労務管理は組織活動を支える重要な業務であり、多くの手続きが発生します。これらの手続きは手間がかかる一方で、企業の成長には直接的には貢献しないため、できる限り効率化して余計な負担を削減したいところです。
そんなときに役に立つのが労務管理システムで、導入によって多くの業務効率化が期待できます。今回は、労務管理システムの導入やシステム選びのポイントについて、実際の製品を参考にしながら解説します。
労務管理システムとは
労務管理システムは、労務担当者が担う管理業務の効率化・自動化をサポートしてくれるシステムです。従業員の各種手続きをサポートしたり、情報を更新したりといった業務が発生しますが、その多くはルーティンワークであるため、作業効率化の余地が大きいのが現状です。
労務管理は定型業務でありながら、法律に関する手続きも少なくないため、誰にでもできる仕事というわけではありません。そのため、労務管理システムによって業務の多くを効率化できる体制を整えることで、労務担当者の負担削減や人材不足の解消を行えるようになります。
労務管理システムの主な機能
労務管理システムは多くの機能を搭載しており、うまく活用することで作業を大幅に自動化することができます。主な労務管理システムの機能を解説します。
入社・退社手続き
1つ目の機能は入社・退社手続きです。
社員の個人情報の登録や、社会保険の手続きの進行、その他書類手続きをまとめて行うことができるため、登録状況が一目で把握できるようになります。また、退社の際も個人のIDから退社手続きを行うだけで良いため、登録忘れや抹消忘れなどのケアレスミスを回避できます。
雇用契約書作成
2つ目の機能は、雇用契約書の作成です。
これまでは紙で作成することが一般的だった雇用契約書も、電子媒体で保存ができることはもちろん、契約手続きを全てWeb上で完結させることも可能です。紙で手続きを進める負担が軽減するのみならず、契約書を保管する負担も解消できます。
従業員情報の一元管理
3つ目の機能は、従業員情報の一元管理です。
近年、労務管理システムはクラウド形式で利用できる製品が増えており、従業員情報はサービス提供者のサーバーへ一元的に保管することができます。社内で保管することによる情報流出の恐れやデータの紛失といったリスクを回避できるため、情報セキュリティ対策の面からも非常に便利な機能です。
Web給与明細の発行
4つ目の機能は、Web給与明細の発行です。
給与データをシステムで連携し、給与明細を自動で作成できるだけでなく、明細書の送付をシステム上やメールで実施できます。紙に印刷して渡す負担を軽減できるので、毎月の提携業務解消に役立ちます。
電子申請
5つ目の機能は電子申請です。行政への提出が必要な税務書類などを郵送や手渡しではなく、電子媒体で送信して提出ができるため、移動や郵送のコストを大幅に削減できます。
労務管理システムの導入で得られるメリット
労務管理システムの機能を有効活用することで、次のようなメリットが期待できます。
作業効率を改善できる
1つ目のメリットは、作業効率の改善です。
ルーティンワークとなっていた作業労働の多くを自動化・電子化できるため、担当者の負担を大幅に削減できます。作業労働を担うためだけに配置されていた人員の削減にもつながるため、労務部門の人件費を大きく解消することに役立ちます。
ペーパーレス化を推進できる
2つ目のメリットは、ペーパーレス化の推進です。
これまで紙媒体でやり取りしていた業務のすべてを電子化することができるので、印刷に伴う負担は一切発生しなくなります。印刷用紙や印刷機のリース代削減および書類保管のスペース削減に貢献し、積極的なデータ活用にも役立つ強みがあります。
ケアレスミスを削減できる
3つ目のメリットは、ケアレスミスの削減です。
作業労働は単調なルーティンワークである一方、税務・法務に関する手続きも含まれるため、ミスがあると大幅な修正や責任問題に発展する可能性もはらみます。労務管理システムに任せることで、人の手が必要な機会を大幅に減らし、こういったケアレスミスのリスクを解消できます。
労務管理システム導入の際に生じるデメリット
労務管理システムの導入に際しては、次のデメリットについてもあらかじめ考慮しておく必要があるといえます。
導入・運用コストがかかる
労務管理システムは、導入に伴う初期費用が発生します。
近年のシステムはクラウドサービスが主流であるため、オンプレミス製品のように多大な初期費用がかかるケースは少ないものの、定額で毎月ライセンス費用がかかります。そのため、ある程度のシステム費用発生は想定しておきましょう。
運用に向けた教育が必要になる
労務管理システムを初めて導入する場合、現場で運用する社員向けの教育が必要です。導入してすぐシステムをフル活用できるとは限らないため、扱いに慣れるまでは業務効率が一時的に低下するリスクは想定しておく必要があります。
そのため、繁忙期にいきなり導入するのは避け、閑散期から順次導入していくようなスケジュールを組んでおくことが理想的です。
既存の業務プロセスを刷新する必要がある
労務管理システムの導入に伴い、既存業務のあり方を見直す必要も出てくるでしょう。導入システムに合わせて業務フローを最適化しなければならず、慣れ親しんだやり方が失われる可能性があります。
導入実績が豊富な人気の労務管理システムと比較表
ここでは、導入実績が豊富な人気の労務管理システムを紹介していきましょう。
いずれも人気のサービスですが、製品によって微妙な機能の差もあります。そのため、違いを理解しておくことが大切です。
以下は主な労務管理システムの比較表となるので、選定の際の参考にしてください。
入社・退社管理 | 雇用契約書作成 | 従業員情報管理 | Web給与明細 | 電子申請 | |
---|---|---|---|---|---|
SmartHR | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
freee人事労務 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ジョブカン労務HR | 〇 | 〇※ | 〇 | 〇※ | 〇 |
jinjer労務 | 〇 | 〇※ | 〇 | 〇※ | 〇 |
オフィスステーション労務 | 〇 | 〇※ | 〇 | 〇※ | 〇 |
e-AMANO人事届出サービス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
マネーフォワード クラウド社会保険 | 〇 | - | 〇※ | 〇※ | 〇 |
奉行Edge 労務管理電子化クラウド | 〇 | 〇 | 〇 | 〇※ | 〇 |
社労夢Company Edition | 〇 | 〇※ | 〇※ | 〇※ | 〇 |
※別サービスとの連携が必要
SmartHR
株式会社SmartHRが提供するSmartHRは、国内企業における導入実績が豊富な、知名度の高い労務管理システムです。Webアプリを通じて社員が直接情報入力を行えるシステムを採用し、労務担当者の負担削減に貢献します。
料金プラン
- ・要問い合わせ
公式サイト
freee人事労務
freee株式会社が提供するfreee人事労務は、労務のヒューマンエラー回避に力を入れている労務管理システムです。労務管理に関する業務を一気通貫で対応でき、手作業を極力回避することで担当者の経験やスキルによらない体制を構築できます。
料金プラン
- ・ベーシック:3,980円/月〜
- ・プロフェッショナル:8,080円/月〜
公式サイト
ジョブカン労務HR
株式会社DONUTSが提供するジョブカン労務HRは、すべての労務業務を効率化することに念頭を置いた労務管理システムです。従業員情報は一元的にクラウドで管理し、帳票作成の手続きや申請業務もフォーマットを使って簡単に実行できます。
料金プラン
- ・無料プラン有り
- ・400円/月〜(ユーザー1人あたり)
公式サイト
jinjer労務
jinjer株式会社のjinjer労務は、面倒な社会保険手続きをオンラインで簡単に実施できるよう設計された労務管理システムです。書類作成はすべて自動化され、初めてのシステム利用でも混乱しないようシンプルなデザインが採用されています。そのため、誰でも簡単に使いこなせる製品となっています。
料金プラン:
- ・400円/月〜
公式サイト
オフィスステーション労務
株式会社エフアンドエムのオフィスステーション労務は、情報の一元管理によって労務のミスをゼロにすることをコンセプトにした労務管理システムです。情報収集と申請手続きの自動化をフル活用できる設計となっており、転記作業のような無駄な業務をまとめて削減できます。
料金プラン
- ・登録料11万円
- ・400円/月〜(ユーザー1人あたり)
公式サイト
e-AMANO人事届出サービス
アマノ株式会社が提供するe-AMANO人事届出サービスは、電子申請を簡単かつスムーズに実施できるよう業務を効率化できる労務管理システムです。PCおよびスマートフォンから申請手続きが行え、従業員の入社手続きに伴う負担の軽減が可能です。
料金プラン:
- ・9,000円/月〜
公式サイト
マネーフォワード クラウド社会保険
株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワードクラウド社会保険は、社会保険手続きを簡単に進められるよう設計された労務管理システムです。書類作成や電子申請に対応していることはもちろん、兄弟サービスの「クラウド給与」などと連携することで、さらに効率的なデータ連携が行えます。
料金プラン
- ・2,980円/月〜
公式サイト
奉行Edge 労務管理電子化クラウド
株式会社オービックが提供する奉行Edge 労務管理電子化クラウドは、組織のスマート化に伴う「総務一人時代」を支えられる業務サポートを提供する労務管理システムです。労務管理業務のほぼすべてをデジタル化し、業務の9割を削減できるパフォーマンスを発揮するオールインワンの製品です。
料金プラン
- ・年間利用料:16万8,000円
- ・500円/月〜(ユーザー1人あたり)
公式サイト
社労夢Company Edition
株式会社エムケイシステムの社労夢Company Editionは、社労士事務所での導入実績が豊富な労務管理システムです。年間800時間の工数削減につながるなど、導入効果の高さが評価されています。
料金プラン
- ・要問い合わせ
公式サイト
労務管理システムの選び方のポイント
このように、労務管理システムは多くの企業からさまざまな製品が提供されているため、一つのサービスを選び抜くことは難しいものです。労務管理システムを選ぶ上では、次のポイントを押さえた選び方を意識することが大切です。
システムの対応可能業務を確認する
1つ目のポイントは、システムの対応可能業務を確認することです。
一口に「労務管理システム」といっても、すべての業務をすべての製品が担えるとは限らず、場合によっては自社で必要としている機能が実装されていない場合もあります。あるいは、欲しい機能を利用することはできても、他のサービスと連携しなければ十分に活躍してくれない場合もあるため、業務範囲がどこまでカバーできているのかは深く理解しておく必要があります。
紹介した比較表を参考にしながら、どの製品がどんな機能を有しているのか、あらかじめ確認しておくことで、自社で最大限活躍できる製品導入を進められます。
既存システムとの連携機能を確認する
2つ目のポイントは、すでに導入しているシステムとの相性です。
最新の労務管理システムの多くは、基本的にポピュラーな他社製品であれば連携ができるよう互換性を備えているものの、必ずしも完全に対応しているとは限りません。そのため、あらかじめ連携ができるかどうかは確認しておく必要があります。
システム連携ができないと、データを読み込ませるために手動での入出力や転記が必要になるため、システム導入のメリットを十分に活かせなくなります。既存システムを労務管理システムとの併用、あるいは連携しての運用を検討している場合、それらと互換性があるかどうか確認しておきましょう。
料金プランを比較する
3つ目のポイントは、料金プランを確認することです。
料金設定は製品によって大きく異なり、初期費用や年額での支払いが必要な製品や、月額かつユーザーの数に応じて料金が変動するサービスもあります。会社のスケールに応じて従量課金形式で料金が変動するものや一律で料金が決まっているもの、カスタマイズによって料金が変わるものなど、プランは多種多様です。
気になる労務管理システムが見つかった場合には、まずはサービス提供者に問い合わせをして見積もりを出してもらうなどして、自社の予算や目的にあったサービスを選びましょう。
自社が必要としているサポートの有無を確認する
4つ目のポイントは、サポートの有無についてです。
システム導入に慣れていない会社であれば、初期トラブルの頻発や正しく機能を利用できないなどの事態が懸念されるため、業務効率化をスムーズに進められない可能性も出てきます。余計なトラブルを回避するためにも、サービス選びの際にはリアルタイムで電話やチャットでのサポートが受けられる製品や、研修プランが利用できるサービスを選ぶと良いでしょう。
また、シンプルな画面で感覚的に操作できるデザインを採用している製品なども、システム導入経験の浅い会社には嬉しいところです。
まとめ
労務管理システム導入に期待できるメリットや、システム選びのポイントなどについて紹介しました。労務管理システムにはいくつものラインナップがあり、それぞれで搭載機能や特徴に違いがあるため、自社にあったモデルの導入が必要です。
当社ディップ株式会社が提供している労務管理システム「人事労務コボット」は、入社手続きを最短当日で完了できるという、業務効率化に優れた機能を発揮するサービスです。入社に伴う書類手続きをペーパーレス化することで、作業効率を85%も削減できるよう仕組み化されており、導入企業のスリム化へ大きく貢献できます。
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