リファラル採用は、社員紹介採用として従業員より友人や知人などを紹介してもらう採用手法のひとつです。採用コストを抑えられるメリットがあるものの「紹介者が不採用になったら気まずい」と積極的になれない従業員も少なくありません。
リファラル採用で失敗しないためには、企業側が採用基準を明確に決めて全従業員に周知するといったルールや仕組みづくりが大切です。
この記事では、リファラル採用で起こり得るトラブル事例を5選紹介します。回避策や成功事例もまとめました。ぜひ参考になさってください。
リファラル採用とは従業員の友人や知人を紹介してもらう手法!
リファラル採用とは、従業員の友人や知人を紹介してもらって候補者を募る採用手法です。求人媒体に掲載して応募者を待つ手法と異なり、潜在候補者に直接アプローチができることから注目を浴びています。
縁故採用と異なるのは、あらかじめ採用基準が決まっていることです。従業員は採用基準を満たしている友人や知人を探します。
企業理解が深い従業員が候補者探しに動くことで、企業は採用コストを抑えて欲しい人材を獲得することが可能です。
リファラル採用については、下記でくわしく紹介しています。
リファラル採用とは?メリットやデメリット、円滑に進める方法を知ろう
リファラル採用のメリット・デメリット
リファラル採用にはメリットとデメリットがあります。それぞれを把握したうえで自社に導入してもよい採用手法かを検討してください。
リファラル採用のメリット
リファラル採用のメリットは以下のとおりです。
- 採用コストの削減
- 転職潜在層へのアプローチが可能
- 採用ミスマッチの防止
従来の採用活動は募集要項の作成にはじまり、求人媒体への掲載、応募者の管理、選考試験・面接の実施、選考結果通知などさまざまな工程があります。対してリファラル採用は求人媒体への掲載もなく、会社説明会や選考試験の一部省略といった採用コストの削減が可能です。
また、採用市場には少ない転職潜在層へ直接アプローチできるメリットもあります。事前に企業理念への共感などを確認したうえで選考に進むため、入社後にすぐ辞めてしまうといった採用ミスマッチが起こりにくいことも魅力です。
リファラル採用のデメリット
リファラル採用には以下のデメリットがあります。
- 多様な人材を採用できない
- 従業員の協力が得にくい
リファラル採用はほかの採用手法と異なり、従業員がリクルーターとして採用活動を行います。組織としては、さまざまな価値観や個性をもつ人材を採用したいところでしょう。しかし、リファラル採用では従業員の志向性に偏りやすく、従業員と似た価値観をもつ人材が集まりやすいというデメリットがあります。
また、多様性を築くために多くの人材を募るには、リクルーターとなる従業員の協力が必須です。しかし、ふだんの業務をこなしながらの採用活動は負担も大きいため、非協力的な従業員も少なくありません。全体周知の前に部署長やリーダークラスの従業員に理解を求めるといった、地道な周知活動が必要になることもあります。
リファラル採用で起こり得るトラブル事例5選
リファラル採用は採用担当者・応募者・従業員(紹介者)の三者が関わる採用手法のため、従来の採用トラブルとは内容が異なります。ここではリファラル採用で起こり得るトラブルの事例を5つ紹介します。
応募者を不採用にしたことで紹介者からの信用を失う
リファラル採用は推薦制度ですが、一般選考と採用基準は変わりません。そのため、応募者が不採用となる可能性もあります。
リファラル採用は一般選考よりも合格率が高いと誤解している人がいるという問題があります。この思い込みから、応募者と従業員の関係に亀裂が入ってしまうのです。また、従業員は自身が推薦した友人・知人を不採用にした企業に対して、不信感や不満を抱えてしまう可能性もあります。
採用後のミスマッチで応募者との関係が悪化する
リファラル採用は採用後のミスマッチを防ぎやすいメリットがありますが、完全に防止できるわけではありません。採用後、「こんな仕事をするとは聞いていない」「なぜこんな待遇になんだ」と業務内容や職場環境に不満をもたれてしまう可能性もあります。
不満に思いながら働き続けることはできないため、短期間で離職してしまう可能性もあります。もし、従業員を気遣って働き続けたとしても、不満を抱きながらでは成果を出すのはむずかしいでしょう。従業員との関係が悪化するため、担当者は人材配置を検討するなど手間が増えてしまいます。
待遇の差による紹介者と応募者の関係が悪化する
リファラル採用は基本的に転職者を対象とした中途採用で用いられる採用手法です。従業員よりも経験値が高く、専門性の高いスキルをもっている人が応募者となるケースもあります。
企業側として、優秀な人材はそれなりの待遇で迎え入れたいものですが、従業員が就業年数を優先する考えをもっている場合、待遇の差に不満を抱いて訴えてくる可能性があります。事前に給与や待遇に関する基準を策定し、従業員と共有しておくことが大切です。
異なる採用基準により紹介者とほかの従業員の関係が悪化する
リファラル採用では原則、採用基準を従来よりも下げてはいけません。従来の採用方法と異なる採用基準を設けると、紹介者とほかの従業員の関係が悪くなる可能性があるからです。
そもそもリファラル採用の仕組みについて理解が不足していると、「なぜあの人は?」と不公平感がでると社内全体のモチベーションは低下します。また、応募者も働きづらくなり、紹介者もほかの従業員とトラブルに発展するおそれもあります。採用基準を変えるとリファラル採用が失敗する可能性が高まるため、注意してください。
紹介者報酬が法律違反になることがある
リファラル採用では、紹介してくれた従業員に対してインセンティブを支払います。ただし、職業を紹介する行為は原則、厚生労働省の許可が必要です。もし許可を得ずに従業員が人材を紹介すると、職業安定法の第30条と第40条の規定に違反したとなり注意が必要です。
また職業安定法第65条第6号では、高額な報酬にも罰則が科せられる可能性があります。違法行為とみなされないためには、業務の一部とすることを就業規則に含めることが大切です。
リファラル採用のトラブルを回避する6つの方法
ご紹介したリファラル採用のトラブルを回避するには、トラブルを想定したリスク対策が必要です。効果的な6つの方法をご紹介します。
獲得したい人材像や採用基準を明確にする
リファラル採用を導入するときは、対象となる職種や業務内容、経験年数などを明確に定めたうえで、紹介者となる従業員と情報を共有することが重要です。
企業が求める人材像の採用基準を共有しておけば、従業員の志向性に偏らず、求める人材を獲得できます。さらに採用を予定していたポジションと人材のミスマッチも回避することが可能です。
人材採用では戦略を立てることが大切です。人材不足のなかでどのように求める人材を獲得するのか、採用戦略のコツとやり方についてくわしく紹介しています。
【2023】人材採用の方法とは?人材採用戦略のコツとやり方を解説
採用基準は一般選考と同一にして全体周知する
リファラル採用は縁故採用と間違えられやすいため、異なるものであることを理解してもらわなければなりません。まず採用基準は一般選考と変わらないことを徹底的に周知しましょう。
また、採用基準があいまいだと、インセンティブ目的で不正行為をする従業員が出てきたり、「この人はすごく優秀な人なんだろう」と無意識のバイアスが働く可能性があるため注意が必要です。
従業員が客観的に人材を選定できるように、企業側は策定した採用基準を守るように全体周知を必ず行いましょう。
面接前に説明会を行って企業理解を深めてもらう
リファラル採用のトラブルを回避するには、企業理解を深めてもらうことが大切です。会社説明会や勉強会、交流会などを開催して会社のリアルな雰囲気を知ってもらいましょう。
リファラル採用の選考面接を受けるかどうか判断するのは応募者自身です。しかし、紹介する従業員の押しが強く、断られずに採用試験を受けて落ちた場合、応募者は自尊心が傷つけられるうえに、従業員は「やっぱりうまくいかなかった」と気まずい思いをします。
また、企業理解が低いとモチベーションを保つことが難しいものです。面接前に企業理解を深めておくことで、会社の雰囲気にも早くなじみ、モチベーションにつなげることが可能です。
リファラル採用の意義を定期的に説明する
リファラル採用を成功させるためには、従業員の協力が欠かせません。しかし、採用活動は人選や自社の紹介など負担もあるため、ただ頼むだけでは積極的に動いてくれないことも。また、縁故採用と誤解している従業員がいると「自分には関係ない」と、当事者意識の低さが社内に広がっている可能性もあります。
まずは従業員の理解を得るために、リファラル採用の意味や自社の経営戦略において意味があることだと定期的に従業員に説明し、一人ひとりの採用に対する意識を変えていくことが重要です。
リファラル採用以外の方法も併用する
リファラル採用のデメリットでもある人材が偏りを回避するには、ほかの採用手法と併用するのが効果的です。人材紹介会社や求人広告などさまざまな方法があり、経験やスキルに応じたカスタマイズ性など特徴があります。
多様性のある母集団を形成できるため、優れた人材を獲得するためにもリファラル採用以外の採用方法も残しておきましょう。はじめてリファラル採用を導入するなら失敗したときの保険にもなります。
採用活動を円滑に進めるには、採用管理システムが便利です。面接日の調整や求人媒体と連携など、採用業務の効率化が図れます。下記の記事では、おすすめの採用管理システムを紹介しています。
【2023】採用管理システムの選び方は?おすすめツール26選&導入メリット
職業安定法および労働基準法を確認する
紹介した従業員に報酬を渡す行為は、職業安定法に反するおそれがあります。違法行為とみなされないためには、従業員の業務の一部とすることで回避できます。
違法行為とみなされないためには、就業規則に「職業紹介と報酬に対する文言」と記載したうえで適切な金額の設定が必要です。
企業によっては、ギフト券やプリペイドカードを謝礼として渡しているところもあるようなので、参考にしてもよいでしょう。報酬金額だけではなく、支払うタイミングはいつにするのか、会食費の補助はするのかなど金銭が絡む内容はすべて明確にしておいてください。
リファラル採用の成功事例
リファラル採用を実施して成功している企業は少なくありません。ここではリファラル採用の成功事例を3社ご紹介します。どのように取り組んだのか参考になさってください。
リファラル採用成功事例1.株式会社SmartHR
クラウド人事労務ソフト『SmartHR』を提供する株式会社SmartHRは、従業員が16名のころからリファラル採用を取り入れています。
応募促進を目的に「リファラルごはん」として会食費を企業側で負担。インセンティブとして「いい人ありがとう手当」を設けています。また、応募者が不採用となったときに関係性をくずさないようにと会食費を補助する「ごめんねごはん」など、ユニークな取り組みが魅力です。
だれでも読める社内報の発信やカジュアル面談など、リファラル採用でトラブルになりがちな要素に対する対応策も参考になります。
リファラル採用成功事例2.freee株式会社
freee株式会社は、クラウド会計ソフト『freee』の開発・提供を行っています。社内の人材の半数はリファラル経由です。全従業員を対象に月1回の情報発信や協力依頼。ふだんから従業員への声掛けを行い、紹介コンテンツに注目してもらえるようにコミュニケーションを大切にしている会社です。
リファラル採用の具体的な取り組みとしては、友人をオフィスに招待していっしょにお弁当を食べる「お弁当制度」があります。また、採用者のみもらえるTシャツを作ったり、採用の協力者は「リクルーティングアワード」で感謝の気持ちを伝えるなど、独自の取り組みも魅力です。
リファラル採用成功事例3.株式会社すかいらーくホールディングス
株式会社すかいらーくホールディングスは、「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などファミリーレストランチェーンを運営しています。飲食業界の大手企業がリファラル採用に取り組んだきっかけは、少子高齢化による労働人口の減少です。このままでは求める人材の確保が難しくなると判断し、リファラル採用を導入しました。
社長による情報発信をきっかけに2015年ごろからリファラル採用の割合が増えてきました。紹介者と応募者の双方にすかいらーくの優待券をプレゼントしたり、紹介数が多かった地域のエリアマネージャーを表彰したりといった取り組みを行っています。
また、グループ総店舗数2,973店舗で共通認識をもってリファラル採用に取り組めるように、各店舗にリファラル採用のノウハウ集を配布。地域や店舗にマッチした人材の採用につながることで、採用者の定着率も高まっています。
まとめ:欲しい人材を見つけるには体制づくりが鍵となる
リファラル採用は、従業員の友人や知人を紹介してもらう採用手法です。事前に採用基準を明確にして、従業員への周知を徹底することで求める人材からの応募につなげることができます。ただし、リファラル採用には懸念されるトラブルがあり、ほかの採用手法と併用することも検討しなければなりません。
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