求人雑誌のみならず、インターネットを通じてさまざまな求人情報が掲載されている現代。より多くの求職者を集めるために、魅力的な求人内容にしたいと思う経営者も少なくないでしょう。
しかし、求人内容と実際の労働条件が異なる場合には違法となるケースもあります。
本記事ではどのような場合に違法となるのか、誤解を招かない求人広告を作るにはどうすればよいかを紹介します。正しい求人広告を出して、優秀な人材を集めましょう。
求人内容と実際の労働条件が違う場合は違法になる?
はじめに、どのような求人内容であると違法になってしまうのかを解説します。掲載内容によっては違法にならない場合もあり、違法になったケースも紹介しますので把握しておきましょう。
必ずしも違法になるとは限らない
求人内容に載っていた条件と、実際に働いたときの条件が少しでも違っていたら違法か、という点では必ずしも違法になるとは限りません。
求人広告は労働者募集への応募を誘うためのものです。つまり、そこに記載されている条件等はあくまで「見込み」であり、内容がそのまま労働条件というわけではないのです。
事前の面接などで労働条件が提示され、最終的には内定後の交渉と雇用契約書の締結によって正式に決定されるものが実際の労働条件になります。
求人内容と違っていたとしても、正式な雇用になる前に求職者が納得できなければ断ることも可能です。最終的に求職者が同意することで契約が成立するため、求人内容と違っていたからといって必ずしも違法とは言えません。
違法になる場合もある
求職者の同意があり契約を結んでいれば違法にはならないのであれば、どのような条件でも掲載していいのでは?と考えてしまいそうですが、それがまさに違法となるケースに該当します。
最初から労働条件を変更することを前提として、求職者を集めるために好条件を提示することは「求人詐欺」となります。
明らかに労働条件を誤解させるような掲載の仕方をしていた場合は求人詐欺となり、職業安定法第65条8号で「虚偽の広告をする、または虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集もしくは労働者の供給を行った者、またはこれらに従事した者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」と定められています。
処罰対象とならないよう、掲載する求人内容には注意が必要です。
違法になる場合の具体例
平成11年に発生した「日新火災海上保険事件」では、変更ありきで実際の給与体系とは異なる虚偽の求人内容で募集した企業に対し、慰謝料の支払いが命じられました。
広告には「89年卒であれば、89年に入社した社員の現時点の給与と同等の額をお約束します」と記載があり、81年卒の労働者が入社しました。しかし、実際には新卒同年次定期採用者の下限に位置付けられており、差額賃金の支払い等を請求しました。
この判例では、求人広告は見込みであることや説明会にて明確に意思表示がされていたわけではないとして、労働者の請求は棄却されています。しかし、労働基準法第15条1項(労働条件の明示)の違反、雇用契約締結に至る過程における信義則違反が認められ、そちらの慰謝料が支払われることになりました。
求人内容と実際の労働条件に相違が生まれてしまう原因
違法にならないように気をつけていても、掲載内容と実際の労働条件には相違が出てしまうことがあります。
労使間でどのようにして相違が生まれてしまうのかを解説しますので、自社に足りていない点がないか確認してみましょう。
企業の採用担当者の知識不足・経験不足
企業の採用担当者は採用活動においてそのスキルが問われます。
採用担当者のキャリアが浅いと、知識不足や経験不足が原因となって求人情報と実際の労働条件に相違が生まれてしまうことがあります。
また、新たに立ち上げた企業や新事業へ拡大したときなどは、企業側で採用方針が確立していないこともあります。人手不足を補うことを優先してしまうと、採用した人物像がバラバラであったり、仕事の内容や労働時間が定まっていないなどの相違が発生し、労働者からすると「採用前の条件と違っている」というトラブルに発展します。
数を集めるために求人内容を曖昧にしてしまうことは、故意ではなかったとしても誤解を生む可能性があるため、注意が必要です。
企業と応募者のコミュニケーション不足
会社の説明会や面接、入社時の面談などで企業は応募者へ労働条件などを説明する機会があります。限られた機会での説明不足、コミュニケーション不足も相違が生まれる原因となることがあります。
求人情報に載せられる情報量では全てを伝えることはできません。給与・賞与や労働時間などには細かな条件があります。先に例に挙げた「日新火災海上保険事件」も同様ですが、会社の説明会にて労働者へしっかりと条件の説明が為されていれば、相違が生まれることはありませんでした。
労働者が実際に働いてみて条件と違うと感じることがないようにするためには、事前の説明会などでコミュニケーションを取り、相違がないことを確認した上で契約を締結しましょう。
求人広告の誇大表示
求職者が企業を選ぶ時代になっているため、企業も求人広告を出す際には目を惹くキャッチフレーズを使いたいと考えます。しかし、強すぎるキャッチフレーズは労働条件との相違を生みやすい原因となります。
「成績次第で月収100万円も可能!」といった表現は、条件を達成すれば全員が得られるようにも受け取れますが、実際には一部の優秀な社員のみ与えられる報酬だった場合や「残業ほぼなし!」と記載されていたが、実際には残業が常態化していた場合などです。
このような事例は求人広告の誇大表示に該当し、景品表示法違反に当たる可能性があります。求人広告は表現次第で求職者への印象が変わるため、掲載前にしっかりチェックすることが大切です。
企業側の故意
ここまでで注意すべきことや確認すべきことを挙げましたが、一方で故意に実際の労働条件とは異なる求人内容を提示する企業も少なくありません。
本当のことを書くと求職者が集まらない、とにかく人数だけ揃えたい、求人情報の掲載料を削減するために短期間で募集したいなど、さまざまな理由から意図的に好条件を記載することがあります。
求職者は多くの企業の求人情報に目を通しています。その中でより自分に合った好条件の企業を選びたいという心理を逆手に取った悪質な方法と言えます。
もちろん、実際の労働条件と異なることがわかっていながら、故意に求人広告に嘘を書くことは違法になる可能性が高いので、そのような提示は避けましょう。
誤解を招かない求人広告を作成するために企業がすべきこと
限られた求人情報の中でも魅力的に見せたい、しかしながら法令違反には注意しなければなりません。
誤解を招かない求人広告を作成するために企業がすべきことを解説しますので、各項目に留意して求人広告を作成しましょう。
誇大表示を避け正確な情報を提供する
まずは誇大表示にならないようにすることが大切です。給料(給与)、勤務時間、勤務地、福利厚生、試用期間、休日などの基本的な労働条件を正確かつ具体的に記載しましょう。給料であれば入社者が必ずもらえる金額、最低限の給与を記載しなければなりませんし、残業代が含まれる場合はそのことを明記する必要があります。
また、惹かれる広告にするためにキャッチコピーを盛り込むことは構いませんが、達成が難しい高額報酬や急速な昇進などの現実に即さない内容を記載することは誇大表示とみなされてしまいます。誤解を招かないためにも、実際に可能な条件だけを提示することが大切です。
求人広告のNG表現を知っておく
求人広告で気をつけなければならないのは、労働基準法や職業安定法、景品表示法などの関連法令に違反する表現です。NG表現を把握せずに求人広告を作成するのは大変危険です。
年齢、性別、国籍などに基づく差別的な表現は特に注意が必要です。男性、女性によって募集人数を分けたり、優遇するような表現は禁止されています。また、営業マンやカメラマンといった性別の指定を感じさせるような職種名は、営業スタッフやフォトグラファーなどの別の表現が適切です。
年齢も「30歳までの方」や「若い方歓迎」のような具体的な年齢の表記は禁止されています。また、国籍や住んでいる地域に関しても「◯◯市内にお住まいの方」などの限定的な記載の仕方は避けるべきです。
求人のプロに監修してもらう
求人広告は企業から条件を出して掲載するものなので、コスト削減を考えるならば採用担当者や経営者が自ら作成することも可能です。しかし、上手く魅力を伝えるためには多くの時間と労力を必要とし、作成した求人広告が法令違反していることに気付けないというリスクもあります。
そこで求人広告の専門家に監修してもらい、内容の妥当性や法令違反をしていないか確認してもらうことも選択肢のひとつです。
「採用ページコボット」は求人のプロがサポートを行い、質の高い採用ページを作ることができる採用支援ツールです。プロが監修するので法令違反のチェックなども正確に行えます。求人広告を安全に作成することができるのは企業にとって嬉しいサポートです。
まとめ:正確な求人広告を作成し、法令違反にならないように注意しましょう!
より良い人材、多くの人材を集めたいからといって誇大表示になって法令違反してしまうのは本末転倒です。正確な情報で求人広告を作成することを心掛け、採用活動に取り組みましょう。
より安全に求人広告を出すなら、注目すべきは「採用ページコボット」のサポートです。
プロ監修による採用ページの作成で、企業の魅力を確実に伝えることができ、応募者情報なども一元管理することで採用工数を削減できます。
求人は10媒体以上に同時に掲載できますので、企業の魅力を多くの求職者へアプローチも可能です。
ぜひ「採用ページコボット」を導入してみてください。