近年、ビジネスにおけるさまざまな分野でITへのトレンドが加速しています。セールス分野についても、それは例外ではなく、多くの企業がセールスにITを導入することにより運用効率と生産性を向上させています。
IT技術を用いたセールス分野に「セールステック」があります。今回は、セールステックの概要やカオスマップから見る重要カテゴリ、必要となるスキルについて解説します。
セールステックとは
セールステックとは、営業とテクノロジーを掛け合わせた造語で、従来の営業活動を日々進化するIT技術とリンクさせ、業務効率化や省力化を図る取り組みのことを指しています。セールステックの代表的なツールとしては、CRM(顧客情報管理)が知られていますが、SFA(営業支援ツール)やMA(マーケティングオートメーション)などもその1つです。
いずれのツールも従来の営業活動が抱えていた属人化の問題や、非効率性の問題を解決するツールとして登場しています。営業以外の分野ではRPA(ロボティックプロセスオートメーション)や会計ソフト、不動産テックの利用などが知られています。
セールステックが普及している背景
営業分野でセールステックが普及している背景には、顧客ニーズや市場ニーズの変化も当然ありますが、それ以前に大きな2つの要因が影響しています。
- ITの発達・普及
- 労働人口の減少
まずはSaaSなどのクラウドサービスが普及したことが関係しています。以前から営業分野における業務の属人化・非効率性の問題はありましたが、それらを解決する手段として紙からExcel、Excelからスプレッドシード、といった過程を経るに留まっていたのです。
昨今はクラウド環境を活用したアプリケーションの起動・利用が進んでおり、「導入・運用コストが安く済む」といった理由から、自社のサーバー環境に影響を受けない新たなサービスの活用が増えたと推測されます。
また、経済産業省が発表した『DXレポート』における「2025年の崖」や、厚生労働省が発表した「2040年問題」などで指摘されたように、労働人口減少がもたらす働き手世代に対する負担は日々大きなものとなっていきます。
これまでの仕事の進め方、業務手順ではとても処理できないデータ・業務量が2025年・2040年の節目に訪れることを意味しているのです。企業はこうしたやがてくる労働人口減少時代の働き方を見据えて、企業活動はもちろんのこと、営業活動も効率化・自動化していく必要性に迫られています。
まとめるならば、ITの発達・普及に積極的に反応する層と、労働人口減少など想定される未来に備えて準備する層の2つに分かれているということです。
セールステックの導入で期待できること
続いて、セールステックの導入によって期待できることについて解説していきましょう。
生産性の向上
営業担当者によって売り上げに差が生じることは当然と思われていますが、会社的にこういった状況は健全とはいえません。営業担当者によって売り上げに差が出ず、全体的に高い水準を保っている方が望ましいと考えられます。
セールステックを導入すると、個々の営業担当者の営業活動をグラフなどで視覚化することが可能になります。そして、営業担当者一人ひとりの強み・弱みがわかりやすくなるため、より効率的な営業管理が可能になります。
人手不足や働き方の変化への対応
近年、働き方改革によりワークライフバランスの実現を目指す傾向が強まっています。その結果、残業時間を可能な限り減らすよう努力がなされています。
しかし、それに逆行するように労働人口は年々減少しています。従業員数が減少しても企業が業績を維持・拡大するためには、労働時間をいかに効率的にするかが必須となります。
セールステックを導入することで業務の効率化を行うことができ、人手不足の中でも業務範囲を拡大することが可能です。そのため、働き方の変化や人手不足に対応することができるようになります。
営業活動の一元管理
セールステックによって、情報が一元管理できることも営業効率の向上につながります。
たとえば、顧客の過去の注文実績や購買前の行動などをグループ化し、購入確率の高い顧客と低い顧客に容易に分類することができます。そのため、セールステックを活用すれば、より購入可能性の高い顧客だけを選別し、効率的にアプローチできるのです。
また、規模の大きい企業の場合、同時にいくつもの営業活動やマーケティング活動を行うことも少なくありません。そういった場合でも、セールステックツールにより各活動を一元管理することができます。
そういったツールがあれば、顧客に対して適切なタイミングで通知やお知らせを送信する設定にすることもできるため。顧客に合わせた効果的なアプローチが可能になります。
セールステックのカオスマップからみる7つの重要カテゴリ
続いては、セールステックのカオスマップに着目し、注目すべき重要カテゴリを紹介します。セールステックは、現状次の7つのカテゴリに分けることができます。
- 営業加速ツール
- 顧客関係管理ツール
- カスタマーエクスペリエンスツール
- コンタクト・コミュニケーションツール
- 人材開発・コーチングツール
- インテリジェンス・解析ツール
- カスタマーサポートツール
営業加速ツール
営業加速ツールは、営業活動を合理化し生産性を向上させるように設計されたツールです。
このカテゴリに属するツールの一般的な機能には、営業活動の記録や日次レポートの保持、交渉の進捗状況の追跡、売り上げの予測、取引の管理、苦情の管理、情報の部門間共有などがあります。
AI(人工知能)を介して販売プロセス全体を合理化し、システムの使いやすさを向上させているツールなども存在します。
顧客関係管理ツール
顧客関係管理ツールとは、企業とその顧客との関係を管理し、顧客データベースを構築および管理するツールです。
このカテゴリに属するツールには、電子メール追跡やAIベースの予測などの他の販売技術ツールがあります。カスタマーセンターやプロモーション部門とのデータ共有やオンラインショッピングへのリンクなど、さまざまな場面で利用されます。
また、クラウドコンピューティングとの互換性も高く、特に多くのBtoC企業で使用されています。
カスタマーエクスペリエンスツール
カスタマーエクスペリエンスツールとは、顧客が商品購入に辿り着くまでの過程(カスタマージャーニー)を改善するツールのことです。
このカテゴリに属するツールには、顧客の購入プロセス中の感動体験や疑似体験という付加価値を通じて売り上げを増やすツールがあります。多くの場合、顧客からの信頼を高め、リピーターやファンを獲得するために使用されます。
必要な情報をWebサイトにポップアップ表示したり、ニュースのプッシュ配信をしたりすることが特徴です。AIを活用し、訪問者が探しているものを素早く提供したり、既存のWebシステムのユーザーインターフェイスを改善したりするツールもあります。
コンタクト・コミュニケーションツール
コンタクト・コミュニケーションとは、コールセンターやチャットツールで顧客とのコミュニケーションを改善するツールです。
これには、顧客からの電話の内容を分析して最良の回答を提供するツールや、AIを使用して最初の営業連絡先メールを自動化するツールがあります。BtoCだけでなく、Web会議システムを利用したビジネス会議などのBtoBにも使用できます。
人材開発・コーチングツール
人材開発・コーチングツールは、営業担当者の能力改善、教育のために用いられるツールです。このカテゴリに属するツールは、営業活動やマーケティング活動の担当者を教育するため設計されています。
たとえば、営業担当者がスマートフォンやタブレットで学習できるようにすることで、人材教育の過程を最適化したり、教育過程におけるフィードバックを効率的に収集できたりするツールがあります。
インテリジェンス・解析ツール
インテリジェンス・解析ツールは、データ分析を通じて販売を強化するツールです。セールステックツールを用いて得られたデータを活かすには、専門的な分析が必須です。これらの分析を手助けするのがインテリジェンス・解析ツールです。
たとえば、インテリジェンス・解析ツールには「顧客に電話で営業をかけるときに、どういったトピックが最も適切であるかといったことを自動で分析し、営業担当者に提案してくれるような機能があります。また、交渉プロセスのどの時点でサービスを提案すると効率が改善するのかといったことも、ツールを通して知ることができます。
また、インテリジェンス・解析ツールは、高度なデータ収集やビッグデータとの連携による顧客の問題の抽出を自動で行うものもあり、担当者に難しいデータ分析技術がなくても、マーケティング戦略に役立つ情報を得ることができます。
さらに、AIを利用して過去の商談を分析し、進行中の商談に関するアドバイスを提供する機能を備えたツールもあります。これらのツールはITの専門知識がなくとも比較的簡単にデータ分析を行うことが可能であることも特徴だといえるでしょう。ITに明るくない営業担当者でも、簡単にデータ分析が可能となるツールが数多く提供されています。
カスタマーサポートツール
カスタマーサポートツールは、顧客満足度の向上に重点を置いたツールです。
このカテゴリに属するツールは、顧客とのやり取りをテキストや音声として保存したり、最適なタイミングで顧客にメールマガジンを送信したり、さまざまな営業活動を自動的に実行することができます。
これらのツールを使用することで、電子メールや電話などの顧客とのコミュニケーションを単一のプラットフォームで管理できます。
セールステックの主なツール
続いては、セールステックのツールの種類を紹介しましょう。「SFA」「CRM」「MA」の3つに分けることができます。
SFA
SFAは「Sales Force Automation」の略称です。日本語では「営業支援システム」または「営業支援ツール」と訳されます。
SFAは主に「営業加速ツール」のカテゴリに属します。営業活動の記録や進捗状況の管理など、営業活動に関連する業務をサポートしてくれるツールです。
また、営業担当者の交渉プロセスとプロジェクトの進捗状況を可視化して管理することも可能です。可視化することで、営業の生産性と効率を向上させることができます。
CRM
CRMは「Customer Relationship Management」の略称です。日本語では「顧客関係管理」と訳されます。
CRMは「顧客関係管理ツール」「カスタマーエクスペリエンスツール」「コンタクト・コミュニケーションツール」などの広いカテゴリにまたがります。顧客の年齢や所在地、過去の取引履歴、Webサイトへのアクセス数、問い合わせ履歴などの情報を一元的に管理し、顧客のニーズを分析してくれるツールです。
管理された情報をもとに、顧客の属性に応じた課題やニーズを分析し、それらに合わせたサービスや商品を提供することで、顧客の満足度を高めることができます。
MA
MAと「Marketing Automation」の略称です。日本語では「マーケティングオートメーション」と呼ばれたり、日本語で「営業自動化」と訳されたりするツールのことです。
MAは「コンタクト・コミュニケーションツール」との関連性が特に高いです。MAは新規顧客の獲得など、マーケティングにおけるイニシアチブをサポートするツールです。今後顧客になる可能性の高い「リード顧客」に適切なコンテンツを提供し、適切なタイミングで顧客にアプローチを行うために使用されます。
セールステックを活用するうえで好ましい能力・スキル
最後に、セールステックを活用するうえで求められる能力や、持っていると好ましいスキルを紹介しましょう。
数字を分析する能力
売り上げや利益、目標達成率など、数字にこだわる営業担当者は優秀であり、それはセールテックが登場するより前から言われていることです。今後、セールステックの発展によって、この傾向はさらに顕著になると考えられます。
セールステックでは営業活動に関するさまざまな情報を定量化するため、セールステックによってもたらされた数字が何を意味し、何をする必要があるかを判断する能力が不可欠です。
ツールの理解能力
セールステックを導入した企業への調査では、入力の複雑さと知識の欠如のためにツールを充分に活用できていないという問題が浮き彫りになっています。ツールを動かすのは人間であり、担当者は導入されたツールを正しく理解して操作するスキルを持っている必要があります。
そのためにも、常にITのトレンドを理解し対応する必要があります。これは営業やマーケティング業務に限った話ではなく、将来的には生産性の向上を目的として、企業の他のすべての部門でも求められていくことでしょう。
柔軟な対応力
セールステックツールを用いると、情報収集を前提に営業計画を立てたり、データに基づいて自分の行動を決めたり、これまでの営業・マーケティング活動には存在しなかった新しい対応が求められたりします。
さらに、これらの対応を煩わしい未知の仕事ではなく、今後必要な役立つ仕事として、その価値を理解していかなければなりません。これは、の営業・マーケティング活動の本質を変えていくものとなり、活用できれば大きな力になります。
一方で、その変化に対応する能力がなければ、導入するだけでは時間の無駄になり、パフォーマンスの向上にはつながりません。先ほどもお伝えしたように、ツールを操作するのは人間です。したがって、ツールやその他の技術に関する十分な知識と、それらを利用するためのスキルが必要になります。
ITテクノロジーは、常に進化し続ける分野です。新しいテクノロジーが出現すれば、それに伴ってセールステックのツールもアップデートされます。したがって、ツールを利用する企業やその担当者も、ツールの進化に伴って柔軟に対応していく能力が求められます。
営業・マーケティング経験
セールステックツールは営業活動やマーケティング活動で利用されるものです。営業やマーケティングをITで合理化したとしても、最後は人と人のやり取りに帰結します。そのため、対人での経験があった方が、セールステックのツールを使いこなすうえでのアドバンテージになり得ます。
また、いくらツールが優秀であったとしても、人の判断に委ねられる場面は必ずやってきます。ツールでは判断がつかないような事柄に対応するためにも、現場での経験が役に立つのです。
セールステックの時代に営業が求められるスキル
セールステックの時代に差し掛かる中、最前線で活躍する営業担当者は、今後どのようなスキルを求められるでしょうか?大きく分けて、必要なスキルには次の4つが挙げられます。
- テクノロジーの知見
- ITスキル
- データ活用能力
- コミュニケーション能力
テクノロジーの知見
最も重要性の高いスキルには、テクノロジーの知見が挙げられます。テックを扱う企業の顔として、最新技術に対する理解度が浅いとなると、見込み客にサービスの魅力を十分に伝えることはできません。
一口に「テクノロジー」とはいっても、その領域は多岐にわたります。自社サービスに関わる領域の知見はもちろん、浅く広くでも良いので、豊富な知識を持っていることが望ましいといえるでしょう。
ITスキル
知識としてITに詳しいだけでなく、実践的なスキルを持っていることも、これからの営業担当者には求められる能力です。
たとえば、プログラミングについてのエンジニア並みの技術、あるいは初歩的な技術でも良いので有していることで、具体的なサービス導入の案内や、エンジニアにとって負担のない現実的な契約の獲得につながります。
営業担当者は文系人材というのが当たり前とされてきましたが、セールステックという言葉が聞かれるようになったことからもわかるように、現代では文理の境目は非常に曖昧です。
「営業担当だから技術者としての能力は必要ない」という言説は時代遅れになりつつあるため、営業人材のIT教育にも力を入れることが大切です。
データ活用能力
ITスキルと似たような能力ですが、データサイエンスの知見があることもセールステックにおいては重要です。
データサイエンスは、データを活用して顧客分析や売り上げ予測などを行えるスキル全般を指します。いわゆる統計分野の知見や、多少のプログラミング能力のことを具体的にいいます。
データ活用の知見があることは、テックサービス導入の際に具体的な案内ができるだけでなく、AIの活用においても詳しい情報共有に役立ちます。最先端の技術につながるスキルでありながら、統計学という古典的な分析能力につながっており、さまざまな領域で役に立つ分野です。
コミュニケーション能力
セールステックとはいえ、営業活動において最後に必要になるのはコミュニケーション能力です。見込み客のニーズを正しく分析し、適切な提案を届けられる能力は、どんな時代になっても重宝されます。
テックに関する知見はもちろん不可欠ですが、その大前提として豊かなコミュニケーション能力が必要になるため、まずはここから育てることが大切です。
まとめ
セールステックに携わる営業担当者は、基本的なコミュニケーション能力の獲得はもちろん、ITに関する知見や、実践的なITスキルの獲得にも取り組み、頼りになる人材としてその能力をいかんなく発揮してもらうことが重要です。
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