建設業の人手不足は、もはや当たり前の問題となり、頭を悩ませている企業も多いのではないでしょうか。
少子高齢化や3Kイメージ、厳しい労働環境などさまざまな要因が重なり、人手不足は深刻化の一途をたどっています。
また、2025年問題の到来により、この状況はさらに悪化すると予測され、早急な対策が必要です。
この記事では、建設業で人手不足が起きている理由と現状を探り、今すぐ取り組むべき対策と解決法を紹介します。人材確保に苦心している建設業の経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
建設業が人手不足になっている理由
建設業が人手不足に陥っている背景には、少子高齢化や労働環境の厳しさなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。ここでは、建設業で人手不足が起きる具体的な理由を詳しく解説します。
少子高齢化で労働人口が減少している（2025年問題）
日本は現在、国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となる超高齢化社会を迎えており、経済や社会に深刻な影響を及ぼしています。これが、いわゆる2025年問題です。
この問題を背景に、日本全体の労働人口は減少傾向にあり、多くの産業で人手不足が顕在化しています。
特に、建設業は体力を必要とする仕事が多いため、若手人材の確保が重要です。しかし、若年層の人口減少は著しく、若手を中心に人手不足が深刻化しています。
国土交通省のデータによると、建設業就業者の約35.9％が55歳以上である一方、29歳以下は11.7％にとどまっています。
この年齢構成の偏りは、今後の技術継承や人材確保にさらなる課題をもたらすと懸念されるでしょう。
建設業界は3Kのイメージがある
「きつい」「汚い」「危険」といった3Kのイメージが根強く残っている点も、建設業が敬遠される原因の一つです。
建設現場は現場ごとに環境が異なり、なかには過酷な天候条件での作業や、事故のリスクが高い現場もあります。
そのため、長期間働くことに不安を感じる求職者が多く、業界に対するネガティブな印象につながっています。
しかし、近年では、技術革新やデジタル化により状況は大きく変化しており、3Kのイメージが必ずしも現実を反映しているとは限りません。
例えば、ICT（情報通信技術）の導入により、ドローンによる測量や点検、AIを活用した施工計画の最適化などが進んでおり、建設現場の安全性や生産性の向上が図られています。
しかし、イメージ改善の取り組みが進んでいるとはいえ、長年培われた固定観念を払拭するには時間がかかるのが現状です。
残業・時間外労働が多く休日が少ない
建設業は工期や予算の制約が厳しく、天候に左右される作業も多いため、どうしても長時間労働になりがちです。
特に繁忙期には、連日の残業や休日返上で作業を行なうことも珍しくありません。このような労働環境は、ワークライフバランスを重視する現代の労働者、特に若い世代にとって大きな障壁となっています。
また、建設業界では、有給休暇や特別休暇などの福利厚生が十分に整っていない企業も多く見受けられます。休暇が取りづらく手当も少ない場合、従業員は労働時間を延ばさざるを得ません。
長時間労働の結果、従業員の健康やモチベーションが低下し、離職につながることで人手不足の悪循環が起こっています。
転勤や出張が多い
建設業はプロジェクトごとに現場が異なり、完成後には次の現場へ移動するのが一般的です。そのため、勤務地が頻繁に変わるのは避けられず、家族と離れて暮らす単身赴任や長期出張を余儀なくされるケースも少なくありません。
頻繁な異動や長期の出張は、特に家族との時間を大切にしたい労働者や、地元で安定して働きたいと考える若い世代にとって大きな負担となります。
また、転勤や出張が多いため生活基盤が定まりにくく、住居の確保や人間関係の構築が難しい点もデメリットです。
建設業界では、遠隔管理技術やICT（情報通信技術）を活用して現場への依存を減らし、転勤や出張の負担軽減を図る取り組みが進んでいます。しかし、根本的な解決にはまだ時間がかかるのが現状です。
在宅勤務ができない
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、多くの業界で在宅勤務が普及し、働き方の柔軟性が高まりました。
しかし、建設業は現場作業が主体であり、関係者との密なコミュニケーションが必要なため、業務の特性上、在宅勤務の導入は非常に困難です。
実際、建設業でのテレワーク実施率は、ほかの業界に比べて低い水準となっています。
また、建設業では長年培われた伝統的な手法や慣習にとらわれがちで、時代の変化に対応するのが遅れる傾向が顕著です。その結果、業務の効率化が進まず、人手不足の問題をさらに深刻化させています。特にデジタル化の遅れが著しく、業界全体で時代の変化に合わせた意識改革が必要です。
企業によっては給与水準が低い
一部の企業での給与水準の低さも、人手不足の要因の一つです。
建設業界全体の平均給与は必ずしも低くはありませんが、企業の規模や地域によって大きな格差が存在しています。
例えば、大手ゼネコンなどは給与水準が高い一方で、中小規模の下請け企業では厳しい競争環境や利益率の低さから、十分な給与を支払うのが難しいケースが少なくありません。
また、建設業では日給制を採用している企業が多く、天候などの影響で仕事ができない場合は収入が途絶える可能性もあります。
これらの要因は、特に若い労働者にとっては大きなデメリットとなり、新しい労働者の獲得を妨げ、離職率の上昇にもつながっている状況です。
さらに、給与の低さから労働者が長期的に業界に残る意欲が低下し、技術継承や経験の蓄積が困難になる点も懸念されています。
建設業界の人手不足の現状
建設業界の人手不足は、依然として深刻な状況が続いています。国土交通省のデータによると、建設業の就業者数は1997年の約685万人をピークに減少を続け、2023年には約483万人にまで落ち込みました。
特に、29歳以下の若年層の就業者数が減少する一方で、高齢層が増加するという二極化が顕著です。
一方で、建設投資額は2010年の42兆円から右肩上がりに増加しており、2024年度には73兆円に達しています。つまり、建設需要は増加しているにもかかわらず、人手不足が解消されないため、従業員1人当たりの負担が大きくなっているのがわかります。
さらに、「人手不足倒産」の件数も増加しており、2023年には建設業で91件と過去最多を記録しました。前年からは約2.7倍の増加です。この状況が続けば、今後も人手不足倒産は高水準で推移すると予想されます。
建設業の人手不足を解決するための対策
建設業の人手不足は深刻な問題ですが、多くの企業がさまざまな対策を講じており、解決の糸口も見えてきています。ここでは、人手不足を解消するための具体的な対策を紹介します。
労働環境の改善
建設業の人手不足解消には、労働環境の改善が不可欠です。おもな取り組みとして、長時間労働の是正、給与水準の向上、福利厚生の充実などが挙げられます。
特に、2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、長時間労働の是正が強く求められています。
そのほかにも、具体的に講じられる対策はさまざまです。
例えば、ノー残業デイの設置や土曜日の作業所閉所などが多くの企業で増加傾向です。また、週休2日を前提とした工期設定の導入も増加しており、今後もこうした取り組みが広がることが期待されます。
さらに、給与面では、月給制への移行や給与水準の見直し・引き上げが進められています。
労働環境の改善は、業界の将来を担う若い世代が長く働き続けられる職場環境を整えるうえでも重要な課題です。
上記の取り組みを通じて、快適で働きがいのある職場環境を提供し、人材不足問題に対応することが、建設業界全体の持続可能性を高める鍵となるでしょう。
建設業のイメージアップ
建設業の3Kイメージを払拭し、業界全体のイメージアップを図ることも重要です。前述の労働環境の改善は、このネガティブなイメージ払拭に直結します。
また、SNSなどのデジタルプラットフォームを活用し、建設業の魅力を積極的に発信するのも効果的です。
例えば、完成したプロジェクトの社会的意義や若手社員の活躍事例を紹介すると、建設業の魅力や重要性を広く伝えられます。
さらに、学校や地域コミュニティと連携し、建設現場の見学会や職業体験イベントを開催するなど、直接的な交流の機会を設けるのも、業界のイメージ向上につながるでしょう。
特に、若者はSNSを通じて情報を得る機会が多いため、デジタルマーケティングの活用が重要です。
若手人材の育成
若手人材の育成は、建設業の未来を担う重要な取り組みです。若手が「この会社で働き続けたい」と思える教育体制を整え、魅力的な職場環境を整備することで、早期離職を防げます。
例えば、明確なキャリアパスの提示や適切な評価制度の導入、継続的な技術研修の実施などは積極的に取り組むべき施策です。
また、かつての「見て覚える」スタイルから脱却し、OJTを通じて実践的な経験を積ませるとともに、上司や先輩が直接指導する体制を整えることが重要です。
さらに、若手の意見を積極的に取り入れたり、新技術の導入に若手を中心的に関与させたりすることで、彼らの意欲と能力を最大限に引き出せるでしょう。
多様な人材の活用
建設業の人手不足を解消するには、女性、外国人労働者、高齢者など、多様な人材の活用が不可欠です。
女性の活躍を促進するためには、現場環境の整備や育児・介護との両立支援制度の充実が求められます。外国人労働者の受け入れに関しては、言語サポートや文化理解のための研修、生活支援などの体制整備が重要です。また、高齢者の活用には、豊富な経験と技術を活かせる役割の創出や、体力面での配慮が求められます。
多様な人材が働きやすい環境をしっかり整備すれば、新たな視点や技術が導入され、業界全体の活性化にもつながります。
さらに、ダイバーシティの推進は企業イメージの向上にも寄与し、より幅広い人材の獲得にもつながるでしょう。
技術革新の推進
技術革新の推進は、建設業の人手不足を抜本的に解決するために非常に重要です。
多くの企業では、すでにICTの導入やロボットの活用など、最新技術を駆使した現場のオペレーション改善を行なっており、業務効率化や省人化が進んできています。
例えば、BIM/CIMの導入により、設計から施工、維持管理までの一連のプロセスをデジタル化し、効率化を実現できます。
また、ドローンを使用した測量や点検、AI技術を活用した施工管理、遠隔操作による建設機械の運用なども、人手不足の解消につながるでしょう。
建設業のDX（デジタルトランスフォーメーション）を推進すれば、業務プロセス全体のデジタル化と最適化が可能となり、生産性の向上と労働環境の改善を同時に実現できます。
企業が取り組むべき採用難の解決策
建設業界の採用難を解消するには、従来の方法にとらわれず、新しい採用戦略やツールを積極的に活用することが重要です。ここでは、企業が取り組むべき具体的な解決策を紹介します。
採用戦略の見直し
建設業界では、求人広告や人材紹介といった従来の採用方法だけでなく、多様なチャネルを活用することが採用戦略の鍵となります。
近年では、SNS採用、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用などのアプローチが効果的です。
例えば、X（旧Twitter）やInstagramを活用し、現場の魅力や社員の声を発信することで、若年層へアプローチできます。
企業のビジョンや強みを積極的に発信し、「この会社で働きたい」と思ってもらうことが重要です。
特にSNSのインタラクティブな特性を活かし、求職者と密にコミュニケーションを取ることで、応募から内定までの過程をスムーズに進められ、採用率の向上が期待できます。
採用支援ツールの活用
採用活動を効率化するためには、採用管理システム（ATS）や採用ページ作成ツール、AIチャットボットなどの採用支援ツールの活用がおすすめです。
これらのツールを活用すれば、応募のハードルを下げ、応募後の対応も迅速かつ丁寧に行なえるため、求職者の満足度を高められます。
「採用ページコボット」は、求人情報サイト「バイトル」のノウハウを活かした採用のプロによるサポートが受けられ、自社の魅力を求職者に最大限に伝えることができる採用支援ツールです。
求人情報へのアクセス数を確保するため、業界最大級となる10種類のアグリゲーションサイトと連携。幅広い求職者へアプローチできます。
また、SEO対策も万全。サイトタイトル、説明文、ブランド名を自由に表現でき、検索エンジンからの流入促進、採用ページへのアクセス数増加を見込めます。
まとめ：採用戦略を見直して建設業の人手不足を解消しよう！
建設業の人手不足は、少子高齢化や3Kイメージなど、さまざまな要因により深刻化しています。この課題に対処するためには、ICT技術の活用や労働環境の改善が重要です。
BIM/CIMやAIをうまく活用すれば、生産性を向上させつつ、給与体系の見直しや週休2日制の導入が可能となり、魅力ある職場づくりが進められます。
また、外国人労働者の受け入れや若手育成にも注力し、多様な人材が活躍できる環境を整えれば、業界全体の活性化にもつながります。
建設業の未来を見据え、持続可能な産業として発展させていくためにも、これらの取り組みを積極的に推進していきましょう。
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