採用選考フローは募集から入社準備まで、企業の採用活動の流れを可視化したものです。「内定辞退者が多い」「採用後にすぐ辞めてしまう」といった悩みを抱えている担当者もいるのではないでしょうか。
採用選考フローで採用したい人物像や、募集チャンネルを選定しておくことで、採用における課題を発見し事前に対応できるようになります。この記事では、採用選考フローの作成手順やポイント、パターンを紹介します。選考フローをつくるポイントもまとめました。ぜひ参考になさってください。
採用活動における選考フローとは
選考フローとは、企業が新しく人材を採用するときに実施する採用活動の流れを可視化したものです。応募から入社準備まで以下の5つのプロセスに分けています。
- 書類選考
- 面接や筆記試験
- 合否の決定
- 内定通知
- 入社準備
採用活動における選考フローの5つのプロセスについてかんたんに解説します。
書類選考
応募者が提出した履歴書や職務経歴書をもとに、採用条件と照らし合わせて自社が求めている人材かどうかを判断するプロセスです。履歴書からは志望動機や保有資格、職務経歴書でこれまでの経歴を把握できます。新卒者の採用では成績証明書やエントリーシートも含まれます。
面接や筆記試験
書類選考のつぎは面接試験です。必要に応じて筆記試験も実施します。面接試験では、おもに書類選考時に確認できなかったことや、書類で気になった個所を深堀りしていきます。
- 入社後に成し遂げたいことはあるか
- 前職でどんな成果を出したのか
- 尊敬する人はいるか
- 自分のスキルを把握しているか
ここで確認を怠ると採用のミスマッチにつながりやすいため、ある程度質問の内容を考えておくことが大切です。
筆記試験では適性検査や一般常識問題などを実施します。近年はオンラインで実施する企業も増えているようです。
合否決定
書類選考と面接・筆記試験の結果を総合的に評価して、合否の決定を行います。採用担当者だけではなく、人事部からも評価をしてもらうことが大切です。
「話したときの感じがよかったから」と印象で決めてはいけません。募集時に設定した採用要件に沿って評価します。合否の判断に迷うときは、二次面接を実施してもよいでしょう。あいまいさを残さず、全員が納得したうえで内定を出すことが大切です。
内定通知
内定と決めたら速やかに内定通知を送ります。しかし、新卒者の採用活動では卒業・修了年度の10月1日以降にしか内定通知を出せません※。それまでに他社へ気持ちが傾いてしまい、内定通知を出すころには「辞退します」といわれる可能性も考えられます。
ここまできて辞退されてしまったらそれまでの選考フローが台無しです。内定者の辞退を防ぐために「内々定通知」として10月1日より前に合格を伝えることができます。
この採用活動の日程ルールは、中途採用の採用活動には該当しません。中途採用の場合、内定が決まったらすぐに電話やメールで合否を伝えてください。
※内閣府『2024年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方』
入社準備
「内定通知書」と一緒に「内定承諾書」と「労働条件通知書」を送ります。
どちらもメールで送付できますが、事前に内定者に通知方法について承諾を得てから送付してください。送付後は開封通知機能や電話などでメールが届いたかどうかを確認します。
内定承諾後も内定辞退のリスクはあります。社員懇談会やオフィス見学などを実施して、内定者が働く環境に慣れるようにフォローを行うことが大切です。
採用選考フローを作成する3つのメリット
採用選考フローを作成することで、採用活動の流れを把握しやすくなるだけではなく、解決が必要な課題発見や内定辞退の対策に活用が可能です。それぞれかんたんに解説します。
採用活動の流れを把握しやすくなる
選考フローを作成することで、採用活動の流れを可視化し、プロセスが把握しやすくなるメリットがあります。現在どのプロセスにあるのか、書類選考通過者は何名なのかも把握できるため、社内で共有が可能です。
とくに経営層との情報共有は欠かせません。募集期間が長い新卒採用のフローでは、応募者ごとにプロセスが異なるため、こまめな情報共有が必須です。選考フローでこまめに進捗を確認できることで、対応の抜け漏れも防げます。
採用における課題の発見につながる
選考フローは採用活動におけるあらゆる情報を可視化できるものです。そのため、プロセスを実施していくうえで、解決が必要な課題を発見しやすくなります。たとえば面接試験で多くの応募者が不合格となり、予定していた人数よりも採用者が少なかった場合、面接試験に課題があるかもしれません。
選考フローで課題を発見し、解決していくことでより良い採用活動につなげることができます。
内定辞退の対策に活かせる
選考フローの改善をくり返すことは、内定辞退の対策につながります。採用活動におけて内定辞退は大きな課題のひとつです。内定辞退をネガティブにとらえずに、選考フローをもとに内定辞退という課題を解決するためのヒントを見つけましょう。
面接後に内定辞退が多いときは、面接時のコミュニケーションに課題があるのかもしれません。また、書類選考からつぎの選考まで期間が長いと離脱してしまう応募者もいます。
各プロセスの選考通過者や内定辞退者など定量的なデータでまとめておくことで、内定辞退の対策に活かすことが可能です。
採用選考フローの代表的なパターンとは
採用選考フローの代表的なパターンは「標準型」「説明会・選考一体型」「試験選考型」の3つです。それぞれどのような選考フローなのか紹介します。
標準型
「標準型」は一般的な選考フローです。選考試験を実施する前に説明会を開催するのが特徴で、リアル会場で求職者に向けて企業PRができます。企業理解を深めてもらう機会を設けることで、応募者が納得感を得やすいメリットがあります。
「標準型」の選考フローは以下のとおりです。
- 企業情報と求人情報を公開
- プレエントリー
- 説明会開催
- 本エントリー
- 選考開始
- 各種試験の実施
- 面接
- 内定者に対するフォロー
- 入社
新卒採用に限らず、中途採用や職種などを気にせずに活用できるため、多くの企業で採用されています。中途採用では会社説明会を実施せず、個別面談で説明を行う企業もあります。
説明会・選考一体型
「説明会・選考一体型」は説明会・適性検査・筆記試験を同日に実施するため、「標準型」よりも採用活動の期間は短めです。来社の頻度が少なく交通費の負担が軽いのが特徴です。また、内定通知までの期間が短いため、応募者には魅力的なパターンといえるでしょう。
- 募集
- 書類選考
- 説明会、適性検査、試験実施
- 面接
- 最終面接
- 入社
採用工数が少なく短期間で採用したい場合におすすめのフローです。ただし、企業理解が浅いまま内定を出してしまう可能性もあるため、内定辞退の可能性も少なくありません。採用活動の一定期間だけ使用したり、内定後のフォローを徹底したりなど対策が必要です。
試験先行型
「試験先行型」は大企業でもよく採用されているパターンで、募集に対して多数の応募があったときに効果的です。会社説明会よりも先に選考試験を実施することで、一定の人数に絞り込めるメリットがあります。選考フローは以下のとおりです。
- 企業情報と求人情報を公開
- プレエントリー、試験実施
- 説明会開催
- 本エントリー
- 面接
- 内定
- 内定フォロー
- 入社
「試験先行型」は、会社説明会があとになることで企業理解が浅い学生が残り、内定辞退のリスクが高くなるため注意が必要です。プレエントリー前に提示する企業情報・求人情報を工夫したり、内定者フォローを徹底したりと対策をしてください。
採用選考フローの作成手順とは
「選考フローの作成方法がわからない」という方に向けて、採用選考フローを作成する手順について解説します。採用を成功へ導くためにも、ひとつひとつの工程をていねいに行ってください。
採用目標を立てる
採用活動を成功へ導くには、まずゴールとなる採用目標を設定します。経営戦略として計画が策定されているなら、いつまでに何名採用すればいいのかが見えてきます。
採用目標があいまいだと採用計画も立てられません。選考基準にも影響を及ぼします。求める理想の人材を確保するためにも、明確なゴールを設定してから計画を立てることが大切です。
採用目標を決めたら、担当者ごとの作業工程を割り振って具体的な採用計画を立てていきます。新卒採用で内定式や入社式の日程が決まっているなら、逆算して計画を立てなければなりません。細かい日時まで決める必要はなく、ざっくりと決めても大丈夫です。採用活動の関係者と連携・共有しながら決めてください。
採用したい人物のペルソナ設定をする
採用目標が決まり採用計画を立てたら、つぎにどのような人材を採用したいのか、人物像を明確にします。性別や年齢、職業、居住地、収入、生活レベル、趣味まで採用したい人物のストーリーを細かく設定するのがポイントです。
担当者ひとりで決めると主観が入りやすいため、ペルソナを設定するときは採用活動の関係者を集めて複数人で決めてください。
できれば配属予定の部署やメンバーとも一緒に決めると、より求める人物像により近い人物の採用につなげることが可能です。
募集チャネルを決める
つぎに、どのような求人媒体やスカウトシステムを使うのか決めます。募集要項を掲載して、応募者が集まるのを待つスタイルが一般的ですが、近年は少子高齢化の影響受けて人材不足から応募者が集まらないと悩むケースもあるようです。
企業側から求職者に向けてアプローチをするスカウトシステムを利用する方法もあります。即戦力をもつ人材に特化したサービスもあるため理想の人材へ直接アプローチが可能です。各媒体の特徴を把握し、欲しい人材に合わせた媒体を選ぶことが大切です。
社内で共有し、フローに沿って運用する
作成した選考フローを社内で共有して選考フローの運用を開始します。選考が終了したら、設定した期間内で採用目標を達成したのか確認をしましょう。選考フローのプロセスにおいて問題はなかったかも確認します。課題を洗い出して選考フローを見直してください。
採用市場の動向は時代とともに変化します。選考フローを定期的に見直すことで、より良い採用活動につなげることが可能です。
採用選考フローを作る際の5つのポイント
採用選考フローを作成するときに意識してほしい5つのポイントを紹介します。採用目的や採用基準などは企業ごとに異なるものです。5つのポイントをふまえて適切な選考フローを作成なさってください。
1. 新卒と中途で選考フローを分ける
新卒採用と中途採用で選考フローは分ける必要があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
一般的な選考フロー | 新卒採用 | 中途採用 |
---|---|---|
募集 | 募集期間が切っている 大量募集の募集 | 欠員時に随時募集が可能 少人数の募集 |
会社説明会 | 実施 | なし |
書類選考・筆記試験 | Web受検もあり | 実施しないこともある |
面接複数回 | 1対1、グループ面接、グループディスカッションなど | 募集職種や役職によって異なる |
内定 | 解禁日(10月)あり | 選考後随時 |
入社 | 入社日までに内定者フォロー必須 | 内定後相談のうえ決定 |
新卒採用は将来性を重視しており、社会人未経験者を大量採用するのが特徴です。対して、中途採用は即戦力求めているため、少人数採用といった違いがあります。
選考フローは募集職種や役職などに応じて変更が必要です。それぞれの採用目的を理解したうえで、自社の採用活動にあわせた選考フローを作成してください。
採用基準に合わせてフローを変更する
採用選考フローはいくつかパターンがありますが、どれが適しているかは企業の採用基準で異なります。
たとえば、人柄重視で採用したいなら、応募者の人となりを知るために面接回数を増やした選考フローを作ります。専門的なスキルを求めるなら、職種にあわせた筆記試験を選考フローに盛り込む方法もあります。
欲しい人材を採用するためにも、応募者の何を見極めるのか採用基準にあわせて、選考フローを変更してください。
各工程の歩留まりを確認する
つぎに選考フローの工程ごとに目標値と歩留まりを確認します。歩留まりとは各工程で何名残ったのか割合を出したものです。
歩留まりを出しておくことで、現状の把握や採用活動の課題の発見につながります。歩留まりがわからないときは、過去のデータや規模が似ている同業他社の公開データなどを参考にするとよいでしょう。
歩留まりを確認して想定よりも低い工程があれば、なぜ低いのか要因を洗い出してください。
たとえば筆記試験後が著しく低い場合、筆記試験の難易度が高いか、求める人物像とは異なるレベルの応募者が多数いたことが考えられます。各工程の歩留まりを確認して課題を見つけていってください。
内定辞退防止の工夫をする
求める人材が見つかり内定を出しても、入社日までに内定辞退を出される可能性があります。企業側は内定辞退を防ぐために、適切な選考期間の設定や入社前の不安を取り除くための研修を実施するなど、内定者のフォローが必要です。
応募から内定までの期間が長い場合、その間に心変わりをして他社に流れる可能性も考えられます。求める人材を採用するために見極める時間を設けることは大切ですが、あまりに時間をかけると辞退者も増えてくるため気をつけてください。
採用活動を円滑化させるツールを導入する
選考フローを作成しても計画的に運用できなければ意味がありません。採用活動をフローどおりに進めるために、ツールの導入がおすすめです。
ツールごとに機能は異なりますが、おもに応募者への自動対応や面接日時の自動調整など便利な機能を備えています。採用業務の一部をツールに任せることで効率が上がり、注力すべき選考に時間を充てることが可能です。
まとめ:選考フローを作成して採用活動を円滑に進めよう
選考フローは採用活動の流れを可視化することで、課題の発見や内定辞退の防止に役立てることが可能です。採用目標や採用したい人物像など適切な選考フローの設計と併せてツールを活用すれば、スムーズに採用活動を進めることができます。
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