インターネットを活用したWebサービスの普及などにより集客方法は多様化し、幅広い見込み客の獲得が可能な時代になりました。そんな中、見込み客を成約に結びつけるための活動として、多くの注目を集めているのが「ナーチャリング」です。
今回は、ナーチャリングとはどのような活動なのかという点から、有効な育成方法について解説します。
ナーチャリングとは
ナーチャリングとは、獲得した見込み客や顧客の育成を行う際に用いられる用語です。英語のNurture(育成する)ということばに由来する用語で、営業活動における基本施策としても知られています。
ナーチャリングには、見込み客を対象として実施するものと、既存顧客に対して実施されるものの2つが挙げられます。どちらも成約へ結びつけるための育成活動ですが、そのアプローチは微妙に異なるため、別個の対応を求められます。
ただ、一人のユーザーと丁寧に向き合いながら、関係性を向上させていくという目的については、どちらのナーチャリングにも共通する心構えであるため、まったく別の取り組みとなるわけではありません。
「大量の見込み客を獲得して終わり」ではなく、自社に興味を持ってくれたユーザーの興味をさらに刺激し、顧客には継続的に自社と関係を保ってもらうようにすることがナーチャリングです。
ナーチャリングが注目される背景
ユーザーのニーズや行動と真摯に向き合うナーチャリングという取り組みが重視されるようになったのは、ここ最近のトレンドでもあります。では、なぜナーチャリングが注目を集めるようになったのかについて、その背景について解説していきます。
インサイドセールスが重視されるようになったため
一つ目の理由は、インサイドセールスの台頭です。
インサイドセールスとは、その名のとおり外回り営業ではなく、オフィスにいながらにしてのセールス活動全般を指すもので、電話やメール、チャットなどのツールを駆使しながら顧客の獲得を進めていく営業方法です。
インサイドセールスの実施に当たっては、非対面で成約につながる活動を進めていけるため、移動費や名刺配布の手間を削減できるといった強みがある一方、顧客との信頼関係の醸成がより重要になります。ナーチャリングを通じた企業とユーザーの関係強化は、そんなインサイドセールスの実施において欠かせないプロセスとなっています。
ユーザーデータの活用方法が多様化したため
二つ目は、企業が蓄積するユーザーデータの活用方法が多様になっている点です。
ナーチャリングを実施する上では、ユーザーの情報をできるだけ蓄積し、彼らの行動パターンに合わせたアプローチが必要になります。近年はナーチャリングに強いサービスが複数登場していることもあり、さまざまなデータの活用方法が登場しています。
ユーザーデータの活用方法に多様性が出てきたことで、ナーチャリングを実施する意味も大きくなっているというのが近年のトレンドです。インサイドセールスの浸透によって、Web経由でデータを収集できるチャンネルも増え、ツールを使ってこれらのデータを有効活用し、顧客関係の強化などに活用します。
ナーチャリングの主な手法
続いては、ナーチャリングのポピュラーな手法について紹介していきます。どれか一つの手法にこだわるというよりも、複数の方法を併用することで、効果的なユーザーデータ収集を実現可能です。
メルマガの配信
ナーチャリングにおいて最もポピュラーな手段となるのが、メルマガの配信です。
メールマーケティングは、インサイドセールスやナーチャリングの必要性に注目される以前から活用されてきた手法ですが、今日においてもナーチャリングの一環として重視されています。メルマガの配信は、ユーザーに対してコンパクトに実用性の高い情報を届けられるため、情報発信の手段としても有効です。
また、メールの開封率やリンクのクリック率など、メール一つをとってもユーザーの特性をさまざまな角度から知ることができるため、彼らの理解を深める上でも活躍します。
ナーチャリングツールを活用すれば、メルマガの連続配信が可能なステップメール機能を扱うこともできます。メール配信の業務効率化や、開封率の高いメルマガの特定などに役立つ情報を収集するのに活躍します。
行動履歴のトラッキング
2つ目の方法が、行動履歴のトラッキングです。
メルマガの開封率などもここに含まれますが、Webページの訪問状況や滞在時間、リンクのクリック率や会員登録率、ウェビナー参加率など、さまざまなデータをユーザーの行動履歴から把握することが可能です。
ユーザーの行動履歴からは、彼らへの理解を深める上で実に多くの情報を獲得することができます。営業担当者との関係性の把握や、問い合わせ履歴なども記録ができるため、最適なアプローチの実現に役立ちます。
ホワイトペーパーの作成
Webコンテンツやメールとは別途、より専門的な読み物としてホワイトペーパーを作成すれば、自社のコンテンツやサービスへの深い関心があるかどうかを把握するのに役立ちます。
ホワイトペーパーのダウンロードの際、ユーザーの個人情報を簡単に記入してもらうよう促すことで、その人の氏名や所属組織などの基本情報を獲得し、適切なアプローチを検討するのに役立ちます。
インバウンドマーケティングの一環として、興味がある層にだけ熱心な販売促進を促せるため、不用意なアプローチで見込み客を遠のかせる事態を回避できます。
ウェビナーの開催
ウェビナーは、ビデオ通話機能やストリーミング配信サービスを通じて行われるセミナーのことです。従来のセミナーのように直接会場を訪れる必要がないため、全国に向けて参加者を集い、有益な情報の発信につなげられる点が高く注目されています。
直接企業の担当者が参加者の疑問に答えたり、専門的な領域について紹介したりする機会が得られるだけでなく、参加者の情報を集めるきっかけにもなるため、ユーザーとの関係強化に活躍する施策です。
SNS発信
従来のWebメディアなどとともに強化されつつあるのが、SNSの発信です。
SNSはブログやコーポレートサイトに比べ、ユーザーとの距離が近く、相互にコミュニケーションしやすいことが特徴です。そのため、ユーザーに親身になった情報発信や、気軽にユーザーが話しかけられる環境を整備することで、直接関係を強化することができます。
運用自体はブログの延長で簡単に行えるだけでなく、口コミによるユーザーを介したさらなる発信力の強化にもつながるため、積極的に活用したいところです。
ナーチャリングを実施するメリット
ナーチャリングをうまく実践することで、多くのメリットを獲得できます。ここでは、主な4つのメリットについて紹介します。
ユーザーとの関係を強化できる
一つ目のポイントは、ユーザーとの関係強化です。
ナーチャリングの目的は自社への関心を高めてもらうことですが、ユーザーとの関係強化によってその目的を達成できます。
ユーザーと企業の距離が近づくことで、見込み客の場合は新規成約へ、既存顧客の場合はさらなる商品の購入や継続的なサービスの利用へつなげることができます。
顧客情報を資産として有効活用できる
ナーチャリング施策を実施することで、顧客情報を活用する機会を得られるだけでなく、情報を一元的に蓄積できる体制の構築にもつながります。
ナーチャリングの効果を最大限高めるためには、一元化されたデータベースが欠かせません。ナーチャリングサービスの導入などを通じて、これまで社内でバラバラに保管されてきたデータをまとめ上げ、会社の一つの資産として活用できるようアップデートを行えます。
潜在的な顧客を掘り起こせる
ナーチャリングが可能なデータベースを構築することで、新規情報の獲得を推進できるだけでなく、既存の情報を再度活用できる体制を整えることも可能です。
これまで放置されてきた顧客情報も、ナーチャリングツールにかけてみることで、意外な運用可能性を秘めている可能性があります。最適なアプローチを検討することで、これまで見込みがないとされてきたユーザーに対しても、関係値を高められるきっかけを得られるかもしれません。
効率的な営業が実現する
ナーチャリングによってユーザーとの関係を強化すれば、営業活動の効率化も実現します。
顧客リストを総当たりしながら営業活動を行う方法は、時間がかるだけでなく成約率の改善も見込めないため、効率的な方法であるとはいえません。ナーチャリングによって、ユーザーと企業の距離を近づけ、向こうから興味を持ってもらえるよう促せます。
ナーチャリングを成功に導くポイント
ナーチャリングの効果を最大限高めるためには、適切な手順を踏むことが大切です。ここでは、ナーチャリングを成功に導くための4つのポイントを紹介します。
ユーザーの多様性を尊重する
一つ目のポイントは、ユーザーの多様性への注目です。
たとえ同じ製品の購入を検討している場合でも、その購入目的はユーザーによって異なるため、必ずしも同じアプローチで購入を決定してもらえるとは限りません。彼らの特性や行動履歴を確認し、最適な近づき方で関係の強化につなげることが重要です。
顧客ごとのシナリオを事前に設計する
ユーザーの多様性を尊重したアプローチを実施するためには、あらかじめ複数のシナリオを想定して作成しなければなりません。ユーザーデータを参考にしながら、どんなアプローチが最適であるかの検討を事前に徹底しましょう。
データベースを整理する
ナーチャリングにおいては、ユーザーデータが整頓されたデータベースの用意が前提となります。社内に分散しているデータを統合し、それらをフル活用できる体制作りからスタートしていきましょう。
長期的な取り組みを心がける
ナーチャリングは長期的な関係を見込み客や顧客と築き上げる活動であるため、短期間で成果をあげることが難しい取り組みです。そのため、目標設定の際には期間を長めに設け、あまり短い期間で施策の良し悪しを決めつけてしまわないことが大切です。
ナーチャリングに活用したいツール
最後に、ナーチャリングに活用したい主なツールを紹介します。
Salesforce
Salesforceはセールスフォース・ドットコムが提供する、世界で最も導入が進んでいる顧客関係管理(CRM)ツールの一つで、ナーチャリングにも高い効果を発揮しています。
Salesforceの最大の特徴は、一流企業のベストプラクティス、つまり最大効果を発揮できる仕組みを採用している点です。ノウハウの蓄積がない新興企業でもSalesforceの導入で一流の環境を整備できるため、ビジネスの円滑な成長を促してくれます。
高いポテンシャルを秘めた商品やサービスを提供しているけれど、ユーザーとのコミュニケーションがうまくいかず、成約につながらないと悩んでいる企業におすすめしたいサービスです。
料金プラン(1ライセンスあたり)
・要問い合わせ
公式サイト
List Finder(リストファインダー)
ちょうどいいマーケティングオートメーションをコンセプトに掲げるList Finderは、BtoB企業に特化したナーチャリング機能を備えたツールです。株式会社Innovation & Co.が提供しています。
月額3万円台からという導入のしやすさもさることながら、活用に向けたコンサルティングサービスを無料で受けられるため、ツール運用の悩み相談を気軽に行えることが強みです。
初めてのナーチャリングで、お試し感覚でスタートさせたいという方や、あまり予算をかけられないという企業に向けておすすめできるサービスです。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・初期費用10万円
- ・ライトプラン:3万9,800円/月〜(ユーザー数無制限)
- ・スタンダードプラン:5万9,800円/月〜(ユーザー数無制限)
- ・プレミアムプラン:7万9,800円/月〜(ユーザー数無制限)
公式サイト
Zoho(ゾーホー)
Zohoは、売り上げにつながるリードナーチャリング機能を備えているということで、ユーザーとの関係強化に力を入れているツールです。購買アクションにつながる見込みのあるユーザーの興味関心レベル特定、そして的確に育成し、成約へと結びつけてくれます。
ワークフロー機能を活用すれば、自動ナーチャリング機能を活用できるため、担当者がシナリオを構築する負担を削減できることが特徴です。導入実績も豊富なので、質の高いサービスを運用ノウハウがなくとも最大限活用したい企業や、担当者の負担増加を懸念する企業では高い効果を実感できるでしょう。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・スタンダード:1,440円/月
- ・プロフェッショナル:2,440円/月
- ・エンタープライズ:4,200円/月
- ・アルティメット:5,400円/月
公式サイト
まとめ
ナーチャリングの重要性やどのような活用方法があるのかについて解説しました。ナーチャリングを通じてユーザーとの関係を深めることで営業効率を高め、末長いサービスの利用にも発展させることができます。
ユーザーとの関係強化や既存顧客との長期的な関係構築は、企業の継続的な活動に大きな影響を与えます。適切な環境を整備し多様なナーチャリングを実施して、良好な関係構築に努めましょう。