円滑な企業経営においては、常に改善施策を投入し、現在の業務をより良いものに仕上げていくことが求められます。効率良く業務改善を進めていく上で注目されているのが「BPM」と呼ばれる概念です。
今回は、BPMがなぜ多くのビジネスシーンで注目されているのか、どのような仕組みを採用しているのかについて解説していきます。
BPMとは
BPMはBusinesse Process Managementの略称で、企業の経営戦略と業務プロセスをすり合わせながら、常に改善を加えてより良い業務プロセスを実現するためのアプローチです。
業務を円滑に進めるためにはPDCAサイクルを心がけることが大切といわれますが、BPMはPDCAをより体系的に行い、実施の上で得られた情報を企業の資産として蓄積し、改善施策に活用していくための概念といえるでしょう。
BPRとの違い
BPMと似たようなキーワードとして、BPRが挙げられます。BPRはBusiness Process Re-engineeringの略称で、BPMと同様に業務改善施策のアプローチの一つです。
BPMとの大きな違いとしては、BPRはより抜本的な改革を選択肢に含めていることが挙げられます。BPMはあくまでも社内管理をより効率的に実施するためのコンセプトにすぎず、部署内の連携を強化するといった業務改善を実施します。
一方のBPRは、会社組織そのものを再編したり、外部組織の介入も視野に入れたりするなど、よりスケールの大きなプロジェクトとなることが多いといえます。また、BPMは継続的に改善を行うために実施しますが、BPRに関しては実施規模が大きい分、一回でプロジェクトが完了することがあることも特徴的です。
BPMの構成要素
BPMの実施にあたっては、主に次の3つの構成要素が重要視されています。
業務プロセスの可視化作業
一つ目の構成要素が、業務プロセスの可視化作業です。実際にどのような手順で業務を遂行しているのか、なんとなく理解されていたものについて、文章や数値に起こしてみることによって、既存業務のパフォーマンスを具体的に理解できるようになります。
業務プロセスの可視化については、この後紹介するBPMNと呼ばれる仕組みが用いられることが一般的です。
業務プロセスの管理システム
業務プロセスの実行とマネジメントにおいては、手動ではなく管理システムを導入して実施します。可視化した情報をもとに業務プロセスを再設計し、システムにそれを落とし込むことで、効果的なサポートを得られるようになります。
この際に活躍するのが、BPMシステム、通称「BPMS」と呼ばれるサービスです。こちらも後ほど紹介します。
継続的なPDCAサイクルを支える活動体系
BPMを実施する上で重要なのが、継続してPDCAに取り組むことです。
BPMは一度実行するだけではなく、サイクルとして継続的に回していくことで、中長期的に効果を発揮します。BPMに取り組む以上、一連の活動を長期的に運営していくための環境を整備することも導入においては重要です。
BPMをサポートする技術
BPMの導入にあたっては、「BPMN」と「BPMS」という、2つの技術が重要な役割を果たします。それぞれ解説していきましょう。
BPMN
BPMNはBusiness Process Model & Notationの略称で、業務の実行前に社員や関係者が理解しておくべき業務フローを記述するための手法です。
業務フローを可視化することの目的は、第三者にも理解しやすく業務を記述することで、課題の解決を円滑にすることなどが挙げられますが、自社独自の記述方法で取り組むとその効果が半減してしまいます。
こういった課題を解消するために役立つのがBPMNです。仕事にどのように取り組むのか、どんな役割分担を実施するのか、各役割の業務内容などについて定義づけます。
BPMNを使った業務プロセスの可視化はモデリングとも呼ばれます。モデリングには、大きく分けて2つのレベルが存在します。
レベル1においては、業務へ実際に取り組み人物の合意を円滑に形成するために用いられたり、システムを構築するエンジニアなどへ円滑に情報共有を行うための処理が行われたりします。シンプルに業務フローを可視化し、誰にでも理解しやすく作成するのがレベル1です。
レベル2の段階では、業務プロセスの構築やBPMシステムの導入をITの力で実施するため、記号的に設計情報を記述していきます。レベル1のときに比べて読解にはスキルが求められるようになり、専門的な記号の羅列が続くため、扱いには相応の技術レベルが必要です。
BPMS
BPMSはBusiness Process Management Systemの略称で、一般的にBPMシステムと呼ばれるものです。
BPMSは、上述のBPMNによって描かれた理想的な業務フローを実装するための技術です。BPMSの導入によって業務プロセスの管理システムを構築し、継続的なPDCAサイクル環境を整えられるようになるというわけです。
BPMSは、Plan Do Check ActというPDCAサイクルのすべてのフェーズをサポートしてくれるため、BPMの実現には不可欠な存在です。
BPMを適用するメリット
BPMを業務に実現することによって、実に多くのメリットが期待できます。ここでは、主な3つのメリットを紹介していきます。
オペレーションコストを削減できる
一つ目は、業務のオペレーションコストを大幅に削減できるという点です。企業のスケールが大きくなると、それだけ業務も複雑化してしまうため、マネジメントの負担は大きくなってしまいます。
十分に業務負担に耐えられるリソースを備えていたのにも関わらず、オペレーションの負担が増大したことで思ったように企業の成長を達成できていないというケースもありますが、こういった課題をBPMの適用によって解消できます。
BPMNを通じて業務フローを可視化し、BPMシステムを用いて管理体制を整えることで、業務効率化を実現します。
維持管理コストを削減できる
BPMが実現すれば、企業の維持管理コストも削減できます。マネジメントに伴う負担が軽減すれば、それだけ一人あたりの負担は減少し、既存の社員だけでさらなる業務にも対応できるようになります。
管理負担を小さくできれば、それだけ企業の利益率にも貢献してくれるため、長期的な企業成長を支えてくれるでしょう。
企業のガバナンスを強化できる
より多くの関係者と良好な関係を長期的に結ぶためにも、企業ガバナンスの強化は不可欠です。BPMの適用によって業務フローを常に細部まで管理し、改善の余地を把握できるようになることで、スマートな経営状況を実現します。
BPMSで業務フローを常に監視できるようになれば、不透明な部分も排除可能となるため、余計なリスクを抱えてしまう心配もありません。改善を重ねられる環境を整備すれば、さらなる企業成長を促し、成長意欲とポテンシャルのある企業と認めてもらえるようにもなるでしょう。
BPMを支える便利なツール
最後に、BPMの実現に役立つ便利なツールを3つ紹介します。
BP Director
BP Directorは複雑化してしまった業務プロセスを全体最適化し、継続的な改善までサポートしてくれるサービスです。アナログとデジタルが混在した業務をデジタルに一括することで、不透明だった業務や情報を一つのシステムから自動化・教諭できるようになります。
一般的なワークフロー形式はもちろん、時間軸を持つガントチャート形式で業務プロセスを管理できる機能を備えているため、スケジュールがタイトな現場においても、最適な業務プロセスを作成することが可能です。
公式サイト
Lucidchart
Lucidchartは独自のBPMNツールを備えており、業務フローの把握に欠かせないBPMNを簡単に作成できます。すべてのユーザーのニーズに合わせ図形ライブラリを無料で提供してくれるため、業務プロセスモデル・ワークフロー図が最短時間で作成可能という仕組みです。
BPMN専用テンプレートにいつでもアクセスできる他、社内での共同編集機能や、プレゼンテーション機能も標準装備しているため、BPMの実現を早期からサポートしてくれます。
公式サイト
IM-BPM
IM-BPMは、ビジネスプロセス・モデリングの国際標準規格(ISO19510)であるBPMN 2.0に準拠したツールで、高度な業務プロセスの構築に役立ちます。オープンソースで運用可能なツールとなっており、拡張性の高さが強みです。
ノンコーディングの作成ツールなど、関連サービスとの連携機能も有しており、幅広い運用環境の構築を実現します。
公式サイト
まとめ
今回は、BPMの実施方法やBPMの実現で得られるメリットなどについて紹介しました。
BPMの適用にはBPMNによる業務フローの可視化や、BPMSを使ったシステムの構築など、標準規格に基づく技術的な取り組みが求められます。
適切なツールを導入し、自社へのBPM適用を効率よく進めていきましょう。
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