多くの企業でDXの導入が進んでいます。しかし、DXを推進した企業がすべて成功しているとは限りません。なぜなら、DXを成功させるためには、きちんとした手順や注意点を意識しながら進めなければならないからです。
DXを行っている企業の中には、DXの目的をはき違えているものも少なくありません。DXの目的をきちんと理解して全社的に進めなければ、DXを成功させることはできないでしょう。
今回は、DXの概要から、企業が抱えている課題、実際に進める手順や注意点などを解説していきます。ぜひ本記事を参考に、自社のDX導入を成功に導いてください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して自社のビジネスモデルを変革させて、市場における競争力の優位性を保つことです。
経済産業省の「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」によれば、DXは以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
DXの間違いやすい点として、業務のデジタル化を行えばDXであるというものがあります。業務のデジタル化は、あくまでもこれまでの業務をデジタルに切り替え、業務効率化や生産性向上の達成を目指すものです。
しかし、DXにおいて、業務のデジタル化は「目的」ではなく「手段」です。DXによって、業務をデジタル化させ、自社のビジネスモデルの変革まで持っていく必要があります。
そのため、システムやツールを導入したから、DXという認識は誤りです。DXはデジタル技術を活用した、自社のドラスティックな変化を促し、市場における競争力を優位にしていくことが目的です。
DXが注目されている背景
DXが注目されている背景には、「急速なビジネスモデルの変化」や「レガシーシステムからの脱却」が挙げられます。
インターネットの発展やデジタル技術の向上、さらにスマートフォンは一人一台持つのが当たり前になるなど、従来のビジネスモデルから急激に変化してきています。今後は、AIやビッグデータに代表されるように、デジタル技術がさらに発展していくことが予想されます。そのため、企業はデジタル技術の発展に伴う、急速なビジネスモデルの変化に対応ができなければ、淘汰されてしまう恐れがあります。
情報処理推進機構(IPA)が実施した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、デジタルテクノロジーの普及によって、「自社の優位性や競争力の低下」を考えている企業は58.7%にまでなっています。
多くの企業がビジネスモデルの変化に対して敏感になってきており、従来のビジネスモデルでは立ち行かなくなると考えています。こうした背景からDXへの注目が集まっています。
また、現在の日本では「レガシーシステム」と呼ばれる既存システムが多く残存しています。この「レガシーシステムからの脱却」もDXの大きなテーマとなっています。
なぜなら、残存しているレガシーシステムでは新たなデジタル技術に対応ができず、ビジネスにおけるスピード感が失われてしまうからです。しかし、多くの企業でレガシーシステムが業務の中で稼働しており、必要不可欠となってしまっていることも事実です。
レガシーシステムによって、DXが進められないという企業も多くあります。レガシーシステムは、システムの維持に多大なコストがかかるばかりか、今後も継続して利用してしまうと、システムがブラックボックス化してしまい、近い将来に継承ができなくなってしまうと考えられています。
経済産業省の「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」によると、『2025年の崖』ということばを用いて、2025年までにDX化が達成できなければ、以降の経済損失が1年あたり最大12兆円(現在の約3倍)に上ると試算しています。
これまで事業を支えてきたレガシーシステムからの脱却という大きな決断をしなければ、その後、多くの会社が新たなビジネスモデルについていけなくなってしまいます。DXに対応しなければ、多くの損失を出してしまうことは必然であるといえます。
DXは大企業だけの問題ではなく、中小企業も対象です。規模に関わらず対応していくことが求められています。
DXを導入することで得られるメリット
DXを導入することで得られるメリットには、主に次の5点が挙げられます。
- 市場における競争力の向上
- 生産性向上
- 働き方改革の実現
- 新たなビジネスの創出
- BCPへの適応
それぞれのメリットについて解説していきます。
市場における競争力の向上
今後のビジネスではデジタル技術の活用は必要不可欠です。
DXを行うことで、データを有効的に活用できることにつながり、市場における競争力の工場を自社にもたらします。反対に、DXを行わないままだと競争力が低下していくということになります。
DXにおけるデータはExcelで管理しているデータのことではありません。ビッグデータやAIの活用によって、自社の強みや社会のニーズを把握し、戦略的に経営を行っていくことがDXです。データを活用し、社会に適したビジネスモデルの構築を行い、競争力につなげていきます。
生産性向上
DXを行うことで、より効率的な営業活動が行える、コア業務に人員を割けるなど生産性向上にも貢献します。なぜなら、DXでは多くのデジタルツールの活用やそれに伴う人員配置などを行えるからです。
たとえば、営業活動においては、SFAやCRMを導入することで、外出先からでも営業報告が行えたり、管理職が進捗状況をいつでもどこでも確認できたり、顧客のニーズに合わせた提案が行えるなどの営業活動が可能だったりします。また、定型業務にRPA(Robotic Process Automation)を導入すれば、これまで工数のかかっていた業務を自動化でき、これまで割いていた人員を他の業務に回すことが可能です。
このようにDXを行うことで、生産性向上につながります。
働き方改革の実現
DXの導入は「働き方改革の実現」にも貢献します。なぜなら、デジタル技術の活用によって、必ずしも会社で行わなければならない業務が少なくなるからです。
前述したように、営業活動においては、SFAを活用すれば外出先から営業報告を行うことが可能です。また、経理や人事、労務などのバックオフィス業務においても、昨今ではクラウドシステムなどが多くの会社からリリースされており、テレワークでも会社にいるのと同じような業務が行えます。
DXはビジネスモデルの変革を目指すものなので、必然的に働き方改革にも貢献します。
新たなビジネスの創出
DXによって顧客のニーズにより敏感になるため、新しい商品やサービスの開発など新たなビジネスの創出にもつながります。なぜなら、データを有効活用できるようになるからです。
これまでになかった視点などが客観的にわかるようになるため、これまでのビジネスモデルでは実現できなかったことができるようになります。DXによって持続的に新たなビジネスを創出できれば、競争力の優位性も必然的に確保できます。
BCPへの適応
BCP(事業継続計画)とは、災害などによって自社の事業活動が困難になった場合でも、被害を最小限に抑え、スムーズな事業の復帰や継続するための計画のことです。
日本では、台風や地震、火山活動など自然災害が多く、BCPの重要性は年々増してきています。DXではこのBCPへの適応も行えます。なぜなら、DXではクラウドを活用したツールやシステムが多いため、自社に物理的な被害があったとしてもデータは別の場所に保管されているため、自社ではない場所からでも業務を行うことが可能だからです。
たとえば、東京で地震の被害に遭ったとしても、大阪からすぐに業務が同じように再開できるなどです。BCPへの対策が求められているのであれば、DXを行うと同時に行うことにつながります。
DXを導入する際の課題
日本企業がDXを導入する際の課題としては、次のようなものが挙げられます。それぞれの課題について解説していきます。
- 経営層の理解不足
- DXを担うIT人材の不足
- 既存システムの老朽化とブラックボックス化
- 社内整備の遅れ
経営層の理解不足
DXということばは認識していても、DXを行う目的やその内容までを把握している経営層は多くありません。しかし、経営層のDXに対する理解は、絶対的に必要です。なぜなら、DXは、これから先の自社のビジネスに大きな影響を与えるため、経営層がDXを行う目的やDXによって目指すビジョンを描かなければいけないからです。
DXは特定のチームが行うものではなく、全社的に行っていくものです。そのため、経営層が強いリーダーシップを取ることが求められます。
DXを担うIT人材の不足
DXを進めていくためには、プロフェッショナルなIT人材の登用は欠かせません。しかし、日本では、DXを担えるほどのIT人材が不足しているのが現状です。
加えて、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には45万人以上のIT人材が不足すると試算されています。今後、さらにDXを進めていくためには厳しい環境が待っているといえます。
そのため、自社内部でのIT人材の育成はもちろん、外部からの登用なども行い、自社のDXを推進していく必要があります。
既存システムの老朽化とブラックボックス化
DXが注目されている背景でも解説したように、現在多くの企業でレガシーシステムが存在しており、老朽化とブラックボックス化が進行しています。
老朽化が進んでしまうと、DXに対応できないのはもちろんのこと、ブラックボックス化を起こしてしまうと、特定の従業員しかシステムの内容などが分からず、貴重なデータの継承などが行えなくなってしまいます。こうしたレガシーシステムが残存している場合は、抜本的な入れ替えなどが必要です。
なお、いきなりすべてを入れ替えるのではなく、特定の業務に絞りスモールスタートで進めていくことが大切です。
社内整備の遅れ
社内整備はシステムに関することではなく、DXを行うための組織体制のことです。
DXは全社的に行うため、組織を横断して改革を進めていくことが重要です。しかし、多くの企業が部署や部門ごとの縦割りの関係になっており、他部署が何を行っているのか分からないという企業は少なくありません。
こうした体制ではDXの進めるスピードが遅くなってしまうため、経営層が率先して社内整備を行っていく必要があります。
自社でDXの推進を成功させるためのステップ
本章では実際に自社でDXを推進した際に、成功させるためのステップを紹介します。具体的には、次のステップで進めていきます。
- 自社のビジョン策定
- 社内体制の整備と人材確保
- DXを推進する戦略立案
- ツールを導入して業務のデジタル化
- 効果測定と効果の確認
- データの利活用を行いPDCAサイクルを回す
それぞれのステップでどのように動いていくかを解説していきます。
自社のビジョン策定
自社がDXを導入することで、どのような未来を描きたいのかを経営層はビジョンを策定する必要があります。DXは達成したいビジョンから逆算的に行うことが大切です。
ビジョンは生産性向上したいなど、抽象的なものではなく、なるべくわかりやすく具体的なものが必要です。数年後、自社がDXを行ったことで、どのような姿になっていたいかを考えます。
社内体制の整備と人材確保
ビジョンの策定をしたら、DXの推進チームを立ち上げていきます。DXのビジョンに沿って、部署から人材を登用する、DXを推進するためのデジタル人材を登用するなど、人材の確保を行います。
また、全社的にDXの展開ができるような社内体制の整備も同時に進めていくことが重要です。
DXを推進する戦略立案
DXは闇雲に進めても成功はしません。全社的に展開は行いますが、いきなり展開するのではなく、部署や業務単位などで優先順位を付けてスモールスタートを行うことが大切です。
現状の課題から描いたビジョンを達成するためにはどこから手をつければ良いのか、どのようなツールを導入すると良いのか、戦略を立案し実行に移していきます。
ツールを導入して業務のデジタル化
戦略立案に沿って、目標を達成できるツールを導入して、業務のデジタル化を行っていきます。ツールは導入すれば良いのではなく、どのような目的で入れるのか、長期間に渡って運用ができるかが重要になります。
また、ツールを導入しても、操作が難しい、画面が見づらいなどで業務効率が落ちてしまっては本末転倒です。そのため、導入することを目的にするのではなく、自社に適しているかという視点で考えることが大切です。
効果測定と効果の確認
ツールを導入し、運用開始後に、定期的な効果測定を行っていきます。ツールを導入する前と後ではどれくらいの業務効率に差があったのか、数値で測れる定量観測はもちろん、実際に該当の従業員にヒアリングを行い、業務に対してどのように感じているかなど定性的な部分も確認すると、効果がより見えてきます。
結果と感覚が合っているかなど、常に確認することが求められます。
データの利活用を行いPDCAサイクルを回す
実際にDX化の推進を行った部署のデータなどを活用して、全社的にDXを展開していきます。
DXでは、行った結果は非常に重要なものになるため、たとえ思っていたような結果が出ていなくても、次に活かしていくという考え方が大切です。常にPDCAサイクルを回し、良くない点は改善し、良い点は継続していくなどしていきます。
DXの導入を成功させるための注意点
DXはきちんと成果を出して、成功だといえます。そのため、注意点を意識しながら、推進していくことが大切です。具体的な注意点は次のとおりです。
- DXのゴールを理解する
- スモールスタートで始める
- 自社全体に波及するように行う
それぞれの注意点について解説していきます。
DXのゴールを理解する
改めて、DXの目的は、デジタル技術を活用して自社のビジネスモデルを変革させて、市場における競争力の優位性を保つことです。
デジタルツールを導入するなどは、目的ではなく手段になります。競争力の優位性を保つことで、事業の成長や自社の利益につながっていきます。
DXのゴールは自社を新しいビジネスモデルの中でも生き抜く力を身につけることです。きちんと理解して進めていくことが大切です。
スモールスタートで始める
繰り返しになりますが、DXはスモールスタートで始めることが大切です。いきなり全社的に展開してしまうと、現場に混乱が起こってしまい、業務効率が落ちてしまう恐れがあるからです。
そのため、特定の業務や部署を決め、スモールスタートで始めましょう。先駆けて行ったDXについて分析を行い、改善しながら全社に展開していくことが成功の鍵となります。
自社全体に波及するように行う
DXは全社的に行うものです。特定の部署だけに特化してしまっては、大きな意味を持ちません。なぜなら、データを横断的に活用するなど、DXではもっと広い視点が求められるからです。
全社的に波及するように行うためにも、DX推進チームを中心に、戦略を練ることが大切です。
まとめ
DXの導入は、日本に存在している全ての企業が求められているものといっても過言ではありません。DXの導入を少しでも早く達成した企業から、今後の市場では有利になっていくことが考えられます。
まずは、自社の課題とDXを行った際のビジョンを策定し、自社のDX導入を推進してみてください。
ディップ株式会社では、日本を支える中小企業の皆様に向けて、ワンストップのDXサービスを提供しています。
DXの実践においては、人材確保や教育の壁、DXを前提とした組織改革の壁、そして予算の壁と、さまざまな課題が立ちはだかります。ディップが提案する「one-stop DX.」は、これらの問題を専属のカスタマーサクセスが並走しながら導入と運用をサポートいたします。DXに伴う現場の混乱やシステムの複雑化を回避可能です。
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提供するDXソリューションは、バックオフィスとセールスの双方に適用可能です。DX推進を検討の際には、お気軽にご相談ください。