ICTということばを知らなくても、現代社会の人々は日常生活でICTに触れて生きています。スマートフォンやパソコンを持っていてICTに触れないように生活する方が難しいくらいです。
ビジネスの世界でいえば、ICTを使わずに仕事をすることは不可能に近いといえます。この記事では、そんな現代社会に必須なICTについて、基礎的な意味から活用事例について紹介します。
ICTとは
ICTは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術と訳されます。この項目では、ICTと混同されがちな用語を紹介し、意味を比較して解説します。
似たようなことばとの差分を理解することで、ICTに対する認識を高めましょう。
ICTとITの違い
ITが情報技術(Information and Technology)という意味になるので、そこに通信(Communication)というワードが入ったものがICTです。したがって、ICTとは「IT技術に通信の意味を加えたもの」ということです。
ITは、情報技術全般を指すためICTも包括しています。ICTとITの大きな違いは「人orモノとつながるか?」です。
たとえば、スマートフォンのカメラは、撮影だけが目的であればネットワークは要らないため、ICTではありません。しかし、いざ撮影した写真を友人と共有したとすると、その時点で他の人と「つながった」ため、それはICTといえます。
友人相手でなくても、オンラインストレージに保存した場合も、外部の保存サービスと「つながった」のでICTです。つまり、ネットワークを通して使うすべての技術がICTに含まれているということです。
ICTとIoTの違い
IoTは「Internet of Things」の略称で、「モノのインターネット」と略されます。こちらは、ITとICTの違いが理解できていれば、理解は簡単です。
ICTは「人と人」「人とモノ」のつながりだったのに対し、IoTは「モノとモノ」の通信です。最も身近な例は、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスです。スマートフォンなどと連携して健康管理を行うサービスなどが該当します。
ICTの身近な活用事例
ICTが「つながり」の情報技術であることが理解できたでしょう。ICTについてより理解を深めるため、続いては身近な活用事例について説明していきます。
スーパーやコンビニのレジ管理
買いものは人と人が動く場面ですから、ICTは欠かせません。レジはPOSシステムというICTツールで管理されていることがほとんどです。このシステムによって、店舗内の商品を管理し、商品情報や売り上げ情報、実際の売り上げと商品の在庫に差がないかどうかを管理することができます。
図書館や辞書などのデータベース
「人とモノ」のつながりにおいて、少し特殊な例がデータベースです。たとえば、図書館の検索機能やWeb辞書などがデータベースの身近な例です。人と情報がつながることで、素早く情報を得ることができます
農業や漁業などの第一次産業支援
近年、農業や漁業に代表される第一次産業の世界にもICTの波が押し寄せています。耕作機をロボット化しタブレットから操作したり、漁船の航行記録をクラウド管理したり、スマート化が急速に進んでいます。
衆議院の議事録作成のための音声自動認識
ICTは政治の世界でも活躍しています。日本の法律の可否を決める衆議院議員には、議事録作成のための音声自動認識があります。かつての国会の議事録作成は「手書き速記」によって行われていましたが、それに変わる新たなシステムとして導入されました。話しことばを文字起こしするシステムとしては最高水準のもので、動画の自動字幕生成などへの応用が期待されています。
今後発展する分野:生体認証システム
次世代のICTとして期待されているのが「生体認証システム」です。身近にも広まっている例として、指紋認証や顔認証などがあります。その他にも、血管認証や網膜認証などがあり、まだまだ発展途上ですが、今後期待できる分野であることに間違いありません。
ICTのビジネスにおける活用事例
ここまで、ICTが身近で役に立っている例についてお伝えしました。ここでは、ICTのビジネスにおける活用事例を紹介していきます。
デジタイズ(電子化):勤務データ・顧客データ管理
ICTの強みの一つは、デジタイズ(電子化)です。近年のICTツールは、勤務データや顧客データを電子化することができるようになりました。これらのツールによって、勤怠管理やマーケティング対策が効率化されています。
ネットワーク(通信):クラウド共有・サテライトオフィス
ICTがネットワーク(通信)に強いことは言わずもがなです。近年、ネットワークの回線スピードが上がったことで、便利なビジネスツールが登場しています。特に、離れていても仕事の内容を共有できるクラウドや、自宅でオフィスにいるかのように働けるサテライトオフィスなどは、ICTが生み出した強力なビジネスツールです。
オートメーション(自動化):
飲食店での通信オーダー・機器管理や故障警告
オートメーション(自動化)は、ICTの中でも特に業務の効率化に強みを持ちます。例えば、飲食店で見かける通信オーダーなどは、注文作業の自動化です。また、大規模な工場や貿易港では大量の機械が動作しているので、機器管理を自動で行い故障などが出たらすぐに手元のデバイスで警告を確認できるシステムが登場しています。
アナリティクス(分析):顧客分析・統計処理
ICTの発展と拡大によって、アナリティクス(分析)のビジネス価値が大きく強くなってきています。アナリティクスは、分析するためのデータが重要ですが、ネットワークの発達によって企業はさまざまな情報をユーザーから得られるようになりました。顧客の好みを分析したり、得られたデータを科学的な統計処理をしたりすることで、ビジネス戦略を有利に進めることができます。
AI(人工知能):手書き書類分析・チャットボット自動応答
ICTの中でも先進的な分野であるAI(人工知能)は近年大きく進化し、ビジネス用途にも耐えうるクオリティのものが登場しています。郵便の自動判別機にように手書き書類を分析し自動でデータ化する技術や、商品の問い合わせをAI搭載のチャットボットで対応するなど、その応用の幅は広がりつつあります。
ICTを活用するメリット
ICTがビジネスにおいて活躍する場面が多いことが理解できたかと思います。続いては、ビジネスにおいてICTを活用するメリットについて紹介します。
社員の創造的な時間を確保できる
ICTの最も大きな恩恵が、自動化・効率化です。単純作業や簡単な業務をICTツールが肩代わりすることで、社員に時間の余裕が生まれます。得られた心の余裕から、より創造的な仕事に取り組むことができるようになり、素晴らしいアイデアの種が生まれるかもしれません。
単純作業の負担を減らしケアレスミスを防げる
人間は退屈な作業が続くと集中力を失ってしまい、ケアレスミスを犯してしまいがちです。
オートメーションに代表されるICTの技術は、繰り返しの作業を長時間でも一定のクオリティで実行できるため、ヒューマンエラーの可能性を大きく減らすことができます。また、機械はときに人より正確に物事を判断できるため、人の思い込みなどで発生してしまうエラーも軽減させることができます。
コミュニケーションを活性化できる
ICTの中でも、コミュニケーションツールが持つ力は絶大です。昨今、コロナ禍の影響もあり、人と人のコミュニケーションが希薄になりつつあります。チャットやウェブ会議などのツールによって、離れていてもコミュニケーションを取ることができるようになり、社員のつながりが強固なものになります。
有用なフィードバックを得られる
ICTで、さまざまなデータを取得・分析できるようになり、得られるフィードバックも豊富になりました。例えば、商品の時間帯ごとの売れ行きや顧客が購入までに至る動向、競合商品との価格差などをスピーディに取得しマーケティング戦略に有用なフィードバックを与える、といったことが可能です。
ICTを活用する際のポイント
最後に、ICTを活用する際に注意しておくべきことについて紹介します。ICTの持つ力を最大限に活かすためにも、この項目を参考にしてみてください。
ハードウェアの能力とソフトウェアの機能の両面から考える
ICTは、ハードウェアの能力とソフトウェアの機能を両面で考える必要があります。ハードウェアはパソコンやスマートフォン本体のことを指し、ソフトウェアやアプリやサービスのことを指します。どんなハードウェアを使うか、そしてどんなソフトウェアを選択するかを土台として考えておく必要があります。
ICTツールは用途ごとに分け組み合わせて利用する
ビジネス用のICTツールは数多く存在するので、どんな用途に使うかは分けて活用した方が良いです。Web会議に使うツール、ファイル共有に使うツール、勤怠管理に使うツールなど、目的に合わせてICTツールを組み合わせましょう。
ICTツール利用スキルはできるだけ社内で均一化する
ICTツールを利用する上で落とし穴となるのが「社内の利用スキル差」です。
利用スキル差があると、基本的にスキルが低い人に歩調を合わせなくてはいけなくなるため、効率が落ちます。せっかくICTツールを導入したのに、効率が落ちてしまうのは避けたいところです。
そのため「ツール操作の必須事項だけを抜粋した簡易マニュアルを作成する」「全体でツール使用法セミナーを実施する」「使用法のTips(ヒントや豆知識)を共有できるチャットスペースを作る」などの対策を行うことで、社内全体の利用スキルのムラをなくすことができます。
利用スキルを統一することで、ツールを使う上での共通言語も生まれ、運用が容易になります。
まとめ
ICTの基礎的な概要から、日常やビジネスでの活用事例、そのメリットや活用ポイントについて解説しました。ICTは現代社会においてなくてはならない技術であり、生活と仕事をより充実させてくれるものです。ICTがどうったものかを理解しておくことは、今後のビジネスにおいて役立つことでしょう。