採用ミスマッチは、早期離職者の増加や生産性の低下など企業に大きな損失を与えます。企業規模を問わず、「どうにかして早期離職を防ぎたい」「採用ミスマッチってどうすれば防げるの?」と悩んでいる担当者は少なくありません。
労働人口減少による人手不足のなかで効率よく求める人材を確保し、長く勤めてもらうには採用ミスマッチを防ぐ対策が必要です。
この記事では、採用ミスマッチの原因と対策について解説します。企業の損失についてもまとめました。
日本の早期離職率と平均離職率の現状
- 厚生労働省の調査をもとに、新卒が3年以内に離職する早期離職率、中途採用も含めた全体での離職率(常用労働者数に対する離職者数の割合)を紹介 ※最新版のデータを参考にする
- データをもとに結果や見えるものを解説
- 各表を引用
厚生労働省が2022年10月28日に公表した新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)によると、就職後3年以内の離職率は高卒者で35.9%、大卒者で31.5%とわかりました。
事業所規模 | 新規学卒者 | |
---|---|---|
高校 | 大学 | |
5人未満 | 60.5% | 55.9% |
5~29人 | 51.7% | 48.8% |
30~99人 | 43.4% | 39.4% |
100~499人 | 35.1% | 31.8% |
500~999人 | 30.1% | 29.6% |
1,000人以上 | 24.9% | 25.3% |
規模合計 | 35.9% | 31.5% |
引用:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」
どちらも事業規模が大きいほど離職率が低下していることがわかります。とくに常用労働者数30人未満の事業所は離職率が高卒で50%以上、大卒でもそれに近い割合となっています。
2022年上半期(1月~6月)の就業形態別の離職率をみてみましょう。
区分 | 離職率 | 入職率 |
---|---|---|
常用労働者数合計 | 8.7% | 9.3% |
一般労働者 | 6.8% | 7.8% |
パートタイム労働者 | 13.7% | 13.2% |
引用:厚生労働省「令和4年上半期雇用動向調査結果の概況 令和4年上半期常用労働者の動き」
全体をとおして入職者の割合が高いものの、パートタイム労働者の離職率は入職者を上回っています。一般労働者よりもパートタイム労働者のほうが離職率が高いことがわかります。なぜパートタイム労働者だけ離職率がここまで高いのでしょうか。
データから見る前職を辞めた主な理由
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概要」よると転職者が前職を辞めた理由で多かったのは以下の3つでした。
- 労働時間・休日等の労働条件が悪かった
- 職場の人間関係が好ましくなかった
- 給与等収入が少なかった
労働条件は入社前に募集要項で確認しているものの、現実の労働環境との差が大きくショックを受けて労働意欲が低下するようです。これは企業側が現実の労働環境をきちんと説明していなかったことが理由だと考えられます。
人間関係についても入社前で判断しづらく、企業風土や社風などが肌にあわないと入社してから気がつくようです。また、収入については募集要項で確認しているものの、実際の労働に対して割にあわないと感じると納得ができず、不満が溜まって離職を決意するようです。
採用ミスマッチが起こる企業側の主な原因
採用ミスマッチが起こる企業側の原因を4つご紹介します。主に企業側の説明不足や応募者理解の不足などがあげられます。自社の採用活動において該当するものはないか確認してみましょう。
開示している情報が少ない
採用ミスマッチが起こる原因として挙げられるのが、企業側が求職者に対して、自社の情報を十分に伝えきれていないことがあげられます。
たとえば体育会系の活発な風土の企業に、コミュニケーションが得意ではなく、ひとりでもくもくと作業を進めたい人が入社した場合、個人の能力を思うように発揮できない可能性があります。事前に企業理解を深めていれば応募はしなかったでしょう。
企業側はこうした労働環境の雰囲気や業務内容、業務時間など詳細な情報を開示しなければなりません。
よい面ばかり伝えている
優秀な人材をなるだけ多く確保するため、採用活動でよい面ばかり伝えているとミスマッチが起こりやすくなります。よい面を伝えたい気持ちはわかりますが、あまりにも良いことばかり書いてあると、不信感やイメージの低下につながる可能性があるのです。
求職者に伝える情報には、休日出勤や残業の有無、研修制度の内容、職場環境などがあります。なかには公表したくない情報もあると思いますが、入社前に知ったほうが採用ミスマッチや早期離職を防ぐことが可能なため、検討してください。
応募者の適性を理解できていない
応募者に対する理解不足も採用ミスマッチの原因のひとつです。とくに面接担当者が応募者の適性を正確に判断できていないことがあげられます。履歴書に記載された学歴や資格だけで応募者の適性を正確に判断するのは困難です。
適性を判断するには適性テストがあります。適性テストの実施により応募者の適性を把握しやすくなります。適性テストの結果と面接時のコミュニケーションで、より自社に適した人材かを見極めることが可能です。
さらにリファレンスチェックもおすすめです。前職の関係者に応募者の情報を確認できるため、信ぴょう性の高い情報を得ることができます。
入社前後のフォローが足りていない
入社前後のフォローが不足していると、職場環境や業務内容などのギャップを感じやすくなります。とくに人間関係や評価制度については、入社後に知ることで大きなストレスとなるようです。とくに新卒の場合、このようなギャップを感じやすいため注意しなければなりません。
採用時は適性があったと思っていた人材も、入社後のフォローがおろそかになることで退職するケースもあります。入社前に体験入社を実施したり、入社後のコミュニケーションを積極的にとったりなど、こまめなフォローが大切です。
採用ミスマッチによる企業の損失
採用ミスマッチが生じることで、企業はどのような損失を被ることになるのか、かんたんに解説します。
余計な採用コストがかかる
採用活動にかかるコストは「内部コスト」と「外部コスト」の2つに分けられます。
内部コスト | 外部コスト |
---|---|
・求人広告を出すときの打ち合わせ人件費 ・採用担当者の人件費 ・応募者の交通費 ・内定者の引っ越し費用など | ・求人広告費用 ・会社説明会などの会場費 ・採用管理システムの導入費 ・内定者の外部研修費用など |
採用活動にはこうしたさまざまな費用がかかります。エン・ジャパンによると、社員1名が入社3カ月で離職した場合、約187.5万円の損失が出ると試算されました。採用してもすぐに辞められてしまうと、教育や研修にかかった費用がすべて無駄になってしまいます。さらに新たな人材を確保するための費用が掛かります。
こうした採用コストの損失を避けるために早期離職の穴を放置すると、現場の負担が増加し、在籍する従業員のモチベーションの低下につながりかねません。採用コストを無駄にしないための対策が求められます。
ノウハウが蓄積されない
企業は、社員が働くうえで得ていく知識や経験などのノウハウを共有して成長につなげていきます。しかし、採用ミスマッチによる早期離職者が増えると、企業成長に必要なノウハウが蓄積されません。
ノウハウは業務効率化など経営戦略を後押しする「業務ノウハウ」と、採用活動の成功事例をもとに効率化を図るための「採用ノウハウ」の2つのノウハウがあります。
早期離職者の増加により、こうしたノウハウが蓄積されないことで生産性が低下し、結果的に企業の成長力も低下。結果、大きな損失を被ることになります。
従業員のモチベーション低下につながる
採用ミスマッチの従業員がいると、在籍している従業員のモチベーションの低下やストレス増加につながります。早期離職者が出た場合、その従業員が抱えていた仕事を引き受けるのは残った従業員です。負担増加によるストレスの増加。さらなる離職につながるおそれも考えられます。
採用前に適性を把握していればこうした損失も防ぐことが可能です。入社後にミスマッチが判明したときは、ていねいなフォローにより本人が希望する業務を任せることで早期離職を防げます。
企業イメージが損なわれる
離職率が高い企業は、求職者にとってブラック企業として認識されやすく、企業のイメージダウンにつながります。取引先や顧客からも「何か問題があるのでは?」といった印象を持たれやすくなり、社会的信用の低下による取引の停止、売上の減少につながることも考えられます。
求職者にとって魅力的な情報を掲載すれば興味を引くことはできますが、離職率が高ければ意味がありません。また、昨今は求人サイトに企業の口コミを従業員が投稿できるため、募集要項とギャップがあればマイナスなイメージが出回る可能性もあります。
採用ミスマッチを防ぐ対策6選
採用ミスマッチを防ぐには、募集から入社後までそれぞれのプロセスで必要な対策が異なります。ここでは採用ミスマッチを防ぐための6つの方法について解説します。
採用要件を明確化する
採用要件を明確にすることで、評価のズレを改善し、採用ミスマッチを防ぐことが可能です。採用要件とは、業務遂行のために必要な資格やスキルなどの条件を指します。現場で円滑にコミュニケーションがとれるかどうか人物像も見極めなければなりません。
面接は事前に設問内容を決めておく構造化面接を採用することで、面接官の個人的な感情が入りにくくなり、評価のズレを防ぐことができます。
採用条件の決め方と選考フローについては、下記の記事でも解説しています。自社に適した採用要件を決めるのにぜひお役立てください。
良い人材を見極める採用条件の決め方!8つの基準や手順、採用ツールのメリットを紹介
採用要件は他社ともかぶりやすいものです。優秀な人材を確保するためには、綿密な人材採用の戦略を立てなければなりません。以下の記事では採用戦略のメリットやポイント、進め方について解説しています。参考になさってください。
【2023】人材採用の方法とは?人材採用戦略のコツとやり方を解説
自社のありのままを伝える
採用ミスマッチは業務時間や業務内容、労働環境、在籍する従業員の特徴などリアルな企業の情報を可能な限り開示することで防げる可能性があります。
残業や休日出勤などデメリットと思える部分も隠さず伝えるのがポイントです。入社前にメリットとデメリットを把握してもらうことで人材の定着を図ります。この手法は、アメリカの産業心理学者ジョン・ワナウスが提唱した採用理論RJP(Realistic Job Preview=現実的な仕事情報の事前開示)にもとづいたものです。
自社のありのままを伝えたうえで応募してくる人は、それなりに覚悟をもっているためミスマッチにつながりにくいと考えることができます。また、デメリットの開示により信頼度の向上につながり、求職者の興味を引くことも可能です。
自社が求めるパフォーマンスを面接時に伝える
採用ミスマッチが起こるのは、選考時に担当者の主観や思い込みによる判断ミスがあげられます。ミスマッチを防ぐには、面接のときにどのような活躍を期待しているのか、求めているパフォーマンスを具体的に伝えることがポイントです。
ジョブディスクリプションを導入し、何の業務をして欲しいのか、どの程度のスキルが必要かを提示することでミスマッチを防ぐことができます。ほかにもスキルチェックシートを応募者に記入してもらう方法も効果的です業務遂行に欠かせないスキルを判断できるため、求める人材の選考に役立てることができます。
リファラル採用を取り入れる
近年、採用手法も多様化しており、自社の従業員に知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」を導入している企業も少なくありません。自社で働く従業員なら、業務内容や社内の雰囲気などが伝えやすいため、ミスマッチが起こりにくいと考えられています。
リファラル採用を成功させるには、「求める人物像」を従業員と共有しておくことです。どのような人材を採用したいのか周知していなければ、応募者の質に差が生じてミスマッチの原因となります。事前に従業員と「求める人物像」を共有しておくことが大切です。
下記の記事ではリファラル採用についてくわしく解説しています。トラブル事例なども参考になさったうえで導入を検討してください。
リファラル採用とは?メリットやデメリット、円滑に進める方法を知ろう
リファラル採用で起こり得るトラブル事例5選!失敗を回避する方法とは?
従業員との交流の機会を設ける
事前に従業員の雰囲気を知ってもらうことで、採用ミスマッチを防ぐことができます。入社前に勉強会や座談会などを開催し、在籍する従業員と交流の機会を設けましょう。募集要項では把握が難しい情報や、面接では聞きにくい内容を確認できるため、求職者が抱えている不安を払しょくできます。
体験入社やインターンシップの導入も効果的です。実際に業務の流れを知り、職場の雰囲気を体感することができます。自社の社風や風土、雰囲気が伝わることで相互理解が深まり、入社後のギャップを抑えることが可能です。
アフターフォローを徹底する
入社後はモチベーションを維持してもらうため、アフターフォローに徹してください。アフターフォローの体制は内定承諾率や離職率の低下にもつながります。
体験入社や内定者オリエンテーション、メンター制度など内定者への定期的な連絡を行いましょう。内定者同士で交流を深められる懇親会なども効果的です。
新卒と中途採用では抱えている不安や悩みも異なるため、内定者の属性に合わせたフォローが必要です。
ただし、業務量の多さから、内定者のフォローにまで手がまわらない担当者も少なくありません。その場合、
採用支援サービスの導入がおすすめです。採用支援サービスへ業務を委託することで、担当者の業務負担を軽減し、効率化を図れます。下記でくわしく解説していますので、ぜひ参考になさってください。
まとめ:採用ミスマッチの対策は募集前から始まっている
採用ミスマッチは応募者と企業の相互理解が不足していることで発生します。ミスマッチによる早期離職は企業にとっても大きな損失となるため対策が必要です。
採用ミスマッチを防ぐ施策は募集前から始まっています。欲しい人材を効率よく見つけるなら『面接コボット for アルバイト』がおすすめです。面接日程の調整の自動化やWeb面談など、採用業務の効率化を図れます。
求人原稿に書ききれなかった訴求ポイントや業務内容の詳細などをチャットボットであらかじめ伝えることができるため、相互理解を深めるのにも役立ちます。「応募者の管理が大変」「導入した採用管理ツールが活用できなかった」など、採用業務に悩んでいるなら『面接コボット for アルバイト』が解決します!ぜひお申込みください。