採用担当者として面接を行うにあたって、聞いてはいけない質問が存在します。
そのような質問をしてしまうと企業としてのイメージが下がり、場合によっては法律に違反することもあります。
本記事では、面接で聞いてはいけない質問とはどのようなものか、そういった質問をした場合にどのような悪影響があるのか、防止のための対策などについて解説します。
企業のためにも、応募者のためにも、是非本記事を参考にして公正な選考を実現しましょう。
面接では聞いてはいけないことが決められている
面接においては、聞いてはいけないことが決められています。
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」によれば採用選考は、
- 応募者の基本的人権を尊重すること
- 応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと
の2点を基本的な考え方として実施することが大切とされています。
そのため、応募者の適性・能力に関係の無い事項を質問することは禁止されています。
また、「職業安定法第5条の5」と、「平成11年告示第141号(第4 法第5条の4に関する事項)」によると、社会的差別につながる可能性がある個人情報の収集は認められていません。
誤った質問の具体例は後述しますが、本人に責任のない事項と自由であるべき事項については面接で聞いてはいけない、ということを念頭に置いてください。
【2023年】就職差別に関する調査結果
日本労働組合連合が2023年に調査したデータによると、最近3年以内に就職のための採用試験を受けた全国の15歳~29歳の男女1,000人を対象に、採用試験の面接で実際にされた質問についてアンケートを取ったところ、下記のような結果となりました。
- 本籍地や出生地に関すること(28.3%)
- 生活環境・家庭環境などに関すること(28.1%)
- 婚姻状況(未婚・既婚)(27.1%)
これらの内容はいずれも応募者の適性や能力と関係がない情報ですが、実際の面接では聞かれることがあるようです。
そのため、面接官の立場としては、こういった質問をしないよう十分に留意する必要があります。
面接で聞いてはいけないこと
本項目では、面接で聞いてはいけない下記の事項について解説します。
- 本人に責任のない事項
- 本来自由であるべき事項
- 男女雇用機会均等法に反する事項
いずれも、応募者の基本的人権に関わり、かつ適正・能力とは無関係な事項です。
具体的にはどういった質問が該当するのか説明していくので、参考にしてください。
本人に責任のない事項
本人に責任のない事項とは、下記のようなものです。
- 本籍や出身地
- 家族
- 住宅
- 生活環境
それぞれの事項について解説します。
- 本籍や出身地
生まれた地域について質問することは、特定の国籍や出身地の人間を排除することに繋がるので聞いてはいけません。 - 家族
家族構成や親の職業といった情報は、当人に対する偏見に繋がってしまいます。
家族に関する質問は応募者の緊張をほぐすためのアイスブレイクの際にうっかり聞いてしまうこともあるので、その点も踏まえて注意しましょう。 - 住宅
住宅に関する質問は、具体的には「自分の部屋はあるか」「一軒家か、集合住宅か」などが挙げられます。
これらの質問は応募者の家庭の経済状況を判断することに繋がるため、聞くべきではありません。 - 生活環境
どこに住んでいるのか、家庭の周辺はどのような状況か、といった質問は地域の生活水準などを確認するものであり、偏見に繋がってしまいます。
通勤経路の把握のために現住所付近の略図が必要、といった理由があるとしても、確認は入社後にしましょう。
本来自由であるべき事項
本来自由であるべき事項とは、下記のようなものです。
- 宗教
- 支持政党
- 社会運動
- 労働組合
- 思想
それぞれの事項について解説します。
- 宗教
信仰の自由は、憲法で保障されている個人の自由権に属する事柄です。
信仰による差別を避けるため、質問してはなりません。 - 支持政党
宗教と同じく、個人の自由権に属する事柄です。
特定の政党に投票することを求めるといったトラブルに繋がる可能性もあるため、その点も注意が必要です。 - 社会運動
「デモについてどう考えますか」「学生運動に参加したことはありますか」などの質問が、社会運動に関する質問に該当します。
こういった事項を確認することは、プライバシーの侵害にあたる可能性もあります。 - 労働組合
「これまでに加入したことがあるか」「入社後には加入するつもりか」などの質問が、労働組合に関する質問に該当します。 労働組合に加入するか否かという本人の自由を縛ってしまうため、質問してはなりません。 - 思想
愛読書や尊敬する人物など、つい質問しがちな事項も思想の自由に触れるため、注意が必要です。
男女雇用機会均等法に反する事項
女性のみ、男性のみに行う性別を前提にした質問は避けましょう。
例えば、片方の性別のみに転勤や残業の可否を尋ねる質問などです。
(労働条件の事前確認として、応募者全員に質問するのであれば問題ありません)
また、結婚や出産の予定といったプライバシーに関わることや、体型や容姿など差別的な評価に繋がる質問も避けましょう。
場合によっては、セクシュアルハラスメントとして捉えられる可能性もあります。
面接で聞いてもよいこと・確認すべきこと
本項目では、面接で聞いてもよいこと・確認すべきことについて解説します。
質問事項を決める際には、聞いてはいけない事項と合わせて、本項目も参考にしてください。
面接で聞いてもよいこと
面接で聞いても問題ないのは、下記のような事項です。
- 職歴・経歴・実績
- 動機・目標
- 自社についてのイメージ
- 健康情報についての確認
それぞれの事項について解説します。
- 職歴・経歴・実績
本人の適性や能力を確認するための重要な質問なので、質問しても問題はありません。 - 動機・目標
どうして自社で働きたいのか、といった事項は就労でのモチベーションに大きく関わる事項であり、質問しても問題はありません。 - 自社についてのイメージ
志望度の高さや業務に対するやる気を確認する質問であり、問題ありません。 - 健康情報についての確認
採用後の業務に支障がないかどうかを確認する範囲であれば質問しても問題ありません。
例えば、自動車運転が必要な業務では、健康状態によっては自己の危険性も高いため、確認は必須といえます。
確認すべきこと
下記の事項については、面接時に確認しないことがトラブルに繋がる場合もあるので、必ず確認するようにしましょう。
- 資格・経歴
- 犯罪歴
それぞれの事項について解説します。
- 資格・経歴
履歴書でも確認できる事項ですが、面接でも改めて確認しましょう。
履歴書に書いた資格・経歴が詐称という可能性もあるためです。
採用後に現場に混乱を招いたり、本当に相応しい応募者を落としてしまったりという失敗を避けるためにも確認しましょう。 - 犯罪歴
犯罪歴については、会社から尋ねない限り応募者に答える義務はありません。
(ただし、罰金刑以上で確定したものは履歴書の賞罰欄に書く必要があります)
業務に直接関わるような犯罪歴が想定されるのであれば、履歴書の賞罰欄も含めてきちんと確認を取りましょう。
面接で聞いてはいけないことを質問した際の企業リスク
面接で聞いてはいけない事項を聞いてしまった場合、企業はリスクを負うことになります。
トラブルを避けるためにも、どのようなリスクを負うのかしっかりと把握しておきましょう。
法律違反とみなされる可能性がある
採用選考の際、必要な範囲を超える個人情報の収集を同意なく行ったり、基本的人権の侵害や差別に繋がる不適切な質問をしたりした場合、職業安定法に基づき行政指導や改善命令を受ける可能性があります。
厚生労働大臣からの改善命令にも違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が課せられることもあるので注意しましょう。
企業のイメージが悪化する恐れがある
不適切な質問をされた応募者が転職サイトやSNSを通じて面接のことを記載すると、企業のイメージが悪化する可能性があります。
企業イメージの悪化により、応募者が減少する、就職エージェントから紹介してもらえなくなるなどのリスクが発生します。
また、採用の面だけではなく、既存の社員のモチベーションが低下したり、取引先からの信用を失ったりという可能性もあります。
面接時に避けるべき行動6選
本項目では、面接の際に避けるべき行動を解説します。
今までに解説してきた「してはいけない質問」と合わせて、面接に臨む前にしっかりと確認しておきましょう。
面接官が自己紹介をしない
面接官の自己紹介は必ず行うようにしましょう。
自己紹介は応募者に対する礼儀を示し、話しやすい雰囲気を作ります。
また、面接官が自己開示を行うことは応募者にとって会社のイメージや入社後の様子を掴む機会になります。
面接官自身の紹介や募集背景の説明がないことで応募者が不信感を覚えれば、内定の辞退にも繋がりかねません。
事前に準備せずに面接を行う
事前に準備せずに面接を行うと、応募者とのやり取りに支障が出ます。
例えば、応募書類に明記されている事項について質問した場合、応募者は「自分に関心がないのだ」「この企業はいい加減な仕事をしているのだ」といった悪いイメージを抱く可能性があります。
こういったイメージダウンが起これば、企業を信頼できずに内定を辞退するリスクもあるので、事前の準備は万全にしておきましょう。
最低限のやり取りしかしない
最低限のやり取りしかしないのも、応募者からの不信感に繋がります。
面接は応募者にとって疑問を解消できる場所であるため、質問に対しては誠実に答えることが大切です。
一問一答や「はい」「いいえ」のみで答えられる質問は避け、双方向のコミュニケーションを行うことで応募書類からは把握できない応募者の人物像を確認できるようにしましょう。
敬意のない態度で振る舞う
応募者に対して敬意の感じられない態度を取ると、面接官だけでなく企業自体に悪い印象を持たれてしまいます。
面接官の態度が悪く、応募者が威圧されていると感じれば、コミュニケーションを通じて応募者の本来の人物像を捉えることは困難になり、仮に採用しても辞退されてしまう可能性が高まってしまいます。
また、SNSや就職サイトで悪い口コミが広まるリスクも当然あります。
入社後のイメージを共有しない
具体的な業務内容の説明がないと、入社する意欲が湧きにくいことがあります。
応募者にとってどのようなことが魅力的なのかを知るためにも、求人票だけではわからない実際の現場の情報は伝えるようにしましょう。
候補者の志向を理解すれば、それに合わせて自社の魅力を紹介し、入社意欲を上げることも可能です。
採用におけるミスマッチを防ぐため、下記の関連記事も併せて確認してください。
採用ミスマッチの原因と対策とは?マッチング率を上げて企業の損失を防ぐ
オンライン面接で注意すべきこと
オンライン面接においては、対面での面接と異なる下記のような注意事項が存在します。
- 画面を見続けている
- リアクションが小さい
- パソコンの操作が多い
画面を見続けていると、応募者からすれば目が合っていないように見えるため、なるべくカメラを見るようにしましょう。
また、画面越しでは細かい反応や表情が伝わりづらいので、対面よりもリアクションを大きくすることを心がけましょう。
パソコンの操作が多いのも、応募者にとっては話をきちんと聞いてもらえないように感じてしまうので、注意しましょう。
タブーな質問や行動をしないための5つの対策
タブーな質問や行動を把握した後は、それらを避けるために具体的な対策を取りましょう。
この項目では対策について紹介するので、是非とも実行に移してください。
採用基準や条件を明確化する
採用基準や条件を明確化することで、公平かつ客観的な評価をすることができます。
基準が曖昧だと、面接官によって質問や評価にブレが出てしまい、こういったブレがタブーな質問をしてしまう失敗に繋がります。
応募者のどんな能力を重視するのか、どんな適性を確認するのか、採用担当者の中で事前にきちんと打ち合わせておきましょう。
採用条件を決めるにあたって、下記の関連記事も併せて確認してください。
良い人材を見極める採用条件の決め方!8つの基準や手順、採用ツールのメリットを紹介
面接担当者向けのマニュアルを作る
面接の流れや質問についてのマニュアルを事前に作成し、担当者に共有するようにしましょう。
その際、マニュアルの中に不適切な内容がないか確認することも大切です。
採用基準を明確にし、事前に質問すべき事項を決めることで、タブーな質問やNG行動を抑制でき、質問の漏れや面接官ごとの対応・評価のブレを防止することにも繋がります。
更には、採用活動の効率化・標準化にも繋げることができます。
面接官同士で事前練習を行う
面接官同士で事前に練習しておくことで、実際の面接がイメージしやすくなり、面接官のスキルをアップすることができます。
練習後にはお互いにフィードバックを行い、お互いの気になった行動・質問などについて精査することで、タブーな行動・質問をするリスクを減らしましょう。
また、応募者に求める適性や能力についても、どのように質問すれば正確に把握できるのか、といった点も事前練習で確認するようにしましょう。
社内で面接の振り返りを行う
社内で面接の振り返りを行うことも大切です。
面接の場では気づかなくても、振り返ることで気づくこともあります。
問題点が見つかった場合には、改善に向けて話し合い、マニュアルの調整、他の面接官への共有などを行いましょう。
また、振り返る際には良かった点についても確認しましょう。
応募者の本音を引き出す質問や、適性を確認するために有効な質問なども、問題点と同じように共有してください。
応募者向けのアンケートを実施する
社内だけで対策を行わず、応募者向けのアンケートも実施するとよいでしょう。
面接の担当者だけでは応募者の視点でどう見えるかがわからないため、実際に面接を受けた応募者に意見を聞くことで、問題を発見・改善しやすくなります。
面接終了後に応募者に直接、嫌な場面や答えにくい質問がなかったかなどを確認してみましょう。
この際、応募者が本音で答えられるように、採用の可否には関係ないこともきちんと説明しましょう。
まとめ:タブーな質問や行動を把握し、採用活動を円滑に進めよう
面接においては、タブーな質問や行動を把握し、応募者の能力や人物像を理解することが大切です。
本記事で紹介した対策と合わせて、面接コボットを活用することもおすすめです。
面接コボットでは事前に質問を設定でき、タブーな質問の抑制、面接官ごとの対応・評価のブレや聞き漏れを防止することができます。
採用担当者の負担を軽減し、応募者対応もスムーズに行えるため、採用活動の効率化・標準化にも活用できます。
よりよいマッチングを行うため、是非とも面接コボットの導入を検討してみてください。