一口に「マーケティング」と言っても、さまざまな種類の方法が存在します。近年はインターネットを通じたWebマーケティングに注目が集まっていますが、電話を使ったテレマーケティングも依然として高い効果を発揮します。
今回は、テレマーケティングの強みや、どのような活用方法があるのかについて紹介します。
テレマーケティングとは?どんな意味?
まずは、テレマーケティングの意味について解説します。
テレマーケティングは、その名の通り電話を使ったマーケティング手法のことを指しています。電話を通じて商品やサービスを紹介し、購入を促進します。
テレアポとの違い
電話を使った販売促進と聞くと、多くの人が想像するのがテレアポイントメント、いわゆるテレアポでしょう。一般的に、テレマーケティングとテレアポは分けて使われることが多いです。
相違点は、テレマーケティングは既存顧客へのアクションであるのに対し、テレアポは新規顧客の開拓にフォーカスを置いたものであるという点です。
テレマーケティングにおいて、電話対応を行う相手はある程度関係が構築されているケースがほとんどです。見知った間柄でテレコミュニケーションを行うため、テレアポほどのよそよそしさはありません。
一方、テレアポは電話越しに新規顧客を開拓するという手法です。見込みがありそうだけれど、まだコミュニケーションを取ったことがない相手に電話をかけるというものなので、テレマーケティングとは異なるノウハウが求められます。
また、テレアポはその性質上、アウトバウンドに特化した活動の一方、テレマーケティングはアウトバウンドとインバウンドの両方に当てはまるマーケティング活動です。アウトバウンドとインバウンドの違いについては、後ほど解説します。
コールセンターとの違い
コールセンターは、その組織における電話対応を一括して引き受ける部門のことを指しています。電話対応が発生する業務は、すべてコールセンターの仕事という場合もあるでしょう。
そのため、コールセンターはテレマーケティングはもちろんのこと、テレアポにも対応する部門でもあります。コールセンターの業務の一環として、テレアポやテレマーケティング があると考えると、理解しやすいのではないでしょうか。
マーケティング活動以外にも、コールセンターはカスタマーサポートやクレーム対応などの問い合わせが業務として発生します。実際に業務内容を並べてみると、電話を使った業務というのは大きな割合を占めていることがわかります。
テレマーケティングの種類
先ほども少し触れたように、テレマーケティングには大きく分けて「インバウンド」と「アウトバウンド」の2種類のアプローチがあります。それぞれの違いを理解し、必要な業務を考えてみましょう。
インバウンド
インバウンドとは、かかってきた電話からコミュニケーションを開始するというものです。CMで流れていた商品の問い合わせや新商品の購入相談など、見込み客が何らかの用事を抱えて連絡を試みます。
インバウンドでのテレマーケティングの場合、アウトバウンドに比べて、明らかに自社への相談や悩みなどを抱えているケースが多くなります。そのため、興味のない人の気を引くための営業活動ではなく、彼らのニーズに応え、契約や購入に結び付けられるようなスキルがマーケターには求められるのです。
また、インバウンド対応の方が相手の興味関心が強い分、購入の意思が強いことがほとんどです。確実にコンバージョン(購入・成約など)へと結び付けられるよう、スキルのある人材の投入が大切です。
アウトバウンド
一方のアウトバウンドですが、インバウンドとは対照的に、自らが発信者となって見込み顧客にアプローチを試みるものです。
自ら電話をかけるという意味では、テレマーケティングだけでなく、テレアポも当てはまります。しかし、テレアポはインバウンド対応というものが発生しないため、アウトバウンド専門の施策と言うことができます。
アウトバウンドのテレマーケティングは、テレアポとは違って、ある程度相手の情報を、こちらが握っていることがほとんどです。自社商品の購入履歴や、どのようなニーズを持っているのかを確認してテレマーケティングに臨むため、テレアポに比べて確度の高いコミュニケーションが可能です。
ただ、インバウンドとは違って顧客が必ずしも問題を抱えているとは限らない上、わざわざ電話の時間を頂戴しての対応となるため、発信者にもスキルが求められます。インバウンドに比べて断られる確率も高くなってしまうため、事前の教育はもちろん、慣れによって精神力を身につけることも大切です。
テレマーケティングのメリット
Webマーケティングが一般化している昨今において、電話を使ったマーケティングは古い施策だと考えられることもあります。しかし、SNS時代でも電話は相変わらず利用されていることからもわかるように、テレマーケティングはまだ利用価値の高い施策に違いはありません。
では、テレマーケティングで得られるメリットを確認していきましょう。
口頭で商品を紹介し説得力を持たせられる
テレマーケティングの最大の特徴が、口頭で商品を紹介できるという点にあります。インターネット上には多くの情報が存在しており、受け手の興味関心次第で、実に多くのノウハウや情報を知ることができます。
しかし、だからと言って口頭での情報伝達が廃れているとは限りません。テキストや動画などのコンテンツでマーケティングを行う上での弱点は、必ずしも受け手に伝えたいメッセージが伝わるとは限らないところです。
読み手の気分次第でコンテンツが咀嚼されずに右から左へ流されてしまうケースは多く、どれだけ有益な情報であっても彼らの関心を引けなければ意味はありません。
一方、テレマーケティングはコンテンツを届けるのではなく、コミュニケーションを通じて販売促進を行うものです。会話では、否が応でも聞き手は相手の話を聞かなければならないため、文字や動画などよりもメッセージが伝わりやすい傾向にあります。
そのため、テキストで同じことを伝えていたとしても、口頭で改めて同じ内容の言葉を伝えると、受け手には「なるほど」「そうか」と感じてもらうことができます。
納得感があれば、メッセージも正しく伝わるだけでなく、記憶に残してもらえます。結果的に、自社商品を選んでもらえる機会は増えるというわけです。
口頭で伝わる情報の価値は、IT化が進んだ現代においても健在だということがわかります。
直接営業に比べて効率的
テレマーケティングの利点は、直接営業先へ赴かずとも、オフィスから電話をかけるだけで業務を遂行できる点にもあります。
日本全国へ営業を実施したくても、そのために社員を各地域に派遣していては、時間がかかるだけでなく、移動コストも大きくなってしまいます。特に地方の企業、あるいは都会から地方のターゲットに営業したい場合は、都度直接赴くというわけにはいかないものです。
そこで、テレマーケティングの出番です。どこにいても通話可能な電話によるマーケティングを敢行することで、移動コストを抑えて営業活動を進められます。
また、これまでターゲットとしてこなかった地域へのマーケティングも進められるため、新しい販路の拡大にもつながるでしょう。
非インターネットユーザーにアプローチできる
マーケティングにおけるインターネットの重要性はよく理解されていますが、極端な話をすれば、インターネットを利用しない人にWebマーケティングを行っても意味はありません。
特に、高齢者層のようにインターネットに明るくない人たちは多く存在しているため、彼らをターゲットにした商品の販売とインターネットはあまり相性が良くありません。
そんなときに活用したいのが、テレマーケティングです。テレマーケティングは電話に特化したマーケティング手法であるため、すでに通販での購入履歴などがある人には大きな効果を発揮します。
インターネットに触れない分、こういった層の人たちはネットユーザーほど情報に囲まれていないため、新しい商品よりも既存商品を選んでくれると考えることもできます。
この場合、テレマーケティングを彼らへ積極的に展開することで、リピート購入や新商品の購入も比較的容易に受け入れてくれるでしょう。
顧客満足度の向上
口頭での商品説明やサービス紹介を行うテレマーケティングは、顧客が必要とする情報の要点だけを伝えられるため、必要以上の情報を与えてしまう心配はありません。
特に、美容やヘルスケア商品などは、法律などのルール上の問題から、Web広告などに大量の注意書きを加筆しなければならない場合もあります。
顧客のニーズとは関係なくとも、これらを記載しなければならないため、そのすべてを顧客に伝えることで、必要以上に負担を強いてしまうこともあります。
一方、電話での案内であれば要点だけを簡潔に伝えられるため、余計な情報を与えることなくスムーズにプロモーションを展開できます。受け手としてはわかりやすい説明と丁寧な接客で良い印象を持ってもらいやすいので、結果的に顧客満足度の向上につながります。
テレマーケティングのデメリット
テレマーケティングには多くのメリットが期待できる中、一方で懸念すべきデメリットもあります。
信頼関係の構築が難しい
まず、テレマーケティングは対面での接客に比べ、見込み客との信頼関係の構築が難しい点が挙げられます。
当たり前ですが、テレマーケティングは顔を合わせて接客ができない方法なので、口頭のみの案内となります。メールなどと同様、世間話をしながら関係構築を進めていくといったことが難しい手段でもあるので、関係を深めていくには別の施策を導入する必要があるでしょう。
対面とは異なるコミュニケーション能力が必要
テレマーケティングなどの電話対応は、発信者側は業務上複数回行う必要があるため、回数を重ねるごとに慣れてくるものです。しかし、見込み客が必ずしも電話対応に慣れているとは限らず、対面とは異なるテンポのコミュニケーションに戸惑うケースも見られます。
そのため、テレマーケティング担当者は対面でなくとも、スムーズに会話ができる能力が求められます。
人材育成コストの発生
上述の通り、テレマーケティングは通常の営業活動とは異なり、専門の電話対応のスキルが人材に求められます。
顧客とのコミュニケーションを円滑に進めていくという意味では通常の営業活動と同じですが、顧客満足度を高めるためには異なる能力や知識が必要になることもあります。
例えば、インバウンドでのテレマーケティングのケースを考えてみましょう。自社商品についての相談、例えば新商品と従来商品の違いがわからず、電話で問い合わせている見込み客のケースです。
彼らは比較的強い購買意欲を持っているとともに、商品についてそれなりの知見があります。そのため、この場合は関係構築のための接客ではなく、問題解決につながる情報の提供に特化する必要があります。
詳しい商品情報を見込み客に伝えられれば、相手には納得感を持ってもらい、商品購入へ結びつけることができます。一方、曖昧な応対になってしまうと、納得感を与えられないばかりか、自社商品への不信感を抱かせてしまいかねません。
こういった事態を回避するためにも、テレマーケティング担当者には相応の教育を提供しなければならないのです。
テレマーケティングを活用するポイント
テレマーケティングを成功させるためには、活用のためのポイントを的確に押さえる必要があります。主なポイントを確認していきましょう。
見込み客の調査を徹底する
まず重要なのは、見込み客の調査です。テレマーケティングはテレアポとは違い、あらかじめ見込み客の情報を集めてアプローチが行えます。
見込み客のニーズや悩み事、趣味嗜好を理解しておくことで、いきなりの電話であってもスムーズにコミュニケーションが行えます。あらかじめシナリオを用意しておくことで、テンポよく会話を進められるでしょう。
メールマーケティングなどと併せたて活用する
テレマーケティングは単体での活用だけでなく、その他の施策との併用で効果を発揮します。例えば、メールマーケティングです。
メルマガの開封率や、案内の送付からもたらされる問い合わせ情報を事前に把握しておけば、その見込み客の情報をさらに深掘りし、最適なアプローチを提案することができます。
また、テレマーケティングから有効なメールマーケティング施策を考案するなど、相乗効果を期待できます。 うまくこれらのマーケティングを組み合わせ、コンバージョンへつなげましょう。
テレマーケティングの導入事例
最後に、実際のテレマーケティング導入事例を紹介しましょう。
事例①:ベルテック
ベルテックが導入したテレマーケティングのアプローチは、精度の高い市場調査への注目でした。アンケート資料を発送する前に、プレコールを実施することでターゲットの傾向を把握し、洗練された潜在顧客リストの作成を行いました。
その結果、ポテンシャルの高いターゲットに絞り込めただけでなく、資料送付の後も回答を促すためのフォローコールを実施し、回答・開封率を大幅に向上しました。
事例②:ベルメディア
ベルメディアがリピート通販会社にテレマーケティングを提供したケースでは、休眠リストの活用が課題でした。
半年前に商品を購入した顧客に向け、DMによりキャンペーン告知します。そこで反応のあった顧客をさらに除外することで、テレマーケティングが必要な見込み客の洗い出しを行いました。
DMから数週間後、テレマーケティングを実施することにより、リスト1,000件中612件の顧客に電話をつなぐことができ、そのうち82件から受注を引き出すことに成功しています。
事例③:ジェイヴイコミュニケーションズ
ジェイヴイコミュニケーションズがシステム開発会社向けに提供したテレマーケティング事例においては、上場企業1,000件からの訪問アポイントメント獲得が課題でした。
テレアポによる無理なアポイントメント獲得ではなく、プレコールによるキーマン調査を実施し、興味を持ってくれる顧客の絞り込みをはじめに行いました。
興味を持ってくれた会社に資料を送付し、後日アフターコールを実施することで、アポイントメント取付27件の獲得に成功しています。
また、実施時には反応のなかった企業からも訪問の依頼を獲得できたということで、会社のブランド認知にも良い影響を与えたことがわかりました。
まとめ
テレマーケティングはテレアポと異なり、相手に良い印象を持ってもらえるだけでなく、確実な成果を生む上で重要な役割を果たすマーケティング手法です。 効果的な活用方法と有効な課題を検討し、積極的に運用すると良いでしょう。