給与計算のアウトソーシングサービスを活用する企業が増えています。
給与業務は細かい計算が多いことはもちろんのこと、専門知識が必要な点も企業内で担当者が少ない要因となっています。給与計算ソフトを活用している企業も多くいますが、担当者の負担がなかなか軽減されないと悩んでいる企業は少なくありません。
そのため、給与計算のアウトソーシングサービスを利用して、企業の業務効率化につなげている企業が増えてきています。今回は、給与計算のアウトソーシングの概要や向いている企業、メリットやデメリットについて解説していきます。
給与計算のアウトソーシングとは
アウトソーシングとは、自社で行っている定型業務を外部へ委託することです。
企業で行う給与計算業務も定型業務の一つです。つまり、給与計算のアウトソーシングとは、自社の給与計算業務を外部へ委託することとなります。
給与の計算は全従業員分を適切に処理する必要があることはもちろん、計算方法が規模や自社の状況によって変わってくるなど、担当者の負担が大きくなりやすい業務でもあります。
従業員数が多い大企業などでは、積極的に給与計算業務をアウトソーシングしているところもあります。アウトソーシング先の企業は給与計算の専門性が高いため、細かい作業でも適切に対応が可能です。
そのため、担当者の負担軽減や業務にかかっていた人員を他の業務に回すことができるなど、自社全体の業務効率化にも貢献できます。
給与計算のアウトソーシングで頼める業務
給与計算のアウトソーシングで頼める業務には、次の3つの業務があります。
- 給与計算代行
- 年末調整代行
- 住民税更新代行
それぞれの業務で具体的にどのような内容をアウトソーシングできるかを解説していきます。
給与計算代行
文字通り、給与計算代行は毎月の給与計算を代行してもらうことです。給与計算の代行では、給与の計算だけでなく計算に必要なタイムカードの集計から給与明細の作成や印刷、給与明細の配信を行っている場合には、配信までの対応を行っているサービスもあります。
給与計算では、基本的な給与に加え、残業代や通勤手当の計算、社会保険料や雇用保険料、住民税や所得税の計算も行ってくれることも多くあります。
年末調整代行
年末調整代行は給与業務の中で、最も手間がかかり複雑な業務といっても過言ではありません。そのため、多くの企業が年末調整業務の代行を利用しています。
たとえば、普段の給与計算は自社のリソースでまかない、年末調整業務のみを代行依頼するなどです。年末調整代行では、必要書類の準備から申告書の内容確認、源泉徴収票や支払い報告書など各種書類の作成から提出までを代行してくれます。
住民税更新代行
住民税の更新は年末調整と並び、給与計算業務の繁忙期として知られています。毎年5月〜6月にかけて行われるため、時期も決まっており、住民税の更新代行のみを依頼する企業もあります。
特に住民税の更新業務には、多くの紙の書類が発生します。市区町村によっては、インターネット対応が遅れている場合もあります。そのため、自社がペーパーレス化への対応を進めていたとしても市区町村が対応できず、結局は担当者の負担が増えてしまうことがあります。
加えて、紙でのやり取りのため、電子よりも時間的コストもかかってしまいます。こうした時間や手間がかかる住民税更新の代行を行ってくれます。
給与計算のアウトソーシングに向いている企業
給与計算のアウトソーシングに向いている企業としては、次の2つの企業が挙げられます。
- 給与計算の担当者が1名のみの企業
- 専門的な知識を持った人がいない企業
それぞれの企業が、なぜアウトソーシングに向いているのかを解説していきます。
給与計算の担当者が1名のみの企業
会社の規模にもよりますが、給与計算の担当を1名で担っているという企業も多くあります。また、給与計算業務が専任ではなく、他業務と兼任をしているため、手が回らないケースも少なくありません。
このように給与計算の担当者が1名のみである場合、担当者が退職などのケースに対応ができず、業務が滞ってしまう恐れがあります。そのため、給与担当者が1名のみの企業は、積極的にアウトソーシングを行うことで、課題を解決することができます。
給与業務は安定した運用が求められる業務のため、アウトソーシングに依頼することで、日々の給与業務が滞りなく進むとともに、年末調整などで起こっていた担当者の負担も大きく軽減されます。
専門的な知識を持った人がいない企業
給与計算業務を滞りなく行うためには、担当者には専門的な知識が求められます。また、給与計算に関わる保険料率や社会保険料率などは、随時法改正が行われているため、常に最新の情報に対応した業務が求められます。
そのため、専門的な知識を持った人材を確保できなければ、日々の給与計算はもちろんのこと、税処理に関しても誤った処理を行ってしまう可能性があります。給与計算に関わる専門的な知識は複雑なものが多いため、自社の人材を育成しようにも時間がかかってしまいます。
専門的な知識を持った人がいない場合は、アウトソーシングを行うことで、適切な給与計算や税処理が行えます。専門的な知識を持った人材がいない場合は、積極的な活用を検討することがおすすめです。
給与計算のアウトソーシングを依頼するメリット
実際に給与計算業務をアウトソーシングすることで、自社にとっては次のようなメリットが得られます。
- 正確な業務の実現
- コスト削減の実現
- 法改正への迅速な対応
- 人員のコア業務への集中
それぞれのメリットについて解説していきます。
正確な業務の実現
アウトソーシングとして依頼する企業は全て、給与計算業務のプロフェッショナルです。そのため、正確な計算やミスのない書類の作成など、正確な業務が簡単に実現できます。
自社で行っている場合は、どうしてもヒューマンエラーなどによって正確な業務にならないケースも少なくありません。アウトソーシングを活用することで、正確な業務が実現でき、給与計算業務を迅速に行うメリットにつながります。
コスト削減の実現
アウトソーシングを活用することで、自社の人材を給与計算業務に携える必要がないため、人件費を抑えることが可能です。
また、給与計算システムの導入なども必要もありません。こうしたシステム関連のコストも削減することにもつながります。
他にも、担当者を育成するための教育費なども必要なくなるため、コスト削減が実現できます。担当者を置く必要がなくなるため、時間的コストの削減にもつながります。
法改正への迅速な対応
給与計算に関わる税制や社会保険制度は、法改正が頻繁に行われていることで知られています。そのため、担当者は常に最新の情報に注意を払い、対応していくことが求められます。
しかし、法改正への対応は専門的な知識が必要なことに加え、ミスを起こしてしまうと大きな損害となってしまいます。そのため、法改正への対応は、担当者の負担がとても大きなものになります。
こうした負担をプロフェッショナルであるアウトソーシングを活用することで、軽減することが可能です。迅速に最新の法改正に対応ができるのは、大きなメリットといえます。
人員のコア業務への集中
給与計算業務は、企業の利益にはつながらないバックオフィス業務の一つです。しかし、給与計算業務は自社の中で非常に重要な業務でもあるため、人員を割くことは必須になります。
また、給与計算業務は非生産性の業務にも関わらず、時間やコストが大きくかかってしまうことが難点です。そのため人材を給与計算業務に多く割り当ててしまうと、自社の利益につながるコア業務に人材を割けなくなってしまいます。
アウトソーシングを活用すれば、給与計算業務に人材を割く必要はなくなり、自社にとって重要なコア業務へ人材を集中させることも可能です。コア業務に人員を割くことで、自社の利益率向上も期待できるでしょう。給与計算業務をアウトソーシングすることで、人材の有効活用にもつながります。
給与計算のアウトソーシングを依頼するデメリット
給与計算業務をアウトソーシングする際には、デメリットも認識しておくことが大切です。具体的には、次のようなデメリットが挙げられます。
- 自社に業務ノウハウが蓄積されない
- 社内の業務負担がゼロにならない場合もある
- 社外へのデータ漏えいの恐れがある
- コスト高になってしまう可能性がある
それぞれのデメリットについて解説していきます。
自社に業務ノウハウが蓄積されない
アウトソーシングは、自社の業務を外部に委託することなので、自社の従業員が業務に関わることはありません。そのため、給与計算業務のすべてをアウトソーシングした場合、業務に関するノウハウは蓄積がされません。
この先もアウトソーシングを続けていくのであれば、問題はありませんが、将来は何が起こるかはわかりません。そのため、自社でも不測の事態に対応するためにも、専門的な知識を持つ人材の育成を同時並行で進めていくと良いでしょう。
社内の業務負担がゼロにならない場合もある
年末調整のみをアウトソーシング化するなどを行った場合、給与計算業務の一部が自社に残ることになり、業務負担がゼロにならないケースもあります。そのため、代行会社とのやり取りや、システムの連携に手間がかかるなどのデメリットが出てくる場合があります。
こうした負担を軽減するためには、アウトソーシングを導入する前にきちんと導入の範囲やフローなどを決めておくことが大切です。
社外へのデータ漏えいの恐れがある
アウトソーシングは外部企業に業務を委託することです。つまり、業務に活用するデータも外部企業に渡すことになります。
そのため、アウトソーシング先を選択するには、きちんと情報管理が徹底されているかなどを確認することが大切です。データ漏えいのリスクは自社内で運用するよりも上がってしまうことを理解した上で、適切な取り扱いについての取り決めや指針などを決めていくことが大切です。
コスト高になってしまう可能性がある
規模感によっては、アウトソーシングを活用することでコスト高になってしまうケースも少なくありません。具体的には100人以下の企業の場合、税理士や社会保険労務士などが顧問料にプラスして給与計算業務を引き受けてくれる場合もあります。
その場合は、業務をアウトソーシング化するよりもコストを抑えられることが多いです。そのため、アウトソーシングを依頼する場合と税理士などに依頼をする場合、自社で運用した場合などの費用対効果を計算して決定していくことが大切です。
給与計算のアウトソーシングの選び方
実際に給与計算業務のアウトソーシング先を選ぶ際は、次の3点に注意して決めていくことが大切です。
- 実績と専門性
- 料金
- 対応範囲とセキュリティ
それぞれのポイントについて解説していきましょう。
実績と専門性
まずは、「実績」と「専門性」を確認しましょう。
アウトソーシングサービスを提供している代行会社は、ホームページなどにこれまでの実績などを掲載していることがほとんどです。実績を確認する場合には、これまでの件数はもちろんのこと、自社の業界での実績が豊富かどうかなどを確認することが大切です。
また、専門性も重要なポイントです。自社が求めている業務にきちんと対応ができるかどうかなど、実際に打ち合わせを通して確認しておくと良いでしょう。
料金
アウトソーシングを活用することで、自社の業務を圧迫してしまっては本末転倒です。自社の規模や行って欲しいことなどを明確にしたうえで、料金体系をいくつかのアウトソーシングサービスで比較して費用対効果を計算することが大切です。
アウトソーシングサービスを有効活用することは、自社の利益にもつながるため、料金体系も重要なポイントです。
対応範囲とセキュリティ
給与計算業務の中で、どこまで対応してもらえるかを確認することも大切です。
サービスによっては、給与計算から明細発行、入退社などまで業務サポートを行なってくれるものもあります。そのため、自社が求めている範囲をカバーできるのかなど、導入前にきちんと確認することが大切です。
加えて、セキュリティ体制の確認です。プライバシーマークやISO認証を取得しているか、これまではどのような管理、運用体制をとっていたかなどを確認するようにしましょう。
給与計算アウトソーシングおすすめ5選
実際に給与計算業務をアウトソーシングする際におすすめのサービスを5つ紹介します。
- 給与PRO
- BOD人事給与アウトソーシングサービス
- メイソン コンサルタントグループ株式会社
- NOC給与計算アウトソーシング
- ピタット給与
自社で導入する際は、まずは次の5つから検討を始め、自社に合っているかなどを確認してみてください。
給与PRO
給与PROは株式会社シズロが提供している給与計算業務に特化したアウトソーシングサービスです。従業員50名程度までの小規模事業者向けで、1名あたり380円から依頼することが可能です。給与PROを導入して5年目の企業が事務コストの45%削減を達成した実績もあります。
料金プラン:
- 10,000円(基本料金)+380円(1人〜)/月
公式サイト:
BOD人事給与アウトソーシングサービス
BOD人事給与アウトソーシングサービスは、株式会社BODが提供しているアウトソーシングサービスです。人事給与だけでなく、資産管理などバックオフィス業務全体をトータルサポートしてくれます。
また、顧客の要望をヒアリングしたうえで、オーダーメイドに近い形でサービス提供を行ってくれます。
料金プラン:
- 要問い合わせ
公式サイト:
メイソン コンサルタントグループ株式会社
メイソン コンサルタントグループ株式会社は、女性の専門家のみでアウトソーシングサービスを提供している会社になります。給与計算業務のすべてを委託可能なことに加え、社労士による労務相談などのサービスも提供しています。
また、ISO27001、ISO9001等も取得しているため、セキュリティ対策も万全です。
料金プラン:
- 要問い合わせ
公式サイト:
NOC給与計算アウトソーシング
NOC給与計算アウトソーシングは、NOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社が提供しているアウトソーシングサービスで、導入した企業の95%以上が継続するなど、評価の高いことが特徴です。
100名以上の企業を対象としており、給与計算から年末調整や住民税代行などをオプションで選択することが可能です。
料金プラン:
- 要問い合わせ
公式サイト:
ピタット給与
ピタット給与は、株式会社アックスコンサルティングが提供しているアウトソーシングサービスです。従業員1,000名程度までの規模の企業に対応しており、フォーマットを変更することなく自社で利用している勤怠データの利用ができます。
加えて、クラウド型勤怠管理などへの対応もオプションに含まれているため、自社の運用体系に合わせて利用ができます。
料金プラン:
- 要問い合わせ
公式サイト:
まとめ
給与計算業務のアウトソーシングは、きちんと活用することで自社の利益にも貢献ができます。
自社に合ったアウトソーシングサービスを導入するためには、費用対効果や業務範囲などを確認することが大切です。自社に適した給与計算アウトソーシングを導入して、業務改革を進めてみてください。
当社ディップ株式会社では、給与計算業務と合わせてバックオフィス業務の効率化を行える「人事労務コボット」を提供しています。
入退社の手続きがスマホで完結するなど、これまで手間がかかっていた作業を大きく減らすことに貢献します。入退社の手続きは給与計算業務にも関係するため、アウトソーシングを利用する際には、「人事労務コボット」の導入もセットで検討してみてください。