有給休暇は、蓄積した疲労の回復や心身のリフレッシュなど、ワークライフバランスの充実を図るため、労働者に与えられた権利です。有給休暇が希望どおり取得しやすい職場環境を整備できると、従業員のモチベーションアップを図れます。
一方、企業側にも業務効率改善や離職率低下など、多くのメリットをもたらします。しかし、日本の有給休暇取得率は世界各国と比べると相当低い水準です。
有給休暇取得率向上に向け、2019年から一定の条件を満たす労働者に対して、国が取得を義務付けました。今回は、有給休暇の取得義務化に関する基本ルールや注意点などについて解説します。
有給休暇の5日取得義務化とは
10日以上有給休暇を付与される従業員が自社に在籍する場合、対象の従業員に対し5日以上の有給休暇消化を義務付けた制度です。働き方改革の一環として、2019年4月から施行されています。
対象者は正社員だけでなく契約社員・パート・アルバイトなど、有期雇用契約者も含まれています。有給休暇の消化期限は、有給休暇を付与した日から1年以内です。有給休暇を5日以上取得させなかった企業は法律違反に該当し、罰則が科せられます。
有給休暇の消化が義務化された理由
5日以上の有給休暇取得が義務化された理由は、次の3点です。
- 世界各国に比べて有給消化率が圧倒的に低いため
- ワークライフバランスの充実を図るため
- 慢性的な長時間労働を是正するため
以前よりも改善されていますが、世界各国と比べ日本の有給取得率は低水準です。ワークライフバランスの充実や長時間労働の是正を行い、有給取得率向上を目指します。
世界各国に比べて有給消化率が圧倒的に低いため
改善傾向にあるものの、世界各国と比べると依然として有給休暇の取得率は低いのが現状です。2021年にエクスペディアが実施した調査では、日本の有給休暇取得率は60%でした。日本の有給取得率は、過去11年の調査で最高の数字です。
ただし、調査対象16ヶ国のうち14位の結果に終わっており、上位3ヶ国のタイ・台湾・カナダと比べて30%以上取得率に差がありました。政府は、2025年までに有給取得率70%以上を達成する目標を掲げていますが、あと3年で10%以上の上積みが必要です。
ですが、当該調査で回答者の77%が「以前よりも休暇を大事にするようになった」と、回答しています。在宅勤務の導入で休暇を取りやすくなったとの声も聞かれており、継続的な取り組みが各企業には求められています。
ワークライフバランスの充実を図るため
ワークライフバランスの充実が重要である主な理由は次の3点です。それぞれについて解説します。
- 経済的自立の困難
- 価値観の多様化
- 子育てとの両立
経済的自立の困難
総務省が2020年に実施した調査「生活基盤の安定を図る生活設計」では、労働人口の約37.1%が非正規雇用者でした。非正規労働者は不安定な雇用の上に、キャリアアップが困難な状況に置かれています。仕事の実績が評価されにくく、賃金アップはほとんど期待できません。
一方、市場競争力の激化による売上低迷を受け、コストカットのために非正規雇用労働者を増やしています。20代・30代で非正規雇用者の割合がさらに進むと晩婚化・未婚率の上昇が加速し、少子高齢化が加速します。
一人ひとりの従業員が金銭的不安を抱えずに生活できるよう、安定した雇用や給与アップ、透明性の高い評価体制の確立が、各企業には求められています。
価値観の多様化
仕事で結果を出すよりも、プライベートの時間を重視する方が増えています。株式会社IBJが2021年に独身の男女700人に調査した結果では、男女とも8割以上が「プライベートを重視した働き方を実現したい」と回答しています。
従来は定年までの雇用や安定した給与が保証されており、プライベートの時間を失っても仕事を優先する価値がありました。しかし、終身雇用制の崩壊や待遇改善が期待しにくい現状では、「会社のために働く」強い意志を持ったビジネスマンは減りつつあります。
給与アップや長期雇用を保証できない以上、企業としては有給休暇を取得しやすい環境を整備し、ワークライフバランスを高める必要があります。
育児との両立
出産後も仕事を続けたいと希望する女性従業員をサポートするためにも、ワークライフは重要です。
仕事と育児の両立は心身への負担が大きく、育児後の復職支援が整っていない場合、諦めざるを得ません。優秀な従業員を失った場合は他の従業員への業務負担が増し、ミスの増加や業務効率低下が懸念されます。
また、中途採用で即戦力の人材を獲得できる保証もありません。人材流出を防ぐためにも有給休暇取得率を高め、育児と両立しやすい環境を整備することが重要です。
慢性的な長時間労働を是正するため
長時間労働=成果に結びつくわけではありません。むしろ、長時間労働は従業員と企業、双方にとってデメリットが多いです。
従業員側は緊張状態の継続に伴う心身の疲弊で、休職や離職を決断する従業員が増加します。一方、企業側は「従業員を酷使する」ブラック企業のイメージを持たれ、企業ブランドが傷付きます。
一度根付いたネガティブなイメージはなかなか払拭できません。顧客や取引先、従業員など、ステークホルダーからの信頼を失い、今後の経営が厳しい状況に追い込まれます。長時間労働を無理に強いるよりも、少ない労働時間で結果を出すスタイルへの転換が求められています。
長時間労働に伴う悪影響
従業員 | 企業 | |
---|---|---|
内容 | ・心身の疲弊 ・集中力低下に伴うミスの増加 ・精神疾患のリスク向上 ・プライベートな時間の減少 ・スキルアップに充てる時間の不足 | ・業務効率低下 ・離職率増加 ・企業イメージ悪化 ・ランニングコスト増大 ・企業競争力停滞 |
有給休暇を積極的に取得するメリット
有給休暇の取得率向上によって得られるメリットは、次の4点です。
- 仕事へのモチベーションアップ
- 業務効率改善
- 離職率低下
- 企業のイメージアップ
有給休暇を積極的に取得することで、従業員の仕事へのモチベーションアップが期待できます。プライベートな時間を確保できるからです。子どもの入学式・運動会・卒業式など、学校行事にも参加しやすくなり、仕事とプライベート両面の充実が望めます。
また、有給休暇を取得しやすい環境を整備できると、企業のイメージアップを図れます。社内外に「働きやすいホワイト企業」と、印象付けられるからです。入社希望者増加が期待でき、企業文化の継承や社内の活性化が望めます。
仕事へのモチベーションアップ
リフレッシュできる時間の増加によって、仕事への意欲を高められます。オンとオフの切り替えがしやすくなるからです。旅行や外食、買い物など、趣味の時間の質が高まり、満足感・充実感を獲得できます。
生活の中で楽しみが増え、仕事への意欲も高まります。
業務効率改善
心身を休める時間を確保することで、業務効率改善やミスの削減が期待できます。長時間労働に伴う判断力や注意力、集中力低下を回避できるからです。
疲労困憊の状態で仕事を続けても思考力が低下しており、業務効率や成果物の質は上がりません。職種によっては設備の操作ミスを招き、大規模な事故に発展する可能性もあります。
有給休暇の取得でリフレッシュに充てる時間を確保し、万全な状態で仕事に臨めるよう心身の回復を図ります。
離職率低下
働きやすい環境の整備=人材の流出防止にも寄与します。有給休暇の取得率向上によって、必要な時に気兼ねなく休める環境が整うからです。
子どもの学校行事への参加や通院、役所への手続きへの時間を確保でき、従業員からのエンゲージメント向上につなげられます。離職率低下によって、ベテラン従業員から若手従業員へ技術や知識、ノウハウの伝承が期待でき、業務の属人化を防げます。
企業のイメージアップ
有給休暇を積極的に取得してもらうことにより、社内外にホワイト企業の印象を発信できます。「福利厚生が充実している」「従業員を大事にしている」など、企業のイメージアップに成功し、優秀な人材を獲得しやすくなります。
新卒採用・中途採用どちらを選択しても、多数の応募が望めるからです。終身雇用制の崩壊・慢性的な長時間労働・給与の据え置きなど、ネガティブなニュースが多く、多くのビジネスマンや学生は不安を抱えています。
就職先に対して、安定感や働きやすさを求める傾向が強くなりつつあります。有給休暇の取得率は長く働ける環境かどうかを測る上で、重要な指標の一つです。有給休暇の取得率向上によって「働きやすい職場」を印象付け、優れたスキルを持つ即戦力の人材獲得を実現します。
有給休暇取得に関する基本的なルール
有給休暇に関する基本的なルールの内容を紹介します。ポイントは主に次の4点です。
- 対象者と取得条件
- 従業員が指定した日時に有給休暇を付与
- 年次有給休暇管理簿の作成と保存が必要
- 就業規則への規定が必要
対象者と取得条件
有給休暇を10日間付与された従業員が対象になります。次の3点が、有給休暇を取得するための条件です。
- 1. 6ヶ月以上の継続雇用
- 2. 全労働日数の80%以上を勤務
- 3. 所定労働時間が週30時間以上または所定労働日数が週5日以上
3. の達成が難しいパートやアルバイトの場合は、労働時間・日数に応じた有給休暇が付与されます。
正社員
上記1.〜3.の条件を達成している正社員は、年5日の有給取得義務化の対象に該当します。正社員は、勤続年数を重ねるごとに有給休暇の付与日数が増加する一方、現状は5日以上の有給取得が国から求められている最低限のラインです。
正社員の有給取得率が高まらない限り、業務効率改善や離職率低下は期待できません。また、正社員と同様にフルタイムで働く派遣社員・契約社員・パートが職場にいた場合、正社員と同様の条件が適用されます。
フルタイム労働者への有給休暇付与数
勤続年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月 |
日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
週3日〜4日働くパートやアルバイトの方が該当します。週3日勤務の方は、入社後5年6ヶ月以上、週4日勤務の方は入社後3年6ヶ月以上経過している方が対象となります。
有期雇用契約者の付与日数
所定労働 日数 | 年間労働 日数 | 付 与 日 数 | 勤続年数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月 | |||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
基本的に、有給休暇は従業員が指定した日時に付与してください。
有給休暇は、労働者側の権利です。従業員が希望した日時が、「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ、変更を命じられます。
年次有給休暇管理簿の作成と保存が必要
年次有給休暇管理簿は、従業員一人ひとりの有給取得時期・日数・基準日を記載した管理帳簿です。労働基準法24条によって、企業規模を問わず全ての企業への作成が義務付けられました。
年次有給休暇管理簿を作成し、有給休暇の管理を正確に行う必要があります。また、管理帳簿を作成してから3年間保管するようにしてください。賃金台帳のコピーと共に保存が認められているため、勤怠管理システムで一括管理しておくと運用負担を減らせます。
就業規則への規定が必要
有給休暇の時季を指定する場合、就業規則への明記を必ず実施してください。労働基準法第89条によって定められています。
記載しなかった場合、罰則が科せられます。次の3つがポイントです。
- 時季指定の方法と対象従業員の記載
- 従業員の意思を汲んだ時期指定の実施
- 時期指定は5日以内
企業側の時季指定・計画年休・個別指定方式など、時季指定の方法を明確化してください。対象従業員は10日以上有給休暇を付与されている方全員です。また、5日以上有給休暇を取得している従業員に対して、時季指定を行う必要はありません。
有給休暇における「1年間」という期間の考え方
有給休暇を付与するタイミングや取得状況の管理は、1年単位で換算するのが原則的なルールです。入社してから6ヶ月が経過した時点が有給休暇の付与日となり、基準日と呼ばれます。基準日を軸にして、次回付与日や繰越可否などを判断します。
1年という単位が大きく関わるケースは次の3つです。
- 有給休暇の次回付与日は1年後の起算日
- 入社時点で有給休暇を付与した場合も取得義務化は適用
- 1年以内に付与された休暇を消化できない場合は繰越
有給休暇の次回付与日は1年後の起算日
労働基準法に基づくと、有給休暇は入社から6ヶ月以上経過した時点で付与することが原則的なルールです。有給休暇を付与した日を起算日として設定し、次回有給休暇を付与するのは、1年後の起算日となります。
新卒採用で入社した正社員が多くの割合を占めている場合、上記の方法で運用していけば大きな問題にはなりません。しかし、中途入社者の割合が多い場合、管理が複雑になります。
中途入社者が多い場合、有給休暇の付与日を統一することも一つの選択肢です。ただし、有給休暇の付与日を全社で統一する場合、休暇の前倒しが必要です。
入社時点で有給休暇を付与した場合も取得義務化は適用
中途入社者を正社員で採用した場合、入社日から半年が経過するのを待たず、前倒しで有給休暇を付与するケースがあります。前倒しで有給休暇を付与した場合でも、年10日以上有給休暇を付与された労働者に該当します。
入社日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得させなければなりません。入社直後は、業務内容の習得や人間関係の構築など、労働者にとって大事な時期です。業務に慣れてきた段階で、有給休暇の取得を促しましょう。
労働者の直属の上司に有給休暇に関する話を事前に通しておくと、労働者も取得しやすくなります。
1年以内に付与された休暇を消化できない場合は繰越
起算日に付与された有給休暇を1年以内に消化できない場合、残日数は翌年へ繰越となります。労働基準法に基づき、有給休暇の繰越期限は2年と定められています。
「1年以内に有給休暇の権利は消滅する」「未消化分の有給休暇は翌年へ繰り越せない」など、就業規則に独自の規定を設けても無効となります。労働基準法違反に該当するため、繰越を認めない規定を設けている場合は、早急に改善しましょう。
また、繰越できる日数に制限はありません。仮に勤続8年目の従業員が20日間の有給休暇を繰り越した場合、翌年は最大40日間の有給休暇を利用できます。
年5日の有給休暇取得を促す方法
続いて、有給休暇の取得率を高める方法を紹介します。
- 有給休暇を使いやすい環境整備
- 計画年休制度の導入
- 個別指定方式の導入
- 勤怠管理システムの導入
最も重要なのは、周囲を気にせず有給休暇を使えるよう労働環境を整備することです。誰かが休んだとしてもカバーできる業務体制が作られていれば、有給休暇の利用をためらう頻度は減ります。
有給休暇を使いやすい環境整備
周囲を気にせず有給休暇を利用できるよう、業務体制や仕事の振り方を見直すことが必要です。一人ひとりが担当する業務量が多い場合や人手不足だと、有給休暇の利用をためらう方がいるからです。
厚生労働省が行った調査では、回答者の過半数以上が有給休暇の利用にためらいを感じていました。「周囲に迷惑を掛けたくない」「休暇後の業務が多忙になる」「有給休暇を取りにくい雰囲気が漂っている」など、有給休暇利用に伴うデメリットを懸念した声が、多数挙がっています。
周囲を気にせず休めるよう、業務の情報共有や従業員同士のコミュニケーションを積極的に行い、業務の属人化を減らす取り組みが大切です。また、グループウェアやSFA、MAなどを導入し、業務の効率化・自動化を図ることも一つの選択肢です。
計画年休制度の導入
計画年休制度を導入することで、有給休暇の取得率向上と効率的な労務管理を両立できます。企業側が、事前にカレンダーへ有給休暇取得日を割り当てているからです。
計画年休制度は多くの企業に導入されており、2020年に「日本の人事部」により行われた調査では、46.2%の企業が計画年休を導入しているとの結果が出ました。
年末年始やゴールデンウイーク、夏季休暇など、長期休暇に合わせた形で振り分けているパターンが多く、従業員側としては帰省や旅行の計画を立てやすくなります。一方、企業側としてはすべての従業員が同じ日に有給休暇を利用するため、細かな労務管理をする必要がありません。
また、全社一斉での休暇取得が難しい場合、部署単位で順番に休暇を取得する形も取れます。ただし、実施には労使協定の締結と就業規則への明記が必要です。
個別指定方式の導入
個別指定方式は、年5日の有給取得消化が困難な社員を対象に、企業側が有給休暇の取得時季を指定する方法です。従業員に選択権を与えつつ、残っている分を確実に消化できる点がメリットです。
たとえば、すでに3日分の有給休暇を消化していた場合、残りの2日を従業員と相談して決めます。労使協定の締結は必要ありません。
個別指定方式を導入する場合は、従業員の有給取得状況を可視化できる体制を整えてから行ってください。また、業務に支障が出ないよう、部署やチームの所属長とコミュニケーションを取っておくことが重要です。
勤怠管理システムの導入
勤怠管理システムを導入することにより、効率的な労務管理を実現できます。有給休暇の取得状況や従業員のスケジュール、労働時間など、従業員の労働状況に関する情報をシステム上で一元管理できるからです。
勤怠管理システム上で労務管理に必要な作業を完結できるため、一人ひとりの取得状況を細かく管理する必要はありません。また、有給休暇の取得状況を集計し、取得の催促メールや自動付与を行う機能を搭載しているシステムもあります。
有給休暇取得に関する注意点
続いて、有給休暇取得に関する注意点を紹介します。主に次の4点に注意が必要です。
- 5日以上取得できなかった場合は罰則
- 従業員への不当な取り扱いは禁止
- 繰り越しは2年間まで
- 休日を出勤日として扱うのは禁止
5日間の有給消化は法律で義務化されており、遵守できない状態が続くと罰則が科せられます。また、有給休暇利用に伴う減給や降格など、不当な取り扱いは禁止です。
5日以上取得できなかった場合は罰則
10日以上有給休暇を付与されている従業員が5日以上有給休暇を消化できない場合、30万円以下の罰金、または6ヶ月以下の懲役が科せられます。労働基準法違反に該当するからです。
ただし、いきなり実刑を科せられるわけではありません。労働基準監督署からの勧告を受け入れず改善が見られないと判断された場合に罰則が科せられます。
悪質な場合は企業名が公表され、ブラック企業のイメージが世間に知れ渡ります。今後の企業運営が厳しい状況に追い込まれるため、早急な対応が重要です。
従業員への不当な取り扱いは禁止
有給休暇の利用を理由にした減給や降格、解雇など、不当な取り扱いは禁止です。有給休暇は従業員の権利だからです。
不当な取り扱いは法律違反に該当し、罰則が科せられます。従業員からの希望を受け入れず不当な取り扱いを続けていた場合は、裁判に発展する可能性もあるため注意してください。
雇用契約書や勤怠管理、給与明細など、多数の証拠を提示されて敗訴となった場合、企業イメージは失墜し社会的信用を失います。
繰り越しは2年間まで
年度内に有給休暇を消化しきれなかった場合、翌年度に繰り越しが可能です。労働基準法115条に有効期限が定められています。ただし、2年以上経過した場合は無効扱いとなります。
休日を出勤日として扱うのは禁止
有給休暇の取得を促すために出勤日を休日として扱い、休日を出勤日として指定することは禁止です。有給休暇の目的と反しているからです。
有給休暇は、「本来労働義務があるにもかかわらず従業員からの申請を受け入れ、労働義務を免除する」制度です。出勤日と休日を入れ替えた場合は、振替休日の付与が適切な対応です。
有給休暇は、従業員から申請があった場合のみ可能です。トラブルを避けるためにも、就業規則へ忘れずに明記をしておいてください。
有給休暇取得の指定義務化におけるよくある疑問
有給休暇の5日間取得義務化は、2019年から始まっています。しかし、依然として制度の内容を正確に把握できていない方も少なくありません。
最後に、有給休暇取得の義務化に関して、多く寄せられる疑問に関して、Q&A形式でまとめて紹介しましょう。
- 取得義務化は雇用形態を問わず適用される?
- 対象者が5日以上取得できなかった場合はどうなる?
- 休日に有給休暇は申請できる?
取得義務化は雇用形態を問わず適用される?
一定の条件を満たせば、有期雇用契約者も適用されます。
取得義務化の対象は、年間10日以上有給休暇を付与されている労働者です。正社員をはじめ、フルタイム従業員は入社から6ヶ月が経過し、有給休暇を付与された段階で取得義務化の対象となります。
一方、パートやアルバイトなど、有期雇用契約者も勤続年数5年半を超え、週3日以上働いている場合は対象となります。
対象者が5日以上取得できなかった場合はどうなる?
10日以上付与されている労働者が1年間で有給休暇を5日以上取得できなかった場合、罰則が科せられます。労働基準法違反とみなされ、違反者1人につき30万円以下の罰金が科せられます。
違反者が増えるほど罰金額も増えるため、有給休暇の取得状況を正確に管理しなければなりません。また、有給休暇取得奨励日の設定や計画年休の導入など、有給休暇を取得しやすい環境整備が求められます。
休日に有給休暇は申請できる?
休日に有給休暇を申請する行為は認められません。
有給休暇は疲労回復や心身のリフレッシュを図るため、労働者に与えられた権利です。勤務日に有給休暇の申請を行い、労働義務を免除されます。
労働義務がもとから免除されている休日に、有給休暇を申請する必要はありません。有給休暇の制度趣旨にも反するため、有給休暇を利用する場合は勤務日に申請をしましょう。
まとめ
働き方改革関連法の施行に伴い、年10日以上有給休暇を付与される労働者は、年5日以上の休暇取得が義務化されました。正社員だけでなく、一定の条件を満たしたパートやアルバイトも対象となります。
未達成者1人につき30万円以下の罰則が科せられるため、有給休暇の取得状況を正確に管理しなければなりません。また、取得率向上のために、計画年休の導入や有給休暇取得奨励日の設定など、有給休暇を取得しやすい環境整備が重要です。
しかし、労務担当者は給与計算や就業規則作成など、さまざまな業務を担当しています。日々の業務をこなすに精一杯の状況で、職場環境改善に手が回らない方も多いでしょう。
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給与の振込先や緊急連絡先など、個人情報はWebフォームから収集できるため、書類を作成する必要はありません。一方、従業員も書類への署名やフォームへの入力はスマートフォンで行えるため、スムーズに作業を進められます。 労務担当者の工数増大にお悩みの方は、ディップ株式会社が提供する「人事労務コボット」導入をご検討ください。