徐々に政治の世界でも耳にするようになったデジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の未来を切り拓く新たな経営戦略として注目を集めています。日本では経済産業省が発表した「DXレポート」によって企業におけるデジタルトランスフォーメーションの必要性が示されたわけですが、具体的にどのような目標に向かって施策を打っていくべきなのか、上手く理解できていない担当者も多いことでしょう。
そこで今回はデジタルトランスフォーメーションが語られる文脈の違いから生まれる3つの定義を確認し、企業がどこに目標を定めてデジタルトランスフォーメーションの取り組みを進めていくべきなのかを記事にまとめました。
デジタルトランスフォーメーション3つの定義
デジタルトランスフォーメーションには以下の3つの定義があります。
1. 広義のデジタルトランスフォーメーション
2. ビジネス文脈のデジタルトランスフォーメーション
3. 経済産業省「DXレポート」のデジタルトランスフォーメーション
3つの定義はそれぞれ語られる文脈が異なり、1から3にかけて変革の対象となる範囲が狭まっていきます。デジタルトランスフォーメーションは様々な文脈で語られることから変革を意味する範囲が拡大・減少しますが、重要なのは自社のビジネスに合ったデジタルトランスフォーメーションの定義を認識することです。
したがって、デジタルトランスフォーメーションの定義の理解には「自社が運営する事業が業界全体の動きのどこに位置するのか」といった外部環境を眺める視点と、「自社の業務体制・データ管理がデジタル化の動きのどこに位置するのか」といった内部環境を眺める視点がポイントとなります。まずは3つの文脈で語られるデジタルトランスフォーメーションの差をみていきましょう。
広義のデジタルトランスフォーメーション
ウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念で、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という地球規模の大きなコンセプトになっています。スマートフォンの普及をはじめ、多くのデジタル技術が人々の生活に浸透していくことで、現実世界とデジタル空間がシームレスにつながる社会が実現されると予測されているのです。
広義のデジタルトランスフォーメーションは冒頭に説明したように概念に留まる定義で、これからの人々の生活がどこに向かっていくのかを示した羅針盤のような役割を持っています。この広義のデジタルトランスフォーメーションが予測している「現実世界とデジタル空間がシームレスにつながった世界」はマーケティング用語として昨今語られるOMO(Online Merges with Offline)の概念と非常に似ているのが特徴です。
現実世界(オフライン)とデジタル空間(オンライン)の境目が徐々に分からなくなっていくことを悲観的に捉えるのではなく、むしろ人々の生活を向上させるために捉えようとする考え方・研究が広義のデジタルトランスフォーメーションが意図するところといえます。
ビジネス文脈のデジタルトランスフォーメーション
広義のデジタルトランスフォーメーションが概念に留まる一方で、ビジネス文脈で語られるデジタルトランスフォーメーションは「攻め」と「守り」の観点から外部環境のデジタル化を捉えようとする企業の経営戦略転換の動きといえます。デジタルテクノロジーの発展によって劇的にデジタル化する外部環境を「機会」または「脅威」として捉え、ビジネスモデルの転換を図ったり、組織体制・データ管理の転換を図ったりすることが具体的なビジネス文脈のデジタルトランスフォーメーションとなります。
定義の範囲の視点でみると、ビジネス文脈のデジタルトランスフォーメーションは広義のデジタルトランスフォーメーションよりも狭く、自社または業界内外といったビジネスに限定した定義であることが分かります。企業におけるデジタルトランスフォーメーションの多くはこのビジネス文脈のデジタルトランスフォーメーションに該当し、攻めと守りの観点からデジタルテクノロジーを活用した施策を実施していくことの重要性を示唆しているのです。
経済産業省「DXレポート」のデジタルトランスフォーメーション
経済産業省が発表した『DXレポート』には「2025年の崖」という衝撃的なシナリオが掲載されています。DXレポートで語られた2025年の崖には、企業が「既存システムのブラックボックス状態を解消できず、データ活用ができない場合、年間最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」と書かれているのです。
DXレポートには国の経済損失がDXの放置シナリオとして掲載されていますが、企業が見るべきポイントは以下の2つになります。
・ 既存システムのブラックボックス化の解消
・ 全社横断的なデータ活用
ビジネス文脈のデジタルトランスフォーメーションでも内部環境の変革・転換が求められていますが、経済産業省の「DXレポート」が意図するデジタルトランスフォーメーションではより「社内改革」にフォーカスした内容となっています。ビジネス文脈のデジタルトランスフォーメーションを実現するためには、まず社内改革から実施するべきだと指摘されているのです。
デジタルトランスフォーメーションが求められる理由
デジタルトランスフォーメーションの3つの定義を踏まえて、企業にデジタルトランスフォーメーションが求められる理由は主に以下の3つになります。
・ デジタル競争の敗者になってしまう
・ 業務基盤そのものの維持・継続が困難になる
・ サイバーセキュリティ・システムトラブル等のリスクが高まる
デジタルトランスフォーメーションは一部の限られた企業に求められる経営戦略ではなく、大手企業から中小企業といった全ての企業・事業者に求められる生き残り戦略です。既存の事業体制やリソースを持たないスタートアップ・ベンチャー企業はデジタルトランスフォーメーションとの親和性が高いといえますが、従来のビジネスモデルを牽引してきた企業も例外ではないことを覚えておきましょう。
まず取り組むべきRPAとは
すべての企業・事業者に対策が求められるデジタルトランスフォーメーションはRPA(Robotic Process Automation)から取り組みを始めることが可能です。RPAは企業の定型業務や人間の判断が要らない単純作業を自動化するソフトウェアを指します。人口減少や高齢化が避けられない日本の現状を踏まえた上で、限られた人的リソースを有効活用する経営戦略として注目されています。
RPAは経済産業省が発表した「DXレポート」で求められている社内改革を推進する第1歩として捉えることができ、部署ごとから徐々に導入をはじめ最終的には全社展開できる可能性を持っています。RPAはAIとの相性も良く、人間が行う判断をAIによって自律化することで、業務の着手から完了まで一貫して自動化する仕組みを構築することが可能です。
まとめ
政治界でも注目されるようになったデジタルトランスフォーメーションは国が取り組むべき問題ではなく、あらゆる事業を営む私たち自身で取り組むべき問題であることが分かったのではないでしょうか。2025年問題を見据えて徐々にデジタルトランスフォーメーションの取り組みを進めるためにも、まずはRPA導入・運用に取り組む必要があると覚えておきましょう。
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