ソリューション営業とは?営業プロセスと導入企業の事例│コボットLAB

ソリューション営業とは?営業プロセスと導入企業の事例

ソリューション営業

時代の変化やテクノロジーの発展によって、営業活動のあり方も変容を遂げています。近年特に注目されているのが、ソリューション営業と呼ばれる手法です。

顧客との関係構築やコミュニケーションに重点を置いたこのアプローチは、従来の営業とどのような違いがあるのでしょうか?今回は、そんなソリューション営業の特徴や、実施の際のポイントなどについて解説します。

ソリューション営業とは

ソリューション営業は、顧客との対話を通じてニーズを正確に理解し、その悩みを解消するために解決策を提案するアプローチで自社商品を売り込もうという手法です。本来、顧客が商品を購入するのは、自身や自社に何らかの悩みや必要性を感じているからです。

ソリューション営業においては、まず顧客がどんな悩みを抱えているのかというところからスタートします。こちらから価値観を押し付けるのではなく、相手が潜在的に抱えているニーズに対して営業を行うことで、満足度の高い取引を実現できます。

このように、ソリューション営業は顧客主体の営業活動であることから「提案型営業」と呼ばれることもあり、コミュニケーションに比重を置いた手法であることがわかります。

ソリューション営業に注目が集まる理由

ソリューション営業が注目されている理由として大きいのは、現代が高度に情報化されている点にあります。

インターネットが今ほど普及する前の時代においては、人間一人や組織単体の力で得られる情報には限りがあり、メディアもラジオや新聞、テレビに限られていました。そのため、ビジネス上の取引も情報を得やすい地域密着型で行われたり、慣習的に深い関係にあるお得意様を中心として行われたりすることが一般的だったのです。

しかし、インターネットが幅広く普及したことで、日本中あるいは世界中の商品やサービスを自由に購入できるようになりました。

一方で、あまりにも多くの商品の情報が流入することで、結局のところどこと取引をすれば良いのかがわからなくなってしまうケースも増えています。こういった顧客の混乱を解消し、最善の問題解決策を提供する必要が出てきたことから、ソリューション営業は注目を集めるようになったわけです。


従来の営業活動との違い

ソリューション営業は、営業活動の中でも新しい形態の手法とされています。従来の営業活動は「プッシュ型」と呼ばれるアプローチでしたが、ソリューション営業は「プル型」に分類されます。

ここで、従来の営業手法とソリューション営業の違い、そして優位性についても確認してみましょう。

飛び込み営業との違い

営業と聞いて真っ先にイメージするのが、飛び込み営業の手法でしょう。飛び込み営業は、新規顧客獲得のために顧客に対してアプローチをかける方法ですが、顧客のニーズについては二の次となっている点が特徴です。

飛び込み営業はプッシュ型営業といわれており、とにかく自社商品を売り込むことに重点を置いた手法です。

確かに、積極的な売り込みは相手からニーズを引き出すことができるかもしれませんが、半ば強制的に必要性を見出させる手法なので、顧客との長期的な関係構築やコミュニケーションには最適とはいえません。

一方、プル型であるソリューション営業の場合、まずは相手のニーズを聞き出すところから始まります。ニーズに応じて最適な商品の提供や、商品の活用方法の提案などを進める方法なので、満足度の高い取引を促せます。

ルート営業との違い

ルート営業は、すでに取引実績のある顧客向けにアプローチをかける営業手法です。新しいサービスや商品の提案を行うことが主な業務内容ですが、顧客が営業前に感じていないニーズに対してアプローチをかける方法であるため、プッシュ型営業に分類されます。

ソリューション営業の場合、取引実績のある顧客に対してもアプローチをかけますが、より顧客主体の受動的な方法を選びます。メルマガの送信やウェビナーなどによる情報発信などを通じて、自社商品や業界についての知見を深めてもらいます。

そこから自社の問題について関心を持ってもらい、問い合わせをしてもらうというアプローチが良い例です。ソリューション営業の最大のメリットは、潜在ニーズを顧客に感じてもらえる点にあるでしょう。


ソリューション営業を導入した企業の事例

では、実際にソリューション営業を導入している企業の事例をみていきましょう。

BEAMS(株式会社ビームスホールディングス)

セレクトショップを全国に展開するBEAMS(ビームス)では、顧客に最適な商品を提案することが重要な業務といえます。さまざまな企業とのコラボレーションや、新しい商品の仕入れで顧客を驚かせてきたBEAMSですが、常に高い満足度を創出するのに役立っているのが、独自に導入したアンケートシステムです。

これまでの購入した顧客向けのアンケートに加え、商品を購入しなかった顧客に対してもアンケートを実施することで、さらなる満足度の向上を目指しています。また、社内の情報共有がメール一辺倒になってしまい、双方向のコミュニケーションが失われている点にも改善を加えました。

社内SNSを導入することによって、メールよりもカジュアルに情報共有が行える環境を整備し、コーディネートを日々更新することで、顔が見えるやり取りを実現しています。

株式会社トヨックス

ホースと継ぎ手の専門メーカーとして、長い実績を持つ株式会社トヨックスでは、データベースが別個に管理されており、顧客情報があちこちに散らばっている問題を抱えてきました。半世紀以上の実績を持つ企業だけに、時代とともに蓄積されてきた顧客情報がある一方、デジタル化や統合が進まなかった部分も大きいのでしょう。

そこでまず株式会社トヨックスが取りかかったのは、CRMを用いた顧客情報の一元化です。顧客データベースの統合を行い、変更が生じた際には営業現場で常にデータ更新できる仕組みを整えたことで、営業効率を大幅に高めました。

配送物を発送する際の作業時間も3分の1に削減されるなど、営業とは直接関係のない業務にもメリットを与えているなど、その効果は大きなものだったことがわかります。

顧客からの要望などもクラウド形式のデータベースで一元管理することで、さらなるニーズの創出と問題解決に向けた仕組みづくりも進めています。

野村證券株式会社

金融商品を扱う野村證券株式会社では、顧客とのコミュニケーション能力の技術的な向上に努めているのが話題です。金融商品の購入ついては、金融のプロフェッショナルと投資家がお互いに信頼できる関係を構築することが求められます。

特に多額の投資を行うとなると、テキストや電話のやり取りだけではコミュニケーションが難しい部分もあるものです。そこで、野村證券株式会社では、パソコンなどの画面上で顧客の保有資産状況や、パンフレットなどの商品資料を共有できる独自の営業支援システム「リモート相談」の導入を開始しました。

近年は新型コロナの影響もあり、対面での営業が難しくなっていますが、金融に特化したビデオ通話システムを利用することで、オンラインでも対面同様のコミュニケーションを実現しています。

メールの問い合わせ感覚で「相談」という形式で利用が可能なので、資産運用に疎いけれど興味があるといった程度のモチベーションでも、気軽に利用可能です。


ソリューション営業に必要なスキル

ソリューション営業に求められるスキル

このように、ソリューション営業の実施にはさまざまなアプローチが考えられるため、このシステムやサービスを導入すれば良いというわけではないのが難しいところです。

しかし、ソリューション営業に必要なスキルはいずれの手法でも共通しているため、まずはこの部分の能力を伸ばすところからスタートするのが良いでしょう。

ロジカルシンキング

ソリューション営業を実現する上でまず大切なのが、ロジカルシンキングの能力です。いわゆる論理的思考能力のことで、物事をロジックに則って考えられるかどうかが問われます。

従来の飛び込み営業やテレアポでは、とにかく相手の懐に飛び込むメンタルが重要視されてきました。懐に飛び込むメンタルの強さは大切ですが、ソリューション営業においてはこのような精神的な強靭さよりも、論理で自社商品の魅力や、状況を分析できる力が求められます。

ソリューション営業は、単に顧客との関係を深めるだけでなく、相手のニーズにあった商品の提案を行う必要があります。論理的思考力を養うことで、どんな顧客であっても落ち着いて分析し、問題点の把握と商品の提案をこなせるようになります。

課題解決能力

ロジカルシンキングの素養があれば、課題解決能力も養えるようになります。端的にいえば、相手の課題に則って商品を提案できる力です。

一般的なコミュニケーションの場合、相手の悩みを聞き出せても、「そうなんだ」で終わることは可能です。しかし、営業の場においては、相手の悩みを聞くだけでなく、悩みに応じた解決策を提示する必要があります。

顧客に納得してもらう課題解決を行うためには、論理的な整合性があり、かつ新しい発見を提示しなければなりません。仮説を組み立て、相手が納得する解決能力を得られれば、優れたソリューション営業を実現できます。

コミュニケーション能力

ソリューション営業は受動性の強い営業であるとはいえ、コミュニケーション能力は大切です。相手を頭ごなしに論理でねじ伏せるのではなく、あくまでも悩みに寄り添いながら接し、スムーズに自社商品を進められる包容力や空気を読む力は、非常に重要です。

論理的思考や課題解決が重視される場では、ついつい論破してしまうような言動が出てしまうものですが、ソリューション営業の本来の目的を見失わない能力が求められます。


ソリューション営業を実施するプロセス

最後に、ソリューション営業を実施する際の、具体的なプロセスについてお伝えしましょう。

情報収集

まず大切なのは、顧客についての情報収集を行うことです。自社に興味を持つ人はどんな悩みを抱えがちなのか、なぜ課題を解決できないのかなどの一般情報を集め、相手の悩みを解消させられる知識を身につけましょう。

また、自社商品についても深い理解が求められます。これは課題解決のステップに移行する際、商品の活用方法を提案する必要があるため、商品知識がなければ提案の幅が狭まるためです。

シナリオ構築

シナリオ構築においては、あらかじめ課題解決のパターンを用意しておく段階です。大抵の場合、悩みのケースと最適な解決策は特定のパターンに決まっています。

そのため、基礎としてシナリオを事前に頭に入れておくことで、ニーズにそぐわない提案を回避し、満足度の高いプランを受け入れてもらえます。

ヒアリング

実際に顧客との対話を通じて、悩みについての詳細情報を獲得しましょう。悩みはパターンかできるとはいえ、顧客や業種によって詳細は異なるので、ディテールを押さえることで関係をさらに深められます。

ヒアリングした情報をもとに、あらかじめ用意したシナリオのパターンから最適なものを選び、アレンジを加えていきましょう。

プレゼン

ヒアリングを経て、次はこちらから提案を届けるターンです。まずは相手が抱えている問題について整理し、問題解決の糸口となるポイントを指摘します。

そして、その問題に最適な解決策を提示する段階で、自社の商品を提案できればベストです。うまくプレゼンができれば、「ここの会社はうちの悩みとフィットしているようだ」と感じてもらえるため、非常に印象的な体験を届けることができます。


まとめ

ソリューション営業はプル型営業ともいわれ、従来の営業手法とは少し毛色の違うアプローチが特徴です。すでに導入している企業は非常に多く、さまざまな業種でこの手法が採用されるようになってきました。

ソリューション営業をサポートするツールは数多くありますが、重要なのはそれを扱う人間のスキルです。まずはソリューション営業に最適なスキルを身につけ、導入を進めていきましょう。

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