「飲食店の経営は難しい」と言われている理由の多くは、開業のハードルが低いうえに天候や市場など、外的要因の影響を受けやすいことがあげられます。
また、開業には多額の資金が必要になるため、繁盛店として成功を収めるには、経営やマーケティングスキルなどを身につけることが大切です。
この記事では、飲食店経営が難しいといわれる理由について解説します。飲食店オーナーや開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
飲食店経営が難しいといわれる理由
中小企業庁の調査結果※によると、飲食店は他業種と比べて開業率と廃業率に大きな差がないことがわかりました。これは開業率・廃業率がともに高く、入れ替わりの激しい業種ということを示しています。
参考:中小企業庁「2022年版 中小企業白書・小規模企業白書」
飲食店は仕入れコストの変動や、サービスを提供するための人件費など、外的要因の影響を受けやすい業種です。
競合の増加やトレンドの変化にも迅速に対応しなければならないため、安定した経営が難しいと言われています。
まずは、飲食店経営が難しいと言われる理由について解説します。飲食店経営に関心を持っている方はぜひ参考になさってください。
多額の初期費用がかかる
飲食店の開業費は、キッチン設備や店舗内装など相応の費用がかかります。開業費は経費計上できるものの、回収には長い年月がかかるものです。
費用は店舗の規模や立地、業態により変動しますが、主に以下のようなものがあります。
- 店舗物件の保証金・敷金・礼金
- 内装工事費
- 厨房設備費
- 調理器具の購入費
- 備品の購入費
- 開業時の仕入れ費
- 各種許認可申請費
- 広告宣伝費
これらの費用を合計すると、小規模な飲食店でも1,000万円以上かかります。立地や厨房設備にこだわれば、さらに高額になるでしょう。
日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」によると、全業種の開業費用の平均は1,027万円で、初期費用が高額であればあるほど、回収は長期化するものです。
そのため、居抜き物件を選ぶなど、初期費用を抑える工夫をしなければいけません。
参入ハードルが低く競合が多い
先ほど述べたように、飲食店の開業率が高い理由は、開業に必要な資格や免許が取得しやすいことがあげられます。
講習と試験を受けると取得できる「食品衛生責任者」の資格があれば、誰でも開業が可能です。また、飲食店や経営のノウハウがなくても開業することが可能です。
しかし、参入しやすいということは、それだけ競合も多くなります。たくさんの競合から自店を選んでもらうには、集客につなげるための差別化を検討しなければいけません。
売上が外的要因によって左右される
飲食店の売上は店舗の努力だけでは作れず、どうしても制御できない外的要因に大きく影響されます。
例えば、天候や季節などです。風雨が強いときなど悪天候のときは客足が遠のきますし、夏場は冷たい飲みもの、冬場はあたたかい料理の需要が高まる傾向があります。
ほかにも、景気が低迷しているときは外食を控える傾向があり、どれだけアプローチをしても客足は伸びません。近隣に業態が似ている店舗が開業すると、顧客がそちらへ流れてしまうことも。
また、近年はSNSなどで話題の料理や店舗に顧客が集中しやすいため、集客施策を講じていなければ顧客は離れてしまいます。
さらに、感染症流行による規制や食中毒なども気を遣う必要があります。
飲食店は、こうした外的要因による影響を受けやすいことから、「飲食店は経営が難しい」と言われているのです。
労働時間が長く体力や精神力が求められる
飲食店経営の難しさのひとつに、長時間労働と体力・気力が求められることもあげられます。
開店前の仕込みをはじめ、閉店後の清掃や片付けなどを含めると、早朝から深夜まで長時間労働になりがちです。立ち仕事が基本になるため、それに耐えられる体力が求められます。
さらに、店舗に相応したサービスを提供するため、従業員の指導も行われなければなりません。従業員の人数が増えると、従業員同士のトラブルが起こることもあり、相当な精神力が求められます。
そして、すき間時間にはSNSに寄せられた口コミに返信するなど、ゆっくりする時間はありません。ネガティブな口コミにも真摯な対応が求められます。
業務内容と賃金が見合わず人材確保が難しい
飲食店経営において、人材確保は大きな課題のひとつです。
上でも述べたように、飲食店というと長時間労働が多く、休日が少ないといったイメージをもつ人が多くいます。また、早朝・深夜勤務がある店舗も少なくありません。
それでいて賃金は低めです。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、飲食店(宿泊業含む)の平均賃金は259,500円でした。これは全業種のなかでももっとも低い賃金です。
業務内容と賃金が見合わなければ人材の確保が難しく、人手不足では店舗運営も難しくなり、顧客に満足なサービスを提供するのも困難になります。
また、飲食店経営者は、従業員の働く環境を見直すだけではなく、業務効率化についても検討しなければなりません。
※参考:「令和5年賃金構造基本統計調査」
飲食店を経営するために必要なこと
飲食店経営に特別な資格は不要ですが、最低限の知識やスキルがあれば成功に近づきやすくなります。
続いては、飲食店経営に必要なことについて分かりやすく解説します。
経営やマーケティングに役立つスキル
飲食店を成功させるためには、経営やマーケティングに関するスキルを身につけることが重要です。具体的には以下のようなものがあげられます。
経営力 | 収支バランスの把握適切な原価計算と管理利益率の計算と分析 |
マーケティングスキル | ターゲット顧客の明確化効果的な販促策の立案SNS・Webを活用した情報発信 |
競合店や近隣店のターゲットや提供している料理を調査・分析し、自店の強みを活かした料理やサービスを提供できれば集客につなげることができます。
利益率やコストなどを適正に把握できていれば、具体的な営業計画を立てることができるでしょう。
各施策を実行するには、従業員との連携も必要です。ふだんからコミュニケーションを取り、お客様対応などの育成環境を整えておくことで、一貫したサービスを提供することが可能です。
経営力やマーケティングスキルは、書籍や専門家のセミナー、オンライン講座などで学べます。
飲食店の業態やターゲットによってアプローチの仕方が異なるため、専門家に頼ることで効果的なアドバイスを得ることができるでしょう。
食品衛生責任者や防火管理者の資格
飲食店経営には「食品衛生責任者」と「防火管理者」の資格が必要です。「食品衛生責任者」は店舗ごとに1名の配置が義務付けられています。多店舗展開なら、各店舗に1名配置してください。
主に施設や食品の衛生管理をする役割があり、自治体が実施する講習を受けることで取得が可能です。主に以下の内容を受講します。
- 食品衛生学
- 公衆衛生学
- 食品衛生法
「防火管理者」とは、多数の利用者がいる建物の火災被害を防ぐため、防火管理に関わる消防計画を作成して、防火管理上必要な業務をする責任者のことです。
すべての飲食店で配置する義務はなく、飲食店の場合、従業員を含めて30人以上収容できる店舗が対象となります。該当する場合は、自治体や日本防火防災協会で実施している防火管理講習を受講する必要があります。
売上を上げるための努力を怠らない姿勢
飲食店経営を成功させるには、売上向上に向けた努力を怠らない姿勢が欠かせません。時代の変化とともに顧客のニーズも変わってきます。周囲に競合店がオープンすることもあるかもしれません。
こうした外的要因をふまえて、常にメニューの見直しや改善を行っていく必要があります。顧客ニーズの変化に敏感になることで、適切な対応ができるようになるでしょう。
また、マーケティングスキルなどを活用し、効果的な販促活動を定期的に実施するといった取り組みも必要です。施策の実行と分析、改善のPDCAをまわして、常に向上心をもち続けることが飲食店経営の成功につながります。
【開業前】成功する飲食店を作るためにやっておくべきこと
飲食店で成功を収めるには、開業前に以下に取り組んでおくことが大切です。
- 開業するまでの流れを知る
- お店のコンセプトを決める
- 細かい必要経費を把握する
これらに取り組んでおくと、開業後の分析や改善がしやすくなります。開業前にしっかり準備しておきましょう。
開業するまでの流れを知る
まずは、開業するまでの流れを把握しておきましょう。主な流れは以下の通りです。
- お店のコンセプトを決める
- 市場調査をする
- 事業計画書を作成する
- 物件を探しはじめる
- 資金調達(借入先の確保)
- 店舗賃貸契約
- 外装・内装工事施工
- 資格取得・各種申請(税務署・保険所・消防署等)
- スタッフ募集・採用・教育
- 宣伝
- プレオープン
- 開業
お店のコンセプトや市場調査は、事業計画書にも大きく影響するものです。賃貸契約や資金調達の際に使用するため、調査・分析にもとづいた計画書を作成しましょう。
また資格取得や各種申請は、事前にかかる日数を調べておくことが大切です。例えば、先ほど述べた「防火管理者」の場合、種別によっては1日で終わらないこともあります。
お店のコンセプト決めから開業まで、半年~1年ほどかかるのが一般的です。採用活動も必要な人員の確保に難航するケースもあるため、あらゆるリスクを想定しておきましょう。
お店のコンセプトを決める
お店のコンセプトを明確にすることは、飲食店経営の成功に欠かせません。コンセプトとは、お店の個性や魅力を明確に表現したものです。
独自のコンセプトを練り上げることで、競合店舗との差別化につなげることができます。
しかし、独自性が高ければ良いわけではありません。顧客のニーズから外れていたり、コンセプトに統一感がなかったりすると、顧客の期待を裏切ることになります。
どのような飲食店が求められているのか、ターゲット層を調査したうえで決めることが大切です。
また、ターゲット層に提供する料理やサービスも決めておきましょう。店舗の内装やデザイン、従業員の接客スタイルなどは、顧客満足度にも大きく影響します。
お店のコンセプトに共感してファンになる顧客もいるため、明確なコンセプトを決めることが大切です。
必要な経費を細かく把握する
飲食店経営を成功させるには、必要経費を把握し、適切な資金計画を立てることが重要です。飲食店経営にかかる主な経費を見てみましょう。
- 食材の仕入れ費
- 人件費
- 店舗物件の賃料
- 水道光熱費
- 調理器具や食器などの備品費
- 従業員のユニフォーム費
- 広告宣伝費・販促物制作費
- 事務・消耗品費
- メニュー表のデザインや印刷費
まずはかかるものをリストアップして価格相場を調べてシミュレーションします。
何にどのくらいの費用がかかるのかを細かく把握できれば、より現実的な事業計画を立てることができます。
【開業後】売上を上げるためにやるべきこと
開業後は売上を上げるために、以下の施策に取り組みましょう。
- 集客を促す対策
- QSCを意識した経営
- 従業員が働きやすい環境の整備
それぞれ簡単に解説します。
集客を促す対策
飲食店の売上を上げるには、新規顧客の獲得とリピーター作りが欠かせません。そのための集客方法として、以下のようなものがあげられます。
- チラシ配り
- クーポン配布
- SNSの活用
- グルメサイトへの掲載
- MEO対策
店舗への集客を促す場合、店舗のある地域住民に知ってもらわなければなりません。チラシやクーポンの配布は、近隣地域への集客におすすめです。
もう少し地域を広げたいときは、SNSやグルメサイトへ掲載しましょう。フォロワーを獲得できれば、店舗情報を拡散してもらえる可能性があります。ほかにもオンラインの集客施策として、MEO対策もおすすめです。
MEOは「Map Engine Optimization」の略称で「マップエンジン最適化」を意味します。
Googleマップの検索結果上において、店舗情報の露出回数の増加を狙える地域密着型の飲食店にとって重要な集客方法です。
Googleビジネスプロフィールへの新規登録をはじめ、店舗情報の投稿や口コミへの返信などやるべきことが多くあります。慣れるまでは専門家の力を借りると良いでしょう。
QSCを意識した経営
飲食店の売上を上げるには、QSCを意識した経営が重要です。
QSC | 概要 |
Quality(クオリティ) | 提供するメニューの品質 |
Service(サービス) | 接客の品質 |
Cleanliness(クレンリネス) | お店の清潔さ |
具体的には、以下のような施策があげられます。
Quality:食材の仕入れや調理法の見直し、メニュー開発
Service:接客マニュアルの作成、従業員教育の徹底
Cleanliness:清潔チェックリストの活用、定期的な大掃除の実施
こうしたQSCを意識した経営を行うことで、お客様に「また来よう」と思ってもらえるお店を作ることができます。
従業員が働きやすい環境の整備
従業員が働きやすい環境を整えることは、飲食店の売上向上に欠かせない取り組みです。長時間労働にならないように労働時間を管理し、福利厚生を充実させることで快適に働ける環境を作ることができます。
また、スキルアップ支援として、接客スキルや調理技術などを教えることも大切です。実践を交えながら、新しい技術を学べる機会を提供できます。こうした支援は従業員のモチベーションアップに効果的です。
これらの取り組みにより、従業員のモチベーションが向上し、離職率の低下やサービス品質の向上が期待できます。
結果、飲食店のイメージもアップして、お客様満足度の向上と売上アップを期待することが可能です。
まとめ:飲食店経営をサポートする集客支援ツールを活用するのもアリ
飲食店は開業がしやすいですが、多額の初期費用が必要なことや外的要因の影響を受けやすいため、廃業率が高い業種です。
そのため、経営を続けるにはマーケティングスキルや必要資格の取得など、売上を作るための努力が求められます。
繁盛店を目指すには、効率の良い集客方法を検討しなければなりません。多忙な飲食店業務をこなしながら、効率よく集客するためには集客支援ツールの活用がおすすめです。
ディップが運営する「集客コボット for MEO」は、Googleマップでの検索結果において上位表示を狙うための集客支援サービスになります。
競合店舗の分析をはじめ、MEO対策に必要な運用はすべてディップが代行するため、手間がかかりません。
また、集客に必要なノウハウも共有してもらえるため、飲食店オーナー様は、本来の業務に集中しながらGoogleマップ上の集客対策が可能です。
これまでの集客施策でなかなか効果を得られない場合や、具体的な施策がわからないなど、飲食店の集客にお悩みなら「集客コボット for MEO」が役立ちます。以下よりお問い合わせください。