営業力は企業の成長に欠かせません。企業の顔として顧客と接する営業担当者をはじめ、顧客の課題分析、フォローアップなど工程ごとに人材を配置している企業もあるのではないでしょうか。
営業力を上げるには、各工程を担う担当者だけではなく、営業部門全体の営業力を強化することが大切です。
この記事では、組織・個人で営業力を上げるための5つポイントについて解説します。活用におすすめのツールも紹介しますので、貴社の営業力向上にお役立てください。
営業力の定義
営業とは、企業が利益を得るために必要な活動を指しています。
企業が成長を続けるには高い営業力が必要です。しかし、そもそも営業力とは何を指しているのかご存じでしょうか。
まずは営業力について簡単に解説します。
そもそも営業力とは?
営業力とは、新規顧客の獲得や販路の拡大、既存顧客との信頼関係を築くための能力を指します。企業が成長するには、利益が必要です。
営業は商品やサービスの魅力を伝えて契約を獲得し、利益を上げなければなりません。
近年はインターネットの普及により、消費者の購買行動が変化したことで、営業に求められる能力も変化してきました。単純に売るためだけの能力ではなく、顧客の悩みや課題をくみ取り、解決につながる提案や対応ができなければなりません。
企業が成長し続けるためにも、営業担当者と営業部門全体の営業力の強化が必要とされています。
個人にとっての営業力
営業担当者は企業の顔として、多くの顧客と接します。誰からも好印象をもたれるような対人能力は営業に欠かせない能力のひとつです。
また、顧客の要望や課題を引き出すには、コミュニケーション能力も欠かせません。
単純におしゃべりが上手というものではなく、会話のなかで隠れている課題を引き出さなければならないためです。
課題解決につなげるために、自社の商品やサービスの理解はもちろん、関連する情報についても多くの知識が必要となります。さまざまな知識があることで正確な分析につながり、顧客の課題解決につながるベストな提案が可能です。
こうした能力をまとめて営業センスとも言います。
営業センスがある人の特徴や身につけるコツについてまとた記事がありますので、営業センスを身につけたい方はご参考にしてください。
関連記事:営業センスがある人の6つの特徴・身につけるコツを把握して営業センスを磨こう!
組織にとっての営業力
組織にとっての営業力とは、営業部内一人ひとりとの関係性や思考の質をもとにした行動力があげられます。所属部署内の連携体制を整えることで、組織力の強化につなげることが可能です。
年齢や性別、肩書きを問わず多様な意見・考えを受け入れることで、これまでにはない解決策の発見やアイデアを創出できるかもしれません。
コミュニケーションが活性化することで信頼関係が向上し、組織の営業力の強化につなげることが可能です。
個人の営業力が上がらない原因
組織の営業力を上げるには、まず営業担当として働く個人の営業力を上げなければなりません。ここでは個人の営業力が上がらない3つの原因を紹介します。
1. 契約を優先に行動してしまう
営業担当者の評価項目に「契約数」があると、契約を優先しがちです。
どうしても契約を結びたいという気持ちは言動で顧客にも伝わります。はっきりと言葉にしなくても、押し売りのような圧を与えてしまうため、顧客は前向きに聞くことはできないのです。
また、契約優先の姿勢は顧客が抱えている課題など、くみ取るべき本質を見抜けないというデメリットもあります。一方的な商談は信頼関係も構築できません。
契約を取りたい気持ちはわかりますが、目先の利益にとらわれず、まずは悩みや課題に寄り添い、互いの信頼関係を築くことを重視しましょう。長期的な顧客育成を考えて取り組むことが重要です。
2. 顧客の求めていることを理解していない
個人の営業力に大切なものはコミュニケーション力。コミュニケーション力とは、相手と交流を図る積極性以外も、相手の話を聞く傾聴力も含まれます。
自分視点で顧客の反応を見ない商談は、顧客が求めていることを理解していないのと同じです。とらえるべき本質を見抜けないと、これまで築いてきた信頼関係が崩れてしまう可能性もあります。
既存顧客とよりよい関係を築くには、顧客の話をよく聞いて要望をくみ取る力が必要です。
関連記事:既存顧客維持のメリットやLTV(顧客生涯価値)を最大化するための効果的な施策とは
3. 営業プロセスの見直し・振り返りをしていない
契約締結の有無を問わず、営業後に営業プロセスの見直しや振り返りをしていないと、つぎの成果につなげることができません。
営業は経験のために数をこなすことも重要ですが、振り返りがなければ、自分自身の課題に気づけないため、営業力向上につながる対策もとれないわけです。その日の営業について振り返り、改善点を洗い出して対策を講じるといったPDCAをくり返すことで営業力を高めることが可能です。
とくにこれまで信頼関係が構築されていない新規開拓営業は、うまくいかないことが多く「難しい」と言われています。
営業プロセスの見直しや振り返りの重要性についてこちらの記事で紹介していますので、ご参考にしてください。
関連記事:新規開拓営業がうまくいかない理由とは?対処法や成功させるポイント
組織の営業力が上がらない4つの原因
組織の営業力が上がらない原因は、情報共有のしにくさや社内競争など営業部門の体制が原因であるケースがほとんどです。組織の営業力が上がらない4つの原因をご紹介します。
1. 顧客情報や営業手法を共有していない
組織の営業力が上がらない原因のひとつ目は、営業担当者が抱える顧客情報や営業手法が共有できていないことが挙げられます。
もし担当者が不在のときに問い合わせがあっても、ほかの社員と顧客情報を共有していないことで、引継ぎ漏れが発生し、不適切な対応をとってしまう可能性があります。顧客満足度にも大きく影響を与えるおそれがあるため注意が必要です。
また、社員同士の情報共有ができていないと営業手法も偏りが生じます。効果的な営業手法が共有されていないと、組織の営業力が上がりません。
2. 社内競争が逆効果を生んでいる
営業担当者の「契約数」など営業成績を評価基準にしている場合、同じ組織にいても担当者同士がライバルとなるため、互いの足の引っ張り合いが起こりがちです。
営業担当者は契約締結や商談が仕事のため、営業成績をランキング化することは一概に悪い印象を与えるわけではありません。なかには互いに切磋琢磨しあって成果の向上を目指せるケースもあります。
良好な関係が築けていれば問題はないため、社員同士の関係性を見極めることが重要です。
3. 自社の営業プロセスを分析していない
営業力を上げるには、まず自社の営業プロセスを振り返ってみて成果を出せない原因を分析することが大切です。
営業プロセスはさまざまな手法がありますが、扱う商品やサービスは企業ごとに異なるため、一般的な営業プロセスをそのまま展開しても成果にはつながりません。
現在の営業プロセスで受注につながらない原因を見つけて、改善に取り組むことが大切です。短期間でくり返すことで、組織の営業力強化につながります。
4. 人材育成・部下育成の環境が整っていない
組織の営業力を上げるには、営業力を備えた人材が必要です。人材教育や育成環境を整えることで、組織としての営業基盤を作ることができます。
ただし、人材によって適正や能力には個人差があるため、一人ひとりのレベルを見極めたうえで、育成計画を立てることが重要です。
育成計画を立てるときは、現在成果を上げている優秀な人材の営業手法をベースに作ることで、優れた営業手法を身につけた人材を育成できます。
個人で営業力を上げるには?5つのポイント
個人で営業力を上げるポイントは以下の5つです。
- 営業の仕事に誇りと行動目標を持つ
- 振り返りと改善のPDCAサイクルを回す
- 営業の同行やロールプレイングを実践する
- 情報収集や事前準備を行う
- トークスクリプトの作成・見直しを行う
それぞれ簡単に解説します。
1. 営業の仕事に誇りと行動目標を持つ
営業は売上に直結するため、契約数など成果に着目しがちですが、売上数字にとらわれると小手先だけのテクニックになってしまうことが少なくありません。業績を上げるために成果目標を掲げるのは大切なことですが、行動目標を立てることも重要です。
行動目標を立てるときは、架電件数や訪問件数など行動した結果を数値で振り替えられるものがおすすめです。達成感を得やすいため、自信につながります。
2. 振り返りと改善のPDCAサイクルを回す
個人の営業力を上げるには、現状の営業プロセスを振り返り、改善に取り組むPDCAサイクルを回すことが大切です。PDCAとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(振り返り)、Action(改善)の頭文字をとったもので、品質管理におけるフレームワークのひとつです。
同じ失敗をくり返さないために現状の営業プロセスを振り返り、改善策を検討します。時間をかけてじっくり考えるよりも短時間で振り返りと改善をくり返すことがポイントです。
3. 営業の同行やロールプレイングを実践する
営業に欠かせないコミュニケーション力を鍛えるには、研修やロールプレイングを実施して、多くの実践経験を積むのが効果的です。ロールプレイングを実施するときは、初心者同士ではなく、優秀な営業人材や営業経験が豊富な人と組むことで営業のコツを習得しやすくなります。
先輩や上司と顧客へ訪問する営業同行では、商品やサービスに関する知識や、話し方など営業のコツを学べることがメリットです。
4. 情報収集や事前準備を行う
営業力を上げるには、顧客に自社の商品やサービスの魅力を伝えられるように情報収集など事前準備が大切です。自社で扱っている商品やサービスに関して十分な知識を持っていることがわかれば、それだけで顧客からの信頼感がアップします。
商品やサービスだけではなく、顧客について深く知ることも大切です。ホームページやデータベース、SNSなどをチェックして情報収集をしましょう。こうして収集した情報は、訪問前に営業資料としてまとめておくことが重要です。
こちらの記事では、資料作成のコツなどについて解説していますので、ご参考にしてください。
関連記事:営業資料の作り方のコツは?構成や1枚のスライドに入れる内容のポイント
5. トークスクリプトの作成・見直しを行う
営業力を上げるには営業トークスクリプトが大きなカギを握ります。営業トークスクリプトとは、商談時に話す内容や流れ、順番などを決めた台本のようなものです。
営業担当者によっては、ずっと同じトークスクリプトを使用している人もいるのではないでしょうか。長く使っていると、単純に読み上げているような印象を与えてしまうため、顧客の心に届きません。
トークスクリプトに説得力をもたせるには、綿密な情報収集とこれまでの経験をもとにトークスクリプトの作成・見直しをすることが重要です。
営業力向上につながるトークスクリプトの作成方法をこちらの記事で紹介していますので、ご参考にしてください。
関連記事:営業力向上のための「トークスクリプト」作り方とは?押さえるべきポイント
個人の営業力向上について、スキルアップに役立つ方法を知りたい方は、こちらの記事をご参考にしてください。
関連記事:営業スキルとは?社員に身につけてもらうポイントと役立つツール
組織で営業力を上げるには?5つのポイント
組織で営業力を上げるポイントは以下の通りです。
- 営業組織の目的や目標を設定する
- 顧客情報や営業手法を共有する環境を構築する
- 人材育成・部下育成の体制を構築する
- 適切な評価や報酬制度を確立する
- 営業支援ツールを活用する
それぞれ簡単に解説します。
1. 営業組織の目的や目標を設定する
組織の営業力を上げるには、組織の目標を具体的に設定して組織内で共有しておくことが重要です。社員一人ひとりの役割と目的を理解してもらうことで、目標がぶれず、組織力の強化にもつながります。
目標を設定するときは「KPI」と「KGI」の2つの要素をふまえて設定することが大切です。
KPIについてはこちらの記事にまとめていますので、ご参考にしてください。
関連記事:営業で設定すべきKPIとは?設定項目例とKPIの必要性
2. 顧客情報や営業手法を共有する環境を構築する
優秀な人材の営業手法を共有し、優れたノウハウをすべての営業が使うことができれば、組織の営業力の強化につながります。
営業手法は属人化しやすく、成功パターンが偏りがちです。営業部門全体で共有できれば、全員が勝ちパターンを使うことができます。
営業活動の流れを共有する環境を構築しておくことで、さまざまなタイプの勝ちパターンを蓄積することが可能です。こうして蓄積されたデータは、これからの営業活動や成果に大きな影響を与えます。
3. 人材育成・部下育成の体制を構築する
新人や若手を育成して早期に戦力化することも、組織の営業力強化には欠かせません。トレーニングや研修などの育成施策を実施するだけではなく、育成効果を検証・見直すことが重要です。
経験など感覚にもとづいた指導では、育成体制の基盤が作りにくいでしょう。収集したデータを可視化することで改善点が洗い出しやすくなります。
4. 適切な評価や報酬制度を確立する
現状の評価制度が成果主義に偏りすぎているなら、見直したほうがよいでしょう。成果ももちろん大切ですが、仕事に対する姿勢や能力、組織への貢献度など多角的な視点で評価することが重要です。
評価をするときは、個人的な主観が入らないように注意しなければなりません。データに基づいた客観的な評価は納得感が得やすく、上司と部下双方の信頼関係の構築にも役立ち、組織力の強化にもつながります。
5. 営業支援ツールを使用する
営業力を上げるには、営業支援ツールの導入をおすすめします。
営業支援ツールは顧客情報や商談履歴などの情報管理をはじめ、タスク管理、顧客データの可視化などが可能です。営業に必要なデータをツールでまとめて管理し、共有できることから、業務遂行や顧客対応、データ分析などの効率化を図れます。
営業支援ツールにはさまざまな種類があり、目的や用途によって必要な機能が異なります。
営業支援ツールに関してまとめた記事もございますので、ご参考にしてください。
関連記事:【2023】営業ツールとは?導入メリット・おすすめツールと選び方
営業力を上げる際に活用したいツールを紹介
営業力を上げるのにおすすめのツールは「SFAツール」「CRMツール」「BIツール」「ナレッジマネジメントツール」があります。それぞれの特徴を紹介します。
SFAツール
SFAは『Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)』の略語で、営業活動における業務を自動化し、必要な情報やデータを蓄積・分析できるシステムをSFAツールと呼びます。
導入により営業業務の時短化が可能です。入力した情報はすぐに自動で繁栄されるため、案件の対応状況をリアルタイムで共有できるメリットがあります。互いにコミュニケーションがとりにくくても、円滑な情報共有が可能です。
CRMツール
CRMは『Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)』の略語です。日本では顧客管理という意味があります。
顧客の氏名や年齢、会社名といった基本的な情報にくわえて、志向などあらゆる情報を一元管理しているシステムです。収集した顧客情報を分析し、最適なアプローチ方法まで提案してくれます。
顧客情報はデータベース化されるため、共有がしやすくなり顧客の興味や関心を把握できることから、効果的なアプローチが可能です。
CRMツールを導入するメリットについてまとめた記事もございますので、ご参考にしてください。
関連記事:顧客管理(CRM)システムおすすめ11選!基本機能や導入のメリットとは?
BIツール
BIとは『Business Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)』の略語で、ビジネスの意思決定に関するデータを分析し、レポート化してくれるツールです。
複数のツールから収集されたデータもまとめて可視化し、自動で分析してくれます。
数値分析の自動化、資料作成の時短化が実現できるため、課題を早期に発見できたり、現状を把握しやすくなったりとメリットがあります。
ナレッジマネジメントツール
ナレッジマネジメントツールとは、担当者自身が持っている知識や経験といった独自のノウハウを収集・整理・活用できるツールです。
担当者が変わっても蓄積されたデータを見れば、経緯が把握できるため、引継ぎトラブルなども抑えることができます。
ナレッジマネジメントツールは、外部ツールとの連携機能があり、データをまとめて管理することが可能です。業務に関するマニュアルやノウハウを誰でも取得できるようになるため、属人化の防止にも役立ちます。
まとめ:個人・組織の課題を解決して営業力を上げよう
営業力を上げるためには、個人と組織のそれぞれの課題を見つけて改善に取り組むことが大切です。
現在の営業プロセスの何がいけないのか、定量データをもとに分析することでより良い改善策を見出せます。
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