マイナンバーの管理や運用をペーパーレス化することで、コスト削減や業務効率化につながります。ペーパーレス化ということばは聞いたことがあっても、実際にどのように進めればいいか悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
本記事では、マイナンバーカードをペーパーレス化した際のメリットや、実際の手順を解説します。
マインバーカードとは
マイナンバーカードとは、個人のマイナンバーが記載されているICチップ付きのカードのことです。身分証明書として広く利用されることが目的で、顔写真や住所、生年月日などが記載されています。
マイナンバー制度の導入に伴い、企業では一定の手続きを行う書類に従業員や取引先のマイナンバーを記載する義務が課せられています。
用途
企業のマイナンバーを利用する場面は、主に次のような手続きや書類申請です。
- ・給与所得の源泉徴収票
- ・退職所得の源泉徴収票
- ・報酬、料金、契約及び賞金の支払調書
- ・給与所得の源泉徴収票
- ・退職所得の源泉徴収票報酬、料金、契約及び賞金の支払調書
- ・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- ・雇用保険被保険者資格取得届
- ・雇用保険被保険者資格喪失届
- ・健康保険、厚生年金保険被保険者資格取得届
- ・健康保険被扶養者届
- ・健康保険、厚生年金保険被保険者喪失届
税金関係はもちろんのこと、雇用保険や厚生年金などあらゆる場面でマイナンバーが必要になっています。また、上記以外にも今後法律の改定などで、対応書類が出てくる可能性もあるため、最新情報の確認をしておく必要があります。
扱う企業に求められるもの
マイナンバーは、運転免許証や保険証のように個人情報を扱います。そのため、企業には定められた方法での収集と厳格な保管、企業としてマイナンバーを利用した際には利用時の記録義務も求められます。
具体的には、次の4つのルールです。
ルール | 企業が行うこと |
---|---|
取得・収集のルール | ・利用目的の明示 ・本人確認(マイナンバーが正しい番号であること、番号の正しい持ち主であること) |
保管・廃棄のルール | ・技術的措置(パソコンで保管する際のウイルス感染などのリスクヘッジ) ・物理的措置(持ち運びや漏洩・盗難に対する物理的なリスクヘッジ) ・組織および人的措置(組織や人が起こしてしまうヒューマンエラーに対する教育や管理義務) ・廃棄・削除(保管期間経過後の速やかな廃棄・削除) |
安全管理措置のルール | ・基本方針、取扱規定の策定 ・4つの安全管理措置の策定(組織的・人的・物理的・技術的安全管理措置) |
利用時・委託のルール | ・マイナンバー情報利用時の記録義務 ・委託先への適切な監督 ・再委託は委託先の許諾を得る |
企業側は法律に沿ったマイナンバー管理が求められ、違反や適切な管理がなされていない場合は懲役や罰金などの処罰が科される可能性があるため、注意が必要です。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、その名の通り紙で利用されている資料や書類をデジタル化することで、紙の使用量を減らすことです。
ペーパーロジック株式会社が行った「ペーパーレス化に伴う2022年度予算」の調査によれば、72.3%の企業が「2021年に社内のペーパーレス化」を推進していると回答しています。デジタル化が推し進められている現代において、ペーパーレス化はさらに促進されるものと考えられます。
ペーパーレス化が求められている背景
ペーパーレス化が求められている背景には、DXの波があります。
DXとは、業務そのものから組織、文化などをデジタルの力で変革させ、ビジネス環境の激しい変化に対応することです。DX化を進めることで働き方改革や生産性向上にもつながるとされており、現在では多くの企業が業務のDXを図っています。
ペーパーレス化もこうしたDXの一つです。なぜなら、ペーパーレス化が進むことで、コストや無駄の削減、オンラインを利用した申請や決済などができるようになるからです。
ペーパーレス化を進めることで紙の使用量が減るため、必然的にコストが削減されるとともに無駄な在庫を抱えないなどのメリットがあります。また、業務のワークフローなどをペーパーレス化すれば、オンラインでどこからでも申請や決済ができるため、働き方改革や生産性向上につながるでしょう。
加えて、日本では少子高齢化が進み、現役世代の人材不足が加速しています。そのため、これまでのアナログ対応から業務デジタル化を行うことで業務を効率化させることが求められています。
こうした背景から、マイナンバーをはじめとしたペーパーレス化が求められているのです。
マイナンバーカードをペーパーレス化するメリット
マイナンバーカードをペーパーレス化するメリットは、主に次の5点です。
- ・マイナンバーの収集が効率的になる
- ・安全管理措置対策になる
- ・業務効率化につながる
- ・コスト削減につながる
- ・バックアップなどのリスク管理になる
それぞれのメリットについて解説していきましょう。
マイナンバーの収集が効率的になる
マイナンバーのペーパーレス化を行う場合、システム導入が必須となります。
システムでのマイナンバー収集は、アナログでの収集よりも効率的になります。なぜなら、システムでの収集は手続きを一元化できるとともに、従業員側は必要な情報をどこからでも送ることができるからです。
マイナンバーの収集には先述したとおり、利用目的の明示や本人確認が必要です。そのため、紙での収集を行うと、記載する書類の配布や回収、内容が問題ないかの確認など手間がかかってしまいます。
しかし、ペーパーレス化を推進しシステム化すれば、スマホなどからの申請が可能になり、こうした業務上の手間が軽減されます。ペーパーレス化することで、業務効率化にもつながるのは大きなメリットだといえます。
安全管理措置対策になる
マイナンバーカードなどのペーパーレス化を行うことで、安全管理措置対策にもなります。なぜなら、ペーパーレス化を行うことで、物理的な紛失リスクや保管コストを削減できることに加え、強固なセキュリティが保たれた保管も可能だからです。
繰り返しになりますが、マイナンバーは個人情報のため扱う企業側は情報漏洩などが起きないよう、厳格な対策が求められます。違反した場合は、重い罰則はもちろんのこと、企業イメージの低下も避けられません。
ペーパーレス化を行えば、ログ管理や利用実績の取得、外部からの不正アクセス防止などもできるようになります。そのため、安全管理措置対策につながるのです。
業務効率化につながる
ペーパーレス化は業務効率化にもつながります。なぜなら、先述した収集の手間が削減できることはもちろん、帳票を発行する際の負担も減るからです。
企業では、従業員に対して源泉徴収票などを発行します。その際、収集したマイナンバー の記載や入力が必要です。紙などでマイナンバーを収集した場合は、人力での記載や入力作業が出てきてしまい、ヒューマンエラーにつながる恐れがあります。
しかし、ペーパーレス化を行い、労務管理や給与計算ソフトシステムと連動させれば、マイナンバーは自動的に反映されます。また、自動反映がなされるため、人的で行うよりも業務処理がスムーズに進むことも大きなメリットだといえます。
コスト削減につながる
紙での書類業務は配布や回収、修正に依頼、内容の確認など多くのコストがかかります。受け取る際に発生する手数料や郵送費、紙を発行する印刷代などは代表例といえるでしょう。
また、紙による書類は発行だけでなく、保管に大きなコストがかかります。たとえば、紙で年末調整申告書を保管すると、7年間の保管義務が発生します。そのため、保管場所の確保はもちろん、管理コストも必要です。
一方で、ペーパーレス化を行えば、保管はすべてデジタル化されます。そのため、保管場所の削減につながり、管理費用も低減できます。これまで保管場所として賃貸していたスペースを削減できるなどの期待もできます。
バックアップなどのリスク管理になる
ペーパーレス化は、リスク管理にもつながります。なぜなら、デジタルデータはバックアップ可能であるため、万が一データを紛失したとしても復旧できるからです。
紙でマイナンバーを収集した場合、複製することはできません。そのため、紛失してしまった場合は大きな問題となり、管理にも不安が生じてしまうでしょう。
ペーパーレス化することで、データをクラウド上で管理することが可能です。そのため、トラブルなどが発生しても、迅速に対応ができます。
また、デジタルでの保管は閲覧権限などの設定も可能であるため、より強固なセキュリティを組むことが可能です。こうしたリスク管理につながることも、ペーパーレス化の大きなメリットです。
ペーパーレス化する上での課題
多くのメリットがあるペーパーレス化ですが、導入するには課題もあります。
- ・電子化に向けた環境整備
- ・セキュリティ対策
- ・従業員への周知と浸透
- ・導入へ向けたコスト
電子化に向けた環境整備
ペーパーレス化はデータでの保管・運用になるため、社内で電子化に向けた環境整備が必要です。そのため、ペーパーレス化を促進させるシステムの導入や社内への浸透、システムを管理するIT人材の育成などが重要になります。
特に、ペーパーレス化を行うにあたってシステム化は必須ですが、システムは導入することが目的ではなく、導入後にきちんと問題なく運用していくことが目的です。そのため、長期的な視点に立って、環境整備を行っていくと良いでしょう。
セキュリティ対策
システムを導入する際に考慮しなくてはならないのは、セキュリティ対策です。ペーパーレス化によって、アクセス制限などがかけられるため、適切な管理ができセキュリティ面のメリットは大きいです。
しかし、システムを運用していく人材がITリテラシーに欠けていては、セキュリティの担保はできません。そのため、導入するシステムのセキュリティ対策がどのようなものかに加え、管理する人材に向けたセキュリティ対策も必要です。
従業員への周知と浸透
従業員への周知と浸透も大きな課題です。
特に、紙文化が強い企業であれば、これまでの業務方法と大きく変わっていくため、反発されることもあるでしょう。そのため、システム活用に慣れてない従業員が多い場合は、丁寧な説明と操作研修などで浸透を図っていくことが求められます。
また、導入後にいきなりすべてをペーパーレス化するのではなく、紙との二重運用を行いながら、少しずつ浸透していく方法もあるでしょう。
システム導入後に多少の混乱が起きるのは、ペーパーレスに限らずにあることです。導入後に混乱を最小限に抑えるための取り組みが必要だといえます。
導入へ向けたコスト
ペーパーレス化に向けたシステム導入には、ある程度のコストが必要です。そのため、費用対効果に適したシステムを選ぶことが重要です。
ペーパーレス化は、長期的に考えれば高い費用対効果が見込めます。しかし、自社に合わないシステムを導入してしまえば、コストが嵩んでしまい費用対効果は見込めません。
ペーパーレス化を促進させるシステムには、業務の一部をペーパーレス化するものもあるなどさまざまです。自社に合ったシステムを導入すると良いでしょう。
マイナンバーカードをペーパーレス化にする手順
マイナンバーカードをペーパーレス化する手順は以下の手順です。
- ペーパーレス化を行う上での課題を洗い出す
- マイナンバー管理システムを導入する
- 従業員へ周知する
- 運用を行う
ペーパーレス化を行う上での課題を洗い出す
まず行うのは、自社の課題を洗い出すことです。なぜなら、ペーパーレス化を行うことで、これまでの業務フローが変わってしまうため、出てきた課題に対する解決策として進めなければならないからです。
システムを導入することで、収集や書類の作成業務にどれくらい効率化が進むのか、パソコンやスマートフォンからの申請をスムーズにできない従業員はどれくらいかなどです。課題を洗い出すことで、自社に必要なマイナンバー管理システムが見えてきます。
マイナンバー管理システムを導入する
課題を洗い出した後に、課題が解決できるマイナンバー管理システムを導入します。システムを選定する際、操作性は問題ないか、費用対効果は問題ないかなどを確認しましょう。
自社に合わないツールを導入してしまうと、思っていた結果が得られないため注意が必要です。また、現在自社で利用している給与管理システムやデバイスとの互換性があるかなども確認しておくと良いでしょう。
従業員へ周知する
導入後は従業員への周知を行います。ペーパーレス化は従業員の協力が不可欠であるため、ペーパーレスのルールや目的などをきちんと説明しましょう。社内向けの研修やセミナーなどを実施し、効率的に収集できる点や強固なセキュリティで保管できる点などを説明することで、社内へより浸透しやすくなります。
運用を行う
ペーパーレス化の運用は「正しく運用ができているか」「効果はきちんと出ているか」などを適宜確認しながら進めていきます。
先述したように、システムの導入がゴールではなく長期的な運用でメリットを得ることが大事です。そのため、運用の評価、運用を行なったことによる課題などを抽出し、改善を繰り返していきます。
発生した課題を解決していきながら、ペーパーレス運用の精度を高めていくと良いでしょう。
まとめ
昨今、ビジネスモデルは大きく変化してきています。こうした変化に対応していくためにも、デジタルデータを取り扱うペーパーレス化は不可欠といえるでしょう。
マイナンバーカードのペーパーレス化は比較的取り組みやすい業務といえます。多くの場面で必要となるマイナンバーをペーパーレス化することで、自社の業務効率化を実感してみてください。
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