従来の営業といえば、「勘と経験」に頼る部分が少なからずありました。人柄や性格、人脈などが業績を左右し、できる人とできない人の差が大きな業務であり、現在でも非常にアナログなイメージを持つ人は多いのではないでしょうか?
しかしながら、近年では営業分野のIT化が急速に進んでいます。合理的かつ効率的な運用が可能になり、営業のイメージは大きく変わりつつあります。
その大きなカギとなるのが「SFA」と呼ばれるITツールです。この記事では「SFA」について基礎的事項から、ツールの機能やメリット、導入における注意点や、実際の業界で用いられているツールの例を紹介します。
SFAとは何か?
始めに、SFAとは何かについて解説します。
SFAとは、Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)の略語で、日本語では「営業支援システム」と訳されます。SFAは営業担当者を支援するためのツールで、主に商談から受注までの過程の最適化を行います。
これまで、営業活動というものは、担当者の経験やその時々の独断によって行われることも珍しくありませんでした。SFAを導入することで、担当者一人ひとりの営業活動を丁寧にマネジメントし、確実性の高いアクションを選び、成果につなげることを目指します。
ここでは、SFAと混同されがちな「CRM」や「MA」との違いについて解説し、SFAの市場規模についても触れていきます。
SFAとCRMの違い
CRMとは、Customer Relationship Management (カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の略語で、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。
CRMとSFAの大きな違いは、利用するタイミングです。上述の通り、SFAは商談から受注までの最適化を行います。一方で、CRMは商品を購入してくれた顧客との関係性を良好に保つためのものです。
したがって、CRMは商品の購入後に利用するツールです。利用の順番でいうならば、SFAを使用し商品の受注が成立した後に、CRMを利用するという流れです。
SFAとMAの違い
MAとは、Marketing Automation(マーケティング・オートメーション)の略語で、日本語では「営業自動化」と訳され、営業に関わる業務を自動化するツール全般を指します。
MAも、SFAとの大きな違いは利用するタイミングです。MAは顧客となる可能性の高い相手を見つけたり、効率的に商談を獲得したりするためのツールです。SFAは商談から受注までの業務最適化ツールですので、MAは必然的にSFAよりも前に利用されます。
したがって、SFAとCRM、MAは利用するタイミングが異なるといえます。たとえば、以下のような流れで使用します。
- 1. MAによって顧客となる可能性の高い相手を見つけて商談を獲得
- 2. SFAによっ受注までの業務を効率化
- 3. CRMによって受注後の顧客との関係性を築き、再受注の可能性を高める
SFAは、MAとCRMと連動して利用するシステムであることを覚えておきましょう。
SFAの市場規模
株式会社アイ・ティー・アールによる調査報告「ITR Market View:SFA/統合型マーケティング支援市場2021」によれば、2019年度のSFA市場は12.5%増、2020年度も2桁成長と安定した伸びを維持しているとされています。
また、SFAと関連性が高いCRMの市場規模に関しては、デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社の報告「クラウド型CRM市場の現状と展望 2018年度版」によると、CRM市場は2022年度は4,780億5,000万円にまで市場は拡大すると予測されています。
また、同じくSFAと関連性が高いMA市場に関しても、株式会社矢野経済研究所の発表によれば、2020年のMA市場は約447億3,500万円にのぼるとされており、2025年には約737億円に成長することが予測されています。
このように、SFAおよびCRMやMAといった「営業支援ツール」の市場規模は成長していくことが考えられ、今後もより注目度の高い業界になることが予想されます。
SFAの一般的な機能
続いて、SFAツールの一般的な機能について解説します。機能を知ることでSFAができることを把握し、その具体的な利用イメージを理解しましょう。
顧客管理
SFAの代表的な機能の一つが、顧客情報を集中管理するシステムです。扱われる顧客情報は、顧客名(企業名)、所在地、担当者やその連絡先などの基本情報のほかに、意思決定に関わる重要人物情報、意思決定までの流れなど、商談を通して各営業担当が得た情報も含まれます。SFAツールは、これらの情報を営業担当者間で共有し、社内で譲歩の偏りがないように管理します。
案件管理
SFAには、各営業担当者が抱えている案件を管理・共有するための機能があります。「担当者は誰か」「扱う商品は何か」「進捗状況(商談中・受注など)はどの程度か」「競合他社はどこか」などの情報をリアルタイムに管理し把握できます。社内全体の営業活動を案件ごとに管理できるため、マネージャー職にとって役に立つツールです。
行動管理
SFAツールには、それぞれの営業担当が自分の行動を管理する機能もあります。スケジューラーと連動して自分の行動予定を管理したり、案件と自分の行動予定を紐付けて管理したり、営業活動がスムーズに行えるように支援するシステムを備えています。
また、タスクを自分や他の営業担当に配分するツールや、タスクに関する意見交換をコメント機能で行えるものもあります。タスク重要度の優先付けや、未対応タスクリストを作成できるツールもあり、営業担当の行動をスムーズにコントロールします。
スケジュール・日報管理
SFAツールの補助的な機能として、日々のデータを管理する機能があります。予定の管理はもちろんですが、過去に遡ってデータを参照できる点が特にSFAツールの強みです。
営業担当の活動記録や、顧客情報およびコメントなどを日付けデータと共に管理します。この日付データとの紐付けによって、各営業担当者の商談開始から受注に至るまでの流れを、過去から現在まで参照できます。各営業担当者それぞれの受注に至るまでのプロセスを把握することができ、全体の営業効率を上げるための算段を考える際に重要な情報となります。
売り上げ予測システム
SFAでは、企業全体の売り上げに加えて、営業担当ごとの売り上げを予測できます。また、顧客ごと、商品ごとの売り上げなども予測することができます。数値化だけでなく、グラフによる図示ができるツールも多く、売り上げ予測を直観的に理解できるように設計されています。データの定量化・可視化によって、営業を客観的に管理できるツールです。
営業活動分析
営業活動分析は、SFAツールの大きな強みの一つです。営業のあらゆる活動のデータを取得し、グラフや表で可視化することによって、社内全体の営業活動を客観的に分析することができます。
営業活動の属人化を防ぎ、営業担当の違いに左右されないノウハウを蓄積することができます。この機能によってできる人・できない人の開きを少なくし、全体の営業効率改善につながります。
SFAを導入するメリット
SFAツールの一般的な機能が理解できたところで、続いてはSFAツールを導入するメリットについて紹介しましょう。SFAが営業活動をどのように変えるのかについて、具体的に解説していきます。
営業活動を可視化できる
SFAを導入することにより、営業活動を可視化できるようになります。行動管理・案件管理などの機能はまさに営業活動可視化のためのものであり、現在の案件の進捗状況、各担当者の活動状況を把握しやすくなります。
営業活動の可視化によって、営業担当の管理者は全体の動向を追いやすくなり、進捗の滞りや未対応業務の見落としを防ぐことができます。
また、営業活動を定量的に示すことで、各担当者たちの成果を見える化し、今後の営業戦略の参考にするといった用途への応用も可能です。
営業活動データを共有しやすくなる
SFAを導入すれば営業活動データを共有することができるため、ノウハウの蓄積を効率化し、営業担当者を集団的にコントロールすることができます。
各営業担当者たちの行動を管理し、またそれぞれの気づいたことや得られた情報を日々共有することで、社内全体にムラなく情報を行きわたらせることができます。
営業プロセスを社内で標準化できる
営業プロセスの標準化もSFAツールの強みです。担当者の経験に頼ってしまう営業は、その担当者が異動・退職してしまうとノウハウが一度に失われ、営業の非効率化の原因になります。
SFAによってデータを共有し、過去のデータにも遡れるようにしておくことで、営業の属人化を防ぐことができるようになります。
営業を効率化できる
SFAを導入するメリットを大きくまとめると、営業の効率化です。営業の可視化、営業活動のデータ化、営業プロセスの標準化は、すべて営業効率を上げるためにあると言っても過言ではありません。
営業に関わる膨大なデータをSFAツールにより適切に管理し、社内全体の業務を円滑に行うことができるようになります。
SFAを導入する際の注意点
ここまで、SFAのメリットについて紹介しました。一方で、SFAツールは導入や運用の仕方によっては、その機能を充分に活かせないこともあります。
ここではSFAを導入する際の注意点について確認し、SFA運用のヒントとなる情報を紹介します。
SFA導入の目的を具体化する
SFAを導入する前に、その導入目的を具体化することが重要です。
一言でいえば、SFAは営業効率化ツールですが、機能が豊富に用意されているため、多種多様な目的に対応できます。逆に、目的を明確に決めておかなければ、多様な機能に翻弄されるばかりで、まともに扱うことができないといったことになりかねません。
どんな営業活動を管理したいか、どんな業務を効率化したいのかといった問いに対する明確な答えを持っておけば、目的を見失わずに適切なSFA導入・運用ができるでしょう。
入力項目が多すぎないようにする
SFAには顧客管理や行動管理、案件管理などのさまざまな管理ツールがあるため、多くの情報をデータ化することができます。これらの情報は自動で得られるものもありますが、ほとんどは各担当者が手動で入力します。
データが膨大すぎると、入力項目が多すぎてしまい、大きな負担になってしまうこともあります。
また、膨大なデータは分析するのも一苦労なので、せっかく豊富なデータを得られても活かすことができなくなるかもしれません。SFA導入において、この「入力項目の豊富さ」と「担当者の負担にならないか」「データが扱いきれるか」のバランスを見極めることは非常に重要です。
営業担当者たちの能力を鑑みて、どういった情報があれば営業が効率化できるかを見極め、少ない入力項目でも効果を発揮するようなSFA運用が理想的です。この実現のためには、先ほどお伝えしたように「目的を明確に持つ」ことが重要です。
SFAを導入する目的に立ち返って、どんなデータが必要かを逆算し、入力項目を取捨選択するというプロセスを踏むと良いでしょう。
グラフ・分析結果などのアウトプットをしやすくする
さまざまなデータが得られても、担当者が理解できる形にしなければ意味がありません。その方法として、グラフとして可視化したり分析結果を図表として示したりと、担当者たちがわかりやすい形に変換する必要があります。
SFAツールは、このグラフ化や図表化が自動的にできるものもあります。ただし、これらの自動化ツールは決まったデータにしか使用できず、アウトプットもバリエーションがないことが多いです。
データをより詳細に分析したい場合は、営業担当者の要望を理解できているデータアナリストに、営業担当にとってわかりやすいアウトプットを出してもらうと良いでしょう。
主なSFAツールの例
では、数あるSFAツールの中から、実際に企業で運用されているものの例を紹介しましょう。SFA導入の際の一助としてみてください。
Senses
Senses(センシーズ)は、「成果を自動的に最大化するSFA」というキャッチフレーズの国産SFAツールです。
レノボや株式会社リコー、ソフトバンクロボティクス株式会社などの企業に導入実績があるツールであり、「ITreview Grid AWARD 2021 Spring」にて、ユーザーの高満足度の称号である「Leader」を受賞しています。
モバイルアプリによるデータ入力や、営業組織のリモートワーク支援、AIによる営業案件リスク分析などの機能が備わっています。
Sales Cloud
Sales Cloud(セールスクラウド)は、株式会社セールスフォース・ドットコムが運営するSFAツールです。Sales Cloudは世界的に使用されており、全世界で15万以上の企業で採用されています。
顧客管理や商談管理、案件管理などの機能のほか、ビジネス状況を一目でリアルタイムに把握できるレポート・ダッシュボード機能や、スピーディで正確な売り上げ予測機能が備わっています。PCおよびスマホに対応しており。シンプルでスマートなUIも印象的です。
eセールスマネージャー
eセールスマネージャーは、日本のソフトブレーングループが運営するSFAツールです。
操作の簡単さや、営業工数の最小化のしやすさを強みとして掲げており、「1つの情報から複数の分析を反映する」という意味である「シングルインプット・マルチアウトプット」をコンセプトとしています。
他のSFAツールと比較しても、ツールの使いやすさとデータ反映のスピーディさを強調しており、営業担当者の負担を軽減することを徹底しています。
JUST.SFA
JUST.SFAは、株式会社ジャストシステムが運営するSFAツールです。基本的なSFAツールの機能があることはもちろん、「変幻自在のカスタマイズ性」を売りにしており、常に変化する課題や組織の実態に合わせた業務遂行が可能です。
また、株式会社ジャストシステムは、教育事業にも力を入れている関係でSFA初心者向けの資料が充実しており、168ページにもおよぶコンテンツを用意しています。
業態が変化しやすい企業や、ITについて詳しくない企業がSFAを導入したいと考えている場合は、JUST.SFAは魅力的かもしれません。
Knowledge Suite
Knowledge Suiteは、ビジネスに必要なツールをオールインワンで提供しているクラウドサービスです。SFA機能が充実しており、名刺管理ツールや営業報告機能、さらにはテレワーク環境から利用できるデータベースやコミュニケーションツールなど、担当者の業務効率化および働き方改革に貢献できるサービスが揃います。
kintone
kintoneは、営業支援をはじめさまざまなデータ活用に関連する業務を丸ごと効率化してくれるサービスです。
SNSのようにコミュニケーションが取れる情報共有システムを実装しているため、担当者同士のリアルタイムの進捗管理やフィードバックを実現し、パフォーマンスの改善を見込めます。豊富な機能拡張の余地も残されており、必要に応じてさらなるカスタマイズも可能です。
UPWARD
UPWARDはDXによる営業力の底上げを目的としているSFAツールです。
スマホやタブレットといった、モバイルデバイスに最適化されたツールとして設計されているため、出張先やテレワーク環境からでも利用しやすいことが特徴です。位置情報と顧客情報を連携させ、最適な営業ルートやアプローチを探ることのできるアクティブな機能も実装しています。
アクションコックピット
データの見える化と情報共有の高速化、そしてモバイル活用の実現をコンセプトとするのがSFAツールのアクションコックピットです。
成功事例を簡単に共有できる機能が実装され、営業担当者の営業力底上げを図れることはもちろん、マネージャーも進捗管理やスケジュール共有機能を使って、現場のコントロールをリモート環境でも的確に行うことができます。
SFAツールを活用するポイント
SFAツールは、ただ導入をすれば営業力が向上するというものではありません。現場に合わせたツール選びや活用方法を選び抜くことで、初めて確かな効果が期待できます。
現場で抱えている課題を把握する
SFAツールを効果的に運用する上では、まず営業部署においてどのような課題が生まれているのか把握する必要があります。
「営業担当者間で成約率に大きなギャップがある」「顧客情報が錯綜し適切なアプローチができていない」など、営業担当が抱える課題というのは現場によってさまざまです。自社でどんな問題が生まれているのかを知り、それに合わせたソリューションを選ぶことが大切です。
PDCAサイクルの導入など運用ルールの策定も進める
SFAツールの運用にあたっては、それを活用してどのような業務を実現するのかというシナリオまで考えることが重要です。 漠然とツールを使うのではなく、どういった運用モデルにSFAを組み込み、有効活用するかが営業活動改善のポイントです。業務を効果的に改善するため、PDCAをきちんと回せる仕組みづくりに努めるなどして、最大限有効活用できるよう促しましょう。
まとめ
SFAの基礎的事項からその機能やメリット、実際に運用する際のポイントとSFAツール例について解説しました。
営業支援サービスのめまぐるしい発展からもわかる通り、SFAツールは今後欠かせないものになっていくことが予想されます。つまり、どの業界・業種においても、SFAツールを正しく理解し適切に運用するスキルが求められていくと考えられます。
今回お伝えしたメリットや注意点を意識しながら、SFAツールの導入を検討してみてください。
ディップ株式会社では、日本を支える中小企業の皆様に向けて、ワンストップのDXサービスを提供しています。
DXの実践においては、人材確保や教育の壁、DXを前提とした組織改革の壁、そして予算の壁と、さまざまな課題が立ちはだかります。ディップが提案する「one-stop DX.」は、これらの問題を専属のカスタマーサクセスが並走しながら導入と運用をサポートいたします。DXに伴う現場の混乱やシステムの複雑化を回避可能です。
また、ディップではソリューションの提供にあたって、すべて自社のスタッフが顧客対応を行うダイレクトセールスを採用しています。営業とカスタマーサクセス、開発チームが密に連携を取っている営業スタッフが、顧客の潜在ニーズまでを丁寧に把握し、満足度の高いサービスの提供に努めます。
提供するDXソリューションは、バックオフィスとセールスの双方に適用可能です。DX推進を検討の際には、お気軽にご相談ください。