業務の円滑な進行を促進するためには、丁寧な進捗管理を実践することが求められます。プロジェクトの進捗管理というマネジメント業務は一般的な一方で、適切で、今よりも効率的な方法を実現できるアプローチについては知られていない部分も多いものです。
今回は、そんな進捗管理をより効果的に実践するためのポイントについて詳しく解説します。
進捗管理とは
まずは、進捗管理の定義を確認しておきましょう。進捗管理は、プロジェクトの進行状況を逐一確認し、当初の計画とズレがないかを確認する業務です。
どれだけ丁寧に事前計画を構築しても、業務を進めるうちに新たに対応すべきタスクが発生したり、思いがけないミスで大幅な修正が必要になったりなどが原因で、当初の計画からズレが発生することも珍しくありません。進捗管理の業務は、こういった事態においても柔軟に対応し、軌道修正を促すことで、プロジェクトを問題なく着地させられる必要があります。
単に業務を側から眺めているだけでなく、ときには積極的にコミットし、修正対応を主体的に進める必要もあるでしょう。
進捗管理の目的
進捗管理の業務そのものは、プロジェクトの進行に直結しているわけではありません。わざわざリソースを使い、このようなマネジメントを必要とするのには、どんな目的があるのでしょうか?
期間内でプロジェクトを完了すること
一つ目の目的が、期間内で確実にプロジェクトを完了するためです。
前述の通り、プロジェクトは必ずしも計画通りに進むとは限らず、場合によっては調整が必要なケースもあります。規模の大きなプロジェクトとなればなるほど、調整作業には多くのコミュニケーションや検証が必要となります。
そのため、すでにタスクが割り振られているメンバーがこれを同時並行でこなすとなると、さらなるプロジェクトの遅れを招くことになりかねません。
進捗管理担当者は、こういった事態に対応する、あるいはこのような事態を事前に防止するための存在です。丁寧な目標を立て、「これさえこなせば大丈夫」という計画を立案することで、スムーズかつ効率的な配分を実現します。
万が一の修正作業も対応してもらえるため、トラブルの負担を気にすることなくタスクに取り組んでもらえます。
適切な軌道修正を実施すること
二つ目の目的が、軌道修正を俯瞰的な立場から実施することです。現場担当者だけでプロジェクトを進めると、軌道修正の必要が発生しても、目の前のタスクを優先することになるため、必要十分の計画修正に取り組めない可能性があります。
進捗管理担当者がいれば、計画修正の必要性を早期に察知し、最小限の変更だけで済ませることができます。逐一メンバーに対しての進捗共有を実施してくれるため、遅れの兆候を早いタイミングで察知できることも大きいでしょう。
進捗管理を実施するメリット
進捗管理を適切に実施できれば、得られる恩恵も大きいものです。ここでは主な3つのメリットをご紹介します。
業務を均等に割り振れる
進捗管理のメリットは、業務配分の均一化が一つ目に挙げられます。
プロジェクトの中にタスクがあり、それをメンバーが各自拾い上げて対応していくアプローチでは、タスクの配分に偏りが出てきてしまうこともあります。特に、チーム内での能力差が激しい場合、高いスキルを持った人間ばかりに負担がかかり、必要な意思決定を適切に行えないケースも出てきてしまう可能性があります。
こういった事態を回避する調整役として、進捗管理担当者の配置は有効です。各人の能力を見極め、最適なタスク配分を実現します。
また、特にスキルセットがなくとも対応できるようなルーティンワークを、高度なスキルを持った人材が対応する必要をなくし、若手に任せてしまうといった配分も可能になります。そのため、高度な業務には積極的に高度な人材が関わることのできる、リソースの有効活用を促せます。
業務の効率化に貢献する
二つ目のメリットは、業務の効率化です。
必要最低限の人材でも、適切なタスク配分と丁寧な進捗管理を実現することで、プロジェクトに滞りが生まれてしまうリスクを軽減できます。また、プロジェクト進行中に何らかの問題が発生した場合でも、進捗管理担当者が迅速に対応してくれるため、タスク消化中のメンバーが余計なトラブルに巻き込まれる懸念を解消可能です。
チームのモチベーション維持につながる
進捗管理を適切に行えば、チームのモチベーションを維持する上でも効果的です。現在のプロジェクト消化率を逐一報告したり、頻繁なコミュニケーションを実施したりすることで、目標意識を絶やすことなくタスクに取り組むことができます。
モチベーションを当初の高い状態を維持することは、業務を計画通りに遂行する上でも重要です。モチベーションの低下による業務効率の低下を防ぎ、プロジェクトを期限内に完了する手助けができます。
進捗管理がうまくいかない主な原因
進捗管理に取り組んでいるものの、その効果や恩恵をいまひとつ感じられないというケースもあるでしょう。進捗管理がうまくいかない原因には、共通して見られる問題も存在します。
ここでは、主な原因となる3つの問題を紹介します。
進捗状況を可視化できていない
一つ目の原因は、進捗状況が可視化できていないという問題です。
タスクが複数発生している現場の場合、どれだけタスクをこなしても新しいタスクが降ってきてしまうため、業務に対応するメンバーからは「果たしてプロジェクトは前進しているのか」という疑念も湧いてきます。
進捗管理担当者は、自分の目から見て問題ないと感じた場合でも、そのことを定期的に報告しておく必要があります。タスク消化率を数値化するなど、進捗の割合を可視化できる取り組みに力を入れましょう。
メンバー間でのコミュニケーション不足
タスクの消化を促す上では、メンバー間のコミュニケーションを活性化させる必要もあります。承認作業やフィードバックの獲得など、上司や別のメンバーのレスポンスがなければ前に進められない作業も存在するためです。
また、同じプロジェクトに関わっているとはいえ、メンバー間のコミュニケーションがなければ共通の目標に向かっている実感を得ることができず、モチベーションの低下にもつながりかねません。
こういった事態を回避するためにも、進捗管理担当者が積極的にコミットし、プロジェクト内でのコミュニケーションをうまく回していく取り組みが求められます。
修正や改善が行われない
進捗状況をモニタリングするだけで、修正や改善施策を投下しないのも問題になり得ます。進捗管理業務の目的は、プロジェクトを計画通りに完了するためのマネジメントであるため、修正が必要になった場合は迅速に対応しなければなりません。
どうすれば遅れを取り戻せるのか、より適切なタスク配分を実現するためにはどうすれば良いかなど、直接プロジェクトを前進させる役割でなくとも、検討できることは多々あります。自身の役割を理解し、プロジェクトに前向きな影響を与えられるよう心がけることが大切です。
成果につながる進捗管理の方法・プロセス
このような進捗管理における課題を解消するためには、適切なプロセスを理解することが重要です。進捗管理の理想的な方法について解説します。
目標設定と現在地を把握する
一つ目のステップが、目標設定と現在地の把握です。プロジェクトにおいてはどんな達成目標を立てるべきなのか検討しましょう。
また目標を立てた上で確認しておきたいのが、現在地についてです。目標に対して、現在プロジェクトはどれくらいの進捗率なのか、どれくらいのタスクを消化すれば目標を達成できるのか、できる限り可視化することが望まれます。
必要な期間と工程の洗い出す
目標を設定した後は、スケジュールの確定です。目標達成に対してどれくらいの期間が必要なのか、あるいはどれだけの時間が与えられているのかを確認しましょう。
また期間内で目標を達成するためには、どんなプロセスをどれくらいこなせば良いのか、どんな業務が発生するのかを検証する必要もあります。無駄なく最小限に目標へ到達できるのが理想ですが、起こりうるタスクはすべて書き出し、余裕を持って対処することが求められます。
タスクを割り当てる
必要なタスクと期間が判明した後は、タスクの割り当てです。それぞれのタスクに合わせて最適な人物に割当て、円滑なプロジェクトの遂行を促進しましょう。
特定の人物に仕事が偏っていないか、無理のないスケジュールになっていないか、チェックすることも大切です。
定期的なステータス管理を実行する
プロジェクトが開始した後は、定期的に進捗状況を確認します。何らかのトラブルが発生しそうな場合でも、定期的なマネジメントを実施することで、すぐに修正対応を実現できます。
早期に問題を解決できれば、プロジェクト進行における負担も最小限に抑えられます。進捗管理担当者は、1週間おきや1ヶ月おきでの定期報告や確認が必要です。
進捗管理を成功に導くポイント・コツ
上記のプロセスを踏襲した上で、ここではさらに円滑なプロジェクトの遂行を促すポイントを紹介します。
タスクと期限は細かく設定する
一つ目のポイントは、タスクと期限の細分化です。タスクは目標達成に向けた細分化されたゴールである必要があるため、できる限り業務ごとに細かく分けて設定するのが理想です。
タスクが細分化されていると、手が空いている人が作業労働に携わりやすくなるため、工数をある程度必要とするタスクでも円滑に進めやすくなります。
また、期限についても短いスパンでいくつものタスクを設定することが効果的です。余計に期限を広く設定しているタスクばかりだと、後回しとしていたタスクがいくつも発生し、期限間近に大量のタスクが溢れてしまうこともあるためです。
進捗確認を怠らない
二つ目のポイントは、進捗確認をこまめに行うという点です。上述の通り、タスクの進捗は定期的に実施し、担当者と情報を共有することが大切です。
完了・未完了の報告だけでなく、タスク対応の上での疑問点や些細なトラブルもチェックしておくことで、今後タスクを円滑に解消する上での参考になる場合もあります。
すでに別案件で解決済みのトラブルシューティングを実施することもできるため、結果的にタスクの消化速度向上に貢献できます。
問題発見と改善はセットで実施する
プロジェクトの最中に何らかのトラブルに見舞われた場合、迅速な問題発見と改善を進めましょう。
問題がある状況を放置しておくと、さらなるトラブルの原因を招くだけでなく、進捗管理担当者以外に対応できるリソースが残されていないため、時間が解決してくれる可能性も低いといえます。
タスク以外の負担をメンバーに与えないためにも、できる限り対応を急ぐことが大切です。
進捗管理におすすめのツール
最後に、進捗管理に役立つツールを、3つご紹介します。
backlog
チームのタスク管理に活躍する専用の進捗管理ツールが、株式会社ヌーラボが提供しているbacklogです。あらゆる部署の人間がコラボレーションできるよう、直感的なデザインを採用していることが特徴で、情報共有やステータスの更新を促してくれます。
プロジェクト管理に必要な機能がオールインワンで搭載され、ガントチャート実装で視覚的にもわかりやすく、導入しやすいサービスといえます。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・個人プラン:2,640円/月
- ・スタンダードプラン:12,980円/月
- ・プレミアムプラン:21,780/月
- ・プラチナプラン:55,000/月
公式サイト
Trello
TrelloはオーストラリアのAtlassian(アトラシアン)が提供するツールです。最もポピュラーな進捗管理サービスの一つで、多くの組織で採用されていることが特徴です。
Googleドライブなどの外部サービスとの連携機能も充実しており、ノーコードで自社に最適な進捗管理システムを利用できます。利用は無料プランからスタートできるので、初めてのツール導入の際にも安心です。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・Free:無料
- ・Standard:5ドル/月
- ・Premium:10ドル/月
- ・Enterprise:17.5ドル/月
公式サイト
Asana
小さなタスクからプロジェクトの全体像まで、俯瞰的な進捗管理を実現するのに役立つのが、アメリカに本社を置くAsanaが提供するAsanaです。
優先度の高いタスクをすぐに把握できるリストビューや、仕事のスケジュールを確認できるタイムライン、チーム内のタスクの進行状況を把握できるボードなど、ユニークな機能を多数実装し、プロジェクト達成を促進してくれます。
料金プラン(1ライセンスあたり)
- ・Basic:無料
- ・Premium:1,200円/月
- ・Business:2,700円/月
公式サイト
まとめ
今回は、進捗管理の適切なアプローチや、実施のメリットについて紹介しました。進捗管理を丁寧に実施することで、プロジェクトを予定通りに完了できるのはもちろん、プロジェクト内の問題を早期に発見できたり、より効率的な取り組み方を発見できたりする可能性も高まります。
組織のリソースを有効活用し、各メンバーが最大限力を発揮する上でも、進捗管理の実施は非常に重要といえるでしょう。
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