昨今、飲食のテイクアウト需要が拡大するなど、顧客のニーズが大きく変化しています。顧客ニーズの変化や新型コロナウイルスの長期化に対応するためには、インターネットを活用したモバイルオーダーの導入がおすすめです。
しかし、実際にはモバイルオーダーの導入に関して疑問や不安を抱いている方は少なくないでしょう。そこで今回は、モバイルオーダーの普及背景や導入のやり方、導入するメリットなどについて紹介します。
モバイルオーダーとは
モバイルオーダーとは、お客さんのスマートフォンやタブレット端末から事前に商品の注文・支払いができるサービスのことです。一見テレホンオーダーでのお持ち帰りとよく似ていますが、モバイルオーダーは事前に支払いまで済ませられるという点において異なります。
列に並んで待つ時間だけでなく、レジで現金やカードで支払いをする手間をも省くことができます。スターバックスやマクドナルドなどの大手飲食店をはじめ、さまざまな飲食店で導入されており、スマホユーザーの中で定着しつつある新たな注文・決済方法です。
モバイルオーダーが普及している背景
では、モバイルオーダーが近年普及・拡大していることにはどのような背景があるのでしょうか?
まず考えられるのが、スマホの普及が爆発的に進んでいることです。
2021年にNTTドコモ モバイル社会研究所が実施した調査によると、日本国内のケータイ所有者のスマートフォン比率は92.8%でした。2010年の調査では約40%、2015年で約50%、2019年で80%と、直近10年でスマホがいっきに普及しており、今後さらに普及が進むことが予想されています。
日常的にスマホを利用するユーザーが増えたことで、モバイルオーダーをはじめとしたデジタルツール活用する飲食店が増加しているのです。
また、新型コロナウイルスの感染拡大もモバイルオーダーが近年急速に拡大している理由の一つです。コロナ禍の飲食店では、感染対策の一環として「テイクアウト」や「注文・会計の非接触化」「順番待ち・店内における混雑回避」などに取り組む必要があります。これらの需要にスマートに対応できることから、近年モバイルオーダーの普及がさらに拡大しているといます。
モバイルオーダーの種類
モバイルオーダーのシステムは、「店内型」と「店外型」の2種類に大別されます。それぞれ店内・店外での利用を想定して開発されているため、役割や使い方などが異なります。
ここでは、それぞれのシステムについて詳しく解説します。
店内型
店内型は、来店したお客さんが列に並ぶことなく、テーブル席からスマホで注文・決済ができるモバイルオーダーシステムです。お客さんがテーブル席に設置したQRコードをスマホで読み取ることで、メニュー画面から注文ができるようになっています。
また、注文画面でお客さんにテーブル番号を入力してもらうなどして、注文後もスムーズに商品を提供することが可能です。
店外型
店外型は、来店前のお客さんが店外からスマホを使って注文・決済できるモバイルオーダーシステムです。お客さんは、来店時間に先立ってスマホで注文・支払いを済ませられるため、店内での待ち時間および滞在時間を最小化できます。
店外型モバイルオーダーシステムは、テイクアウト需要の拡大に対応したい飲食店におすすめです。特に、コロナ禍では店内の混雑緩和や非接触化につながることも大きなメリットでしょう。
ただし、店舗やシステムによっては、「店内型」と「店外型」を区別せず、いずれの利用方法も可能なこともあります。テイクアウト需要の拡大に対応したいのであれば「店外型」を選択するなど、自店の導入目的に則したシステムを導入すると良いでしょう。
モバイルオーダーの一般的な導入のやり方・流れ
続いて、一般的なモバイルオーダーシステムの導入のやり方とその流れを解説します。「どうやって導入すれば良いの?」「導入に手間かかりそうで心配……」などという方はぜひ参考にしてください。
モバイルオーダーシステムの選定
まず、自店舗に最適なモバイルシステムを選定しましょう。
一口にモバイルオーダーシステムといっても、使い方や連携できるシステムの種類などはさまざまです。予算や求める機能、導入目的などを明確にした上で、自店舗に合ったシステムを選ぶことが大切です。
店内型を導入する場合は、会員登録不要で利用できるかなど、お客さんが気軽に利用できるシステムかどうかを重視して選ぶと良いでしょう。店外型の場合は、メニュー画面を見やすいように細かくカスタマイズできるシステムや、決済手段が豊富なシステムを選ぶことをおすすめします。
システム・プランの申し込み
モバイルオーダーシステムを選定したら、実際にシステムやプランの利用申し込みを行いましょう。利用を開始する方法はシステムによって異なりますが、中にはアプリをダウンロードするだけで簡単に導入できるシステムも存在します。
また、無料お試し期間を設けているシステムも少なくありません。モバイルオーダーシステムの導入ハードルを高く感じているのであれば、まずは無料でお試ししてみるのも良いでしょう。
初期設定
初期設定では、メニューの登録やオーダー画面のカスタマイズ、POSシステムとの連携などを行います。ほとんどの場合、これらの初期設定はアプリで簡単に実行することが可能です。システムの案内に沿って、必要な設定を進めましょう。
QRコードの設置
店内型のモバイルオーダーを導入する場合は、テーブル席に注文画面へアクセスするためのQRコードを設置します。この際、モバイルオーダーを利用したことがないユーザーにもアピールできるように、簡単な利用方法や注意書きなどを記載したPOPを一緒に貼っておくといいでしょう。
モバイルオーダー利用開始
ここまでの準備が整ったら、モバイルオーダーの利用を開始しましょう。導入直後はお客さんにモバイルオーダーの存在を認知してもらうためにも、モバイルオーダーのメリットを伝えたり、モバイルオーダー限定のキャンペーンを実施したりするなどして、利用ユーザーを増やせるように工夫しましょう。
モバイルオーダーの導入店舗・事例
続いて、モバイルオーダーを導入している店舗の事例を紹介します。モバイルオーダーが実際に現場でどのように活用されているのか、イメージを掴みましょう。
スターバックス コーヒー ジャパン
スターバックス コーヒー ジャパンでは、2020年12月より「MOBILE ORDER & PAY」というモバイルオーダーを導入しています。来店前にスマートフォンで注文・支払いを済ませ、レジに並ばずに商品を受け取れるのが特徴です。
公式アプリまたはWebから「MOBILE ORDER & PAY」を開き、商品を受け取りたい店舗を選び注文を開始します。WEB版を利用すれば、アプリをダウンロードすることなくモバイルオーダーを気軽に試すことができます。
また、商品の注文画面では、ホイップクリームやシロップ、ソースの追加など、自分好みのドリンクにカスタマイズすることも可能です。テイクアウト・店内飲食のどちらでも利用が可能なうえ、受け取りまでの目安時間が表示されるなど、ユーザビリティに優れています。
日本マクドナルド
日本マクドナルドは、全国の2,700店舗にモバイルオーダーを導入しています。以前より提供されていたマクドナルドの公式アプリ内の「モバイルオーダー」機能で、スムーズに注文・支払いをすることが可能となっています。
一部の店舗では、注文した商品を店内のテーブルで提供したり、駐車場の車まで届けたりするなど、ユーザー側のメリットを最大化する形でモバイルオーダーを提供しています。見やすいメニュー画面で、まるでオンラインショッピングのように商品をカートに追加して注文・支払いができる点も人気の理由の一つです。
また、PayPayやLINE Payなどさまざまな支払い方法に対応しているほか、公式アプリのお得クーポンも使用できるなど、レジでの注文と比較してデメリットがないことも、参考にしたいポイントです。
丸亀製麺
丸亀製麺は、テイクアウトのニーズの高まりに対応すべく、2021年2月よりモバイルオーダーサービスの提供を開始しました。丸亀製麺の公式サイトから手軽にアクセスし、メニューを選ぶ感覚で注文・支払いができることが特徴です。
店舗には「スマートフォン注文」の受け取り口を設置し、モバイルオーダーをした人は列に並ばず、スマートフォンの注文画面を提示するだけで商品を受け取れるようになっています。ピーク時でも待ち時間を気にせず、できたてのうどんを食べられるので、オフィス街などに位置する店舗では特にモバイルオーダーの導入効果が高いと考えられます。
店舗側のモバイルオーダー導入メリット
続いて、モバイルオーダーを導入する店舗側のメリットを紹介しましょう。
作業の効率化
店舗側のモバイルオーダー導入メリットの1つ目は、店舗スタッフの作業を効率化できることです。規模の小さい店舗では、数人のスタッフが厨房とレジ業務、接客を担うことが少なくありません。この場合、混雑時にはレジ業務に大きな負担がかかってしまいます。
しかし、モバイルオーダーを導入すれば、レジ業務(注文・支払い対応)が不要になるため、スタッフの作業負担を大幅に低減することが可能です。ドリンクやフードを用意している手を止めることなく、新たな注文を受けられるモバイルオーダーは、作業効率化にかなり効果的です。
回転率の維持
2つ目のメリットは、混雑時でもお店の回転率を維持できることです。
ランチタイムやディナータイムなどに行列ができる店舗では、長い待ち時間のためにお客さんを取りこぼしてしまうことが少なくありません。しかし、モバイルオーダーを利用してもらえば、事前に来店・受け取り時間を指定して注文・支払いを済ませておいてもらうことが可能です。
そのため、お客さんの来店から商品を提供するまでの時間を大幅に短縮できます。待ち時間と滞在時間を短縮できるモバイルオーダーは、ピーク時の回転率の低さを課題としている店舗での導入がおすすめです。
人手不足の解消
3つ目のメリットは、店舗の人手不足を解消できることです。これは、作業を効率化できるという1つ目のメリットと深く関連しています。
モバイルオーダーは、より多くのお客さんに利用してもらうほど、スタッフの作業負担が減ります。それは、モバイルオーダーではお客さんがスマートフォンで注文と支払いを完結できるからです。
そのため、モバイルオーダーの利用が定着すれば、少ない人数でシフトを回せるようになります。飲食店における人手不足の解消、そして人件費高騰へ対処する方法として、モバイルオーダーはとても効果的です。
顧客満足度の向上
店舗側のモバイルオーダー導入メリットの4つ目は、顧客満足度の向上を実現できることです。詳しくは後述しますが、モバイルオーダーはお客さん側にも多大なメリットをもたらします。
モバイルオーダーを利用して、レジに並ばず快適に商品を受け取ることができれば、多くのお客さんは「モバイルオーダーは便利で気に入った」「また利用したい」と思うことでしょう。モバイルオーダーは、顧客満足度を向上しリピート率を高める施策としても優秀だといえます。
ユーザー側のモバイルオーダー導入メリット
モバイルオーダーの導入は、店舗側だけでなくユーザー側にとってもメリットがあります。ここでは、ユーザー側のモバイルオーダーのメリットを紹介します。
待ち時間の短縮
ユーザー側のメリットの1つ目は、レジでの待ち時間を短縮できることです。
例えば、限られた時間でランチを済ませなければならない昼の休憩時間では、「待ち時間が長くて、利用できない」ということが少なくありません。しかし、モバイルオーダーを利用すれば、混雑時でも列に並ばずに商品を受け取ることができます。
「待ち時間を減らしたい」「スムーズに商品をテイクアウトしたい」といった顧客にとって、長い待ち時間を回避できることは大きなメリットでしょう。
密集の回避
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、混雑している店舗に長い時間滞在することを不安に感じる顧客は少なくありません。モバイルオーダーを活用すれば、店舗ですぐに商品を受け取れるため、店舗での滞在時間を減らし密集を回避することが可能です。
他の顧客や従業員とのソーシャルディスタンスを意識する必要がある昨今、モバイルオーダーを利用するメリットは大きいといえます。
モバイルオーダーシステムの例
続いて、飲食店で導入可能なモバイルオーダーシステムの例を紹介します。「どういったシステムがある?」と気になっている方はぜひ参考にしてみてください。
Okage Go 店内版
「Okage Go 店内版」は、店内でのモバイルオーダーに特化したセルフオーダーシステムです。お客さんのスマートフォンで専用のQRコードを読み取ってもらう仕組みなので、オーダー端末を用意する必要がありません。
Okageシリーズからは、店外でのモバイルオーダーに特化した「店外版」も出ています。「店内または店外に特化したモバイルオーダーを導入したい」という方はぜひチェックしてみてください。
料金プラン
- ・15卓未満:月額11,000円(税込)
- ・25卓未満:月額16,500円(税込)
- ・35卓未満:月額22,000円(税込)
公式サイト
モバイルオーダー導入時の注意点
ここまで、モバイルオーダーの概要や導入メリットなどについてお伝えしました。メリットが多いモバイルオーダーですが、実際に導入するにあたっては注意点も存在します。
モバイルオーダーを導入後は、店頭の顧客とモバイルオーダーの顧客を同時に対応していく必要があります。モバイルオーダーの顧客を優先するばかり、店頭の顧客を長く待たせてしまうようでは本末転倒です。
モバイルオーダーシステムを正しく活用していけるよう、導入事例を参考にスタッフ一丸となってしっかりと準備を進めていきましょう。
まとめ
今回は、近年注目が集まっている「モバイルオーダー」の普及背景や導入のやり方、導入事例、導入メリットなどについてお伝えしました。
スマホ・キャッシュレス決済の普及拡大や新型コロナウイルスの長期化などにより、モバイルオーダーの導入店舗は、今後さらに拡大していくことが予想されます。顧客のニーズに対応するため、そして作業の効率化を図り人手不足を解消するためにも、これを機にモバイルオーダーの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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