プロジェクトを円滑に進めていくためには、それに向けた仕組みづくりを丁寧に行うことが大切です。ポピュラーな方法としては、タスクマネジメントの徹底が挙げられます。
日々発生するタスクの数々を丁寧に管理することで、大きな目標達成へと確実に近づくことができます。今回は、そんなタスクマネジメントがどのような効果を発揮するのか、どう実践すれば良いかについて解説していきます。
タスクマネジメントとは
タスクマネジメントとは、その名の通り、タスクが予定通り消化できるよう効率的な順位づけや実施プロセスを提供し、進行を促進する業務です。日々の業務においてはさまざまな「やるべきこと」が発生しますが、それらを具体的に洗い出し、小分けして対応することを可能にする役割も果たすのがタスクマネジメントです。
これまで地続きにつながっていると思われていた業務も、タスクとしてブラッシュアップすることで、ステップごとに小分けし、高いモチベーションで取り組めるようになります。
ToDoとタスクの違い
タスクと似た用語として、ToDoというものも存在します。こちらも「ToDoリストの作成」に見られるように、「業務時間内にやるべきこと」という意味ではタスクと同様です。
ToDoとタスクの相違点として、タスクの方がプロジェクトの進捗に関わる重要性の高い業務である点が挙げられます。
一般的にToDoは、日常的に発生し、なおかつ明確な期限が設けられていない業務を指すものです。メールチェックや日報作成など、毎日行わなければならないものの、「これをしなければプロジェクトは成功しない」というものではないため、優先順位は低いといえます。
一方のタスクは、プロジェクトにおける目標達成までの道のりを、小分けにしたものです。そのため、タスクは重要度が高く実行の期限も設定されているため、ないがしろにはできません。
タスクマネジメントが必要である理由
タスクマネジメントは、業務遂行の上で絶対に取り組まなければならないことではありません。むしろ、プロジェクト開始前の工数が増えてしまい、億劫に感じてしまう人もいるものです。
ここでは、そもそもなぜタスクマネジメントを実行するべきなのかについて解説します。
タスクの対応漏れを防ぐため
一つ目の理由は、タスクの対応漏れを防ぐためです。プロジェクトによって多くのタスクが発生することになれば、誰がどのタスクに対応し、どれくらい消化できているのかを把握できなくなってきます。
タスクの進捗がわからないと、中には対応が漏れてしまっているタスクも登場するようになり、後から慌てて対応しなければならないというアクシデントに見舞われることもあり得ます。
余計な負担を発生させたり、業務の質を低下させたりしないためにも、タスクマネジメントが必要になります。
業務の優先順位を明らかにするため
二つ目の理由は、業務の優先順位を明らかにすることです。一口に「タスク」と言っても、取り組むべき順序がそれぞれ設けられているはずです。
たとえば、SNSのクチコミ調査などの作業労働は、いつでも誰でも手が空いているときに取り組めるため、最優先の業務であるとはいえません。一方、営業先の見込み客からの問い合わせ対応は、可能な限り迅速なレスポンスが求められる上、売り上げに直結するため、疎かにはできない優先したいタスクといえます。
このように、日々の業務をタスクとして細分化し、洗い出してみることで、優先すべきタスクとそうでないタスクを明らかにし、無駄のない働き方を可能にしてくれます。
リソースを最大限活用するため
二つ目の理由は、社内リソースの有効活用です。近年は少子高齢化の影響もあり、多くの企業で人材不足が発生しているとされています。とはいえ、組織によっては忙しい部署とそうでない部署のギャップが大きいというケースも見られるため、必ずしも人手の絶対数が足りていないとは限りません。
既存の人材を有効活用できる枠組みを構築できれば、一人当たりの生産性向上によって、人手不足を解消できる見込みが出てきます。タスクマネジメントは、そんな既存社員の有効活用を促す上でも役に立つ考え方というわけです。
タスクマネジメントの実施プロセス
それではここで、タスクマネジメントを実現する際の具体的な進め方について解説します。
対応すべきタスクを洗い出す
一つ目のステップは、対応しなければならない作業の洗い出しです。プロジェクト内でどのような業務が発生し、どんな対応が求められているのかをリストアップして明確にする必要があります。
タスクマネジメントにおいて重要なのは、タスクを誰からでもわかるように具体化する作業です。頭の中で思い描くことができても、他の人には伝わらなかったり、つい抜け落ちてしまったりすることは日常茶飯事です。
情報共有の際にも統一性がなくなるため、タスクマネジメントを実施する際にはタスクを書き出すなどして、管理しやすい状況を作り出すことが大切です。
優先順位を決定する
二つ目のステップが、優先順位の決定です。前段階でリストアップしたタスクを見直し、どのタスクが最も重要で、最も優先順位が低いのか見極めていきましょう。
優先順位を確定することで、スケジュールに遅れが出てきた場合には、優先度の高いタスクを先に進めるなど、プロジェクトの遂行に支障が出ないマネジメントを実施しやすくなります。
タスクの優先度を考える上では、「緊急度」と「重要度」という2つの指標を念頭に置くことがポイントです。緊急度とは、どれくらい迅速に対応しなければならないかを考えるための指標で、重要度とはそのタスクがどれくらいプロジェクトの遂行に関連しているかを検討する指標です。
緊急度と重要度の両方が高い場合、そのタスクは間違いなく最優先で取り組むべきタスクです。中には、緊急度が高いものの重要性が低いタスクや、緊急度が低いものの重要性が高いタスクなども出てくるでしょう。こういったタスクを遂行する場合、チーム内の適正やスケジュールの都合を顧みながら、割り振りを行えることが理想的です。
たとえば、緊急度は高いけれど重要性が低いタスク、いわゆる当日のうちに仕上げるべき報告書の作成などは、実務経験が浅く意思決定の現場に参加しづらい若手に任せるのが良いと判断ができます。
スケジュール・期限を設定する
三つ目のステップが、スケジュールと期限の設定です。前述のとおり、タスクは基本的に期日が発生するため、あらかじめ設定しておくことで、不足の事態やミスの発生にも対処できるようになります。
期限の設定については、実際の期限よりも余裕を持って実施することが大切です。たとえば、今週の金曜日までに仕上げるべきプレゼン資料の作成は、タスクを割り振る際今週の水曜までに提出とするのが良いでしょう。
上司による修正やフィードバックのためのゆとりを2日間持つことができるため、プレゼン当日に慌てて仕上げる必要がないためです。
また、期限を設定するだけでなく、それぞれのタスクを割り振った上でのスケジュールも確認しておきましょう。ミーティングのダブルブッキングなどが発生してしまうこともあるので、配分されたタスクに不都合がないか確認が必要です。
定期的な進捗確認を実施する
タスクの実行段階に入った後は、マネージャーが進捗確認を定期的に実施しましょう。各メンバーに割り振られたタスクを日々確認し、スケジュールどおりの消化ができているかをチェックします。
タスクの消化が予定通り進んでいる場合は問題ありませんが、場合によっては遅れが出たり、予定以上に早く消化できたりすることもあります。そんなときは、余剰人材を遅れているタスク消化のサポートに充てるなど、スピーディな対応をおこないましょう。
プロジェクトの規模にもよりますが、進捗ステータスの確認は数日おき、1週間おき、1ヶ月おきと定期的に実施することが大切です。最初はスムーズでも、徐々に遅れが発生してきているなどの変化があった際、すぐに察知して対応することができるためです。
成果につながるタスクマネジメントのポイント
タスクマネジメントを適切におこない、成功に導くためには、次の3つのポイントを実践することが肝要です。順に確認しておきましょう。
タスクは細かく設定する
一つ目のポイントは、タスクの細分化です。
タスクの洗い出しはとにかく数を書き出す必要があるため、大きな業務を一つのタスクに括りたくなってしまいますが、可能な限り細かくするのがベターです。というのも、タスクの業務範囲が広がり過ぎてしまうと、タスク消化が難しくなってしまうだけでなく、対応可能な人員も限られてしまうからです。
作業労働と高度なスキルや意思決定が必要な業務は別々のタスクとし、役割分担で対処できる環境を整備しましょう。
実行可能な目標を設定する
二つ目のポイントは、実行可能な範囲で目標を設定することです。
タスクマネジメントを実行することで、業務効率化などの恩恵を受けられる一方で、業務そのものの絶対量が変化するわけではないため、時間短縮にも限界があります。スケジュール設定も前倒しが良いとはいえ、対応可能な日程で調整するよう心がけ、現状では難しいようなら少し甘めに設定するなどの改善を忘れないようにしましょう。
情報共有は迅速に行う
三つ目のポイントが、情報共有の高速化です。
タスク消化の連絡や不明点の質問などは迅速におこない、回答も素早く返信することが理想的です。というのも上司の承認や、フィードバックが必要なタスクの場合、コミュニケーションの遅れがそのままタスク消化の遅れにつながってしまうためです。
可能な限りコミュニケーションコストを小さくし、すぐに連絡できる環境を整備しましょう。
主なタスクマネジメントの方法
ここでは、タスクマネジメントの業務で使われる代表的な手段を紹介します。
紙とペン
紙とペンは、タスクの洗い出しや優先順位の書き出しにおいて活躍します。今日では、PCやスマホを使った管理が主流ですが、感覚的にリストを作成したい際などは、まだまだこれらのツールも現役です。
また、割り当てられたタスクをToDo形式で個人的に書き出しておきたいときにも、紙とペンは有効です。PCのとなりにこれらを設置し、タスクのリマインダーとして活用すると良いでしょう。
表計算ソフト
Excel(エクセル)やGoogle スプレッドシートのような表計算ソフトは、タスク管理において有効です。誰がどのタスクに対応し、進捗ステータスはどんな具合かを一目で確認できるため、状況を整理するのにも役立ちます。
特にGoogle スプレッドシートはクラウドで進捗管理を行えるため、常に最新のステータスを更新することができます。
タスク管理ツール
近年多くの企業が導入しているのが、タスク管理ツールです。Google スプレッドシートなどは汎用性の高い表計算ソフトですが、後ほど紹介するタスク管理ツールは、タスク管理に特化した機能を持ち合わせています。
そのため、複雑なフレームワークを一から構築する必要もなければ、見づらい管理表に頭を抱える必要もなくなるので非常に便利です。
最近では無料のツールも登場しているため、手軽に導入しやすいことも魅力といえます。
タスクマネジメントに活用したいツール
最後に、多くの企業で導入が進んでいるタスクマネジメントに特化したツールを紹介します。
Trello
Trelloは、オーストラリアのAtlassian(アトラシアン)が提供するタスクマネジメントの現場で最も使われているツールの一つです。初めてのツール導入でもすぐに使い方を理解できるユーザビリティの高い設計と、タスクの進捗状況を一目で理解できるUIを備え、多くの企業で愛されています。
また、無料ユーザーとしての利用が可能ということで、試験的にタスクマネジメントツールを導入したいという方にもおすすめできるサービスです。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・Free:無料
- ・Standard:5ドル/月
- ・Premium:10ドル/月
- ・Enterprise:17.5ドル/月
公式サイト
Aipo
社内外の日程調整を円滑にしてくれるのが、TOWN株式会社が提供するAipoです。メンバー同士のスケジュールを一眼で把握し、共同編集ができるカレンダーを利用することで、ダブルブッキングなどのアクシデントを回避できます。
また、誰がどんな業務に対応しているかを把握し、状況に応じて最適なタスクの配分を行えるようにもなるため、偏りのない負荷で働ける環境を実現します。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・350円(20ユーザー未満)
- ・400円(30ユーザー未満)
- ・610円(500ユーザー未満)
公式サイト
Jooto
Jooto(ジョートー)は、株式会社PR TIMESが提供する無料で使えるタスク・プロジェクト管理ツールです。ドラッグ&ドロップの簡単操作でタスクを管理できるため、直感的でストレスのないタスクマネジメントを実現します。
付属のガントチャートを活用すれば、プロジェクト全体の進捗を一目で把握可能です。複数プロジェクトの一元管理も可能であるため、上級管理職の方も活用したいサービスだといえます。
料金プラン(1ライセンスあたり)
・無料〜
公式サイト
まとめ
今回は、タスクマネジメントの具体的なプロセスや、実施のポイントについて紹介しました。プロジェクトの円滑な進行を促す上で、タスクの洗い出しと丁寧な管理は重要で、プロジェクトの完成度にも大きな影響を与えます。
近年タスク管理ツールを無料で利用することもできるため、組織に最適なツールや枠組みを採用し、有効活用していきましょう。