アップセルとはどのような戦略?成功のポイントと活用事例│コボットLAB

アップセルとはどのような戦略?成功のポイントと活用事例

アップセル

企業の中長期的な成長につながるマーケティング戦略の一つに「アップセル」があります。アップセル戦略を正しく実行することで、顧客単価を増加させ、安定的な売上アップが目指せます。

アップセルの具体的な内容を理解できていないと、機会損失になっている可能性があります。そこで今回は、アップセル戦略の内容やメリット、活用事例などをわかりやすく解説します。最後までご覧いただき、ぜひ自社のマーケティング戦略に活かしてみてください。

アップセルとは?

アップセルとは、すでに自社製品を購入している顧客や購入を検討している顧客に対して「より上位の商品・サービス」を提案するマーケティング戦略です。

【アップセル戦略の例】

  • ・スマートフォンの購入を検討している顧客に対して、スペックが高い(保存容量が多い、機能が多い)製品を提案する
  • ・Webサービスの無料プランを利用している顧客に対して、有料プランへの乗り換えを提案する

上位商品・サービスを購入してもらうことで顧客一人当たりの単価が向上し、総売上額の向上を目指せます。

アップセルの3つのパターン

アップセル戦略について説明する際、単に「前回よりも高価な物を提案する手法」として説明されることが多いですが、実際のところアップセルの目的に当てはまる手法は他にもあります。

アップセル戦略を実践する際は、次の3つのパターンで顧客一人当たりの売上を増加できます。

【アップセル3つのパターン】

  • ・上位商品・高級品の提案
  • ・まとめ買いの提案
  • ・定期コースの案内

まずは、上位商品・高級品を提案する手法です。前回よりも高スペックで価格が高い商品や、月会費が高い上位プランへのアップグレードを提案します。

別の手法として挙げられるのが「まとめ買いの提案」です。前回購入してもらった商品をまとめ買いしてもらうことで、一回当たりの売上額を増やせます。

また、「定期コースの案内」もアップセルを目的とした手法の一つです。無料体験期間を利用している顧客に対して定期コース加入を提案することで、顧客単価の向上を目指すことができます。

クロスセルとの違い

アップセルと関連した用語に「クロスセル」があります。クロスセルとは、顧客が購入を検討している商品と関連性の高い別の商品を提案するマーケティング戦略です。

【クロスセル戦略の例】

  • ・ファーストフード店でポテトを注文した顧客に対して飲み物を提案する
  • ・髭剃りを注文した顧客に対して替刃の購入を提案する

顧客の購入履歴を分析してより関連性の高い商品を提案することで、売上単価の増加が実現します。

ダウンセルとの違い

アップセルとは真逆の手法を取るのが「ダウンセル戦略」です。ダウンセルとは、購入を検討している顧客に対して「下位モデル・下位プラン」を提案するマーケティング戦略です。

購入を検討している商品や現在加入しているプランが顧客にとって高すぎる場合、解約や失注、企業に対する不満発生の原因となり得ます。売上の減少を避けるためあえて安い商品やプランを提案することで、顧客関係の維持が実現し、長期的な利用をしてもらうことができます。

アップセルだけに固執した営業は失注や顧客との関係悪化につながりかねません。クロスセルやダウンセルなどの戦略と上手く組み合わせながら営業活動を進めることが重要です。


アップセルが注目されている理由

近年は、多種多様な商品・サービスが市場にあふれかえっています。新規顧客を獲得するコストは既存顧客の5倍かかる(1:5の法則)といわれるように、競合の参入が激しい業界において、新規顧客を獲得することは非常に難しい状況です。

そこで、重要視されているのが既存顧客との関係を維持してLTVを向上させることです。LTVとは「顧客生涯価値」と表現され、一人の顧客から生涯にわたって得られる利益のことで、中長期的な成長を目指す企業にとって非常に重要な指標といわれています。

アップセル戦略を上手に実行すれば、顧客一人当たりの売上が増加してLTV向上に寄与するため、多くの業種で注目されています。


アップセル戦略のメリット

アップセル戦略には、次のようなメリットがあります。それぞれについて解説していきます。

  • ・顧客単価が向上する
  • ・営業効率が良くなる
  • ・顧客満足度が高まる

顧客単価が向上する

アップセル戦略によって高品質な商品やサービスを提供できれば、顧客単価が向上します。顧客一人が支払う金額が大きくなれば、新規顧客を獲得できなくても企業全体の売上は伸びます。

新規顧客の獲得にコストがかかる現代において、既存顧客の購入単価を伸ばせるアップセルは非常に重要な戦略といえます。

営業効率が良くなる

アップセル戦略を実行すると、営業効率が良くなるというメリットがあります。

アップセルは既存顧客にアプローチするため、新規顧客を開拓するよりもコストがかかりません。すでに自社商品やサービスを購入した経験がある顧客であれば、心理的障壁が低いため、企業側からの提案も受け入れられやすいからです。

顧客満足度が高まる

アップセルを実施することで、顧客満足度の向上が期待できます。なぜなら、蓄積された顧客データを分析することで、顧客が本当に求めている提案が可能だからです。

自分の潜在ニーズにフィットした提案が行われると、顧客が期待以上の満足度を感じ、企業に対してより良いイメージを持つことにつながります。


アップセル戦略のデメリット

顧客単価の向上や営業の効率化といったメリットがあるアップセル戦略ですが、注意しておきたいデメリットもあります。アップセル戦略を実行する際は、次のデメリットが生じる危険性があることを理解しておきましょう。

  • ・無理な営業活動による失注リスクがある
  • ・顧客に迷いが生まれる可能性がある
  • ・企業レビューの低下リスクがある

無理な営業活動による失注リスクがある

アップセルの無理な営業活動によって、失注リスクがあることを理解しておきましょう。

企業から何度も繰り返し上位商品やサービスを提案されると、顧客は「押し売りされている」と感じてしまいます。営業活動に対して不満を感じた顧客は、他社に流れる危険性が高いでしょう。

顧客に対して不快な印象を与えないためにも、常に買い手目線の提案ができるように心がけることが重要です。

顧客に迷いが生まれる可能性がある

購入を検討していた商品やサービスよりも金額が高いものを提案されると、顧客に迷いが生じます。

選択肢が増えた結果「選ぶのが大変」と感じてしまうと、せっかく購入しかけていた商品・サービスすらキャンセルしてしまう可能性があります。アップセルの提案を行う際は、状況をよく観察して、顧客の背中を後押しできるようなタイミングを選ぶようにしましょう。

企業レビューの低下リスクがある

アップセル戦略に失敗すると、企業レビューが低下する危険性があります。企業側の売上ばかりを意識して顧客目線の提案ができていないと、「あの企業はただ高額な物を売りたいだけ」という印象を与えてしまいます。

既存顧客の囲い込みが大切な現代において、既存顧客を失ってしまうのは大きな痛手です。アップセル戦略を実行する際は、顧客データを適切に分析し、顧客ファーストの提案ができるようにしておきましょう。


アップセルを成功させるポイント

顧客情報

アップセル戦略の成功は、企業の中長期的な成長につながります。そこで、ここからはアップセルを成功させるために重要なポイントをまとめます。

顧客情報を収集して分析する

アップセル戦略を成功させる上で欠かせないのが「顧客情報を収集・分析すること」です。顧客は、性別や年齢、居住地域や職業などの違いによって、興味を持つことやニーズが異なります。

顧客ニーズがそれぞれ異なることを理解しないままだと的外れな提案を行ってしまい、失注や評価の低下につながりかねません。失注リスクを下げて効果的な提案を行うためにも、CRMツールなどを活用して顧客情報を正しく収集・分析することが基本です。

顧客ロイヤリティを高める施策も実行する

強引な営業活動は、顧客に対して強い抵抗感を与えます。

「この企業はただ高い商品を購入して欲しいだけなのでは?」と感じさせてしまうと、企業に対する信頼が崩れ、競合他社に流れる可能性が高いです。顧客を失う危険性を避けるためにも「顧客ロイヤリティを高めること」を意識しましょう。

顧客ロイヤリティとは、顧客が商品やサービス、企業に対して愛着を感じている状態のことです。顧客ロイヤリティが高い状態であれば、アップセルの提案を受け入れてもらいやすいです。

定期的なアンケート調査やSNSでの発信、メルマガ発行など、顧客と接点を持てるような施策を実行し、顧客ロイヤリティを高める努力をしましょう。

アップセルの提案がしやすい製品開発を意識する

アップセルを成功させるには「アップセルの提案がしやすい商品・サービス開発」が大事です。

  • ・下位商品と上位商品を比べても、機能面で主だった変化がない
  • ・無料プランで十分満足できる内容だから、有料プランに移行する理由がない

このような状態だと、いくら提案しても上位商品・サービスの購入にはつながりません。「上位商品を選んだ方が金額以上に得をする」と感じてもらえるような製品開発を心がけましょう。

アップセル提案の効果的なタイミングを意識する

アップセル戦略を実行する際は、営業するタイミングを意識することも重要です。

基本的に、アップセルは「顧客が購入を決断する直前」に提案すると効果的と考えられています。なぜなら、購入する意思が固まっている顧客は自社の商品・サービスに対して高い興味を持った状態だからです。

価格の差以上に上位商品に高い価値があると感じてもらえる設計であれば、顧客は「どうせ買うならこっちの方がお得かも」と感じて提案を受け入れ安くなります。


アップセル戦略の活用事例

最後に、アップセル戦略を実際に活用している事例を紹介します。自社でアップセルを取り入れたいとお考えの場合は、これから紹介する事例を参考にすると良いです。

Amazon

アップセルの事例としてわかりやすいのがAmazonです。Amazonで商品ページを開くと「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」という欄が表示されます。

その欄には、検索した商品よりも価格が高い商品が紹介されています。購入を決断した商品よりもスペックが高い商品を紹介することで、「本当はもっと良い商品があるかもしれない」と思わせ、より価格が高い商品のページに移行させることができます。

Dropbox

アップセルの活用事例として、オンラインストレージを提供する「Dropbox」の戦略を紹介します。

Dropboxフリーミアム(無料で利用できるプラン)を顧客に提供しています。個人ユーザーが無料プランで利用できる容量は2GBまでと設定されており、それ以上のストレージが必要になった場合、有料プランへ以降しなければなりません。

Dropboxは、顧客のデータ容量が少なくなったタイミングでアップセル(有料プランへの移行)のメールを送信します。

さらに「友達紹介制度」も上手に活用しています。Dropboxは、友達にサービスを紹介してくれたら保存容量を増やすというキャンペーンを行いました。

既存顧客が新規ユーザーをたくさん招待した結果、同一企業内にDropboxを使用する社員が増えるという現象が起こりました。そのタイミングで「Dropbox Business(ビジネスプラン)」へのアップグレードを促すメールを送信することで、ビジネスプランの加入数を増加させることに成功しました。

ヤクルト球団

ヤクルトスワローズの運営団体である株式会社ヤクルト球団も、アップセル戦略を上手に活用しています。

ヤクルト球団のファンクラブには、ライト会員からプラチナ会員まで5つのグレードが存在し、会員グレードごとに入会特典が異なります。顧客調査を行った結果、入会記念ユニフォームの人気が高く、顧客ロイヤリティ向上につながっていることが判明しました。

その結果を活かし、最上位グレードであるプラチナ会員の入会特典にユニフォーム特典などを充実させる施策を実行。各グレードの入会特典で差別化を図ることで、最上位グレードであるプラチナ会員の数が劇的に増え、売上増加を達成しています。


まとめ

今回は、顧客単価の向上を目指せるアップセル戦略について解説してきました。

アップセル戦略を上手く実践できれば、既存顧客一人当たりの単価を増やし、企業全体の売上増加を目指せます。集客や販促が思うように上手くいかず、売上が伸び悩んでいる企業様は、ぜひ当記事の内容を参考にアップセル戦略に取り組んでみてください。

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