企業の経理担当者にとって欠かせない業務となるのが請求管理です。会社のお金のやり取りに直接関わる業務であるため、高い精度ですべての工程をこなせることが理想ですが、請求管理は対応するべき作業が多く、常に確実にこなせるとは限らないのも厄介なところです。
今回は、そんな請求管理を確実に、そして効率良く進めていくためのポイントや、業務遂行のサポートとなるツールなどについて解説します。
請求管理とは
請求管理業務は、その名のとおりお金の請求や流れについての管理を行う業務のことを指します。
企業がクライアントと契約を結ぶにあたり、クライアントからは代金が支払われます。その際、どれだけのお金をクライアントに請求し、入金を確認し会社に記録するまでの流れを請求管理によって追いかけます。
お金が正しく振り込まれていないまま放置してしまうと、会社経営に大きな影響を与えてしまったり、訴訟問題などのトラブルに発展してしまったりすることもあります。こういった事態を回避するためにも、請求管理は確実に行わなければなりません。
そして、請求管理の肝でもある請求業務は、主に「締め請求」と「都度請求」という2つの種類があります。
締め請求
締め請求は、案件の発注者と受注者の間であらかじめ決めておいた締め日に合わせ、請求を行う方法です。契約内容に合わせ、期間内の代金を一括で受け取るというもので、締め日になったら請求書を送り、支払いを受けます。
締め請求は、継続的な発注がある場合や、相手との関係値がある程度築かれている場合に選ばれることの多いアプローチです。大抵は1ヶ月ごとの締め請求が行われ、月末近くに設定されていることが一般的です。
お互いに請求書発行の手間や支払いの手間を最小限に抑えられるため、業務の効率化においても良い影響を与えます。
都度請求
都度請求は、商品やサービスの購入、あるいはプロジェクトが完了するごとに支払いを請求する方法です。顧客が個人の場合や、新規の顧客である場合など、継続的な契約が存在しない場合に用いられる手法です。
請求管理の業務フロー
請求管理においては請求業務だけでなく、その後の回収業務も含まれることが一般的です。ここでは、請求業務と回収業務の内容について、詳しく確認していきます。
請求業務
請求業務においては、主に「請求の締め」「請求書の発行」「請求書の送付」という業務フローが発生します。
請求の締め
請求の締め業務は、締め日を設定し、前回の締め日から当日に至る期間内の取引を確認する作業です。締め日は1ヶ月単位で設定されることが一般的で、一度決定した締め日が変更されることは基本的にありません。
商品が納品された段階で取引を確定するのか、対応中で未納品であっても入金は確定するのかなど、発注者と受注者の間で請求の条件を設定しておき、お互いの認識に食い違いがないよう確認しておきましょう。
請求書の発行
請求の締め作業を実施した後は、確認内容に基づいて請求書を発行します。請求書には請求内容を記入するだけでなく、支払い締め切り日を明記の上、支払いが滞ることのないよう促す必要があります。
請求書の送付
請求書の発行ののち、請求書をクライアントへ送付します。クライアントへの送付方法は郵送やFAXが多用されてきましたが、近年はPDFでメールやクラウドサービスを使って共有するケースも増えています。
請求からすぐに支払ってもらえるとは限らないため、請求書を送付する場合は、締め日からできるだけ遠くないタイミングで実施し、次回締め日の前後に支払ってもらえるよう、期日を設定しましょう。
回収業務
請求業務が完了した後は、回収業務を行わなければなりません。回収業務は入金の確認と会計処理、そして入金リストの消し込みが発生します。
入金の確認
入金の確認プロセスにおいては、こちらの請求額とクライアントからの入金額を突き合わせ、支払額に問題がないかを確かめます。金額が不一致の場合や、指定した日までに入金が行われていない場合には、直ちに取引先に確認の連絡を入れるようにしましょう。
会計処理
入金確認の後は、会計処理を行います。入金日や伝票番号、取引先などが書かれた入金伝票を作成し、入金額の仕訳を実施します。
入金リストの消し込み
入金リストの消し込みは、取引先ごとに指定した請求金額と支払い期日が記されたリストを作成し、処理が済んだものから消していくというものです。現在の入金状況を確認しながらリストを更新していき、リストに残ったものに対して連絡を行うなどすることで、支払い漏れを防ぐことができます。
請求管理における3つの注意点
請求管理は上記のように、細かく分けると複数のステップに別れていることがわかります。細かく業務に対応しなければならないということは、それだけミスが発生してしまうタイミングも多いということです。
ここでは、請求管理におけるミスが起きやすく、注意すべきことについて紹介します。
請求書の記載内容を確認する
請求書の記載内容に不備がないかは確認すべき項目です。請求書が正しく作成されていないと、契約していた金額と異なる料金を請求してしまうことにもなりかねず、自社にとっても取引先にとっても余計な負担になってしまう可能性があります。
請求書の発行を行う前には、請求先や請求金額にミスがないか確認しなければなりません。
特に、事業規模が大きくなり一度に複数の会社と契約することになると、それだけ多くの請求業務が発生します。手動で管理している場合、請求内容が別の会社と混同しているというケアレスミスも生まれかねないため、丁寧にチェックを行う必要があります。
請求書の発行・送付に不備がないか確認する
請求書の発行や送付作業についても、エラーが発生する可能性があります。請求書は同じフォーマットで、同じ形式でクライアントに共有ができれば良いのですが、取引先によって異なるフォーマットを求められるケースもあるため、柔軟に対応できることが理想です。
メールでPDFを送って欲しいケースと、紙にプリントアウトして郵便で送って欲しいケースが混在することも珍しくありません。取引先に対する送付方法についてもすぐに確認できるようリストなどを作成し、ミスのないようまとめておくと効果的です。
入金額に問題がないか確認する
取引先から入金処理があったことを確認できても、安心してはいけません。入金額が請求した通りに振り込まれているかを確認し、入金リストの消し込みを確実に行いましょう。
忙しく過ごしていると、ついつい入金があっただけで確認を完了してしまうこともありますが、実際に振り込まれるお金に過不足がないかを早めに確認しておかなければ、後々トラブルに発展することも考えられます。入金額を迅速にチェックできる体制を整え、業務効率化を進めましょう。
請求管理を効率化する方法
これまでお伝えしたように、請求管理業務には多くの手順が発生するだけでなく、いくつも注意しておかなければならないポイントもあるため、手間もかかります。ここでは、そんな請求管理を効率化するための方法を紹介します。
請求管理の代行サービスに委託する
請求管理の効率化の一つ目の方法が、請求管理業務を代行サービスに委託するというものです。
近年は業務のアウトソーシングを積極的に行う企業も増加しており、コア業務以外をすべて外部委託している企業も増えています。請求管理はお金に関する大切な業務であるため、自社で対応したいと考える方も多いです。しかし、前述の通り対応には相応の時間と手間を必要とするため、その分のリソースをコア業務に充てることも大切です。
請求管理代行サービスに委託することによって、コア業務を少ない人材でも十分に対応できるようになります。代行サービスを利用すると、自社に業務のノウハウを蓄積することができなくなる反面、委託先はその分野のプロに任せられるので、業務のパフォーマンスは自社よりも高くなることが期待できます。
また、社内で請求管理のための人材を確保したり、彼らを研修したりといった業務からも開放されるため、大幅な会社のスリム化に貢献します。
請求管理ツールを導入する
請求管理の負担を軽減する二つ目の方法が、請求管理ツールの導入です。これまでエクセルなどで手動管理していた場合、請求管理専用のツールを導入することで、業務効率を大幅に向上することができるようになります。
請求管理ツールは、請求書の作成を自動化したり、入金リストを自動で管理してくれたりと、さまざまな機能を有しています。作業の多くをコンピューターで自動化できるので、ケアレスミスの要因が少なくなり、確実かつスピーディーな業務遂行を実現できます。
また、代行サービスを利用するのとは異なり、請求管理ツールは社内で導入するサービスであるため、自社でノウハウの蓄積も可能です。ある程度会社の自律性を維持しておきたい場合にも、請求管理ツールは有効です。
請求管理の効率化に役立つツール・システム
最後に、そんな請求管理ツールやシステムについて、ポピュラーなサービスを3つ紹介します。
楽楽販売
楽楽販売は販売管理業務全般をサポートしているサービスで、その一環として請求管理の効率化にも役立ちます。
あらかじめ顧客データをインプットしておくことで、当月請求の顧客を自動抽出することができます。手動の場合に発生し得る請求漏れや誤請求を削減し、請求管理の精度向上に役立ちます。
請求書の発行はワンクリックで発行を行えるため、スピーディーに作業を進められます。見積りや納品データから自動転記が行われるため、ミスの削減に貢献してくれることが特徴です。
管理している売り上げ情報は自動で集計されます。CSV出力が行えるため、会計システムへのデータ入力作業も自動化できます。
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請求管理ロボ
請求管理ロボは、導入実績が500社を超えるポピュラーな請求管理システムです。毎月の請求業務を約80%削減するクラウドサービスとして展開されており、データ連携を実施することで、請求作業から消し込みに至るまで、すべてを自動で対応してくれます。
入金確認が取れない企業に対しては、自動で催促の連絡を入れることができるため、一つひとつ催促メールを作成する手間からも開放されます。
売上情報や売掛金情報、未収金情については自動で会計システムに連携が行われるので、データを手動で共有する必要もなくなります。請求件数や用途に合わせた料金体系を備えており、月額2万円から利用できるコストパフォーマンスも魅力です。
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eSeikyu
eSeikyuは、Webブラウザを使って請求管理ができる使い勝手に優れたサービスです。請求書の発行から入金管理までを一元管理できるため、ケアレスミスの予防や業務効率の向上につながります。
システムの利用によって、請求業務で発生していた紙媒体の利用を解消することも可能です。ペーパーレス化を推進することで、コスト削減やさらなる業務効率化を目指せます。
インターネット回線があればどこからでも利用ができるため、テレワークの導入においても効果を発揮するサービスです。
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まとめ
今回は、請求管理業務の注意点や、効率良く業務を遂行するためのサービスを紹介しました。請求管理は細かな確認事項や入力作業が複数発生するため、取引先が増えれば増えるほど、管理は難しくなります。
そんな中でも適切な運営を実現するためには、ツールの導入などを推進し、業務効率化を促す必要があります。自社の課題を明らかにしながら、適切な解決策の実施を検討しておきましょう。