内定辞退が多い企業にはいくつか特徴があります。少子高齢化により求職者が優位な状況となっていることから、学生は複数の内定を取得したうえで自分にとって魅力的な企業を選ぶ特徴があります。企業側は内定辞退率を減らすために、現状の採用市場を理解したうえで適切な対策を講じなければなりません。
この記事では、内定辞退が多い企業の特徴や辞退理由、必要な取り組みについて解説します。採用の課題を解決したい担当者は、ぜひ参考になさってください。
2022年(2023年卒)の大学生・大学院生の内定辞退率
リクルートグループの『就職みらい研究所』が実施したアンケート調査※によると、2022年(2023年卒)の大学生・大学院生の内定辞退率は57.8%で前回の調査から5.0ポイント増加していることがわかりました。内定保有企業数は1人あたり1社以上あり、内定辞退企業数とあわせて増加傾向にあります。
エントリーシートは3~4月ごろに提出が始まり、内定を取得しているのは6月ごろからです。しかし、就職活動が落ち着くことはなく、できるだけ内定を取得したうえで企業を絞り込み進路を決めている学生が一定数いることがうかがえます。
企業の採用担当者は就活生の活動状況をふまえたうえで、内定辞退を防ぐための対策が求められます。
※就職みらい研究所 就職プロセス調査(2023年卒)「2022年7月1日時点 内定状況」
内定辞退が増えている背景
内定辞退は企業にとって、これまでの採用活動にかけてきた時間や労力、コストが無駄になるほどダメージは大きなものです。内定辞退が増えている背景をくわしく解説します。
売り手市場による求職者の優位性の高さ
内定辞退者が増えている背景は、少子高齢化の影響による労働人口の減少があります。労働市場は売り手市場となっており、企業よりも求職者のほうが優位な状況です。
少子高齢化の影響による売り手市場の状況は今後も続くことが予測されています。企業はあらかじめ前年度などの内定辞退率から、内定辞退率を算出し、予想したうえで採用活動を行わなければなりません。
経済活性化による求人数の増加
内定辞退が増えている2つ目の理由は、新型コロナウイルスの影響です。2023年より新型コロナウイルス感染症が5類へ移行され、経済活動は活気を取り戻しつつあります。この影響から人材獲得のために求人数が増えていると考えられます。
実際に、リクルートワークス研究所の「ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)」※によると、2024年の大卒求人倍率は1.17倍と前年よりも0.13ポイント増加。2020年以降は有効求人倍率が上昇していることから、経済活性化による人材獲得競争が激化していると考えられます。
※リクルートワークス研究所 第40回ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)
採用活動のオンライン化による弊害
新型コロナウイルス感染症の影響により、さまざまなサービスや活動がオンライン化されました。採用活動のオンライン化は、会場設営費用や面接日程の調整などさまざまなコストを削減できるメリットがありますが、一部の企業では内定辞退者が増えつつあります。
これはオンライン化によるコミュニケーション不足が原因とされています。オンラインでは対面のコミュニケーションと違って意思疎通が図りにくく、企業の雰囲気や求職者の人柄などが伝わらないという弊害を生み出していることが考えられます。
内定辞退の具体的な理由
内定辞退を防ぐには、実際に求職者の内定辞退理由から対策を講じることが可能です。具体的な内定辞退の理由を4つ紹介します。
より魅力的な企業から内定をもらった
近年の求職者は、複数の内定先からより条件を絞り込んで進路を決めるのが特徴です。そのため、より条件のよい企業から内定をもらえた場合は、その企業へ就職を決意するのは当然のことでしょう。
比較されやすい項目は福利厚生や有休消化率、女性管理職の人数、産休育休制度の充実などがあります。多角的な視点で企業を評価し、より魅力的な企業へ就職を決意するわけです。
勤務地や給与などの条件が折り合わなかった
就業条件の折り合いがつかないときも、内定辞退をする理由となります。勤務地や給与などの就業条件は、募集要項に記載しているはずです。しかし、なかには面接選考後に別の勤務地や給与額を提示する企業もあります。
募集時の内容と異なる場合、求職者に不安感を与えてしまいます。交渉を試みても条件の折り合いがつかなければ、内定を辞退して他の企業へ就職するのも無理はありません。
求人情報と実際の内容に相違があった
面接の際に提示する労働条件が、求人情報と相違があるときも内定辞退へつながります。ただし、求人サイトなどに掲載する情報はあくまで応募の誘引に過ぎません。そのため、求人情報と実際の労働条件が異なることもあるわけです。
しかし、求人情報と実際の仕事内容が異なるときは、職業安定法※1並びに労働基準法違反※2に問われることがあるため注意が必要です。
そもそも募集時に掲載する求人情報で求職者が知りたい情報を提供できていれば、誤解を生むことなく、入社志望度の高い求職者から応募が集まります。下記の記事を参考に、求職者にとって魅力的な求人情報を作成してみてください。
関連記事:求職者が知りたい情報・重視する項目とは?応募が来ない理由と対策
※1 職業安定法 第65条8号
※2 労働基準法 第15条2項
社風や仕事内容が自分に合わないと感じた
社風や仕事内容が自分に合わないと感じたときも、内定を辞退されることがあります。とくにオンライン面接や説明会では双方の意思疎通が難しく、企業の雰囲気が伝わりにくいことから、入社後にギャップを感じてしまうケースが少なくありません。
せっかく確保した人材が早期に離職してしまっては採用活動が水の泡です。募集の段階でミスマッチを防ぐことができれば、内定辞退も防ぐことができます。以下の記事では採用のミスマッチが起こる原因や対策方法についてくわしく解説しています。
関連記事:採用ミスマッチの原因と対策とは?マッチング率を上げて企業の損失を防ぐ
内定辞退が多い企業の特徴
内定辞退が多い企業の特徴は以下のとおりです。
- 採用難易度が高い
- 選考プロセスに問題がある
- 内定者へのフォローが不足している
- 採用担当者や面接官の態度が悪い
それぞれくわしく解説します。
採用難易度が低い
内定辞退を見越して大量に内定を出すような企業は、内定辞退者も多い傾向があります。大量採用すれば確率論的に優秀な人材が確保できるだろうという考えを持っている場合、母集団形成に力を入れる傾向があります。
質より量を求めると、本当に企業を理解していない求職者が採用されることになります。採用者一人ひとりに対して対応が難しくなり結果、内定辞退者が増加するわけです。
選考プロセスに問題がある
内定辞退が多い企業は選考に時間がかかりすぎる特徴があります。選考スピードが遅いと求職者は不信感を抱くため、結果内定辞退が多くなるわけです。募集から書類選考、面接など入社までの流れを選考フローと呼びます。
関連記事:採用選考フローとは?作成手順やポイント、代表的なパターンを解説
優秀な人材を確保するには、人材採用戦略にもとづいた選考フローを立てることが大切です。
関連記事:【2023】人材採用の方法とは?人材採用戦略のコツとやり方を解説
競合他社との差別化を図りたいときは、フレームワークを取り入れるのも効果があるでしょう。以下の記事では採用戦略に役立5つのフレームワークを紹介しています。参考になさってください。
関連記事:採用戦略に役立つフレームワーク5選!活用メリットや戦略を立てる手順を解説
内定者へのフォローが不足している
内定通知・承諾後のフォローが不足しているときも内定辞退につながります。選考から内定までオンラインで進むなかで、内定後に放置したままだと不安感を与えてしまうため注意が必要です。
企業側と内定者同士で内定者懇親会や内定者研修など、コミュニケーションを図る機会を設けていない場合、不安感が払しょくできないことから内定辞退をされやすいのではないかと考えられています。
採用担当者や面接官の態度が悪い
採用担当者や面接官が横柄な態度だと、内定辞退をされやすくなります。面接では求職者も企業の雰囲気をチェックしているため、採用担当者や面接官の印象が悪いと企業に対して不安を抱いてしまいます。
面接時に受けた対応はインターネットで拡散されるため、企業の評判にも影響を及ぼすため注意が必要です。面接だけではなく、内定者懇親会など来訪時の対応も配慮しなければなりません。
厚生労働省では「公正な採用選考の基本」で採用選考の考え方や配慮すべき事項を示しています。下記の記事では面接時に聞いてはいけないことをまとめました。公正な採用選考を行うためにも役立ててください。
関連記事:面接で聞いてはいけないこととは?避けるべき行動や5つの対策
内定辞退が多い企業が取り組むこと
内定辞退を防ぐには、採用プロセスの改善や内定者とのコミュニケーションなど、企業側でできる改善方法がいくつかあります。それぞれくわしく解説しましょう。
採用プロセスを改善する
まずは求職者への連絡を迅速に行うなど、採用プロセスの改善が必要です。求職者は複数の企業の内定を取得しているため、連絡や対応が遅いと志望度が低くなり他の企業を選んでしまいます。内定が決まったらすぐに内定通知を出し、フォローに入るなど採用プロセスを見直すことが大切です。
採用プロセスを簡略化するには、リファラル採用を導入する方法もあります。リファラル採用は、従業員から人材を紹介してもらう採用手法です。潜在候補者に直接アプローチができることから、採用ミスマッチが起こりにくいといわれています。ただし、トラブルにつながることもあるため、導入前に以下の記事を読んで役立ててください。
関連記事:リファラル採用とは?メリットやデメリット、円滑に進める方法を知ろう
関連記事:リファラル採用で起こり得るトラブル事例5選!失敗を回避する方法とは?
内定者とのコミュニケーションを大切にする
内定辞退を防ぐには、内定者が抱える不安を解消するため、内定承諾後のコミュニケーションが大切です。内定者向けの懇親会や研修は、内定者同士でコミュニケーションを取る機会を増やすことができます。
コミュニケーションの機会が増えることで、不安感の解消と企業との信頼関係を構築することが可能です。ただし、来訪の機会が増えると内定者の負担も増加します。SNSなども活用して、コミュニケーションの方法を検討してみてください。
企業にとって必要な人材であることを伝える
内定者のなかには「なぜ自分が内定をもらえたのだろう」と不安感を抱いている人もいます。こうした不安感が払しょくされないまま放置されていると、内定辞退につながります。内定承諾後は内定者に向けて、企業にとって必要な人材であること、入社を歓迎している姿勢を明確に表現することが大切です。
とくに効果的なのは経営トップとの交流会です。経営者自身の思いを直接伝えることで、企業に対して親しみを感じてもらうことができます。
オンボーディングプログラムを実施する
オンボーディングプログラムとは、新しい環境に慣れてもらうためのプロセスのことです。新入社員の早期定着と即戦力化を目的に研修を行います。内定後から約半年間、複数回に分けてオンボーディングプログラムを実施します。
実施するプログラムは入社後研修と異なり、企業側と内定者の双方で歩み寄り、互いの価値観をすりあわせることを意識することが大切です。
求人原稿には具体的かつ正確な最新情報を記載する
求職者が入社後の働き方をイメージしやすいように、具体的な情報を掲載することが大切です。
掲載した内容と事実が異なるときや、面接で違う説明を受けたという事態を避けるために正確な情報を掲載しましょう。虚偽の情報を掲載することは、企業の信頼や誠実性にも大きく影響します。
また情報が古いままだと消極的な印象を与えるため、採用情報のアップデートを心がけましょう。これはコーポレートサイトなどの採用ページも同様です。求人情報は定期的に見直し、年齢や性別などに配慮した性格な情報を掲載します。
掲載する情報は社内で共有することで、リファラル採用時にも役立てることが可能です。応募が集まる求人情報の書き方や例文は下記の記事で解説しています。
関連記事:求人への応募者を増やす方法10選!集まらない理由や媒体の特徴を把握しよう
関連記事:【例文あり】求人で自社のアピールポイントを的確に届けるための準備とコツ!
まとめ:自社の課題を洗い出し内定辞退を減らそう!
内定辞退が多い企業は、採用の質が悪かったり、選考プロセスに問題があったりなどいくつか特徴があります。売り手市場で求める人材を確保するには、従来の採用プロセスのままではいけません。採用手法の見直しやオンボーディングプログラムの実施などに取り組むことが大切です。
『採用ページコボット』は募集要項や職場の雰囲気など、自社に関する正確な情報をくわしく伝えることができます。求人情報は求人のプロが監修するため、求める人材とのマッチング率の向上にもつなげることが可能です。
応募前に企業理解を深められるため、ミスマッチの防止や定着率アップが期待できます。内定辞退を減らすために、ぜひ「採用ページコボット」の活用をご検討ください。