あらゆる業界の組織において、必ず発生する業務が事務処理です。細かな手続きや従業員の勤怠管理など、コア業務を円滑に進めていくためには事務処理の効率化が欠かせません。
ただ、事務処理にはルーティンワークも多く発生するため、取り組み方次第で業務を大幅に改善することも可能です。今回は、事務処理の効率化を考える際に取り組むべきポイントや実際の効率化の方法、そしてそれを支援するツールについて解説します。
事務処理の主な種類
一口に事務処理と言っても、業務に応じていくつかのカテゴリに分けることができます。ここでは、主な4つの種類の業務分けて紹介します。
一般事務
一般事務は、事務職の中でもスタンダードなカテゴリに分類される業務です。書類作成やファイリング、データ入力など、主に基本的な情報処理を担当することになります。
会社や時期によっては、一般事務が情報処理以外の業務を担うこともあります。電話応対や来客の際の応対、郵便物の発送や仕分けなど業務範囲は広く、担当者には満遍なく業務をこなせる柔軟性が問われることもあります。
事務職にも以下で紹介するようにさまざまな種類がありますが、細かく事務職を分けるほど会社の規模が大きくない場合、一般事務に事務職は集約されすべての業務をこなすことになります。
営業事務
営業事務は、主に営業職のサポートに徹する事務職を指します。
営業職は、会社に利益をもたらす重要な役割を果たすため、多くの業務が発生します。そのため、営業業務の中でもバックオフィスで対応できるものは事務職に任せ、最前線での仕事に集中してもらうために営業事務が配置されるケースが一般的です。
見積書や発注書、請求書といった書類の発行や商品サンプルの発送、プレゼンテーション資料の作成など、さまざまな側面から営業をサポートします。
経理事務
経理事務においては、主にお金に関する手続きを担当します。日々の現金の受け取りおよび支払い手続きを担当し、会社に出入りするお金を管理する役割です。また、その際に発生する伝票の仕分けや処理、帳簿の作成、経費計算なども合わせて対応するので、データ入力の作業やファイリング業務も数多く発生します。
細かい数字の確認が数多く、ミスが許されない業務が多いため、生真面目に対応してもらえる人材を確保したり、不備のチェック体制を整えたりする必要があります。場合によっては簿記や会計の専門的な知識が問われることも多いため、自社ではなく外部にアウトソーシングして対応するケースも少なくありません。
人事事務
人事事務は、労務事務ともいわれる事務処理の一種で、社員の採用や移動の手続きなど、人材に関する業務を行う業務です。新しい人材の雇用に伴う保険手続きや社員名簿の管理、勤怠管理など、多様な業務が発生します。
また、給与管理も人事事務が担うことが一般的で、お金の管理という意味では経理事務に近い業務がここでも発生します。
人材不足で多くの企業がリソースの確保に苦慮している中、既存社員に長く定着してもらうことの重要性も高まっています。人事事務を効率良く運営し社員満足度を高めることで、働きやすい環境を構築することが大切です。
事務処理の問題点
このように、務処理をカテゴリごとに紐解いていくことで、実に多くの業務が各分野で発生していることがわかります。一方で、これらの業務においては共通して発生しやすい問題を抱えていることも事実です。
ここでは、事務処理における3つの問題点について解説していきます。
ケアレスミスが発生する
一つ目の問題点は、ケアレスミスが事務処理では発生しやすいという点です。
事務の仕事の多くは作業労働となりますが、肉体労働とは違いデスクワークであるため、ルーティンワークになると確認が疎かになってしまうことも多いものです。
体を使った業務の場合、指差し確認や声出しによってミスのないよう手続きを済ませることもできますが、事務処理ではそうはいきません。また、チェック方法についても担当者ごとで独自の取り組みになっているケースも多く、ケアレスミスの改善に向けた取り組みは進めづらいのが現状です。
業務が属人化しやすい
二つ目の問題は、業務が属人化してしまいやすい点にあります。
事務処理は、雑務全般に対応する部門という認識も根強く、事務担当者だけでは対応しきれない多様な業務をこなす負担にさらされているケースもあるものです。しかし、こういった会社では、事務処理を効率良く実行するためのノウハウの共有もあまり進んでいないことが多く、担当者が入れ替わった途端、業務が滞り出してしまうといったケースも考えられます。
また、担当者間での引き継ぎマニュアルなども用意されていないとなると、新しい担当者はまた一から業務を覚え直さなければならないため、入れ替わりの時期には混乱も予想されます。事務の環境に適応した人材でなければ、業務を遂行できないというのは、異動や転職で空いた穴を補う上での障害となるといえます。
時間と人材の負担が大きい
3つ目の問題点として、そもそも事務処理は他の業務に比べて負担が大きいことが挙げられます。
データ入力は地味な作業ですが、手動で入力を行い目視でチェックを行うとなると、想定以上に必要な時間が発生してしまうものです。また、実際に業務に取り組む現場の負担も大きく、ルーティンワークを延々と続けるのは、割りに合わないストレスを負うこともあります。
事務処理以外にも多くの業務をこなせる人材が事務に配属された場合を考えてみましょう。自身のスキルを生かすことができずルーティンワークを負わされるとなると、せっかくの優秀な能力を活かすことができません。そのため、転職を後押ししてしまいかねません。
事務処理も組織運営に必要な部門であるとはいえ、人材の力を最大限発揮できる場所を提供できないというのは、コストパフォーマンスの面から見ても得策とはいえないでしょう。
事務処理を効率化するために必要な取り組み
このような事務処理における課題を解消するため、各社ではさまざまな取り組みが進んでいます。ここでは、事務処理効率化に向けた主な4つの取り組みを紹介します。
チェック体制を見直す
一つ目の方法が、チェック体制の見直しです。事務処理においてはケアレスミスの解消が大きなポイントとなるため、ミスを起きないための仕組みづくりに力を入れることが大切です。
たとえば、ケアレスミスでよくあるケースを一度洗い出し、それぞれの対策方法について検討するというものです。数字データの入力ミスが多いのであれば、どのようなところでミスが多いのかを特定し、その部分におけるチェックを強化するというのも効果的です。
また、事務処理の負担を軽減するため、追加で人材を配置することも有効だといえます。事務処理における一人当たりの負担を解消できれば、それだけ確認の時間を多く確保し、ミスを減らすきっかけを作れます。
マニュアルの作成に力を入れる
二つ目の方法は、マニュアルの作成です。毎日発生する業務については、どのように作業すれば良いのかをテキストや画像を使ってまとめることで、最適の方法で効率良く業務を進めてもらえるようになります。
また、新しい担当者に引き継ぎを行う際も、マニュアルを共有するだけで引き継ぎ作業のほとんどは完了できるため、非常に効率的です。業務の属人化防止と効率化の両立を実現可能です。
RPAなど効率化支援ツールを導入する
近年多くの企業が力を入れているのが、RPAを使った業務の効率化です。RPAはロボットを使ったデスクワークの効率化手法の一環で、日々発生するルーティンワークをプログラムで自動化できる強みがあります。
毎日のデータ入力もRPAの導入によってロボットが一瞬のうちに完了してくれるため、高い業務効率化効果を期待できます。
今ではさまざまなRPAツールが登場しており、業種や業務を問わず導入が可能でカスタマイズもできるため、柔軟性のソリューションとして注目を集めています。
外部企業にアウトソーシングする
先ほども少し触れましたが、事務処理に関しては外部にアウトソーシングする方法もしばしば採用されます。
業務のアウトソーシングは、自社内でノウハウの蓄積ができなくなるため、コア業務に関しては推奨されていない一方、事務処理のようなバックオフィス業務については積極的に採用されています。
自社でリソースを確保する必要がなくなり、人件費の削減や人材の効率的な配置を可能にするため、中小企業から大企業まで幅広く用いられています。
事務処理能力を高めるためのポイント
事務処理を効率化する仕組みづくりだけでなく、担当者の能力を高めることでさらなる効率化が期待できます。ここでは、事務処理能力を高めるためのポイントについて3つ紹介します。
目標管理と優先順位の設定を心がける
一つ目のポイントは、目標設定です。当日や当月の業務内容についてあらかじめ俯瞰的に把握しておき、目標地点を確認することによって、モチベーションを高めて業務に取り組むことができます。
日々の業務へ場当たり的に対応していると、エンドレスに業務が続いていくような感覚に陥り、効率的な業務遂行を阻害し、ケアレスミスを頻発する要因となりかねません。また、優先的に取り組むべきタスクについてもあらかじめ順位づけをしておかないと、重要な業務を雑にこなしてしまい、かえって修正作業が増加してしまう可能性もあります。
目標設定と優先順位の設定により、効率良く、それでいて高い精度で業務をこなせる心掛けを持つことが大切です。
役割分担を見直す
事務担当者が手広く業務を受け持っている場合、担当者間における役割分担を見直すことも効果的です。
一人ひとりが別個にタスクへ対処していると、同様の作業が発生するタスクを二人で取り組んでしまうこともあるため、効率的な業務遂行を妨げます。「データ入力はこの人、勤怠管理はこの人」といったように役割分担を設定しておくと、リレーのような感覚でタスクをスムーズにこなせるようになるでしょう。
コミュニケーション活性化に取り組む
あるいは、社内におけるコミュニケーションの活性化も大切です。ただ降りてくる業務に対応し、完了したら管理者に報告するだけというのでは意思の疎通が足りず、ミスの発生や修正作業の増加を招きます。
日常的にコミュニケーションを取れる環境を構築し、小さな質問を気軽に送ることができたり、スケジュール調整を細かく行えたりするような組織作りも、事務処理の効率化には役立ちます。
事務処理にツールを導入するメリット
多くの企業は、こういった事務処理の効率化へ自社で取り組むにあたり、RPAなどのツール活用を積極的に進めています。ツールの導入が、事務処理へどのようなメリットを提供するのかについて、ご紹介します。
作業の自動化が実現する
一つ目のメリットが、作業の自動化です。RPAの導入は、データ入力作業が発生する勤怠管理や給与管理といった業務をすべて自動化することが可能です。
これまで何時間もかけて対応し、ときには残業にもつながっていた作業労働は、ツールによって負担を限りなくゼロに近づけられる強みを持っています。
事務処理のコストを削減できる
ツール導入で業務負担を削減できれば、事務処理にかかるコストの削減にも役立ちます。たとえば、月給20万円の人材を2人事務処理に携わらせていた場合、月額1万円のツールで必要人数を1人に削減できれば、業務コストはほぼ半分にまでカットが可能です。
経費削減のため、一人当たりの負担を増やすのではなく、ツール導入によって負担を解消することで、効果的なコスト削減効果を期待できます。
人材の有効活用が実現する
必要な人材の数を減らすことによって、人材の有効活用役立ちます。事務処理負担の増加で仕方なく配置されていた担当者も、営業職やマーケティングなど、より高度な意思決定が求められる現場へと転換することが実現します。
新たに外部から人材を雇い入れる必要もなくなり、人材不足の解消も実現するでしょう。
ケアレスミスを防止できる
RPAのような自動化ツールは、ケアレスミスの心配がないこともメリットです。
人間の手打ち入力の場合、タイピングミスなどで数字を打ち間違えてしまうことは日常茶飯事です。一方でRPAの場合、ソースから完璧に数字をコピーし帳票などに入力を行えるため、タイプミスが発生する心配がありません。
人に任せているとミスが増えてしまう、あるいはミスが許されない業務にこそ、ツール導入は効果的です。
事務処理の効率化に活躍するおすすめのツール
最後に、事務処理業務の効率化に活躍する、おすすめのツールを3つご紹介します。
カオナビ
カオナビは、株式会社カオナビが提供するツールで、社員の個性や才能を発掘し戦略人事を加速させるタレントマネジメントシステムとして活躍します。人材情報をデータベースに一元化し可視化することで、評価シートをクラウドで管理したり、社員のスキルをオンラインでリストアップしたりといった事務作業の効率化に役立ちます。
料金プラン(1ライセンスあたり)
・要問い合わせ
公式サイト
SMILE V
SMILE Vは、株式会社OSKが提供するサービスで、基幹システムと情報システムを統合し、業務を効率化してくれます。販売、会計、人事給与といった負担の大きい業務を一つのシステムに統合しデータを相互に連携できる体制を整えることで、業務遂行を確実かつスピーディに行えるよう支援してくれます。
料金プラン(1ライセンスあたり)
・要問い合わせ(無料体験版あり)
公式サイト
BizRobo!
BizRobo!は、RPA テクノロジーズ株式会社が提供するサービスで、大企業における導入実績が豊富な国産のRPAシリーズです。1ライセンスでロボットを無制限に作成できるため、自動化すればするほどお得な環境を構築し、DXの推進に活躍します。
また、ITに知見のない担当者で開発が行えるよう設計されているため、DX人材に不足していてもRPAを活用した自動化を現場で進められます。
料金プラン(1ライセンスあたり)
・年間720万円
公式サイト
まとめ
今回は、事務処理において発生している問題点やそれを解消するための方法、効率化のポイントについて紹介しました。
仕組みづくりや担当者のスキルアップといった施策は有効ですが、手動での作業には限界があることも事実です。そんなときは、RPAを導入することによって、業務負担を丸ごと解消することもできます。
RPA導入はコストパフォーマンスに優れたり、精度面でも期待が持てたりと、多くのメリットが得られます。事務処理の課題解決にお困りの際は、積極的に活用していくと良いでしょう。