にはCSV出力も行えるため、情報共有の効率化に最適のサービスです。全社員の契約状況を閲覧、確認できるインターフェースを備え、手続きの漏れをあらかじめ予防します。

料金プラン:

  • ・要問い合わせ

公式サイト:

ジョブカン労務HR

ジョブカン労務HRは、株式会社DONUTSが提供する従業員情報を一元的管理できるシステムです。従業員情報を一元管理し、労務管理のデジタル化を推進します。

料金プラン:

  • ・無料プラン有り
  • ・400円/月〜

公式サイト:

COMPANY

COMPANYは、株式会社Works Human Intelligenceが提供する大企業向けの労務管理システムです。多くの社員を抱えるリーディングカンパニーでも、クラウド上で統合された人事管理システムを活用し煩雑な業務を効率化します。

料金プラン:

  • 要問い合わせ

公式サイト:


まとめ

退職願の届出があった際には、会社側で所定の手続きを実行しなければ、給与の未払いなどのトラブルに発展する可能性があります。また、退職手続きにはいくつもの書類作業が発生するため、労務管理システムによる手続きの効率化がおすすめです。

負担が増大傾向にある労務管理にシステムを導入し、円滑な組織活動を促しましょう。

ディップ株式会社では、日本を支える中小企業の皆様に向けて、ワンストップのDXサービスを提供しています。

DXの実践においては、人材確保や教育の壁、DXを前提とした組織改革の壁、そして予算の壁と、さまざまな課題が立ちはだかります。ディップが提案する「one-stop DX.」は、これらの問題を専属のカスタマーサクセスが並走しながら導入と運用をサポートいたします。DXに伴う現場の混乱やシステムの複雑化を回避可能です。

また、ディップではソリューションの提供にあたって、すべて自社のスタッフが顧客対応を行うダイレクトセールスを採用しています。営業とカスタマーサクセス、開発チームが密に連携を取っている営業スタッフが、顧客の潜在ニーズまでを丁寧に把握し、満足度の高いサービスの提供に努めます。

提供するDXソリューションは、バックオフィスとセールスの双方に適用可能です。DX推進を検討の際には、お気軽にご相談ください。

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