製造業で働く若者が減少し、深刻な問題となっています。「人手不足で従業員に無理をさせてしまっている」「自社の技術を次世代に継承することが難しい」と悩んでいる企業も多いでしょう。なぜ、若者は製造業で働かなくなったのでしょうか。
本記事では、若者の製造業離れの現状や理由、それによって引き起こされる問題と、若手人材を獲得するためにすべき対策を紹介します。若手人材の採用に悩んでいる方は、ぜひとも参考にしてください。
製造業の若者離れの現状
厚生労働省「2024年版 ものづくり白書」によると、製造業で働く34歳以下の人数は2002年には384万人いましたが、2023年には259万人と大幅に減少しています。
製造業の全就業者数に占める若者の割合についても、2002年には31.4％が34歳以下でしたが、2023年には24.5％にまで低下しました。
また、厚生労働省の「一般職業紹介（令和6年12月分及び令和6年分）」 によると、2024年12月の有効求人倍率は1.25倍 でしたが、製造業（生産工程従事者）の有効求人倍率は1.67倍 でした。全体と比べて有効求人倍率が高いため、製造業は他業種と比べても人材が不足している状態であるとわかります。
製造業で若者離れが進んでいる理由
製造業の人材が不足しており、特に若者の割合が減少していることを説明してきました。なぜ今、製造業の若者離れが進んでいるのでしょうか。おもな理由を3つに分けて解説します。
少子高齢化で労働力人口が減少している
1つ目の理由は、少子高齢化が進んでいることです。
日本の生産年齢人口（15歳～64歳）は、1995年には8716万人で総人口の69.5％を占めていました。しかし、その後は減少が続き、2023年の生産年齢人口は7400万人程度で、総人口の59.4％となりました。 出生率が低下 していることから、今後も減少は続くと予測されています。
少子高齢化により、おもな労働力となる世代の人口が減少しているため、製造業に限らず、労働市場全体で人手不足が深刻化していることが明らかです。
また、製造業は地価が安い地方に工場を設置することが多く、特に労働力人口減少の影響を受けやすい傾向があります。労働力人口、特に10代や20代の若者は、賃金が高くさまざまな仕事がある都市部へ集まるためです。
世代交代がうまくいっていない
日本の製造業は、ベテラン技能者が長年の経験に基づいた勘を頼りに作業していることも多く、新人はそれを見て経験しながらマニュアルでは学びきれない技術やノウハウを学び、受け継いできました。しかし、このやり方は、技術を習得するまでに何年もの時間がかかります。
人材の流動化が進み、転職があたり前となりつつある現代では、より良い条件の企業に人材が次々に流れていきます。高いスキルを身に付けた中堅やベテランの技能者が辞めてしまうことで、技術やノウハウを若手に継承できる人がいなくなり、後継者の育成がうまくいかなくなっているのが現状です。
苦労して獲得した新入社員も、技術やノウハウを十分に教えてもらえない環境だとわかると、より成長しやすくキャリアの見通しを考えられる企業に転職してしまうでしょう。中間層が少ないことで、経験の浅い若手が突然重要な役割を任され、責任と業務負荷が大きくなりすぎることも、人材流出の一因となっています。
3K（きつい・汚い・危険）のイメージがある
製造業は、「3K（きつい・汚い・危険）の仕事」といわれることが多く、そのネガティブなイメージから敬遠する若者が多いようです。具体的には、「工業油などで身体が汚れる」「重いものや危険物を取り扱う」「シフト勤務で深夜に働く必要がある」などの労働環境が避けられています。
近年はロボット導入や生産ラインの自動制御システム化 などによって、クリーンで安全な環境で働ける工場も多数あります。しかし、昔の3Kのイメージが定着してしまったため、製造業への応募を避ける人は依然として少なくありません。
製造業の若者離れが招く問題
若者の製造業離れが進むことで、「技術継承が困難になる」「生産性や競争力が低下する」「労働環境が悪化する」という問題が生じます。それぞれ詳しく解説します 。
技術継承が困難になる
製造業で働く若者が減ることによって、これまで受け継がれてきた高度な技術の継承が困難になってしまうことは、非常に深刻な問題です。
日本では、少子高齢化による人口減少が2030年頃にさまざまな社会問題を引き起こす「2030年問題」が起こるといわれています。製造業においては、2030年頃までに団塊の世代のベテラン技能者がほぼ引退してしまう ため、それまでに次世代へ技術や技能を伝え、継承していかねばなりません。
しかし、若者の製造業離れが進んでいれば、継承は困難です。ベテラン技能者が引退してしまうと、その技術はそこで途絶え、企業の廃業・倒産につながる可能性があります。
生産性や競争力が低下する
若者の製造業離れが進むと、ベテランが引退しても新人が入ってこないため、人手不足が進行します。人手不足になると、これまでの生産ラインを維持できなくなり、利益が大きく下がってしまいかねません。
かといって、無理に生産ラインを維持しようとすれば、従業員それぞれが専門外の仕事もかけ持ちで負担することになり、作業効率が悪化します。専門性の高いベテラン技術者が、本来は新人がするような業務も担当しなければならない環境では、技術力が低下し、企業の競争力も下がってしまうでしょう。
労働環境が悪化する
若者の製造業離れによる人手不足を補うために、今いる従業員が無理を強いられ、労働環境が悪化してしまうのも大きな問題です。
従業員一人ひとりの作業量が増えて残業や休日出勤が慢性化すると、離職者が増え、ますます人手不足になるという悪循環に陥ってしまうでしょう。
若手人材を獲得するための対策
若者の製造業離れが深刻な昨今、若手人材を獲得するにはどうしたらいいのでしょうか。考えられる対策を4点紹介します。
DXを推進する
DXとは、デジタル技術を使って既存のシステムやビジネスモデル、企業文化を変革し、顧客目線で新たな価値を創出することです。DX推進は、本質的には人材確保と関係ありませんが、若者が製造業に就かないネガティブな理由を解消できる可能性が高まります。
例えば、これまで人がやっていた作業をDX化によって自動でできるようにすれば、従業員一人ひとりの負担が減り、ワークライフバランスがとれた働きやすい環境が整います。DX化やAIによってベテラン技能者の知識やノウハウをデータベース化できれば、忙しくても新人教育がしやすくなり、技術や技能を次世代へ継承できるでしょう。
また、SNSやオウンドメディアを活用するなど、採用活動をDX化することで、自社や製造業の魅力を発信できます。企業の魅力を正しくアピールできれば、若者の応募率も上昇するでしょう。
職場環境を改善する
上記で述べた内容とも重なりますが、職場環境を改善し、3K（きつい・汚い・危険）のイメージを払拭することで、若手人材を獲得しやすくなります。
DX化で作業を効率化して長時間労働を是正するとともに、フレックスタイム制の導入や有給休暇取得の促進など、これまでの制度を見直し、若者が働きやすい環境を整えましょう。
また、若者は入社後のキャリア形成に関心を持っています。キャリアアップ制度や教育体制を充実させ、今後のキャリアをイメージしやすくすることで、応募者数の増加につながるでしょう。
給与や福利厚生を見直す
若手人材を獲得したいなら、給与や報酬をしっかりと見直し、業務内容や成果に見合った金額に設定することが大切です。
また、福利厚生についても見直す必要があるでしょう。産休制度や育休制度、住宅補助や通勤手当などを他社と比較して、足りないものがあれば導入や改善を検討してみてはいかがでしょうか。他社にはないユニークな福利厚生を採り入れるのも、独自の魅力として注目を集めるきっかけになるかもしれません。
すでに福利厚生が充実しているのであれば、それを強みとして採用サイトなどで積極的にアピールするとよいでしょう。
採用活動を工夫する
若者をターゲットに採用活動をするのであれば、新聞や求人雑誌だけではなく、デジタル媒体も積極的に活用することをおすすめします。
就職活動をしている若者は、その企業に勤めた場合の具体的な働き方やリアルな社風を知りたいと考えています。しかし、紙媒体は掲載内容やスペースが決まっていることが多く、企業のリアルな姿まで発信するのはなかなか困難です。
そこで、WebサイトやSNSを活用すれば、社員が自分の言葉でリアルな情報や思いを発信しやすくなります。これにより、就活生が企業を身近に感じられるようになり、興味を持ってもらいやすくなるでしょう。
デジタルを活用した採用活動といっても、求人メディア、企業独自の公式ホームページ、採用特設ホームページ、ブログ、SNSなどさまざまなアプローチがあります。まずはどのような人を採用したいか、できるだけ具体的にターゲットを決めましょう。そのターゲットに合わせて適切な発信媒体を選ぶことで、効果が高まります。
製造業の若手離れ対策にはツールの活用がおすすめ
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まとめ：若者の製造業離れを食い止めるには採用活動の改善が急務！
製造業で働く若者が減少し、生産性の低下や技術継承が途切れるなどの深刻な問題が起きています。若者の製造業離れを止めるには、採用活動を見直して若者に魅力を感じてもらえるようなアプローチをすることが大切です。
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