
不動産業界では、日々多くの業務が発生するだけでなく、ICTの活用が今ひとつ進んでいない業界でもあります。ただ、ICTが使われていないということは、それだけ導入の余地が大きいともいえます。
中でも賃貸不動産においては物出し業務が大きな負担となっており、現場を疲弊させる要因として扱われています。今回は物出し業務が負担となってしまう理由や、業務効率化のポイントについて解説していきます。
物出しとは
そもそも物出し業務というのは、不動産仲介業者が抱えている登録作業のことを指しています。仲介業者向けに提供されている専用サイトを確認し、自社で案内したいあるいは広告を掲載したい物件を選定する作業を経て、自社システムへの掲載が行われます。
管理会社によって、サイトの設計や物件の掲載方法というのは異なるため、物件の選定には時間を取られます。また、多数のサイトを確認しなければならないため、なかなか億劫で気が遠くなるという担当者の方も多いものです。
なぜ物出しが負担になりやすいのか?
物出し業務に限らず、日々発生する不動産業務には物件取得や物件入力など負担の大きいものがあるため、一概に物出しだけが問題であるとはいえません。
しかし、物出し業務は上記で挙げた理由以外にも、次の3つの理由が担当者の負担としてのしかかっているといえます。
ミスができないため
一つ目の問題は、物出しはミスが許されない業務であるためです。
物出しはデスクワークであるとはいえ、業務フローは比較的単純なルーティンワークです。決まったサイトから情報をピックアップして、自社サイトに登録するだけの作業です。しかし間違えると大きな問題に繋がりかねない作業でもあります。
入居者を募集していない物件情報を掲載してしまう場合など、事実と異なる物件情報には価値はないため、入居見込みのない物件を掲載してしまうのは直接時間的な損失をもたらします。
こういった無駄を回避するためにも、物出しは丁寧に確認しながら行わなければなりません。
日々発生する業務であるため
物出しが負担となる二つ目の理由は、毎日必ず発生し、なおかつその数が多いという点です。
時期にもよりますが、賃貸物件の情報は毎日慌ただしく変化します。魅力的な物件はすぐに埋まってしまうため、契約を取るには、良物件の情報を自社サイトに少しでも早く掲載しなければいけません。
そのため、物出しは必然的に毎日対応しなければならず、人員リソースが圧迫されてしまっている仲介会社も少なくありません。毎日必ず発生するために作業を減らすことはできず、不動産業にとっては仕方のない負担として見過ごされてきました。
更新速度が成約率に大きく影響するため
物出しによる自社サイトの更新頻度は、成約率に大きく影響します。条件の整った物件情報はどこの仲介会社も紹介したいと考えているので、どれだけ更新速度を高め、良い情報を顧客に伝えられるかがカギになってくるためです。
そのため、物出しは毎日頻繁に行う必要があり、会社の売り上げ確保を大きく左右する業務であることも間違いないでしょう。
RPAで物出しを自動化するメリット
このように、物出し業務は仲介会社の売り上げに大きく影響するため、多少の負担は仕方がないとして受け入れている事業者の方も多いことでしょう。
しかし、近年はRPA(Robotic Process Automation)、いわゆるデスクワーク向けのロボットを導入することで、物出し業務の効率化に成功している事例も次々と現れはじめています。RPAで物出しを自動化することで、どのようなメリットを得られるのかについて、解説します。
更新速度と精度を向上できる
物出しRPAの導入は、更新速度の改善と物件情報の精度向上に役立てることが可能です。
RPAを使った物出しも、基本的なプロセスは人力で行うときと変わりません。しかし、RPAの場合は手動入力や検索の必要性が一切なくなるため、情報収集のスピードを飛躍的に高められます。
事業者向けの専用サイトから条件に合わせた物件情報を自動で取得し、自社サイトへの登録まで行ってくれるため、人の手を必要としないシステムを構築できます。もちろん、物件の内観写真や設備情報の更新にも活用できるため、詳細で正確な情報を見込み客に提供可能です。
成約率を高められる
物出しRPAの導入によって、成約率の向上にも貢献できます。
不動産仲介情報でよくあるのが、物件情報が古かったり、今ひとつ詳細に情報を提供できていなかったりする問題です。他のサイトでは丁寧に写真などまで表示しているのに、このサイトはなぜか間取りが掲載されていないなどの情報不足による不信感を解消できるため、成約率の向上に貢献します。
これまで情報の更新作業に気を取られていて、丁寧な情報発信ができていなかったという企業にとって、非常に有益な改善効果が期待できます。
業務効率化に貢献する
三つ目のメリットが業務効率化です。物出し業務を丸ごとロボットで自動化できるため、物出しに必要な人材は最低限の人数で抑えられるようになります。
これまで物出し作業があるため多くの人手を必要としていた不動産業者は、大幅な人員削減に繋がり人件費の削減を進められるでしょう。
また、RPAの導入によって生まれた余剰人材については、内見対応にリソースを配分したり、自社サイトのコンテンツ強化に努めたりなど、事業成長に向けた人材配置を実現できるようになります。組織のコストパフォーマンスを高め、競合との差別化も進められるでしょう。
物出し業務の具体的な改善プロセス

以上のように、物出し業務は改善の余地が非常に大きく、RPAを活用すれば新しい事業展開の可能性も見えてきます。
次にRPAを使った具体的な改善施策について整理しておきましょう。
物件取得の自動化
RPAを使ってまず改善できるのが、物件取得の自動化です。管理会社の数に応じて複数存在する会社間流通サイトをリサーチし、情報を取得する作業を自動化可能です。
これまでは人間の目で追いかけていた情報を、すべてロボットによって数秒で集約できるようになるため、大幅な効率化につながります。たとえ異なるフォーマットで掲載されている情報であっても、ロボットはそれぞれに最適化してデータを取得できるため、取得ミスが発生する心配もありません。
物件入力の自動化
続いて物件入力の自動化です。RPAによって取得されたデータは、そのまますべてロボットが自社の基幹システムへと自動で入力を行ってくれるため、転記の必要はなくなります。
人間が入力作業を行う場合、転記ミスが発生して物件情報に誤りが出てしまうこともあり、正しい情報提供の妨げとなっていました。このようなリスクをRPAの導入で丸ごと回避できるため、非常に便利です。
もちろん、転記ミスがないか確認をする必要もなくなるので、確認作業の効率化にも貢献します。
物件出稿の自動化
最後に物件出稿の自動化です。基幹システムに入力されたデータは、各不動産ポータルサイトへ自動的に出稿されるため、ここでも人の手を必要とすることはありません。
もちろん、事前の段階で基幹システムに入力されていたデータをそのままロボットが出稿してくれるので、ここでもミスが発生する心配はありません。以前よりも高い精度とスピードで物出しを実現し、業務の効率化にも繋がるRPAは、不動産仲介業者にとって導入しない理由がありません。
実際の物出し業務改善事例
実際に物出し業務をRPAで改善した事例も次々と登場しています。ここでは、物出しをRPAで自動化する当社ディップ株式会社の「不動産コボット for 物件取得」を導入している企業の事例について紹介します
「不動産コボット for 物件取得」については最後に紹介します。
株式会社ハウスパートナー
株式会社ハウスパートナーは、物件取得と入力作業をRPAで大幅な自動化に成功した企業の一つです。
同社ではこれまでの物出し業務において、多くの負担を強いられてきました。物件取得作業に対して、1人1日2時間以上かかっていたり、転記ミスの修正を行なったり、あるいはその確認作業に追われていたりしたためです。
また、企業間流通サイトによってフォーマットが異なっていたことも物出し業務を長引かせていた原因でもありました。
これらの問題を解消すべく、同社では不動産コボットを導入することで、大幅な業務削減効果を実現しました。1人当たりの作業量は約5分にまで短縮され、1ヶ月あたりの業務削減効果は100時間にも到達しています。
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賃貸スマイル株式会社
賃貸スマイル株式会社では、物件取得をRPAによって自動化し、効率的な運営を実現しています。こちらの企業でも、物件の取得作業には1人2時間、2人で4時間という負担を強いられており、小さな規模で会社を運営していく上では看過できない重荷となっていました。
また、人手が少ないと全ての空室情報を把握できず、人気の高い物件情報を見逃してしまうこともありましたが、物件取得をRPAで自動化することで、大幅に改善できました。
2人合わせての業務作業量は15分にまで短縮され、鮮度の高い賃貸物件情報を提供できるようになったことで、サービスの品質向上にもつながっています。
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不動産コボット for 物件取得とは
このように、不動産コボット for 物件取得の導入によって、高い改善効果を獲得している事例も次々と登場しています。不動産コボット for 物件取得は、不動産業界における課題解決のために誕生したRPAシリーズで、主に物件取得業務の改善に役立つサービスです。
概要
不動産コボット for 物件取得はこれまで派遣会社特化型のサービスとして提供してきたRPA「コボット」を、不動産業界でも活用できるようカスタマイズしており、導入後すぐに現場で活用していただくことができます。導入先としては、人的・資金的制限のある中小企業を想定して開発されています。
月額料金で利用できるサブスクリプション制を採用しており、初期費用を最小限に抑えた運用が可能です。保守費用についても月額料金に含まれているため、導入によって保守人材の確保や費用の圧迫を心配する必要もありません。
機能
主な機能は、物件空室情報サイトへ自動でログインして、新規物件情報の取得を自動で行ってくれるというものです。申込状況や削除の記録など、更新情報を迅速に反映してくれるため、確認漏れなどが生まれない強みを持っています。
もちろん、物件情報の取得は単一のサイトだけでなく、普段から利用している複数のサイトで実行することが可能です。新しい物件のデータや既存物件の更新情報、そして削除された物件情報の破棄と、自社データベースのアップデートに貢献します。
取得したデータは既存のデータと自動的に照合され、新規物件リストの作成などを自動入力で、そしてエクセルなどの任意のデータ形式で出力できます。物件情報の更新に関する業務を丸ごと自動化できるため、大幅な現場負担の軽減につながり、精度の向上にも役立ちます。
また、物件ごとの電気代情報などを自動でExcelへ転記する「電力検針」や、入居者の振り込みを自動で確認する「入金チェック」機能など、導入企業に合わせたカスタマイズプランも豊富に用意しています。
不動産管理および不動産仲介の業務における効率化にまとめて貢献できるため、複数のお悩みを抱えている方にもおすすめしたいサービスです。概要やお問い合わせはこちらより確認できます。お気軽にお問い合わせください。
製品ページ
まとめ
今回は、物出しが不動産業務にとって大きな負担である理由や、その改善方法であるRPA導入のメリットについて解説しました。
RPAの導入は、データ出入力作業などの単純なデスクワークの改善に効果的な施策です。物出しはまさにそのケースに当てはまる業務であったため、導入企業では確かな効果を発揮しています。
人手不足に悩んでいる企業ほど、RPA導入の効果は高まります。物出しの負担に悩まされている場合、積極的な導入の検討をおすすめします。
ディップは自社で培った営業ノウハウと、多様なデジタルツールを組み合わせ、
お客様の企業収益向上に関わる全てを、専門担当制でのサポートを提案します。
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