アルバイトの定着率が低いことでお悩みなら、職場環境や労働条件を見直して雰囲気を整えることが大切です。改善しなければ採用コストがかかるだけではなく、従業員の負担が増えて連鎖退職が起こるおそれもあります。しかし、アルバイトの定着率を上げるといっても具体的にどうすればよいのかわからない方もいることでしょう。
今回は、アルバイトの定着率が悪い原因や企業が受けるダメージ、定着率を上げる8つのコツについて解説します。
アルバイトの離職率・定着率と計算方法
労働者人口の減少により多くの企業や店舗で人材が不足しています。そのようななかでアルバイトの離職率が高い場合は、定着率についても考えることが大切です。離職率と定着率についてかんたんに解説しましょう。
離職率とは
離職率とは、採用したアルバイトのうち退社した人の割合を示す指標のことです。離職率を求めるときは以下の計算式を使用します。
常用労働者数には、正社員やアルバイトなど雇用形態を問わず、すべての労働者が含まれています。
この計算式を用いて、アルバイトの離職率を求めてみましょう。
【例】
年度初めのアルバイト在籍数が30人のスーパーで、1年以内に5名が離職したときの離職率。
離職者:3名 ÷ 年度初めのアルバイト在籍数:36人 × 100 = 8.3%
この場合は離職率が8.3%となります。離職率は採用人数に対する離職者に着目した指標です。割合が低いほど離職者が少なく、雇用が安定していることになります。
定着率とは
定着率とは採用後、一定期間を経てどのくらいの人数が在籍し続けているのか、定着の割合を示す指標です。計算式は以下のようになります。
この計算式を用いて、アルバイトの定着率を求めてみましょう。
【例】
1年間で20名がアルバイトとして入社し、1年以内に4名が離職したときの定着率。
(入社人数:20名 − 離職人数:4名) ÷ 入社人数:20名 × 100 = 80%
この場合の定着率は80%です。定着率の割合が高いほど、多くの人材が定着していることを示しています。
アルバイトの平均離職率・平均定着率
厚生労働省が毎年公示している「雇用動向調査結果の概況」には、主要産業の入職・離職に関する調査結果がまとめられています。2023年8月22日に公示された「令和4年雇用動向調査結果の概況」をもとに、パート・アルバイトと一般労働者の平均離職率と平均定着率をまとめてみました。
2022年度 | パート・アルバイト | 一般労働者 |
離職率 | 23.1% | 11.9% |
定着率 | 76% | 88% |
パート・アルバイトは一般労働者よりも離職率が11.2%高く、定着率は12%低いことがわかりました。つまり、新たに入社しても年内にその人数を超える人が辞めていることになります。
多くの企業や店舗を支えるパート・アルバイトの離職率の増加を防ぐには、どうすればよいのでしょうか。
下記の記事では離職率と定着率についてくわしく解説しています。離職率が高い会社の特徴についてもまとめていますので、参考になさってください。
関連記事:離職率が高い会社の特徴・原因とは?定着率を高める方法10選
定着率が悪い企業が受けるダメージ
定着率の低さは、企業のイメージにも大きな影響を与えます。どのようなダメージを受けるのか、ここでは定着率の影響による企業の問題について解説します。
採用活動のコストやリソースの負荷がかかる
アルバイトを採用するときは、求人広告媒体の掲載費用や担当者との打ち合わせ、応募者対応、面接、採用連絡などが必要です。さらに入社後は、基本的なオペレーションやマニュアルにもとづいた指導、研修費など採用や育成においてもさまざまな費用や時間がかかります。くわしくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023】採用コストとは?一人当りの単価やコスト削減方法を解説
しかし、こうしてコストや時間をかけて育成しても、辞められたらすべて無駄となるのは採用担当者にとっても辛いものです。採用担当が辛いと感じたときは以下の記事で解決策について解説していますので、ぜひお役立てください。
関連記事:採用担当者が辛いと感じる7つの原因!軽減するための施策と求められるスキル・知識
サービスの質が統一されない
アルバイトがすぐに辞めてしまう人の入れ替わりが激しい店舗では、業務に慣れている人材がないことで、ミスが起こりやすくなるおそれがあります。残っているアルバイトのスキルレベルが向上しないため、サービスの質を統一することができません。結果、店舗全体で提供するサービスの質が低下するおそれがあるのです。
サービス品質が低下すると顧客満足度も下がります。当然、利用者数も減少するでしょう。その結果、売上減少にもつながるおそれがあります。
従業員の負担が増えて生産性が下がる
アルバイトが辞めてしまうとほかの従業員の労働負担が増えるのは当然です。新しい人材を採用して戦力として育てるのも時間がかかります。状況が改善するまで、残っている従業員でまわさなければなりません。
負担が長期間続くと、モチベーションの低下や生産性に大きく影響を与えます。新たな離職者が出てしまうおそれもあることを考えておかなければなりません。
アルバイトの定着率が悪くなる原因
アルバイトの定着率が悪くなる原因は以下のとおりです。
- 職場環境や人間関係が悪い
- 賃金が低い・待遇が悪い
- 勤務時間や休みが合わない
- 人材不足で労働時間が長い
- キャリアアップやスキルアップが難しい
- 面接時の話をギャップがある
それぞれくわしく解説します。
職場環境や人間関係が悪い
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概要」によると、前職を辞めた個人的な理由のなかでもっとも多かった回答が「職場環境」や「人間関係」に関するものでした。パワハラやいじめ、セクハラなどの問題がある職場は、アルバイトの入れ替わりが激しい傾向があります。
また、オフィスや店舗の汚れや照明の明るさ、換気が悪く室温調整が良好ではない、騒音がある職場も定着率が低い傾向があります。アルバイトの働く意欲を高めるには、働きやすい環境を整えることが大切です。
賃金が低い・待遇が悪い
一般的にアルバイトは正社員に比べて賃金が低く、福利厚生も充実していません。正規雇用である正社員との待遇格差による不満が離職のきっかけとなるケースもあります。とくに長く勤めていると、仕事を覚えてくるため、正社員と同じような業務量を担っている場合、賃金や待遇の差に不満を抱きやすくなります。
当然、同じ仕事内容で待遇がよい職場があれば、離職を決意するでしょう。正社員と比べて仕事内容や賃金、待遇面などに大きな差がないかどうかを見直すことが大切です。
勤務時間や休みが合わない
アルバイトはシフト制で自分の都合にあわせて働く日を希望できます。しかし、勤務時間が自分の希望に合わなかったり、休みが思うように取れなかったりと自分の都合がまったく反映されない状況が続くと、離職を決意するきっかけを与えてしまうことになります。
こうした労働時間やシフトについて配慮が不十分な場合、離職者が増えて定着率の低下を招く可能性が高くなるため注意が必要です。
人材不足で労働時間が長い
労働時間が長いことも定着率が低くなる原因のひとつです。人材が不足している職場は、従業員一人ひとりに対する業務量が増えるため、モチベーションをたもつことができません。
さらに店長が人材不足をカバーするために現場で長時間働くようになると、シフトの作成や従業員の教育に時間を割くゆとりがなくなります。このようにアルバイトの定着率の低さは店舗全体にも大きく影響を与えるため、早急な対応が必要です。
キャリアアップやスキルアップが難しい
アルバイトは正社員と比べて、キャリアアップやスキルアップの機会が限られていることが多くあります。アルバイトのなかには視座が高い人も多く、キャリアアップを望んでいるケースもあります。
しかし、学ぶ機会やキャリアアップの機会が与えられないと、優秀な人材はやる気を失って離職を決意してしまうのです。優秀な人材の離職は他のアルバイトにも影響を及ぼすおそれもあるため、改善しなければなりません。
面接時の話とギャップがある
応募者は求人原稿に記載された職場環境や労働条件をイメージして応募するものです。しかし、面接時に聞いた内容と実際の労働内容にギャップを感じると離職を決意してしまいます。
求人原稿の内容を誇張したり、面接でうまいことをいったりして採用する職場だとこうしたギャップが原因となり、定着率が悪くなる傾向があります。本当の職場環境を伝えられないことが大きな問題です。自信をもって募集をかけられるような環境へ改善しなければなりません。
アルバイトの定着率を上げる8つのコツ
アルバイトの定着率を上げるには、賃金や待遇面の改善以外にさまざまな方法があります。定着率を上げるために企業が取り組むべき8つのコツをご紹介します。
面接時・採用時に認識をすり合わせてミスマッチを防ぐ
アルバイトの定着率を上げるには、採用ミスマッチを防ぐことが大切です。「募集要項と仕事内容が違う」「面接時に聞いていない」といったトラブルは誤認識が原因のため、面接時や採用時に認識をすり合わせてミスマッチを防ぎましょう。
とくに休暇日数や労働時間、給与額などの労働条件については、あいまいにせず明確に伝えることが大切です。以下で採用ミスマッチの原因についてくわしく解説していますので、自社に該当するものがあれば、改善に努めてください。
関連記事:採用ミスマッチの原因と対策とは?マッチング率を上げて企業の損失を防ぐ
面接時には求人原稿を印刷して、内容や認識に相違がないかを一緒に確認してもよいでしょう。そもそも求人原稿の内容に誤解を生むような表現がないか確認することも重要です。面接時に確認することは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【企業側】アルバイトの面接で確認すること8つ!進め方や気をつけること
募集要項に求職者が知りたい情報がきちんと掲載されていれば、労働条件などを誇張しなくても求める人材からの応募が期待できます。
関連記事:求職者が知りたい情報・重視する項目とは?応募が来ない理由と対策
応募者が長く働いてくれそうか、面接時に見極めたいときは以下の記事を参考になさってください。
関連記事:面接で人柄を見抜く質問集!面接の進め方やコツを理解してマッチング率を上げよう
新人教育・研修内容を充実させる
アルバイトが不安なく働ける環境を作ることも大切です。とくに新人アルバイトは出勤初日から現場に立たせるのではなく、オリエンテーションを実施して仕事内容を理解してもらうことから始めましょう。
新人が戦力となるには時間がかかるものという認識をもつことが大切です。新人研修以外にも、業務レベルにあわせて段階的に学べる研修プログラムを作ることで、新しいスキルも身につけやすくなります。仕事の意味や重要性を理解してもらえるように、じっくりと教育を行い、活躍できる人材へと育てることが可能です。
職場内のコミュニケーションを欠かさない
職場の人間関係がよいと多少のストレスがあっても「辞めよう」とは思いにくくなるものです。社員やアルバイトが交流できる機会を定期的に設けることで、コミュニケーションが活発となり、職場の風通しがよくなることが期待できます。
新人アルバイトの勤務開始日前に、既存スタッフに新人が入ることを周知しておくことも大切です。既存スタッフは新人を受け入れる心構えができますし、新人アルバイトは不安感の解消にもつながります。
賃金や待遇面を改善する
アルバイトが辞める理由として賃金や待遇面の改善があげられます。昇給や福利厚生などの制度を改善することはモチベーションアップに効果的です。現在の給与改定(賃金改定)が年1回なら、半年に1回に増やすなど制度の見直しを検討しましょう。
自社の採用状況を洗い出したうえで、採用競合となる企業の制度や待遇を調査・比較し、自社で取り入れられそうな内容を社内で検討することも重要です。
正社員登用制度を取り入れる
アルバイトは正社員よりも賃金が低く、待遇面も恵まれてはいないことがほとんどです。正社員へキャリアアップできるチャンスを提供することで、長期的なキャリアビジョンを立てられます。自身の将来像を具体的に描ける環境は、働く意欲の向上にもつなげること可能です。
アルバイトも自己成長の機会を得られると、より真剣に業務に取り組むようになります。一人ひとりと面談を実施して、目標に合わせたサポートとしてスキルアップの機会を与えるのがコツです。結果、生産性が高まり、売上向上につなげることもできるでしょう。
シフト制度を改善する
プライベートの都合にあわせるためにアルバイトを選んでいる人も少なくありません。シフトを作成するときは、アルバイトの希望をできるだけ考慮し、個々のライフスタイルにあわせた働き方を実現できるように努めることが大切です。
人間関係などに不満がなくても、休みの取りにくさなどが理由で離職を決意する人もいます。しかし、希望をすべて聞いてシフトを作成した結果、業務量に偏りが出てしまうおそれもあります。適正な人員配置を心掛けて柔軟な休暇制度を設けるなど、アルバイトが休みを取りやすい環境を整えることも重要です。
仕事の評価を正当に行う
働く目的の多くは「収入を得るため」という回答が多くありますが、アルバイトにとっての給料は労働への対価だけではありません。正社員と同じ労働でなくても、仕事に対する努力やがんばりは認めてもらいたいという思いがあります。
ふだんのがんばりに対して評価をもらえると「もっと頑張ろう」とモチベーションアップにつながります。長く働いてもらうにはアルバイトの仕事ぶりを正当に評価し、それに見合った賃金を支払うことが大切です。
職場環境を改善する
職場環境はアルバイトの定着率に大きく影響を与えます。清潔で整った職場や快適に働ける設備を提供することで、従業員のストレスを軽減することが可能です。
また、職場環境のなかには社内風土も含まれます。正社員と同じ環境で働く場合、アルバイトだからといって、引け目や疎外感を感じさせるような社内風土は離職の可能性も高まります。社内イベントはアルバイトを含め全従業員を対象に実施するなど、同じ職場で働く仲間として気を配ることも大切です。
アルバイトの定着率アップに向けて職場の雰囲気をよくする方法
アルバイトの定着率を上げるために、取り組みやすい職場の雰囲気をよくする方法は以下のとおりです。
- 「ありがとう」を忘れない
- 相手を否定する発言をしない
- 誰にでも失敗はあることを理解してフォローする
それぞれかんたんに解説します。
「ありがとう」を忘れない
「ありがとう」と感謝の言葉を伝えることを大事にすることは、職場の雰囲気をよくする行動のひとつです。誰でも感謝の言葉をもらうと嬉しい気持ちになるものです。仕事に対して前向きに取り組むきっかけを与えるだけでなく、感謝の言葉をもらったアルバイトは仕事に対して自信をもてるようになるかもしれません。
感謝の言葉は交流が少ない人にも伝えやすいものです。コミュニケーションを取るきっかけにもなります。「ありがとう」と感謝の気持ちを言葉で伝える大切さを全従業員に周知することをおすすめします。
相手を否定する発言をしない
アルバイトや正社員など関係なく、意見を伝えられる職場は雰囲気がよいものです。良好な関係を築くために、まずは相手の話をよく聞いて価値観を受け入れることで、否定することなく課題解決に向けた前向きな意見を伝えることができます。
たとえ意見が正論だとしても、論破する行為は相手を追い詰めるだけです。互いの信頼を失うだけでなく、業務に支障をきたすほど関係性が悪化する可能性もあります。
組織力を高めるには多様性を認めることが大切です。すべての従業員が互いを認め合い、尊重できるような組織づくりを目指しましょう。
誰にでも失敗はあることを理解してフォローする
困っている人がいるときにフォローをすることも、職場の雰囲気をよくするためにすべき行動のひとつです。困っている人を助け合う雰囲気があれば、周囲も自然とサポートし合うようになります。
新人アルバイトが入ってきたら、最初は失敗をするものだとフォローをするつもりで接することも大切です。フォローをきっかけにコミュニケーションも生まれ、職場になじむきっかけを与えることができます。働く意欲にもつながるため、定着率アップが期待できるでしょう。
まとめ:アルバイトの定着率を上げるなら求人原稿の見直しから始めよう
アルバイトの定着率を上げる方法には、職場環境や労働条件の改善があげられますが、採用におけるミスマッチを減らすことも大切です。
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